魔法科高校の「大賢者(嘘)」 作:ギャングスタ
九校戦が終わってすぐ。ボクとあずちゃんは四葉本家に来ていた。もちろんルーラを使って。時間もかからずに移動できるし、移動している姿を見られないから秘密の魔法にうってつけだ。一緒に移動できるのは手を繋いでいる人だけなので最大二人だけっていう制限があるけど大した問題じゃない。
最近オレが表に出すぎということで深夜様による精密検査を一日がかりで受けた。その間あずちゃんはまた分家のお姉様方に遊ばれていたらしい。
検査も終わって次の日。まだ集まっていた分家の黒羽姉弟と一緒にお茶会をすることに。今回は女装を強要されなくて良かった。文弥くんも仕事じゃなかったために男の子の格好をしている。
受験生なのにこんな余裕でいいんだろうか。魔法科高校受けるはずなのに。夏休みの勉強は大事だっていうのは今世でも変わらないはず。九校戦の会場に来てたからあまり勉強進んでいないんじゃないかな。
それで受験失敗するような子たちじゃないけど。
会話の内容は、この前終わったばかりの九校戦について。
「あずささんはさすがですわ。調整なさった魔法はどれも選手に最適化されていましたもの」
「あはは。エンジニアとして頑張っただけですよ」
「いえいえ。九校戦の中でも一高は群を抜いていました。あずささんももちろん、司波達也さんでしたか?彼は高校生とは思えません。モノリスでも一条の御曹司を倒していましたし」
「あー、達也くん。凄いですよねえ。いくらFLTに通っているからって、飛行術式をあそこまで完璧に調整されたらわたしの面目丸つぶれですよ〜。簡単な調整くらいしか手伝えませんでした」
あずちゃんがFLTで色々学んでいるのに、ただ親が働いているだけの達也くんが完璧にやっちゃったらあずちゃんが自信をなくすのもしょうがないことだけど。
達也くんがシルバーで開発者なんて知らないからこそだよね。単純な技術でやったと思ってるあずちゃんからすれば高校生離れした天才だろう。
文弥くんが褒めるけど、達也くんとは関係ないフリをしなくちゃいけないからこんな感じで話している。二人は達也くんのこと大好きだから語りたいんだろうけど、守秘義務から話しちゃいけないところもわきまえている。
あずちゃんは深夜様は知ってるのに、達也くんと深雪ちゃんとの関係性に気付いていない。深夜様を十代にしたら深雪ちゃんになると思うんだけどなあ。父親の遺伝子がまるで機能していない。
「達也くんはねえ。知識量が半端じゃないし実戦も抜群。モノリスの選手だったボクより強いんだから笑っちゃうよ。彼が二科なんて制度が間違ってる」
「そうなのですか?新さんのポンコツは知っているのでモノリスに出たこと自体驚きましたが……。あのような素晴らしい方が学校の制度上補欠だなんて、制度そのものがおかしいです」
あーあ。亜夜子ちゃんプンスコだよ。こういうところ深雪ちゃんそっくり。はとこだし似ていて当たり前だけど。
非公式戦略級魔法師が補欠扱いってどう考えてもおかしいよね。普通の魔法が苦手で発動速度が遅いってだけで実戦では負けなし。その結果をモノリスで発揮してみせても現状の制度じゃ一科に転科はないと思う。
まあ、学校側も魔工師の育成不足を痛感して魔工師用のクラスを新設するとかどうとか検討しているらしい。なんでそんなことを四葉というか黒羽一家は手に入れられるんだろ。話し始めたのはつい最近だって話なのに。
ボクも来年はそこに入ろうかな。そうすれば来年九校戦は選手として出なくて良さそう。
「昔はサイオン量も指標の一つだったのにね。それが残ってれば達也くんは一科だったんだろうけど。あのモノリスでの実績でも達也くんの学校の実技自体はそこまで高くないから……」
「残念ですわ。力ある者が認められない世界なんて」
「あずささん。それでも一科に上がれる人もいるんですよね?それってどういう場合なんですか?」
「一科の人が退学したり、何か問題を起こして不適切だって思われて枠が空いたら特例的に上がれる人が毎年二人くらいいるよ。魔法大学から百人の確保を言いつけられてるからできるだけその数の確保として一科の補充はしてるね。けど一科の人も一定数防衛大に行くから、二科の人もちょっとは魔法大学に進学するんだけど」
素行悪い人っているもんなあ。入学したての頃とか。ああいう傲慢な人が成績落として自信をなくして魔法を使えなくなるケースがたまにあるんだとか。やっぱり特別な力を持つと一般人よりは傲慢になっちゃうんだろうな。
一から三高まではこの上下システムがあるけど、四から九高はそもそも一学年百人だからこの上下システムがない。魔法師の数が限られてるし、使えなくなる人も出てくるんだからそれくらいで推移するのは仕方がない。
それに人口減少化が進んでる。第三次世界大戦のせいで数が減ったとかなんとか。
「ピッタリ百人で区分けするのもどうかと思うよね。一般校の理数科や国際科みたいに専攻したい教科があるならわかるけど、純粋にその学年で上から百人を優秀な人間として割り振るなんてさ。その学年が優秀で百人以上優秀な人がいても、百一番以降の人は扱いが変わる。他の学年だったら一科だったかもしれないのにって考えると、馬鹿げた制度だよねえ」
「本当ですわ。教員の数が少ないのはわかりますが、それは教育の放棄です」
「そういうのが嫌だから二人は四高に行くんでしょ?」
「本当は一高を受けるつもりだったんですよ!夕歌姉さんも通っていましたし、情報を集めるなら東京か、せめて横浜に近いほうがいいんです!なのにお父様の意向で四高に……」
黒羽家の意向なら仕方がないじゃないか。それに本音は二人とも達也くんと同じ学校に行きたかっただけだと思う。
亜夜子ちゃんは達也くんラブだからね。貢さんが許さなそうだけど。
達也くんハーレム作れちゃいそう。ハーレムなんて言葉死語らしいけど。モッテモテだねえ。そして深雪ちゃんの絶対零度が発動するんだね。
「東京は十文字の領分だから。……十文字家はいま大変なのはわかるけど、七草って仕事してるの?ここ最近関東で事件起きすぎなんだけど?」
「四葉への嫌がらせが多いとご当主様が仰っておりましたわ。それで本業を疎かにしているのかと。何かございました?」
「ボクにあずちゃんがいるって分かり切ってるのに、婚約の話持ってきたんだよ?ありえなくない?」
「「ウワア」」
さすが双子、息ピッタリ。でもその感想もよくわかる。
「もしかして棒倒しを見てですか?」
「そうそう。それで娘の誰かと婚約とかって話が出て。ウチの会長なんて五輪家との婚約話があるのにそれでも含まれてたからね。娘を道具にしか思ってないんだなって失望したよ」
「あれ……?会長って十文字会頭ともそういう話が出ていたような……?」
「私は四葉の傍流とはいえそのようなことにならなくて良かったですわ」
まあ、真由美ちゃんも被害者だよね。だからこそ達也くんにちょっかいを出しちゃうんだろうけど。いや、でも達也くんにちょっかいかけたらどうなるかわかってないのかな?それはそれで十師族として問題だけど。
七草は一家揃って本質を見誤る性質でも受け継いでるの?そんな一家が日本の首都近郊を牛耳ってるって不味くない?
そんな感じで雑談をしながら過ごした。三日くらい駐在して、その後はFLTで過ごした。やりたいこといっぱいあったし。
雫ちゃんに別荘のお誘いがあったけど、メンバーが一年生ばっかりであずちゃんが浮いちゃいそうだし、ドラクエシリーズでやりたいことがあったからパスした。あずちゃんも夏休み明けに生徒会選挙があるからその準備もあったし。
夏休み明け。生徒会選挙は会長立候補があずちゃんだけだった。というわけで一応信任投票があったんだけど真由美ちゃんの引退前のことで一悶着。生徒会に選出するメンバーで二科という制限を撤廃するってやつ。
それでちょっと会場が荒れたけど、深雪ちゃんが一喝。それで信任投票は無効票だらけになって頭を抱えたけど、ちゃんと生徒会は発足。
会長あずちゃん。副会長深雪ちゃん。会計五十里先輩。書記ボク。男女半々だしいいバランスになったんじゃないかな?
「でもおかしい……。何でこの時期なのに、手を持て余してるんだろう……?去年なんてすっごく忙しかったのに」
あずちゃんがそんなことを呟いている。選挙が終わって引き継ぎも終わって、直近のイベントである論文コンペの準備を進めている段階だ。
引き継ぎは鈴音先輩とハンゾーくんが頑張ってくれたから問題なし。深雪ちゃんはそのまま継続だし、真由美ちゃんも各組織や職員との関わり方についてのマニュアルを残してくれたらしい。だからそこそこ書類を処理していくだけの作業なんだけど。
「論文コンペが鈴音先輩と五十里先輩主導だから、どっちも生徒会経験者で楽ってことじゃない?」
「そう、かな?確かに市原先輩が受けたい援助を具体的に纏めてくれるから対応しやすいけど」
そんなあずちゃんの返事を聞きながら書類を纏めていく。論文コンペの会場警備の人員かあ。これは部活連と風紀委員会に掛け合わないと。モノリスに参加した人は強制参加だって書いてあるけど、生徒会に参加している場合会場警備は免除。
つまりボクは欠席していいと。会場には行くけど警備をしなくていいのは楽だ。ボクの名前だけ外して確認を取ろう。後で下に降りようか。
「中条会長。こんなにスムーズに仕事が終わっているのは新さんの処理能力が高いからだと思いますよ?」
「あっくんが?そんなに仕事割り振ってるっけ?」
「会長が割り振る前に終わらせてるから、処理する全体の量が少ないんです」
深雪ちゃんがそう言うけど、生徒会として活動する時間に全部終わらせようと思って真面目に仕事してるだけじゃん。家に仕事残したくないし。
「あっくん?」
「あずちゃんに確認取らなくてもいい仕事を終わらせてるだけだよ。先生が欲しがってるデータの検索と提出とか、風紀委員会からの報告書の確認とか。こんな確認、FLTでいくらでもやってるんだし」
「会社の仕事と比べられたら、生徒会の書類なんて片手間で終わるか。相田くんは凄いねえ」
そういう五十里先輩も実家の手伝いをしているからか、それとも純粋に優秀だからか仕事を終わらせるのが早い。深雪ちゃんも言わずもがな。
優秀すぎるためにやることがほとんど終わっているということ。平穏でいいじゃない。
「花音が残念がってたよ。風紀委員会の事務その2を取られたって」
「その1は達也くんですよね?そもそも事務仕事って全員で受け持つものじゃ……」
「それはそうなんだけど。でも司波くんと森崎くんがやってくれるからまだいいやって言ってたよ」
「堕落してません……?」
それでいいんだろうか、新風紀委員長。とやかく言うつもりはないけど。
そんなこんなで新学期は何事もなく平穏に始まった。
けど、監視の目が複数。ムカつくな。オレを探ってるんだろうけど、やるべきこともやらないで馬鹿なことをしている十師族には呆れるしかない。
この証拠はもちろん四葉に送ってある。達也にも報告済み。達也の方も似たような感じだとか。オレより先に深雪が怒りそうだ。そうならないように自分のことをまず鎮めよう。