今回、なんかいろいろテンション可笑しい状態で書きました。今は後悔も反省もしていません。どうぞ。
「見えてきたよみんな。アレが歳星だ。」
と、ケイジが戦艦内にアナウンスをかける。船外カメラの後継が見えるテレビやブリッジ、窓などからいろいろな人がそれを見に来た。
「これが……歳星……!!」
「おいおい、いくら何でもデカすぎだろ!!」
サンクチュアリも巨大だが、それ以上の全長を誇る歳星にイオとダリルも唖然とする。
「スゲェ!! でけぇ!!」
「おいやめろって、みっともねぇだろ。」
と、子供に交じってはしゃぐシノとそれを抑えるユージン。
「凄い……。」
「確かに、デカいね。」
圧倒されているアトラに同調する三日月と、各々が反応を示す中、この船は歳星へと近づいていった。
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「それじゃぁ大人組は、交渉頑張ってね~。」
と、のんきな声を出すケイジ。
「ああ。これくらいは、俺達の力でやり遂げて見せるさ。アンタは……。」
「ああ。観光案内なら任せてよ。このテイワズの本拠地、移動する小さな星ともいえるような歳星には何度か来てるからね。」
と、手をひらひらふるケイジ。
「それじゃ、いってらっしゃ~い。」
というケイジの声をバックに、彼らはテイワズのトップ、マクマードの邸宅へと向かっていった。
「さてと……それじゃぁ、君たちは今のうちにいろいろ見てみよっか。」
と、ケイジが言えば、鉄華団の子供組の面々ははしゃぎだすのだった。
「イオ先輩はこっちですよ。」
「色々積もる話とかありますもんね~。」
にこやかにそう言うナンシーと瑠。イオはこの二人に捕まったのとあのそそっかしい性格で何かしでかされては困るため、落ち着いたダリルを交渉役の一人に引っ張ってきていた。
「それじゃあお前ら、このくじを引いてくれよな。」
そういってレコが用意したクジを引き、引率を決めることに……
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「で、アンタらがパイロットか。」
そこから少し時間が流れ、マクマード・バリストンの邸宅、その書斎。鉄華団は、タービンズの兄弟組織として、テイワズの傘下に下ることが決定した後、三日月とダリル、そしてクーデリアが残った。
「こんなガキが、タービンズの実力者とってのも驚きだが、」
と、大柄な初老の男、マクマードはそう呟いてダリルの方に目を向ける。
「アンタのそれは、名誉の負傷ってわけかい。」
「……ああ。この義手義足は俺の誇りだ。」
マクマードの目には、三日月に対する侮りも、ダリルに対する哀れみもない。
「二人とも随分と良い目をしている。いっぱしの、いや、それ以上の戦士の目だ。」
「……戦士か。」
そう言ってダリルは苦笑した。
「おや、何かまずかったかい?」
「いや、何も問題はない。ただ、望んでこうなったわけじゃない。という話さ。」
「まぁ、そりゃぁそうだろうなぁ。」
と、ダリルの言葉にそう答えて息をつくマクマード。
「誰だってそうさ。望まない結果になる奴なんて星の数ほどいる。」
「…………。」
「アンタもそうなの?」
無言でいるダリルとは違い、三日月はそう問いかける。
「……そうさなぁ。確かに今の座には満足しちゃぁ居るがな、あの時ああしてれば、この時こうしていれば、そう思う事なんてごまんとあるぜ。」
「じゃぁ、俺達と違うね。」
「ん?」
三日月の言葉に、マクマードは眉をひそめる。
「俺たちは満足なんてしてないから。後悔はしないなんてことはないと思うけど、まだ満足できるところまで、走ってるところだから。」
「いいねぇ、その目。」
その声に嬉しそうに笑みを浮かべるマクマード。
「ウチの専属の技師に声をかけてやる。武器の新調に期待の調整、出来る限り叶えるように言っておくぜ。」
「ん。ありがと。」
三日月はそう彼に礼を言う。一方でダリルは、
「なら頼みがある。」
「ん? なんだ?」
「俺の、サイコ・ザクのシステム周りは触らないでくれ。」
「……お前さん、ウチの腕を疑ってんのかい?」
マクマードが顔をしかめ、声が一段低くなる。ただいるだけで体から漂っていた覇気が、ひしひしと放出される。もしこの場にイオがいたら、ダリルの腕が義肢では無かったら、きっと汗をかいていただろう。
「そういう訳じゃない。」
「なら何故だ?」
「あれはシステム周りが特別だ。それに……。」
ダリルは口元に触れる。あの日、出撃前に約束とともに交わしたキス。その感触は今でも鮮明に思い出せる。あの、愛する人との時間は、たとえ時空が二人を隔てても、
「触れられたくないんだ。大切な物だから。」
「……そうか。」
とだけ言うとマクマードは、あれだけ放出していた覇気を納めた。
「ならそう口利きしておいてやる。そうだ、」
クーデリアとはまだ別で用件がある。それを話し合うからと出ていこうとした二人を、マクマードは呼び止めた。
「今度はもう一人のパイロットも連れてきな。よっぽどの非礼がない限り俺は目くじらなんざ立てないからよ。」
どうやら、彼らの思惑は見透かされていたようだ。その言葉に三日月は頷き、ダリルは苦笑して外へと出ていった。
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一方、火星から地球への正規航路、ギャラルホルンの鑑査船では、
「おっすガエリオ、傷の調子はどーよ?」
と、扉を開けてブリッジに来た、頭に包帯を巻いたガエリオをノエルが出迎える。
「かすり傷だと言ってるだろう。それより、お前のその服装はどうなんだ。」
「んー?」
というのも、彼の服装はオレンジのけばけばしいフードに口元を隠すプレート、そしてイエロー地の衣服に黒のフリルのついたミニスカと、どう考えても女性な服装をしていたのだ。
一応彼はギャラルホルンに登録されている性別は男性だし自覚する性別も男性であるとだけ銘打っておく。
「別にいーだろ男が女の服着たって、こーいうのヘンタイオヤジは好きなわけだし。」
その恰好でプラプラと足をゆするノエル。ブリッジの操縦士たちはたとえノエルのドコにナニがついていたとしても二人の方向を向かないように必死である。
もともとノエルの顔立ちは下に履くもので第一印象が変わるくらいに中性的だ。こうしてみると愛くるしい活発そうな少女にしか見えない。だが、ガエリオが言いたいのはそういう問題ではない。
「何で任務中に私服なんだ!! お前らも!!」
そう、このブリッジの面々、全員が私服姿なのだ。
「おやガエリオ、聞いていないのかい?」
と、これまた小洒落たアクセサリーを身にまとった中国服姿のリーヴァルが現れた。
「何をだ?」
すると彼は笑みを浮かべて、
「今日はギャラルホルンの私服デーだということを。」
「私服……なあぁ!?」
私服デー。それは固い規律のギャラルホルンの中でガスがたまってしまわないよう、私服で出勤して軍人たちの中でコミュニケーションをとり結束を固めることを目的とした、一日私服で出勤する日だ。
この日を忘れて制服で来たものはイジられる。センスのない服を着てきた者もイジられる。センスのいい私服を着てきた者だけが、モテる。
よって、ほのぼのとした空間でコミュニケーションを確立するのが目的だったこの日はファッションセンスの有無を問われるサバイバルと化していた。
「「やーい制服が私服ヤロ―」」
「ふざけるなお前らこんな時だけ息ぴったりになりやがって……!!」
前後からリーヴァルとノエルにあおられて悔しそうにするガエリオ。
「そうと知っていれば何かしら持ってきたのに……!!」
残念なことに今のガエリオが持っているのは外域用のスーツとこの制服だけだ。この後監査船では、しばらく、ガエリオの屈辱がこだましたらしい。
「はー。それにしてもマクギリスのヤロ―。休暇でどっか行きやがって。」
せっかくアイツの私服姿も拝んでやろーと思ったのによー。
と不機嫌そうなパネルでアピールするノエル。
「このタイミングで休暇なんて不思議な話ではあるけどね。大方どこかで何かイタズラでも仕込んでるんだろうさ。」
腕を組んでそういうリーヴァル。
「イタズラ、ねぇ。」
散々いじられた挙句、『制服王』と書かれたカラフルなタスキを駆けられたガエリオがそうボヤく。
「そういえば奴は信用できるのか?」
ガエリオの言うやつ、とは火星からの出立の時、鉄華団を裏切ったせいで脱出ポットに放り込まれて送られてきたトド・ミルコネンだ。
「どっかの海賊を使うとか言ってたよな~。なんだったっけよ。ブルドッグ?」
「ブルワーズじゃないかい?」
「そうだよそれだ!! どうすんだよ?」
リーヴァルにそう問いかけるノエル。
「問題ない。すでに手は打ってあるよ。」
そう言って微笑むリーヴァルの笑みに、ガエリオは、
「おお、これは海賊連中には同情だな。」
と苦笑した。
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一方舞台は変わって地球、ギャラルホルンの本拠地である海上に浮かぶギガフロート、ヴィーンゴルーヴ。その総司令官でありマクギリスの父、イズナリオ・ファリドは、そのヴィーンゴルーヴの指令室で書類を読んでいた。
「…………。」
書類の内容は、鉄華団に関する報告書。それを机の上に置き、右手の人差し指で机をたたきながらしばし考えこんで、立ち上がった。
そして、本棚から数このファイルを半分だけ他の本より出るように引っ張る。
そして最後に一冊の赤い本を押し込むと、スイッチが入る音がして本棚が開いた。隠し通路だ。
「…………。」
その奥へ、杖を突きながら無言で入って行く。
「む、」
階段を下りた先で出迎えたのは、一台の狼……型のロボットだ。細い尻尾のようなユニットが揺れ動いている。
『何をしに来た。』
そのロボットは敵意を隠すことのもせず、赤い頭部ユニットを光らせながらそういう。
「……躾が成っていないな。」
その犬に、そう一瞥してから、奥へと進んでいく。そして、スイッチを入れた。
薄い明かりがつき、そこに見えたのは、異様な人間たちだった。いや、
『これはこれは。』
すると声がする。薄明かりがついた中でも一際暗い、一番奥の牢獄だ。その中から現れたのは、黒のボディスーツに身を包んだ女性だ。顔は後頭部も覆うフェイスマスクに覆われて髪すらも見えない。
そのフェイスマスクの右半分には、機械が複数結合されたような大きなカメラアイがキュルキュルと音を立てている。
『一生をこの薄暗い世界で朽ちていくと思っていたところに思わぬ客人が来たものだな。』
両手の手錠に鎖付きの足枷でつながれた彼女は一際拘束が厳重だ。
『情の無い鬼がここに何をしに来た。』
そう言う彼女の声からも、イズナリオに対する憎悪がありありと感じる。
「最後の任務だ。」
彼女の質問に答えるようにそう言って、牢屋の横にあるディスプレイに触れてボタンを操作する。すると、鉄格子が開き、彼女の手錠と鎖が取れた。
『……最後の任務はここでゆっくりと朽ちていくことではなかったのか。』
カメラアイをキョロキョロと動かしながら、女はそう言う。
『貴様に人並みの情があるとは思えないが』
「相も変わらず失礼な女だ。」
『貴様のような外道に対する礼儀など持ち合わせていない。』
吐き捨てるようにそう言う。
「何はともあれ、貴様たちはこの任務を成功させれば自由だ。」
「信用ならないわね。」
そう言ったのは褐色の女性だ。
「なんとでも言え。」
それにイズナリオはそう答え、
「任務は、クーデリア・藍那・バーンスタインとその護衛、鉄華団の抹殺。」
「それで自由とはな。」
そう言ったのは少女の側の男だ。赤と黒のボディスーツに口元以外を覆い隠す仮面。しかし、その奥からは敵意が感じられる。
「無論君たちには自由を確約しよう。」
それを意に介すことなく彼は言い、
「さぁ、さっそく取り掛かってくれ。」
そう言うと、イズナリオが来たのとは別の扉が現れる。イズナリオはそのまま、来た道を戻って行ってしまった。
『奴は嫌いだ。』
そう呟く犬型ロボット。
「誰だってそうよ。」
褐色の女はそう言って現れた扉に触れる。
「リリィ。あなたに
そう、体育座りをしていた少女に言って。
「あのオヤジが俺に命令をするほどだ。鉄華団とやらには期待が持てるな。」
スキンヘッドの男もそう言って出ていく。
「自由、ね。」
ぽつりとつぶやいて歩いていく少女。
『俺達には無縁だったものだな。』
そう言ってロボットもついていく。
「お前は自由を手に入れたらどうする?」
残されたフェイスマスクの女と白髪の男。男が彼女にそう問いかけた。
『決まっている。』
と、出ていきながら。
『あの男を殺す。』