戦車長と音楽厨二人の鉄血世界   作:ナナシのG愛好家

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束の間の休息 後編

「さてと、自由に探索してもいい。って言われてもな~。」

 

 【サンクチュアリ】の船内で、イオはそうぼやいた。

 

「お?」

 

 しかし、歩いていると、気になる部屋を見つけた。

【音楽室】と書いてある。

 

「…………エレメンタリー・スクール(小学校)かよ…………。」

 

 そうぼやきながらも、

 

「ドラムあっかな?」

 

 そう考え、扉を開ける。すると、

 

「おお!!」

 

 あった。奥に、ドラムがあったのだ。

 

この世界(こっち)に来てから全然ヤれてなかったからなぁ。」

 

 そう言い、近くにあったドラムスティックを引き抜く。軽く色々なものを叩けば、いい音が鳴り響いた。

 

「スティックよし、楽器よし。オーディエンスとボーカルとドラム以外の楽器を鳴らす奴がいないのが残念だが、ヤるか!!」

 

 そう言い、ドラムを軽快に叩く。曲は、大昔のジャズ、ジャイアント・ステップスだ。

 おのれの音楽の世界へ入り、気が付いたら、顔から汗を滴らせるほど、ヒートアップしていた。

 

「さて。次はどんな曲を…………。」

 

 その時、パチパチパチパチ。と、拍手が聞こえてきた。

 

「あ?」

「すっごい上手いね~。あなた。思わず聞き入っちゃった。」

 

 気が付くと、音楽室の扉の近くに、妙な帽子をかぶり、派手な装いの女性が居た。

 

「アンタは、」

「あ、私、鶴城・マイっていいます。よろしくね。」

 

 と、手を差し出してくる。

 

「イオ・フレミング。鉄華団の社員だ。」

 

 この肩書きにも慣れて来たな。そう思いながら、彼の手を握る。

 

「キミって、あのグラシャラボラスと戦ってた人でしょ?度胸あるね~。」

「グラシャラボラス?ああ、あいつか。」

 

 苦い思い出だ。と呟く。彼はコクピットで、グラシャラボラスから発せられる無邪気な少年の声と、何人も人を殺してきた悪魔の様な濃密な殺気。そして浮かび上がる、機体の黄金の爪が、コクピットを貫き、己を肉塊にするイメージ。あの時ほど、【敗北】を感じたのは、ダリルにFAガンダムを破壊された時以来だ。

 それを思い出し、ギリッ、と奥歯を噛む。

 

「チッ。」

「あ、ごめん。いやなこと思い出した?」

「ああ。まぁな…………。」

 

 次会った時は…………負けねぇ!!

 

 イオは静かに、目に闘志をもやした。

 

「もし必要なら。私、オペレーターやってるから、アシストするよ。」

「そうかよ。頼りにしてるぜ。」

 

 マイの提案に、イオはニヒルに笑ってそう言った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…………。」

 

 カツカツカツ。と、無言で艦内を歩く眼鏡の女性。彼女の名は、フミタン・アドモス。クーデリアの従者だ。

 

「(…………不味い事になった。)」

 

 しかし、彼女には、みんなに伝えていない裏の顔がある。

 それは、クーデリアの支援者大富豪ノブリス・ゴルドンから使わされているという事。そして、ノブリス・ゴルドンの目的は、『クーデリア・藍那・バーンスタイン(革命の乙女)の死により、世界に暴動を引き越すこと。』そうすることで、武器商人であるノブリスの武器は、暴動を起こす側と鎮圧する側。双方に売れる。彼は自分が儲かるために、クーデリアに亡き者になってもらおうと言うのだ。

 

「(…………いくら助っ人が来ようと変わらない。私の目的は…………。)」

『フミタン、何時も助かっています。』

「(ッ…………なぜ、お嬢様の言葉を思い出す、お嬢様の顔を思い出す…………。私の目的は変わらない!!)」

「あの…………。」

 

 ハッ、と、フミタンは声をかけられていることに気が付いた。

 振り向けば、四角眼鏡をかけた、会社員風の男が後ろに居た。

 

「貴方は?」

「あ、私は、このサンクチュアリでオペレーターをしている、俊介・ハヤサカというものだ。貴方は確か…………。」

「フミタン・アドモスです。」

「そうだったね。挨拶をと思ったんだが、何やら思いつめた表情をしていたからね。大丈夫かと思って。」

「ええ。少々考え事をしておりました。ご心配お掛けしてすみません。」

「そ、そうか………敬語を使われるとむず痒いな…………」

 

 そう言いながら、手を差し出した。

 

「まぁ、仲良くやろう。」

「…………そうですね。」

「(…………ノブリス様の為にも、利用をさせてもらいます。)」

 

 フミタン・アドモスは仮面をかぶる。その心に、わずかな葛藤を残しながら。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…………オルガと離れちゃったな。」

 

 三日月・オーガスは、広い船内で迷っていた。すると、

 

「うぎゃぁ!?」

「!?」

 

 ドンガラガッシャーン!!

 

 と音がして、曲がり角かファイルが飛んできた。

 

「…………うう……イタタ…………げうっ!?」

 

 見ると、異様に伸ばした赤髪の少女が、倒れていた。さらに追い打ちで高く舞い上がったファイルが落下して頭を直撃していた。

 

「…………アンタ、何してんの?」

「止めて!!私をそんなチベットスナギツネを見るみたいな目で見ないでください!!」

 

 変な奴だな。というような三日月の視線が痛い!!という様に手を振る。

 

「あの、先生に書類を届けようと思ったんですが、あそこの段差で躓いちゃって…………。」

「へ~。」

 

 彼女が指差したところにあった段差。ホースを何かでコーティングしているようにも見えた。

 

「おや、やはりナオサンでしたか。」

 

 すると、廊下の奥の扉が開いて、白くうねった髪の、眼鏡をかけて巻肩の初老の男性、が声をかけて来た。

 

「アンタ、誰?」

 

 その男性に向け、三日月はそう問いかける

 

「おや、そのマーク、もしかして鉄華団の方ですかね?」

「俺が聞いてるんだけど。」

 

 男の質問に、三日月はそう言う。

 

「え?ちょ、ちょっと!!先生に失礼ですよ!!悔い改めてください!!」

「もじゃもじゃの人、何?今俺この人と話してるんだけど。」

「モジャモジャ!?」

 

 三日月の発言にショックを受ける少女。

 

「こらこら、女性にそういう事を言ってはいけませんよ。それと、質問を質問で返したのは不味かったですね。私、このヘブンズ・ナイツ・ブリゲードでデータ解析や会計の仕事をしている三島・カズミと申します。彼女は私の教え子の、絵心・ナオさん。貴方の名前を教えていただけますか?」

 

 と、三日月に問いかける。

 

「三日月・オーガス。」

 

 彼が名前だけ答えると、

 

「そうですか、三日月君というのですね。よろしくお願いします。」

 

 と、手を差し出してきた。

 

「うん。よろしく。」

 

 今は手は汚れていないし、と、握手をする。と、

 

 グシャッ。と音がした。

 

「「ん?」」

 

 散らばっていたナオの書類の一枚を、踏んでしまっていたのだ。

 

「あ~!!」

 

 ナオが死にそうな声を上げる。

 

「おやおや、まずは、片付けですね。手伝っていただけますか?」

 

 三島の頼みに、三日月は頷いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ねぇ、シノ…………。」

「ん?どうした?ヤマギ?」

 

 意気揚々と船内を探検していたノルバ・シノは、後ろに居たヤマギの声に、立ち止まって振り返った。

 

「ここ…………どこ?」

「…………俺にもわかんねぇ。」

 

 どうやら、こいつらも迷っている様だ。

 

「ちょ、シノっ、どうするの!?」

「わかんねぇ!!けどよ、歩いてれば何とかなるだろ!!」

「いつになく適当!!」

 

 そんな言い合いをしてると、

 

「ん?お前ら何してんだ?」

 

 ヒョコッ、と、奥の廊下から、茶髪の青年の顔がのぞいた。

 

「ん?ああ、迷っててな。」

「シノが右だ!!左だ!!今度は真っ直ぐ!!って、適当に歩いていくから……………。」

「いいだろ別に!!」

「というか、それなら元来た道を戻ればいいんじゃねぇの?」

「うん、実は元来た道?を戻ってる最中だったんだよね。」

「おう!!今度は多分右に曲がったと」

「おい待てそっちはエアロックだぞ。」

「………………。」

「………………。」

 

 ヤマギとシノは、目を合わせる

 

「こりゃ本格的に迷ってんな!!」

「笑ってる場合じゃないでしょ!!」

「お前、苦労してそうだな…………ともかく、俺、ジョー・タヅナって言うんだ。よろしくな!!」

 

 ニカッと笑って手を差し出す。

 

「ノルバ・シノだ。よろしくな!!」

 

 シノも同じように笑い、ジョーの手を取った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…………。」

 

 クランクは、レストランの様になっている食堂の一席にクランクは座っていた。

 

「(フロストヴィトニル級戦艦。厄災戦時代に数隻だけ建造された超大型級戦艦。か。)」

 

 彼は別に食事をとりに来たわけではない。落ち着いた雰囲気のここなら考え事にもってこいだと考えたのだ。

 

「(そんな物が、まだこの時代まで…………しかも、一民兵組織が持っているとはな…………。それにしても…………。)」

 

 辺りを見回す。丸テーブルに椅子。落ち着いた雰囲気の木張りの壁や床。小洒落たランプ。地球や火星の高級街にあるレストランとも、差支えない。

 

「気になるニャン?」

「ッ!?」

 

 ヒョコッ。と、クランクの席の反対側、机の下から、丸い猫のクッションが現れる。

 

「フッフッフ。驚いたワン?」

 

 更に、猫だろうか、犬だろうか、オレンジに縞の付いたミミ付きフードマントを被り、手には、物を掴むのが難しそうな、犬の手(猫の手?)グローブ。顔をマスクで隠した少年が現れた。

 

「いつからそこに?」

「オジサンが目を瞑っていたから、その間にここまで来て、隠れてたニャン。」

「(この俺に気が付かれる事なくここまで…………というか、犬?猫?どっちだ?)」

 

 きっとそれは、この少年のみぞ知る永遠の謎なのだろう。

 

「どうかしたワン?」

 

 曇りない瞳で見てくる彼は、よく見れば、見た目こそ奇抜だが、マントの下はTシャツと短パンというラフな格好をしている。それに、

 

「一つ聞くが、何歳だ?」

「ん?12歳ニャン。」

「…………若いな。」

「この船じゃ、最年少ワン。でも、鉄華団のみんなはもっと年下ニャン。だから僕が守ってやるワン。」

「…………頼もしいな。」

 

 彼の笑みに、何ともいえない気持ちになったクランクは、そう言ってしまった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「うう。迷っていまいました…………。」

 

 そしてここにも迷子が若干一名。

 赤い服を身に纏った、クーデリアだ。

 

「あれ?クーデリアさんじゃない。どうしたの?こんな所で。」

 

 途方に暮れていた彼女は、黄色い服の少女を見て、思わず顔がゆるんでしまった。




 クーデリア短くて済みません。次回、【ハンマーヘッドが来る】お楽しみに!!
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