「?敵が退いて行く……………。」
リーヴァルに逃げられたダリルは、次々と退却していく敵をいぶかしんだ。
『やぁ、無事みたいで何よりだよ。』
緑をベースにしたそのMSは、ダリルに語りかけて来た。
「お前は……………。」
『ヒヨリ・ソウだよ。傭兵部隊【ヘブンズ・ナイツ・ブリケード】のパイロットさ。』
「その機体……………阿頼耶識か?」
この世界のガンダムタイプ。その機体は、聞くところによると、神経にデバイスを接続する、【阿頼耶識システム】が必要。
奇しくも、リユース・P・デバイスと似ているのだ。
『そんなところまで…………まぁ、ボクのは最初期の阿頼耶識。それを独自に開発した奴だけどね。』
ディスプレイに映った男は、そう言う。
『そんな事より、キミも中々に疲れてるでしょ?行こうよ。』
そう言い、反転して、MSの手を向ける。
「あれは…………!!」
「マジかよ…………!!」
拡大されたディスプレイに映し出されたのは、白がベースになった、巨大戦艦だ。
流石のイオも、その大きさに目を奪われる。
『世界で6隻だけ生産されたスキップジャック級を越える超巨大戦艦。
【フロストヴィトニル級巨大戦艦】その名も、【サンクチュアリ】さ。』
『見つけたのはお兄さんなんだけどね~。』
得意げに説明するソウの回線に割り込んで来たのは、黒のコートに、ワイシャツ姿の金髪の男性だ。
それを見たコーラルは、
『撤退だ。』
『は?』
そう通信を入れた。
『奴らは
『りょ、了解!!』
コーラルの指示を受けた機体たちは、次々と退却していく。
「……………どうするの?オルガ。」
そう警戒する三日月の視線は、近くにいるレコのMSに注がれている。
「アンタらの目的は………………。」
画面に映っているのは、サンクチュアリのブリッジの様子。
ブリッジ内には、眼鏡の男性と、オレンジ色の奇抜なフードをかぶった少女。
二人が複座に座り、オペレーターを担当しているようだ。
中央の艦長席で足を組んで座っているのは、先ほどソウとダリルの会話に映った、金髪の男性。
一見ただのチャラいチンピラだが黒コートと、油断なく獲物を狙う狩人の様な瞳が、只者ではない雰囲気を醸し出している。
彼の隣に立っているのは、ワンピース姿の少女だ。年齢は、三日月達より若干上だろうか。ポニーテールに、気の強そうな瞳。そして、腰に差した刀が、力強い空気を身に纏っている。
『ああ、そう警戒しなくてもいいよ。お兄さんたちの目的は、君たちの護衛さ。』
「何のためにだ?」
『傭兵にそれを聞く必要が?』
オルガの問いに、そう答える。つまり、『雇われたからだ。』と言いたいのだ。
「クライアントは?」
『クライアントから、時が来てから教えろ。と言われててね。』
そうはぐらかす。
『このサンクチュアリは、他の戦艦と連結できる。一度話をしようじゃないか。面と向かって、ね。』
その言葉を拒否するのは得策じゃない。そう考えたオルガは、
「分かった。ミカたちを帰還させろ。イサリビとサカリビはあのデカいのの両横に展開。」
その声に、
「りょ、了解。」
とまどいながらも、鉄華団のメンバーは従った。
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「あ、あ、あ、やめろ、俺の船がぁ!!!」
一方、少し離れた宙域で、全面装甲に異様な改造の施された戦艦が、先ほどの戦闘のビデオを見ていた。
場面は、資源採掘用の小惑星にアンカーをひっかけ、反転して、速度を付けたままギャラルホルンのハーフビーク級に体当たりし、主砲の掃射で打撃を与えていたところだ。
この離れ業を称賛するより、自分の船の損害を気にするデブ。マルバ・アーケイは戦艦が激突した所で、
「ああああ!!」
と、絶叫を挙げた。
「うわっ、オッサンだっせぇ。」
それを見て、そうコメントを付けるのは、ぺろぺろキャンディーを舐める小柄な少女。
「そう言ってやるな。こいつには、浪漫よりも金なのさ。」
そう言うのは、白いサイバーコートの男だ。手には、ノートパソコンを抱えている。
「おいおいお前ら。こいつらは、俺のクライアントだからな~。そうあんまり言ってやるなよ。」
マルバにボロクソ言う二人をそうたしなめる白い帽子をかぶった、黒い長髪の伊達男。
「はいはい。わーってるよ。」
そう肩をすくめる少女。
「フン。機体の整備に行くぞ。リツ。」
「はいよ~。コウ。」
面白くなさそうに鼻を鳴らした青年は、そう言い、少女とブリッジを出て行った。
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「で、結局アンタらは何なんだ?」
サンクチュアリに移動したオルガは、金髪の男性をそう問い詰める。
オルガの傍にはビスケットと三日月の代わりにクーデリアとアトラが、金髪の男性の傍には、ソウと刀の少女がいる。
「順を追って説明しようか。俺は篠木・ケイジ。こっちは俺の助手の、千堂院・サラちゃん。」
ケイジは、そう言い、刀の少女を指した。
「千堂院・サラだ。よろしく頼む。」
少女、サラはそう言い、礼をした。
「お、おう。オルガ・イツカです。こっちはビスケット。で、ウチの給仕係のアトラと」
「クーデリア・藍那・バーンスタインと申します。」
オルガは、そう自己紹介し、ビスケット、アトラを紹介。クーデリアの紹介に移ろうとした時、彼女が遮り、自分で礼をした。
「まずは礼を言わせてもらいたい。アンタらのおかげで、命拾いした。」
そう言い、頭を下げるオルガ。それに倣い、ビスケットたちも頭を下げる。
「まぁまぁ、堅苦しいのは無しで行こうよ。」
しかし、ケイジはそう、オルガ達に頭を上げるように言う。
「それで、今回俺達を呼んだのって…………。」
オルガはそう聞く。
「いやねぇ、一つは、信頼してほしかったからかな?あと、これから世界に喧嘩を吹っ掛ける、クーデリア・藍那・バーンスタインと、それを守る君たちの顔を、拝んでおきたかったのがある。」
「そうですか…………。」
首に手を当てたまま、そう言うケイジ。
「さて、本題に移ろう。君達は、これからどうするつもりだい?」
ケイジは、彼らに、これからの身のふり方を聞いた。
「オルクス商会と言う後ろ盾は、ウチのギンが宇宙の塵に変えてしまった。後ろ盾のない状況じゃ、このまま地球行きなんて無理がある。」
「はい…………。考えはあります。」
その言葉に、オルガはそう頷いた。
「今俺らに必要なのは、デカい後ろ盾。オルクスなんか目じゃ無いくらいの。」
「ふぅん。で?売り込み先は?」
「…………テイワズです。」
「…………良い目の付け所だ。オルガ君。」
その言葉に、ケイジは満足そうに微笑む。
「はい。有難うございま…………。」
「で?」
緊張で固まるオルガに、追撃を駆けるケイジ。
「は?」
「君達は、どうテイワズに売り込むつもりなんだい?今から行くかい?門前払いがオチだよ。」
「………………。」
その言葉に、つばを飲み込むオルガ。その事は、自分がよく分かっているのだろう。
「それはまだ…………考えていません。」
「考えていない?」
その言葉に、ケイジのトーンが落ちる。オルガは自覚した。今俺は、この人に計られていると。この人に、心理戦で勝つには経験も力量も足りないと。
「考えは…………アテはあります。」
「聞かせてもらおうか。」
そう言い、鋭くにらみつけるケイジ。オルガは、蛇に睨まれる蛙の気分を味わった。
「俺達の戦力。俺達に出来るのは、戦うことくらいしか。けど、それだけは、絶対的な自信があります。」
ゴクリ、と唾を飲み、この答への返答を待つ。
ケイジは真剣な顔つきで、ジッ、と、オルガを見続けた。
「う~ん、サラちゃん、どう思う?」
すると、おもむろにその姿勢を解き、ソファにもたれ掛り、サラに指示を仰ぐ。
「え?私が、ですか?」
いきなり指されたサラは、一瞬テンパるが、
「そうですね…………。私は、アリだと思います。ただ、なら、一度テイワズにそれを証明する必要があるんじゃないかと…………。」
と、鋭い意見を言う。
「成る程ね……………。」
そう言い、目を閉じて考え込む。オルガは、自分達への返答を待ち、冷や汗を流した。
クーデリアやビスケットも、何も言うことが出来ない。
かくしてその返答は…………。
「いいんじゃないかな?」
肯定だった。
「確かに君たちの戦力は中々だ。俺は賛成するよ。テイワズにパイプを作る。俺達は手助けはしよう。」
「あ、ありがとうございま………」
「でも、」
オルガの礼を、手を前にして遮った。
「交渉のカードを掴むのは、あくまで君たちだ。その腕で、その知恵で、テイワズリーダー、マクマード・バリストンを頷かせてごらん。」
「………………。」
「俺達ヘブンズ・ナイツ・ブリケードは、君たちを応援しよう。よろしくね。」
その言葉と共に、彼は手を差し伸べた。
次回、ほのぼの日常回?【束の間の休息 1 】