魔法科高校の「大賢者(嘘)」   作:ギャングスタ

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九校戦4

 九校戦が始まった。一日目は早撃ちを決勝まで。それと波乗りの予選。どっちも本戦だけど、ボクは今日はオフ。担当選手もいないからサブエンジニアとしての仕事もなし。だから一高のテントに詰めていた。

 あずちゃんは女子スピードシューティングと千代田先輩以外の女子アイス・ピラーズ・ブレイクを担当。あずちゃんの補助はアイス・ピラーズ・ブレイクだけ担当しているからボクは休み。

 

 達也くんはレオくんたちも来ていたから会場に行ってる。代表選手じゃないとテントには来られないし、友達を優先したらそうなる。それに人がいっぱいいると悪感情多そうだし。だからテントの方が都合が良かったりする。

 ここでならどこの試合も確認できるし、下手したらここに襲撃をかけてくるかもしれない。何が起こるかわからないって怖いなあ。

 外も警戒しながら競技を見るけど、早撃ちは真由美ちゃんが圧勝。下馬評通りの結果だ。CADも本人の体調も問題なかったんだから想定通りってところだろうけど。午後の決勝も大丈夫だろう。男子も無事に勝ち上がってる。

 波乗りは女子が午前中。摩利ちゃん含む全員が予選突破。これも想定通り。午後からの男子も何もなければ良いけど。

 

 昼食もテントでお弁当を食べながら、達也くんを除くエンジニアチームでCADや選手に影響がないか確認をしていた。昨日のバラシのせいで性能が若干上がったからその影響はないかっていう話し合い。達也くんは昨日の深夜に賊による襲撃があったから所属する軍人さんたちとお昼らしい。

 やっぱり動いてるんだよね。ああ、表向きでは知り合いにお昼を誘われてしまったためとしている。軍のことは言えないし、達也くんが担当した選手は今日いないから外していても大丈夫ってことで了承。

 

 影響についてはどの選手に聞いても問題なし。むしろ調子は最高潮とのこと。というか、CADに不具合があったんだから練習よりも成果が出るのはおかしなことじゃないんだけど。

 真由美ちゃんとはんぞーくんも一度テントに顔を出したんだけど、真由美ちゃんも調子が良いと大絶賛。はんぞーくんもさっき練習してきたら自己ベストが出たとか。練習だからそこに妨害が入ったらタイムは変わるんだろうけど。

 

 なんか一科生って普段使ってるCADが高性能すぎて、スペックが低い競技用はこんなもんかと不具合を疑っていなかったらしい。実力が発揮できないのはそれが競技用の限界だろうと思っていたとのこと。

 あえて低スペックのCADを使う機会なんて少ないし、しょうがないのかもしれない。

 会議としては問題なしということで午後も見守ることに。早撃ちは結局男女で一高アベック優勝、波乗りも男子の一人を除いて予選突破。悪くない成績とは鈴音先輩談。

 

 二日目は女子棒倒しがあったのであずちゃんと五十里先輩と控え室に詰めた。とはいえ最終確認と細かい調整だけだからあまりやることはないんだけど。

 モニタールームには行かずに、すぐ調整できるように控え室にいる。ここでも一応試合は見られるし、試合が終わったら撤収もしないといけない。試合前の調整データを狙ってる可能性もあるからなあ。

 ホント、純粋に大会を楽しむこともできないなんて。大会前はそこまで楽しみじゃなかったけど、参加したら楽しみたい。それが悉く邪魔されたら嫌にもなる。

 

 棒倒しは千代田先輩が三回戦進出を決めた。これからは男子の予選の時間なので男子の担当エンジニアに部屋の引き継ぎをしてテントに戻る。何事もなかったのは良かった。これだけの観衆の中で事故を起こす気がないんだろうか。

 でもそれなら移動中のバスを狙って奇襲を仕掛けたりしないよねえ。どういう目的で妨害しようとしているのかさっぱりわからない。だからやっぱり警戒はしないといけないわけで。

 

 テントの中の雰囲気が重々しい。まさか何か妨害があったのかと思ったら男子クラウド・ボールの成績が良くないらしい。女子は真由美ちゃんが優勝したらしいけど、男子は決勝リーグまで残れなかったのだとか。

 桐原先輩でも勝てないのかー。結構レベルが高いんだなって感心した。正直九校戦って去年初めて見たくらいに興味がなかったから、あんまり他校生の実力はわかってない。去年も一高が勝ってたし、十文字先輩すごいなーって思ったのとルール把握でまともに試合を見れてなかったし。

 

「桐原先輩、お疲れ様です」

「おう、相田。悪いな、負けちまった」

「いえ、ボクなんて何もしてないじゃないですか」

「バラシやってくれただろ。そのおかげで優勝候補の三高の奴には勝てたんだが、その後の奴に負けちまってな。クラウド・ボールは下馬評が崩れまくって大熱狂してるぞ」

 

 優勝候補に勝てたなら凄くない?って思うけど、問題はポイントを取れなかったことだろうからなあ。話を聞いた感じ、悉く一高の相手は強敵ばかりだったらしい。潰し合って決勝リーグが面白みのない試合になってるとか。

 なーんか作為的な介入を感じるなあ。一高生全員に予選で強い人に当たるとか、ある?

 女子は真由美ちゃんが圧倒的だったらしいからポイントは問題ないらしいけど。

 

「大丈夫ですよ、桐原先輩。先輩が取れなかった分のポイントはどうにかなります」

「おっ。お前が新人戦で奪い返してくれるって?」

「いえ、それは期待しないでください。あずちゃんと五十里先輩が担当する棒倒しで女子が上位を独占するから問題ないです」

「はいっ!?いや、あっくん。確かにそうなってくれたらわたしも嬉しいけど……」

「予選見た感じ、大丈夫でしょ。千代田先輩は圧倒的だし、あずちゃん担当の二人も今日余裕あったし。同じ競技に出るボクが言うんだから間違いない」

 

 ボクが断言すると桐原先輩が爆笑してボクの背中を叩いてくる。

 え、何?怖いんだけど。

 

「そりゃあいい!俺の分も中条が頑張ってくれるのか!……彼女にだけ頑張らせて、自分は頑張りませんはなしだよな?」

「あー、はい。できるだけ頑張りますけど、本来ボクってあずちゃんと一緒でこういう試合って苦手ですからね?数合わせで選ばれたんで期待はしないでください」

「はいよ。数合わせってことは、お前が頑張れば俺の分もポイントを稼げるわけだ。任せたぜ、後輩」

「……はーい。じゃあ先輩。棒倒し、準優勝(・・・)してきます」

「そこは優勝目指せよ」

「現実見てるって言ってください。一条以外には負けません」

「言ったな?試合は見に行ってやる」

 

 あーあ、言っちゃった。

 なんとかなるとは思うけど。十文字先輩と千代田先輩には負けるけど、それ以外だったら練習でも良い試合をしたわけだし。干渉力って大事だなと思ったよ。

 ああ、でも。深雪ちゃんと雫ちゃんにも負けたか。あの二人が一年生としてはおかしいほど実力が飛び抜けてるんだと思うけど。逆に言えばあの二人レベルの他校生なんて十師族の一条くらいしかいないだろうって判断だけど。

 

 ボクのように実は十師族と関係ありますって学生はいるんだろうか。そんな人がいない限り準優勝は固いと思ってるけど。

 午後からはボクたちはテントで試合観戦。男子棒倒しは十文字先輩を筆頭に予定通り予選突破。

 その日も妨害らしい妨害はなかった。

 

 

 九校戦三日目。今日が終われば数日新人戦を含んでからまた本戦に戻ってくる変則的な日程。新人戦は本戦と比べてポイントが半分になるから圧倒的な差が出ないように大会側も調整しているんだろう。あとは、メインディッシュを残しておくというか。

 今日は棒倒しの続きとバトルボードの続きがある。ボクは女子棒倒しのサブエンジニアとして控え室で調整やらタオルの用意とかをしていた。いわゆる雑用と言ってもいい。

 本番前の調整ってあまりやることないんだよね。やることがないように前日までにセッティングほとんどしちゃうし。

 

 女子棒倒しは想定通り、千代田先輩の圧倒的な魔法とあずちゃんが調整したCAD効果で一高女子が上位を独占。

 快挙らしくてあずちゃんがピョンピョンしていた。可愛い。

 ホクホク顔で皆でテントに向かうとテントは昨日以上に騒がしかった。昨日のような慌て方ではなく、尋常ではない慌て方。まるで想定外どころか、青天の霹靂のような。

 

 そしてテントの中に入って知る、摩利ちゃんの事故。すでに運ばれて病院にはついているらしい。命に別状はないらしいけど、二人の選手が接触事故のままコースアウトしたせいでミラージ・バットに摩利ちゃんが出られないらしい。

 しかもバトルボードも準決勝での事故だったために、ポイントが全く入らない。稼ぎ頭が倒れた上にポイントが大誤算となれば慌てるのもわかる。

 

 いくらこっちが良いニュースを持ってきたとしても、これは酷すぎる。

 達也くんも部屋に詰めていて、ちょうどレースの試合を見返しているらしい。あずちゃんに断りを入れてボクも達也くんの元に向かう。今日のボクの担当は終わりだし、棒倒しは妨害が入りにくい競技だから大丈夫なはず。

 達也くんの部屋に入ってレースの映像を見るけど、不審なこと以外はわからなかった。

 

「時間を決めて水面を揺らすなんて呪文はあるのか?」

「そんな限定的な呪文はないよ。呪文って基本的にシンプルで、竜巻きを起こす、毒を治すとかそんなものだから。特技だってそんな小さい妨害をするなんて無理だろうし……。一応罠を仕掛けるジバリアって呪文もあるけど、それを第二レースで仕掛けるなんて無理だと思う」

「新関連の力じゃないってことか」

「ボクの知識にある呪文とかその他でも今回のことは無理だと思うよ。それを言えば七高の急加速もそう。身体能力を上げたり、ある一定の空間に効果のある霧とかは出せても、ボードの速度を上げるのは無理。そうなると、CADに細工とか?」

「だろうな。大会運営スタッフに渡す時に一度手を離れる。そこで仕込まれたと推測はできるが……手段がわからない。この水面の変化もだ。精霊魔法の可能性もあるか」

 

 精霊魔法とか古式魔法って雷童子を使う関係で一通り勉強したけど、全部は知らないなあ。それに古式の人たちって結構秘密主義だから知ってることが全部じゃないだろうし。

 

「新の魔法じゃ過去の映像からは悪意を感じられないんだな?」

「うん、無理。現場にいれば魔法を発動した瞬間とかに感知できたかもしれないけど。でも、大会運営スタッフにCADを渡す場所に張り込んでいれば次は防げる」

「悪い。頼むぞ。俺は精霊魔法の方面で探ってみる」

「あんまり根詰めないでよ」

 

 そう言って部屋を出る。

 やっぱり仕掛けてきた。しかもこんな方法で。本当に苛立つなあ。学生の大会にクソみたいな大人が介入して台無しにするとか。

 一高を貶めるためなら他校生も巻き込むとか、性根が腐ってる。何様のつもりなんだ。

 それに国防軍もしっかりしてくれないかな。本当に、嫌になる。

 

 あれだけの観衆の中で怪我したとなれば、ボクが呪文で治すわけにもいかない。摩利ちゃんには悪いけど、これが桐原先輩のようにあまり注目されていなければこっそり治せたんだけど。

 今日の競技は終わってしまった。明日からの新人戦で細工がされないように張り付こう。達也くんのサブにつくより細工がされないように検査場に詰めた方がいい。

 明日から一層注意するとして。遣る瀬無さが押し寄せてくる。

 次は、こんな悲劇を起こさない。

 

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