魔法科高校の「大賢者(嘘)」   作:ギャングスタ

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※主人公は深夜によって精神構造を弄られています。


入学編7

 その次の日、「ブランシュ」に与している、正確には下部組織の「エガリテ」に所属している生徒が放送室を占拠するという事件があった。風紀委員会として招集されたけど、達也くんが力技で解決。カフェテリアで口説いて?いた女の子を教えてもらっていたプライベートナンバーで呼び出して確保。

 女の人のナンバーをもらってたことで深雪ちゃんが怒ってたけど、ボクは離れた場所で不干渉を貫いた。

 

 その後真由美ちゃんがその問題を起こした生徒たちと公開討論会をすることになった。二日後に。上手く押し付けられて良かったと思ってる。四葉として目立つなって真夜様に厳命されてるし。

 正直、その生徒たちの訴え──二科生に対する体制改善──だけど、生徒会に訴えても無駄なんだよね。強いて問題なのは生徒会に選ばれる人間に二科生を選べないってことだけど。

 

 ぶっちゃけ、生徒会なんて一科生という成績に問題のない(・・・・・・・・)外聞のいい(・・・・・)余裕のある(・・・・・)生徒がやるべきことで、一つの指標である成績が悪い生徒がやることじゃない。内申点にも関わってくるし、学校の顔になるんだから。

 九校戦や論文コンペのような、他校生と関わる際にできるだけ箔があったほうがいい。もし成績が凄く良くて、一科生に匹敵する二科生ならなってもいいとは思うけど、そんなの達也くんを含めて若干名しかいない希少種だと思う。

 

 その希少種に任せるか、最初から成績の良い、それこそ新入生総代であった人物と、その人物が認める生徒ならまだしも。九校戦にも選ばれないような、突出した何かがある人物じゃないと生徒会に選んでも学業に支障が出るだけ。

 そういう突出した何かがあるなら、一科生に昇級できるだろうし。一科生が魔法力を失ったとかで繰り上がった例はあるだろうから。まあ、差別の問題になるならそれを撤廃するってことなら賛成だけど。

 

 他の面については正直、どうしようもないんだよね。

 部活動で非魔法系と魔法系クラブで予算云々って演説してる人が廊下にいたけど、CADとかの機材のお金だったり、成績に応じたお金でしょ。それに非魔法系で本気を出したいなら、魔法科高校に来なければ良かっただけ。

 文武両道が無理なら、非魔法系競技で頑張るだけやり込んで二科生であることなんて気にせず熱中すれば良い。両道を選ぶか、一つの道を選ぶか。二科生ということを理由にするなら両道を目指せって話だし、一つの道を選んだのなら魔法のことなんて気にせず打ち込めば良い。

 そこに一・二の差別と魔法・非魔法系競技の待遇差という別の問題を合わせて語るならナンセンスだ。

 

 教員の不足は人材不足でどうしようもできない。国や学校側で決まっていることを、生徒会に言っても無駄。それをするなら国会に突撃しに行くか、魔法協会に書状を出しに行けばいい。

 やってることが悉くズレてるんだよね。だからこんなにも苛立つ。多分耳障りの良い言葉とかに操られてるんだけど。

 討論会が明日に迫った夜。ボクは自宅のソファで瞼の上に暖かいタオルを乗せて寝っ転がっていた。

 

「あっくん、大丈夫……?」

「だいじょばない。学校の至る所に、無理矢理変えられた思想と悪意でごちゃ混ぜになってるんだもん……。さっき戻したし」

「魔法のオンオフってできないんだっけ?」

「普段はできてるんだけど、過剰な悪意とかは身を守るために感じ取れるように、本家で訓練させられて。今回みたいな場合だと、そこにいるだけで感じちゃうんだよね……」

 

 最悪の気分だった。悪意に塗りつぶされた悪意。偽善で誤魔化した本心。心を弄って本来の色を奪って。他の人も蹴散らそうとする汚い心。

 それを感じ取っちゃって、家に帰ってからずっとこうしてる。ご飯も食べていない。あずちゃんにはご飯を食べてもらったけど。

 まさか、不測の事態に対応するためにって受けた訓練がこんな形で裏目に出るなんて。

 ああ、いつもの、「精神の安定化」ができない……。

 

「……差別は、悪いことだとわかってるんだけどさ。これは、オレ(・・)が持ってる側の、花冠(ブルーム)だからかもしれないけど……。魔法科高校に何を求めているんだろう?魔法の専門学校で、魔法の実技や成績が求められているのは当たり前なのに……」

「……うん。でも、マインドコントロールって問題もあるから」

「そうだろうけど……。差別を訴えてる人たちが求めているものは劣等感じゃなくて、魔法以外だったら何でも良いから泡を吹かせたいっていう憎しみなんだよ……!魔法を伸ばそうとか、魔工師としてのスキルを伸ばそう、防衛大に入れるような実戦形式の在り方を鍛えようってものじゃないんだ。見下すような連中なんて全員、魔法師としての力を失うような地獄を見ればいいっていう自滅願望ばっかり浮かべてる……!!」

「うん。……うん」

 

 オレの泣き言に、あずさが手を握ってくれる。

 その暖かさが、オレの心を揉み解すように。

 

「わたしも、持ってる側だから。本当の意味で二科生の人たちの心はわからないと思う。辛い思いをいっぱいしてきたと思う。それを見過ごしたくはないし、できることなら変えたい。けど、わたしたちにそんな力は、ないよ?」

「そうだね……。無理矢理力で変える方法もあるけど、そんなの、人間のやることじゃない……」

「そんなこと、しないでほしいなあ。わたしは誰かのために怒れる、今のありのままのあっくんも好きだけど、皆を笑顔にしちゃうちょっと幼いあっくんも好きだよ?」

「……明日には、戻しておくから。今日はこのままでいい……?」

「いいよ。ゆっくり休んで」

 

 あずさって普段は思わないけど、やっぱりオレより一つだけ歳上なんだよな。「ボク」にとって11歳より上のことは未知のこと。そしていつもなら、基本表に出すのは「ボク」の表層。そうでもないと魔法を暴走させそうだし、悪意を排除できる力に溺れてしまう。

 無駄にプライドの高い、一科生と同じになってしまう。

 だから普段は、オレを沈めて幼い精神性を表に出すことで、悪意に鈍くしている。

 

 そうでもしないと、達也関係で怒って、呪文を使いかねないから。オレを匿ってくれている四葉の人間にも、達也をバカにする人間に対して暴力に訴えかけないから。

 本当に、深夜様に処置を施してもらっていて良かった。

 この、「力に溺れかける精神性」を普段は抑えられるようにしてもらって、良かった。

 そうじゃなかったら、「ブランシュ」をただただ潰すことになっていただろうから。

 

「あら?タイミングが悪かったかしら?」

「ま、真夜様!?」

 

 あずさが素っ頓狂な声をあげるけど、リビングに置いてあったテレビに真夜様が映っていた。秘匿回線で割り込んだのだろう。

 すぐにオレたちは立ち上がる。

 

「失礼しました、真夜様。それで、どのようなご用件でしょうか?」

「構わないわ。伝えることが一つ。『ブランシュ』が明日、第一高校に攻め込むらしいです。安心なさい。その襲撃の前に、四葉で潰しますから」

「ありがとうございます」

「その代わりと言ってはなんですけど。高校に入り込んでいる間者はこちらでは対処できません。おそらくテロ活動をしていると思ってもいないのでしょうけど」

「テロ……」

 

 あずさにはちゃんと伝えてなかったから、そんなことにまで話が進んでいることに驚いたのだろう。いくら魔法科高校に通っているからって、テロの標的になるとは考えていないだろうから。

 「ブランシュ」に気を付けてとしか言ってなかった。

 本格的に関わっているのは「エガリテ」の面々だけ。それだってテロをしている感覚はない気がする。甘美な夢想に溺れているだけ。

 

「新さん。第一高校で特に気を付けないといけない人物は何人?」

「二人です。その二人以外は、簡単な暗示や、ただの言葉だけで活動しているようです。三年生の司甲は特に酷いです。二年生の壬生沙耶香も度合いは酷いですが、まだ処置できるかと」

「三年生の方は『ブランシュ』に義理の兄がいるから、でしょうね。そこまで変えられていると、未熟な新さんでは無理でしょう?」

「……壬生沙耶香の方は、こちらでどうにかします。お手を煩わせて、申し訳ありません」

「謝罪の必要はありませんよ。あなたたち……新さんとあずささんのためですもの。それに新さんに求めているのは魔法ではなく、呪文ですから。……切り捨てる必要がある人物もいると、学びなさい。そこから先、立ち直れるかは他人次第ではなく、自分次第なのだから」

「はい。ご当主様」

 

 オレたちは深く、頭を下げる。

 凄く心配をかけさせているし、手間もかけている。オレもそうだけど、達也と深雪のためにも介入する理由があると踏んでいるんだと思う。その上で魔法師としては未熟もいいところのオレじゃあ、一人を助けるのが精一杯。

 それも、そこまで進行してしまった精神汚染された人物を、四葉で庇う理由が無い。あずさのように優秀じゃないただの二科生を守る理由も意義も無い。だから、同じ学校の、あずさと同じ学年の女子生徒くらいは助けてあげろという真夜様の慈悲。

 

 理由がなければ四葉は動けないし、このまま行けば対処は法による裁判か、今回後手に回っている七草か十文字の手に委ねられることになる。

 そうなったらどんな問題になるか、彼女もどうなるかわからない。その上、第一高校には汚点が残る。次の生徒会長になるあずさにとっても、大きなマイナス点になってしまう。現生徒会だという点も含めて。

 司甲の方は義兄のせいだと言い逃れができるけど、壬生沙耶香の方は何も言い逃れできない。だから、内々に対処しろってこと。

 四葉が「ブランシュ」を潰す正当性としては、「ブランシュ」の後ろに四葉と因縁深い大漢がいるから。そうでもなかったら四葉は動けない。領域としては七草と十文字の管轄なのだから。

 

「報告は以上です。二人とも、五月のお休み、待っていますからね」

 

 オレたちが返事をする前に通信が切れてしまう。一息ついた後、オレたちはソファに腰をかけた。

 

「……やっぱり、真夜様って凄いね。わたしたちじゃ解決できないこと、こうして解決しちゃうんだもん」

「けど、できないこともあるってはっきり言ってたよ。明日、朝早く学校に行かないと」

「無理、しないでね?」

「しないしない。ある人に助けてもらう予定だし。……あー、でも。今日はあずさに甘えたいかな?」

「いいよ。一緒に寝る?」

「それはいつものような……」

 

 とにかくお風呂にゆっくりと浸かって、この前とは逆にオレがあずさに甘える形になった。こういうのも悪くないと思いながら、眠りに落ちていく。

 

 

 翌日の朝。ボクは早めに登校して二年生の教室の前で待っていた。あずちゃんは討論会の準備で、ギリギリまで教室に来ないらしい。ボクは風紀委員の腕章をつけて待っていると、目的の人物がやってきた。

 それまで他の生徒に注目されたのは困ったけど。見覚えのない人物が、風紀委員として教室の前にスタンバッていたら警戒もするだろうけど。

 

「桐原先輩。風紀委員の相田新です。朝早く申し訳ありません。『先日の件で』確認したいことがありまして」

「あー……。朝早くご苦労さん?別の場所の方が良いか?」

「既に空き教室を抑えています。そこで少しお話をと」

「わかった」

 

 こう言えば周りは、達也くんによって止められた部活動勧誘週間の話だと思ってくれる。あながち間違ってないけど。

 近くの空き教室に行き、魔法の効果を確認する。防音の魔法を使ってるけど、正直自信がない。

 

「それで、話ってなんだ?風紀委員は関係ないんだろ?」

「はい。先輩にお力添えを頂きたくて」

「……何で俺なんだ?」

「壬生沙耶香さんを助けるためです」

 

 そう言った瞬間、ボクの両肩を掴む桐原先輩。力込められすぎて痛い。

 この人の心の中を見ていないけど、やっぱりそうかと確信が持てた。例の一件による釈明でもしかしてと思ってたから、ちょうど良い。ボクとこの人で目的が一緒だから。

 

「壬生を助けるってどういうことだ!?やっぱりあいつには、何か裏があるのか!?」

「お、落ち着いてください。まず、ここからは他言無用です。ボクも独自に動いていますので、正直十文字会頭や真由美ちゃん、それに摩利ちゃんにバレたら大目玉です。今の防音の魔法も勝手に使ってます。バレたら、ボクは退学になっちゃうので」

「……わかった。誰にも言わない。お前の恋人の、中条にも言っちゃダメなんだな?」

「あ、あずちゃんなら大丈夫です。知ってるので。でも、時間がないのであずちゃんに相談しても無駄かと」

「そうか……。約束は守る。話してくれ」

 

 ようやく肩から手を離してくれた。それだけ壬生さんのことが大事ってことだろうけど。ボクがあずちゃんを想っているように。

 

「まずボクは、BS魔法師で得意な魔法は系統外魔法である精神干渉魔法『心色判別(カラーズハート)』というものです。それで相手の感情だったり、精神汚染などを見抜けるんですが……。壬生さんは重度の精神汚染状態です」

「ッ!やっぱりか……!くそったれ!」

「その精神汚染も、きっかけがないと成功しないものです。ただ、都合の良いように何重にも魔法を施したのか、記憶にも変調が見られます。それでつけ込まれてしまった理由ですが……。『とある一科生に剣の腕についてすげなく対応されてしまったため』です。もっと詳しく言うと、魔法込みの剣術と、純粋な剣の腕で勝負したら結果は変わるけど、壬生さんは剣道部として剣の腕で勝負したかったらしくて。その一科生は剣術でなければ負けるからと断られたようですが」

 

 摩利ちゃんだけど。摩利ちゃん、剣術ならそこそこ有名な人らしい。エリカちゃんの道場に通っていたとかなんとからしいんだけど、そこが剣術道場だから魔法も鍛えていて、純粋な剣の腕では壬生さんの方が強いんだとか。

 壬生さん、剣道で全国二位だったみたいだし。

 

「誤解するように、壬生をたぶらかしたクソ野郎がいるってことだな……!?」

「はい。で、ですね。そのたぶらかしたクソ野郎は最近の騒動を主導していまして。今日の討論会も動くみたいです」

「何が目的なんだ?」

「ボクは警察でも十師族でもないのでなんとも。表向きは差別撤廃らしいです。そういう耳障りの良い言葉で幻惑させて囲ったのかと。壬生先輩はかなり精神汚染されていますので、剣の腕を買われたとか、たまたまその『すげなく対応』の場面を見ていて使えると思われてしまったのかは不明ですが……。そこまでは、心の中を見ていません。この力、好きじゃないので」

 

 ボクが伝えた言葉を聞いて、桐原先輩は歯ぎしりをしている。好きな人がそんなことに巻き込まれているのなら、そうなるのも当たり前だと思う。

 オレだったら、本当にその悪人を裁きに行ってると思う。なまじ呪文なんて力があるからタチが悪い。

 ……おっと。今は抑えないと。

 

「それで、解決方法です。相手のコンプレックスを粉砕してしまえば精神汚染も止まります。とはいえ、精神汚染について言及せず、相手の望む形で事態の解消がこういったときに取れるベストな対応なんですが……」

「剣で、あいつが自信を持てるような勝負をしろってことか?あいつが考えている、一科生と戦って」

「はい。そういう意味では先輩は最適だと思います。剣術部のエースで一科生。そして、本音で壬生先輩を心配している人がきちんといると。ありのままのあの人を見ている人がいるのだと伝えればきっと、精神汚染は解けるはずです」

「わかった。でも今日動くとして、あいつは討論会に参加しないのか?」

「しませんよ。討論会なんて目くらましでしょうから。この学校の戦力を講堂に集めるための餌です。壬生先輩はおそらく戦力として当てにされているので、何かの実行部隊でしょう」

 

 ここら辺は真夜様からもらった情報を元に話している。相手の目的も、討論会を行なっている時にどの辺りにいるのかもわかってるけど、その情報源を言えないからあまり詳しくは話せない。

 

「ボクは今日、講堂の外を警戒します。それで壬生先輩を見かけたらそのまま張り込んで桐原先輩に伝えます。なので、ナンバーを教えてもらっていいですか?」

「ああ。頼むぜ、相田。あいつを止めるためだったら、俺はなんだってしてやる」

 

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