魔法科高校の「大賢者(嘘)」 作:ギャングスタ
翌日。オレたちが投稿すると達也たちを見かけた。深雪と二人だけのようだ。
「中条会長おはようございます。新おはよう」
「お二方、おはようございます」
「はい。達也くんも深雪さんもおはようございます」
「二人ともおはよー」
どうせ校舎までは一緒なんだから並んで歩くことにした。なんてことなく達也の隣に立ったらこっちをじっくりと眺めてきた。
「どうかした?」
「いや、新。お前どこまで警戒している?隠さなくていいのか?」
「やっぱりその眼凄いねえ。ちょっと嫌なことあって警戒しっぱなし。制御もできてないけど今は警戒を優先してる。化生体、まだうろついてる」
「……なるほど。監視されているわけだ」
昨日の放課後の内に達也と深雪も論文コンペ関係者として人喰い虎のことは学校側からも通達されているし、黒羽から本当のことを知らされてるはず。
達也の最優先は深雪を守ること。だけど深雪は生徒会だし、達也も論文コンペの関係者だ。横浜にはどうしたって来るだろう。
オレも行く。いざという時は、オレが戦うことになるかもしれない。
「今日デモ機の実験やるんだって?風紀委員会の警備は?」
「増員される。全員出動で部活連にも協力を頼んでいる」
「そっか。あずさ、オレたちも見学に行こう」
「え……?誰も生徒会室に残らないのはダメじゃない?深雪さんは実験見たいだろうし」
あずさも深雪に毒されてきたなあ。四六時中一緒なはずないのに、一緒になれる機会があったら一緒にいるものだと思ってる。
達也がガーディアンだから、間違いでもないんだけど。
「中条会長。デモ機の実験は大事なものですし、生徒会が視察するのも大事かと」
「そう、ですね。全員で見に行きましょうか。それくらいの時間でしたら生徒会室を空けても問題ないですよね」
そんな話し合いをして校舎の中へ。達也とは昇降口が違うから別れて、あずさとも階段で別れた。
深雪と二人で歩いてると男子の悪感情一割増しになるんだよな。オレとあずさの関係知っていても、深雪の隣は別なわけね。
「新さん。無理しないでくださいね?」
「何のこと?」
「魔法の常時展開です。あなた一人頑張って倒れられたら、中条会長を泣かせてしまいます。それは御免被るわ」
「わかってるよ」
でも、早速間抜けを見付けた。というかオレの魔法が進化しすぎてる。いや、元に戻ったと言うべきか。
動向を気にしておこう。動くとしたら放課後だとは思う。昼休みならまだ調整とかで一般人が近寄れないはずだし。
精神汚染もそうだけど、誰かに絞れば思考まで読めるっていうのは、悪魔の力だ。
「新さん?」
「ん、大丈夫。やることができただけ」
「聞かない方がいいですか?」
「だね。あまり口外したくない」
他にも精神汚染されている人がいないか調べてみるけど、いない。化生体の監視はまだ続いてる。
七草、諜報はあんたたちの分野だろ。もっと動け。青少年が苦しむ世界を作ってるのはあんたたちの努力不足じゃないのか?
一つの家で何でもできるなんて思っちゃいない。けど、関東は四葉が秘密裏に手を差し伸べても手が足りていない。それだけ危険塗れだっていうのに。
また苛立ってきた。授業始まる前に甘い物でも買いに行こうか。糖分が欲しい。
・
結局、その人物が動いたのは放課後。
今は中庭でデモ機の稼働実験が行われている。それをあずさと深雪と一緒に見守っている。
そして件の人物が学校へ申請している魔法の範囲内に入ったのと同時にピオラを使ってその人物に近付いて即座に足払い。倒れたところを両手を後ろへ回して片手で抑え、足で体重を乗せることで地面に拘束した。
いきなりのことで驚いた人たちが数名、見慣れたという感情の人が多数。
オレの魔法の関係で何もしていないのに拘束される人は一定数いる。魔法を使う直前で蹴り飛ばされて拘束された人も結構いる。案外風紀委員の時オレは抑止力になれていたらしい。
今回もそんな一環だと思われたのだろう。拘束した人物を見るまでは。
「相田君!?なんで関本先輩を拘束してるの!」
「千代田先輩、関本勲の左胸にパスワードブレイカーが収まっています。しかもどうやら、大亜製の物みたいですよ?デモ機のデータを吹っ飛ばすつもりだったみたいですね」
「なっ!?」
正確に言い当てたからか、関本の表情が青くなる。
声にも出さず、彼は近寄っただけだ。それで全てを看破されたら血の気も失せるだろう。
千代田先輩がオレを止めたのは、唯一残っている三年生の風紀委員だから。むしろ彼は抑止側だ。そんな人物が犯罪ツールを持っているとわからなければ声も荒げる。
いくらオレの摘発方が特殊とはいえ、千代田先輩は直に見たことなかったはずだし。オレが拘束したまま千代田先輩が左胸を調べると黒い機械が。調べれば結果は出ると思うけど間違いなくパスワードブレイカーだ。
「沢田君と森崎君はこのまま現場維持!私は関本先輩をこのまま連行します。相田君も手伝ってくれるわね?」
「もちろんです。森崎君、よろしく。あずちゃんと深雪ちゃんはひとまず生徒会室戻った方がいいかも」
森崎が捕縛用の手錠と縄で雁字搦めにして、CADも回収。そのままオレと千代田先輩で教員に引き渡し。生徒指導室で尋問的なことを開始する。
「相田君のことは知ってたけど、まさか犯行前にできちゃうものなの?」
「すみません。常時発動型なので制御なんてできないんですよね。だからもし隠し事があるならボクの半径200mに入らない方がいいですよ」
「啓と一緒の時はそうするわ」
「そうしてください。時々すっごい感情の波が襲ってくるので。表情に出さないようにするの大変なんですから」
「な!」
一瞬で千代田先輩の顔が赤くなる。まあ、学校で何考えてるんだって何回か思ったし、釘を刺しておくだけ。最近は物騒だからずっと使ってるけど、平時は本当ならオフにしてるし。
婚約者同士がいちゃつくななんて口が裂けても言えない。オレとあずさも一緒だし。
でも普段はオレたち抑えてる。この人たちがオープンすぎるだけだ。
「……忘れなさい」
「できるだけ。でも感情がわかるだけで内容は普段ならわかりませんよ」
「アレ?関本先輩を拘束した時は詳しいこと言ってなかった?」
「その人に集中すれば単語で色々頭に響くんですよ。それを文にしただけです」
「解析結果出ましたよ。相田君の言うように大亜製のパスワードブレイカーです」
調べに行った先生が戻ってきて結果を教えてくれる。まあ、正確に関本の頭の中を見たから誤情報を渡されていない限り外れてなかっただろうけど。これでデモ機を壊そうとしたのは事実だし。
「まあ、関本先輩は精神汚染されているみたいですし、病院だかそういう施設だか知りませんけど、そこに送るべきだと思いますよ?」
「精神汚染?」
また、という表情をした人が多数。四月にあった手口と似ているのだからそういう反応になってしまっても仕方がない。スパイに仕立てるなら元から内部にいる人を使うのが一番コストがかからない。
「月一回検査をするようになっただろ?」
「その一回をパスしたら一ヶ月は安泰じゃないですか。そうやって抜けたんだと思いますよ」
「……相田。他に汚染されている人間は学内にいるのか?」
「お昼に見て回りましたけど、おそらくいません。範囲外だったり今日休みだとわかりませんけど」
範囲を全開にして調べていないことは確認済みだけど、提出している魔法の範囲内だと断言するには心許ない距離だ。だからあえて濁す。四葉からも秘匿しろって言われてるし。
先生たちは明日にでももう一回調査をするか話し合っている。そして関本を特殊鑑別所に送るという話をしている。
目的とかも聞いてみるけど、口を割らない。けど、オレは全部心の声が聞こえるわけで。
「デモ機、データの吸い上げ。え?……達也くんとボクの私物を探ろうとしていたみたいです。目当てはレリック」
「レリック?何でそこで司波君と相田君の名前が上がるのよ?」
「まあ、調べればわかることだしいいか。先日街中で達也くんの親が襲われたんです。FLTにレリックがあるんじゃないかという情報が流れたらしくて、手当たり次第の襲撃があったみたいですね。達也くんの親もボクの親もFLTで働いてるので、レリックを持ってると勘違いしたんでしょ。持ってないし」
オレは。達也はまだ持ってるらしい。さっさとFLTか軍に返せばいいのに。研究したいんだろうな、達也のことだから。
「FLTは警戒態勢をとってますけど、まさかボクたちまで標的にされるなんて。襲撃犯はまだ見付かっていませんけど、この感じだと大亜の関係者ですかね」
もう関本の全身から赤という色が抜けていく。ここに来て一言も喋っていないのに情報がダダ漏れになればここにいることも辛いだろう。
手を緩めることはない。敵の尖兵になったんだから、容赦なんて必要ない。
「関本先輩はオープン主義者ということで精神汚染を食らったみたいですね。それに論文コンペの選考から外れたことで市原先輩への僻み嫉妬も利用されたと。……それでデモ機を壊してもアンタが代わりになれるはずもないのに」
「相田、それ以上は」
「先生、止めますか?精神汚染を受けなければなんて甘いことを言いますか?精神汚染を受けるということはそんなことをしそうな人物と接触するような場所に行ったということ。しかもここまで市原先輩に都合のいい敵対者だってことは一高のことも相当敵に話して利用されてますよ。魔法師の卵なら自衛をすべきだ。風紀委員にもなっていたんだから、それこそ自衛の大切さなんてわかっているはずなのに。精神汚染を受けたのは関本先輩の迂闊さが原因です」
オープン主義者の会合に参加して、そこで精神汚染食らってるんだから弁護の余地なしだろ。魔法の情報を国外に漏らさないように魔法師が海外渡航を禁止されてるのに、全ての情報をバラすようなオープン主義者の会合に行ったら自分は馬鹿ですって言うようなものだ。
しかも海外渡航が禁止になったのは真夜様が大漢に連れ去られた一件を教訓にしている。それで一国が滅んでるのに情報の大切さもわからない馬鹿が騙されて敵の操り人形になったことを庇うつもりなんてない。
オレは末端とはいえ四葉の人間だ。真夜様が苦しんだことから何も学んでいないバカなんて蔑視の対象にしかならない。
「ボクじゃ精神汚染はどうにかできないので。もう戻っていいですか?」
「そう、だな。相田、助かった。戻っていいぞ」
「相田君、ありがと。やっぱり風紀委員会でその能力活かして欲しかったわ」
「事務作業押し付けられるから嫌ですよ。それにこの力嫌いですし」
あとは風紀委員会と先生方の管轄だろ。今頃あずさが十文字先輩と七草先輩、あとハンゾー君に連絡してるだろうしオレも報告書書かないと。
これで当分学校生活は大丈夫なはず。学外は軍や警察、十師族や黒羽に任せていいだろ。
学校への報告書とは別に黒羽と四葉に提出するやつ書かないと。
これ以上精神汚染で尖兵は増えないはず。こんなやり方何回繰り返したって無駄だし、一回バレたら手口がバレて警戒して、逆探知される。
オレのこと狙ってくるか?化生体の監視も学内までは及んでないみたいだから、オレが関本を止めたってことはわからないだろうし。多分大丈夫なはず。
ミルクシェーキの缶買いに行こ。甘いもの一気飲みしたい。