魔法科高校の「大賢者(嘘)」   作:ギャングスタ

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横浜編2

 それは九月も下旬になった頃。生徒会などの学内組織も新体制に慣れて、論文コンペの準備も着々と進んできた頃。

 達也くんからの一言だった。

 

「え?達也くん、平河先輩の警護を受け持って、論文コンペ自体の執筆の手伝いもするの?」

「ああ。内容が俺にとっても興味のある内容でな。市原先輩に誘われて手伝うことにした。発表者には名前が載らないが、来年以降の経験になるだろうと言われてな」

「ああ……。『重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性』だっけ。それなら手伝うのもわかるかも。風紀委員会としての決定でいいんだね?」

「千代田委員長にも承諾を得てきた」

 

 達也くんが報告書を持ってきたので書類の不備がないかを確認する。ないね、さすが達也くん。これくらいならボクでも承認のハンコを押せる。

 論文コンペは産学スパイが発表者を襲うことがあるために、大会前後は学内で護衛をつけることになっている。風紀委員会じゃなくても、発表者がこの人なら信頼できるって思えば誰でもいい。一応風紀委員会と生徒会にこの人が就きましたって報告が必要だけど。

 

「あれ?登下校も護衛ってするんでしょ?よく深雪ちゃんが許したね?」

「わたしもお兄様と平河先輩と一緒に行動するもの。許可もするわ」

「ウワァ」

 

 ブレないなあ、この兄妹。これは亜夜子ちゃんはじめ色々な女の子が苦労する。というか最近ほのかちゃんが達也くんとの距離をめちゃくちゃ詰めようとしてるけど、何かあったんだろうか。

 修羅場には関わりたくないから戸締まりしとこ。

 その日の生徒会の仕事なんてそれくらいだった。五十里先輩が抜けていても、全く問題なく回せている。やることがなくてあずちゃんと深雪ちゃんとお茶会をするか見回りをするかの二択しかない。

 そんな暇を持て余しながらも家でCADの分解など好き勝手やっていたら、達也くんから夜に連絡が来た。しかも秘匿回線の方じゃなくて、家の一般回線の方に。

 

「達也くん?何かあった?」

「あった。小百合さんが何者かに襲われた。FLTを狙ってのものだ」

「えっ!?」

 

 ピンクのパジャマ姿のあずちゃんが驚くが、ボクは声を出さなかった。

 ただ穏やかじゃないなと思っただけで。

 

「何?トーラス・シルバーの情報目当て?それともドラクエシリーズ?」

「いや。あの人がとある筋から引き受けたレリックを持っていることが漏れたらしくて、そのレリック目当ての犯行だろう。小百合さんは無事だが、中条会長も当分FLTには立ち寄らないでください。親父からの伝言です」

「レリックぅ?」

 

 魔法的な意味のオーパーツ、レリック。何でそんなものを社外に持ち出したんだろうか。FLTそのものが襲われたんならボクの両親から連絡が来るはずだし。

 ドラクエに関連するレリックなら興味があるけど、そもそも一生かけてお目に掛かれるかもわからない貴重品だ。そんなものを不用意に持ち出してることがおかしいと思うけど。

 

「小百合さんが無事で良かったですけど……。襲撃犯の正体はわかっているんですか?」

「いいえ。FLTで縁故の軍が動いてくれていますが、つい先ほどの出来事なのでまだ特定できていません。会長も新もFLTには関わりが深いので、外を出る際にも警戒を。新は家の電子防御の警戒度も上げてくれ」

「わかった。達也くんと深雪ちゃんなんて特に関わりの深い関係者なんだから、平河先輩の護衛も気を付けてよ」

「わかってる」

 

 小百合さんというのは達也くんの父親の再婚相手。FLT社長の司波龍郎さんと深夜様は去年の今頃離婚している。その一ヶ月後に再婚した相手が小百合さん。達也くんたちからすれば義理の母親に当たる。

 達也くんたちは司波家として偽装しているから、関わりは書類上深い。

 小百合さんはずっと龍郎さんと愛人関係だったらしいから、達也くんたちを嫌っている。泥棒猫の子供たちを自分の子どもとして接しないといけないんだから。

 

「身内の不手際で迷惑をかけてすみません」

「達也くん、頭上げてよ。これくらい迷惑じゃないし、身内って思ってないんだから頭下げる意味ないよ?関係が冷え切ってる義理の母親の不始末で達也くんが謝る理由はないし」

「そうです。今のところ実害は出ていませんし。達也くん、謝らなくて大丈夫ですよ」

「……ありがとうございます」

 

 それからも確認をいくつかして、達也くんと連絡を切る。その後警戒レベルを上げてから真夜様に連絡を。達也くんもしてるだろうけど、あずちゃんがいるから形式的にせざるを得なかった。

 ひとまず、当分の間FLTに接触禁止。両親との連絡も最低限に。最低限の護衛をこちらに送ってくれることになった。ボクらって襲われたら貧弱だから仕方がない。

 それと、魔法のリミッターを少し広げていいと許可を得た。産学スパイに対応するために、気分が悪くならない程度に警戒するように言われた。

 この前四葉本家に行ってから、感知魔法の範囲が広がった。今まではそれまでの距離に留めていたけど、もっと広げていいと言う。

 なんか、ここ一年で厄介ごとが多いなあ。

 

「論文コンペも近いのに、怖いなあ」

「警戒しないとね。あずちゃんも護衛つける?」

「元風紀委員のあっくんがいるのに?」

「ボクのダメさわかってるくせに」

「いざとなれば頼れるのもわかってるよ?」

 

 ズルいなあ、あずちゃんは。そんなこと言われたら頑張るしかないじゃないか。

 レリックに論文コンペ。どう繋がってるんだか。四葉でも何かわかったら連絡をくれるだろうから、それまでは警戒しつつ日常生活を送るべきかな。

 FLTに顔を出せなくなったのは痛い。もうすぐ「鎧の魔剣」が完成するからできるだけ現場で働きたかったんだけど。家でデータを蓄積させるしかないな。

 まあ、名前だけ借りた全くの別物になる予定だけど。

 

 

 今日は厄日だ。そう思うことにした。

 達也の家だけハッキングを受けたと聞いて、オレたちも危ないかもと学校で感知魔法を最大限行使して。

 学校をサボってまでそれに接触。片方は悪意の薄く、ただ監視だけしていたジロー・マーシャルなるスパイを監視するための人員、らしかった。嘘はないと思ったけど怪しかったのでもっとわからないように監視しろと忠告。

 もう片方の方は達也を狙っているようなこびりつく悪意。一目だけ見て撤退しようと思ったけど、まさか姿を見た者全員を殺しに来るバーサーカーだとは思わなかった。

 いきなり殺しに来たけど、ピオラを事前に使っておいたから避けられた。随分ガタイがいい。それに顔の作りからして中国系だろうか。この時代結構外国人で血が混じってるから、見た目だけじゃ相手の素性なんてわからないけど。

 

「うおおおおお!」

「話なんて、する気がないわけだ!」

 

 相手は肉体強化を自身に施して素手で殺しにかかる近接型。ならばとオレはトベルーラで空からチマチマと攻撃を開始。さすがに相手は飛行術式までは用意できていなかった。達也もあれを海外に流したのはUSNAだけって言ってたからな。大陸には流してないんだろ。

 ただ、チマチマっていうのがダメだ。オレの魔法じゃ全く傷が付かず、初級呪文も障壁魔法のようなもので防がれる。いや、障壁魔法か?あれ。

 鎧を纏ってるような。一条が使っていた装甲魔法の方が近いか。

 中級呪文を使う?こんな街中で?四葉の応援を待つって手段もあるけど。

 コイツは思考が危険だ。確実に一高に敵意を抱いている。となればあずさをはじめとした皆が危ない。

 なら、これは正しい排除だ。

 

「ベタドロン」

「ガッ!?」

 

 敵の大男の動きが止まる。重力を数倍にでもしたような攻撃呪文。ライデインほど目立たないし、一対一なら重宝する魔法だ。

 だけど。

 

「ガア!」

「ウワーオ。これを一つの魔法と肉体だけで破るなんて。やっぱりかなりの手練れらしいね。もしかしたらあなたを放っておいた結果、誰かが殺されるかもしれない。そんな危険人物、見逃せるはずないよねえ?」

「うおおおおおおお!」

 

 その大男はビルを垂直に駆けて登ってきた。どこのニンジャかな?質量があるからか、ビルの側面がボロボロだ。

 空を飛んでいるオレを殺すとしたら空にやって来るしかないんだけど。

 ただ空は。達也以外ならオレのテリトリーだ。

 

「バギマ」

「ゴヒュ!?」

 

 無数の真空刃が鎧の装甲を突破したのか、大男が血を吐きながら吹き飛ぶ。移動用じゃなく殺意を込めた中級呪文だ。敵単体ならこれでもかなりの殺傷力を持つ。

 吹き飛ばした大男の後ろに、もう一つバギマを発生させる。着ていたコートもズタボロにして、裂傷も酷いことになりながらもオレは手を休めない。

 徹底的にバギマで削り、間で麻痺させるためにデインも挟んで空中でハメ殺しにしていた。コイツはオレたちを敵に回した。最近怪しい出来事が立て続けに起こっている中に殺意を持った危険人物だ。おそらく一連の騒動に何かしら関わっているんだろう。

 

 魔法を使ってヤツの意識がブラックアウトするまで呪文を使い続けて、意識が完全になくなったところで地面に叩き落とした。

 生きてはいる。身体中骨やら筋肉やらボロボロだけど。これ昔だったら全治何ヶ月なんだか。というか再起不能ってやつかもしれない。

 一応ベタンで拘束していると、すぐに黒服を着た集団が駆けつけた。黒羽の部隊だ。

 

「新様。遅くなり申し訳ありません」

「あなた方は飛行魔法を持っていませんから。仕方がありません。これの引き渡しと情報の引き抜き、お願いしていいですか?」

「もちろんです。それと、この男は呂剛虎(リュウカンフウ)。大亜連合本国軍特殊工作部隊の魔法師です」

「ああ……。もしかして有名な魔法師だったりします?」

「かなり。対人近接戦闘においては世界十指に入ると称されていますので」

「なるほど。このこと、学校にも報告していいですよね?逃げられたとかで警戒心高める方向で」

「それがよろしいかと」

 

 近接が凄くても、空に逃げた相手まで口封じで殺そうとしたらこうもなる。こんな確認をしている間にかなり厳重に大男を捕縛していた。

 しかし、口封じだか理由はわからないが、こうも強力な男が何でこんなところに?一人で一高を襲ったとしても、被害は出せても捕まるか死ぬしかない。斥候にも諜報にも向かない人材のようだけど、おそらく単体最高戦力を送り込んだってことは殺すべき相手がいた?

 ターゲットを確定していて、それを確実に殺すために送り込まれた?この辺りか。

 

「どうせ尋問するのでしょう?わかったことがあったら、いつもの回線で詳細を送り込んでください」

「かしこまりました。この男の護送にいくらか人員を送りますが、下校時間までには全員こちらに復帰します」

「わかりました。それまでは学校でおとなしく過ごしていますよ」

 

 彼らを見送った後、オレも学校に向かう。なんだかんだでお昼だ。あずさと千代田先輩に報告もそうだけど、十師族の二人も呼んでおこう。場所は風紀委員会室でいいか。あんなところお昼に誰か来るとは思わないし。生徒会室でもいいけど、どっちかに呼べばいい。

 というわけでその四人に緊急事態ということでお昼に集合をかける。達也たちは後ででいいや。

 結果生徒会室で話し合いになった。三巨頭で摩利先輩だけ除け者にしたけど、まあいいか。

 

「それで相田。緊急事態とは何だ?」

「朝方ボクの感知魔法に引っかかったので、怪しい人物を追跡しました。結果、呂剛虎だと思われる男に襲われました」

「あっくん怪我は!?」

「すぐ飛行魔法で逃げたから。向こうも空を飛べることがわかったら撤退したし。というわけで大亜連合がこの学校を標的にしている可能性があります」

「……なんてこと。新くん、情報を掴んでくれてありがとう。でも今後はそんな無茶をしないこと。あーちゃん悲しませたらお姉さん怒るわよ?」

「はい。気を付けます」

 

 オレだって姿確認して、写真でも撮ってそれで終わりにするつもりだったのに。向こうが気付いて殺そうとしてきたんだから仕方がないじゃないか。

 全員呂剛虎を知っていたようで、特にあずさと千代田先輩は青ざめている。十師族の二人は一応冷静に振る舞ってる。そんなに有名な人だったのか。これからは研究だけじゃなくてもうちょっと外の情報も調べておこう。

 

「それで、この情報ってどこまで話すべきかわからなくて。市原先輩たちには伝えるべきでしょうけど、そうしたら護衛を増やさないといけないでしょう?十師族の二人にはどうにか手伝ってもらうとして」

「そうだな。十文字家は論文コンペに向けて横浜を中心に展開している。だから七草に頼るしかないな」

「わかったわ。父に進言します。狙われているのが一高なのか論文コンペなのかわからないから……。あーちゃん。私と十文字くんの連名で警戒文を各校に送りましょう。もちろん学校側にも報告して」

「わ、わかりました」

「魔法師協会には俺の方から連絡をしておく」

 

 七草が部隊を展開することになったって黒羽の皆さんに伝えておかないと。真夜様にも連絡はするけど、魔法師協会からも連絡が行くはず。

 

「……中条、千代田。論文コンペに参加する者と護衛を受け持つ者には事情を説明するが、それ以上には情報を漏らさないつもりだ。もちろん護衛はすぐにでもつけてもらう」

「十文字くん。それって産学スパイを警戒してってこと?」

「ああ。過去にも学生がそうであった事例がある。十文字家から軍にも協力を要請するつもりだ。大亜が動いているとなれば電子的な防衛にも協力してくれるだろう」

「学生の領分を越えてますよ……。というか、今年からなんだって一体……」

 

 千代田先輩が学生として切実な愚痴を零したが、ごもっとも。いきなりブランシュのテロ工作に始まり、九校戦でのシンジゲートたち。そして今回の騒動。

 どれも高校生が体験する事案じゃない。どれも一回高校生活で経験すれば災難と言われるのに、それがもう一年間で三回目だ。嫌にもなるだろう。

 オレだってもう嫌だし。平穏に暮らしたい。危険なことなんてしたくない。オレもあずさも暗殺とか戦争になったらあっさりやられるほど貧弱だ。戦う人じゃないんだからそれも当然なんだけど。

 さっきの奴だって飛行術式がなかったから一方的にできただけで、達也みたいに戦うのは本質的に違う。やりたくないっていう心理的リミッターがかけられているというべきだ。

 

「俺たちもすぐに動く。中条と千代田もすぐに報告に動いてくれ。中条はまず相田と一緒に校長へ。千代田は護衛を受け持っている生徒へ」

「わかりましたっ!あっくん、行くよ」

「うん。学校側にも動いてもらわないとね」

「ああ、待って新くん。襲われた時、だれかに頼れなかった?私たちはそんなに頼りないかな?」

「何言ってるんですか。頼る前に相手は逃げましたし。それにボクにできないことだらけで先輩方をこうして頼ってますよ?顔を覚えられたっていうのは本当にまずいですし」

「……新くんはもう少し、その仮面の使い方を覚えた方が良いかもね」

 

 ……へえ。良く見ていらっしゃる。事情を知ってる四葉の人間以外に指摘されたのは初めてだ。千代田先輩はわからないようで首を傾げているが、あずさは目を丸くしている。

 十文字先輩も気付いていたのか、動じていない。本当に巌のような人だな。憧れる。

 

「どうしてそんな二面性が必要かわからないけど、そんな調子じゃいつか人に嫌われるわよ?」

「十師族の方々は本当に目が良いですね。対人関係で鍛えられているからでしょう。……逆に返しますけど、十師族だからって何でも手を出そうとしたら破滅しますよ?一条にも前にそう言いました。あなた方は少々驕っている。九島閣下にしろ、あなたの父君にしろ。持っている力が大きいからこそ、増長している」

「そんなに傲慢に見えるかな?」

「ここ八王子だってあなたたち七草の領分でしょう?そこに戦争中の敵魔法師が忍び込んでいる時点で腑抜けていると思いますが?」

「ちょっと、相田君?」

 

 いきなりオレと七草先輩が敵対し始めたから、千代田先輩が止めようと立ち上がる。なぜ身内で争わなければいけないのかって思いだろう。

 できることとできないことがあるのは人間なのだから当たり前。だからって国防を掲げて、他にも色々手を出している者が国防を怠っていたらこうも言いたくなる。

 

「七草先輩。国防よりも国内の一魔法師を探ることを優先するのはやめた方が良いですよ」

「……何の話?」

「先輩は七草家の行動を全部把握していないんでしょうけど。おたくの手の者がボクたちの家を監視しているのは気付いてるって言ってるんです。物理的にも、電子的にも。たかが婚約を断っただけで執着するその粘着性、不愉快です。そんなことする暇があったら大亜のスパイを探してくださいよ」

 

 九校戦以降、家を監視する者がいた。調べたら七草の家の者。大方四葉と関係があると睨んで監視しているんだろうけど、良い迷惑だ。

 そのことは知らなかったようで、七草先輩は表情を曇らせるが知ったこっちゃない。

 

「それは、証拠があるのかしら?」

「この人、先輩のボディーガードですよね?以前生徒会選挙の際に見たことがあります。ボクの感知魔法舐めないでくれます?」

 

 端末で見せるのは一つの映像。オレの家の周りを警戒している黒服たちだ。つい昨日の映像だったりする。

 この人、本当に知らなかったんだな。親しい人が学校の時間に何をしているかなんて。

 

「精霊魔法について探ろうとしてるんでしょうけど。その割に近くにいる化生体に気付かないのはどういう了見です?この学校とか監視されてますよ?」

「何?化生体?」

「烏です。倒すだけならすぐでしょうけど、消してどういう状況になるかわからなかったので放置しています。八王子に展開している七草に処理してほしいんですが?ボクを探るために古式魔法師を動員しているんでしょう?」

 

 十文字先輩が聞き返してくる。オレだって精霊魔法にそこまで詳しくないが、監視の術式なら感知魔法の範囲に入れば気付く。オレが消して面倒なことにならないようにあえて放置しているのに。さっきの大男の近くにいた監視は黒羽が処理してくれた。

 敵ならまだわかるけど、国内の魔法師に監視されるっていうのは意味がわからない。だからここのところ結構イラついてた。

 

「……父に即刻辞めるように進言します。化生体の対処にしても」

「お願いします。言っておきますけど、ボクの精霊魔法なんて限定的に強力なBS魔法みたいなものなので、調べたって何も出てきませんよ?九校戦の雷撃だってあそこが富士山麓に近かったからこそですし。……一条からボクについては調べないって師族会議で決まったって聞きましたけど、それって嘘だったんです?」

「すぐに辞めさせるから!父を謝罪に行かせます!ごめんなさい新くん!」

「謝罪とかいりません。監視をやめてくれればそれで良いです。ボクとあずちゃんの愛の巣を十師族に監視されてるって現状が気に食わないだけで」

「本当にあの狸親父は!何で私の後輩に手を出すのよぉ!」

 

 七草先輩が発狂した。いや、同意見だけど。九島閣下に釘を刺されて、師族会議でも決まったことを無視してオレを監視するとか横暴が過ぎる。

 四葉の弱みを握りたいんだろうけど、越権が過ぎる。これは真夜様も嫌うわけだ。先輩は知らなかったからこの場合は被害者か。だからって優しくしたりしない。

 

「ああ、皆さん。ボクが強制的に人格を抑えてることはここだけの秘密にしてくださいね?そうじゃないとボクが発狂しちゃいますから」

「……その精神干渉型魔法のせいか?」

「そうです。これのせいで頭の中生き物や精霊の声で煩わしくて。それで精神を壊さないようにあえて明るい性格にしてるんです」

「あっくん、言っちゃって良かったの……?」

「良いんだよ。だから九島閣下に十師族へ牽制してもらったんだから。ボクを一人の魔法師として認めてくれた閣下がご配慮くださったのに、どこかの家がかき乱してくるからさあ」

「あーちゃん!どんなことしてでも新くんの首根っこ掴んでてね!私もあのクソ親父を懲らしめてくるから!」

「あ、はい」

 

 あずさの両手を握って涙を浮かべてまで懇願する先輩。これで監視がなくなるなら良いけど。この人たちにバレたのは観察眼もあるけど、大元は七草の監視で苛立ってたせいだし。婚約をふっかけてきたせいだから。

 いや、ホント。七草うっとおしいなあ。閣下への宣言通り潰したくなってくる。先に手を出してきたのはあっちなんだから、報復する権利はありそうなものだけど。

 ……こうやって破壊衝動が出てくるから、嫌なんだよ。誰も傷付けたくないのに、実行しようと心が乱れる。その原因を取り除くためなら元会長といえどもキツく当たる。それが将来的な被害を減らせると思ってるからこそ。

 

「……すまない、相田。俺も師族会議で再び強く進言しよう」

「お願いします。そもそもボクにそこまで価値あります?FLTでCAD作りたいだけなんで、十師族に引き抜かれても何もしませんよ?」

「魔法師としても魔工師としても相田は優秀だ。そこは自信を持て。十師族に恭順するような人間じゃないと伝えさせてもらう」

「本当にお願いします……。ボクはただあずちゃんと平穏に暮らしたいだけなんですから」

「ああ。任せてくれ」

 

 今回の一番の被害者は千代田先輩だよな。十師族でもオレに深い関わりがあるわけでもないのに秘密の共有をさせられたんだから。

 何もかも、オレたちの平穏をかき乱す七草が悪い。十師族から落ちないかな。

 達也と深雪には四葉で呂剛虎を捕縛したことは伝えたけど、だからこそ狙われやすいかもと警告しておいた。狙いは論文コンペなんだか、達也のレリックなんだか。達也も早々に手放した方が良いと思うけどな。研究したいんだろうけど、個人が持つには過ぎた代物だ。

 

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