「俺とあの義足野郎とジオンの戦車野郎だけだとは思わなかったけどよ、まさか、お前らが来てるとはな。」
スローなジャズが流れるアトラスのコクピットの中で、イオはそう、二機の百錬に話しかける。
「ええ。マルバのブタから聞いたときは驚きましたよ。」
そう言う金髪の少女はナンシー・シャテンバーグ。薙刀装備の百錬に乗る彼女は、サンダーボルト宙域で命を落としたはずだった。
「で、今はタービンズのメンバーってわけか。」
「一応。ですよ。」
そういうそばかすが残るあどけない顔のツインテールの少女。つやのある絹のような黒髪と白い肌はアジア圏の人間の証。
「
「はい!! お久しぶりです、イオ先輩!!」
メンバーの中でもひときわ年齢が若く、そして活発な、戦争を一切知らないペーペーだった。にもかかわらず、最後までしぶとく生き抜いた少女だ。
「私、南洋同盟のテロに巻き込まれて、気が付いたら……。」
「なるほどね。で、それがお前らの機体か。」
「はい!!」
「兵装をカスタムした百錬です。」
「で、俺と戦うって?」
ドラムスティックを鳴らしながらそう問いかけると、
「見てください、イオ少尉、」
「私たちの成長を!!」
と、薙刀とロングライフルを構える。
「ハッ!!」
イオはスティックでプレーヤーを操作する。流れる曲はジャズの名曲、テナーマッドネスが流れ出す。
「いいぜひよっこども!! どれだけ成長したのかテストしてやる!!」
そう言うと、無遠慮にレールガンをぶっぱなす。
「うわっ!?」
「キャッ!?」
とっさに躱す二人に、サブレッグでイオは肉薄してくる。
「ッ!?」
ナンシーがとっさに構えた薙刀で、イオのヒートサーベルを防ぐ。
「ちょっ、イオ先輩!?」
「どうした!? 俺たちは敵同士だぜ? 殺す気で来い!!」
その笑みに、ナンシーも獰猛な笑みで返す。
「そっちがその気なら、容赦しませんよ!!」
「あとで泣いても許してあげませんからね!!」
瑠が放った狙撃中の弾丸を、素早くかわす。
「いいねぇ!! ペーペーの頃からセンスはあると思ってたが、いい狙撃だ!! だがなぁ!!」
サブレッグを使った不規則なジグザグ軌道で瑠に照準を絞らせない。
「くっ!!」
「生憎俺は、スナイパーって職業が大嫌いなもんでね!!」
肉薄するが、
「ナンシー!!」
「お任せ!!」
「チッ!!よく見てやがる!!」
そばに控えていたナンシーの振るう薙刀を回避。さらに、
「これでっ!!」
左手に構えたライフルから弾丸を放つ。
「当たらねぇ!!」
それを避けてアトラスのアサルトライフルを発射するが、二人は散会して狙いを絞らせない。
「いいねぇいいねぇ。あのひよっこどもが成長してるじゃねぇの!!」
複雑な軌道を繰り返して、狙撃と連射を回避しつつ、そう叫ぶイオ。
「そこですっ!!」
しかし、ナンシーの放ったライフルにマウントされたグレネード弾を、瑠の狙撃が撃ち抜く。
「うおっ!?」
至近距離の爆発に、思わず体制を崩すイオ。
「頂きッ!! シーサーペント!!」
「うおっ!?」
そして、ナンシーが伸ばした何かが、イオのシールドに張り付き、電流を流す。とっさにシールドをはがすことで、左腕のパワーダウンで済ますことができた。
「そこだ!!」
さらに、ナンシーの百錬が、薙刀をもって襲い掛かる。
「くっ!!」
右手のサーベル一本ではリーチもパワーも足りていない。
「そこっ!!」
「ちいっ!!」
さらに、瑠の機体からの援護射撃が飛ぶ。サブレッグを利用することで辛うじて避けるが、ナンシーの押しに耐え切れず、アトラスが体制を大きく崩した。
「もらったアァァァ!!」
「まさか…………!!」
薙刀を追撃で振るってくるナンシーに、イオは目を見開いた。
「まさか、ここまで俺を楽しませてくれるとはなぁ!!」
サブレックを利用した回転で薙刀の一撃を回避。と、同時にナンシー機の両腕を切り落とす。
「なっ!?」
「ナンシー!?」
そのまま動きが止まった瑠に肉薄し
「隙ありィ!!」
「え、」
狙撃中と頭部を破壊し、そのまま蹴り飛ばす。
「さて、まだ続けるかい?」
不敵な笑みを浮かべるイオ。それに、少女二人は、
「まったく、イオ先輩には、」
「敵わないなぁ。」
と、苦笑した。
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「で、こうなったと。」
そして、イサリビに帰還したイオに待っていたのは、タービンズと交渉成立した。という連絡だった。実は、名瀬も、ファントム・ウルフも、彼らの実力を確かめたかったそうだ。
「……なるほどね。」
イオは、悪い笑みを浮かべているHKBのケイジと、ファントム・ウルフのコウを見る。
「俺たちは…………アンタらの手のひらってわけか?」
にらみを利かせるオルガに、
「ごめんね~。こうでもしないと認めないって、名瀬に言われちゃってさ。」
「ま、八百長疑われないために俺たちを雇ったのは正解だったな。」
金をもらえば何でもするからな。と、そう付け加える。
「ま、コイツらとは、マルバより旧知の仲だったからな。」
名瀬はそう言う。
「…………今回の損失は?」
ダリルの問いには、
「ああ。マルバには体で払ってもらうさ。」
「うわぁ。」
その言葉にアトラは少しばかり同情した。ヤクザ組織の【体で払う】なんて、マルバはあの脂肪とは別れを告げることになるだろう。
「お茶です。」
と、今度は褐色肌の女性が入ってくる。
「「「「「…………。」」」」」
その席にいたダリル、イオ、オルガ、ビスケット、アトラ、クーデリアは出ていく女性を眺めている。それを見た何故は、
「ん? 何か気になることでもあるのか?」
と、首をかしげる名瀬に、
「いや、さっきからアンタ以外の男を見ないもんでな。」
と、イオが言うと、名瀬はさも当然というように、
「ああ。だってここは、俺のハーレムだからな。」
「「「「「「は?」」」」」」
一同、固まる。イオもダリルもオルガも唖然とし、クーデリアとアトラに関しては顔を真っ赤にしている。因みに先ほどから終始無反応だった三日月は、
「ねぇ、ハーレムって何?」
と、質問して、顔を真っ赤にしたアトラに吹っ飛ばされていた。
「ハハハッ。なんだ? もしかして照れてんのか?」
笑う名瀬に、ダリルが、
「えっと、ハーレムってのはその、俺らとアンタの言葉の認識が違うとかじゃなくて、ここのクルーは全員アンタの奥さんってことか?」
「そうだな。戸籍上はね。」
「…………。」
今度こそ固まるダリル。それもそうだ。彼のようなオールディーズが趣味の
「ま、マジかよ…………。」
イオもこれには思わず苦笑いだ。
「まぁ、何はともあれ、これからよろしくな、鉄華団。お前たちは正々堂々戦って、テイワズへの切符を手に入れたわけだ。歓迎するぜ?」
名瀬は、そう言って笑みを浮かべた。
今回短めですみません。