魔法科高校の「大賢者(嘘)」 作:ギャングスタ
ボクは今、真夜様の前にいる。執事の葉山さん以外他にはいない、真夜様の執務室。
そこでボクは、真夜様が目を通している資料の可否についての判決を待っていた。まるで気分は裁判に連れ出された被告人みたい。
だって真夜様、さっきからページをめくるだけで何も言わないんだもの。
会社で言えばオーナーとか会長みたいな立ち位置の真夜様に企画書を見せるのは結構勇気がいる。
「ふうん?新さん、概要はわかりました。これで認可を出してもいいわ」
「本当ですか?」
「ええ。貴重な魔工師候補を若いうちから囲っておくというのもわかりますし、達也さんのせいでFLTは注目株。新さんのせいでもあるけど、子供達がFLTに見学要請を大量に送ってきてめんどくさいという話も聞きましたし」
ボクが提出した物は、子供向けのCAD調整大会。ボクの「ドラクエシリーズ」と達也くんの「シルバーモデル」はFLTでとても人気のある商品になっている。その技術を学びたいという子供と、技術を盗みたい産学スパイが多くて達也くんも嘆いていた。
だから、その流れを食い止めるためにボクがない頭を振り絞って出した案が、このCAD大会だ。
優勝者にはFLTの工房の自由見学の許可、体験学習、授業の権利を与えて、他の人には技術漏洩防止のために一切の見学を無しにするというもの。
魔工師の数は少なく、お父さん達も優秀な人が欲しいと言っていたので、将来を見越しての投資になるとかなんとか。達也くんクラスだと仕事が増えるため、そこそこの人がいいんだとか。
あとは、ボクが他にも友達が欲しいということ。
ボクは小学校を通信教育で終えてしまった。本家にずっといるから、学校に通えなかったんだよね。勉強は全く問題ないけど、友達が達也くんしかできなかった。
黒羽の双子ちゃんは年下だし、四葉の分家でも結構上の方だから馴れ馴れしいのはダメだし。仲はそれなりにいいけどね。あと歳が近いのは桜井水波ちゃんくらいなんだけど、彼女は使用人だから友達っぽくない。
そう、これはボクの達也くん以外の友達作ろう大作戦なのだ!
「今から宣伝したとして、六月には開催できるでしょう。予選としてのペーパーテストは新さんが作りなさい。FLTに関することと、CADについての問題なら何でもいいわ」
「ドラクエの内容はいいですか?」
「CADに限ります。魔物の名前を答えなさいといった趣旨の問題はダメですよ?」
「はーい。頑張ります」
これが三月のこと。それからFLTのHPにこの大会のことが載って、四月末にペーパーテストをFLT本社で実施。そこで採点をして、六月の中頃に本試験を実施することになった。
ボクも採点に参加。小学校高学年から高校生までに範囲を絞ったのに、結構な受験生がいた。高校生はやめようかなということが一回話題に挙がったけど、高校生に優秀な子がいるかもしれないからとそのまま。
九校戦で活躍するエンジニアもいるからと、門は広くしておこうってことになったみたい。それに権利が与えられるのは一人だけ。たった一人なら高校生でも何でもいいということになった。
そして大会当日。
ボクはモシャスを用いて大人の男性になって、大会の試験官として潜り込んでいた。真夜様の許可ももらっている。
本当はステルスができればよかったんだけど、使えなかった。影ができるだけで、気配とか足音が消せるいい呪文なのに。大賢者を目指してるんだから、いっか。
この大会は全員で一斉に試験を受けて、FLTの職員が採点をつけて勝手に一位を決めるという身勝手なもの。つまり、技術力で一番でも優勝できるわけじゃないひどい大会だ。
会社がやってる自主的な大会だから、それも仕方がないわよね。とは真夜様談。
つまり、四葉にとって都合のいい人を優勝させるだけの大会。
ボクが好き勝手やっていいということさ!
大会はまず、CADのハードを作ることから始める。FLTが用意した各種部品を用いて、最高だと思えるCADを作ってもらう。
そしてそれが出来上がったら、渡された課題の術式をインストールしてもらう。それの正確さやかかった時間を考慮して、優秀者に声をかける。
本戦に残ったのはたったの十人。多すぎても面倒だったので、結構厳しめに採点して厳選していた。逆にいえば、学生にしてはかなり優秀な人がここにいるわけだけど。これくらいの人数ならじっくりと観察できる。
試験が始まる。各々CADの部品を吟味して、どんなCADを組み上げるのか。一つ一つの部品を手に取って考え込んだり、部品をさっさと見繕って組み立て始めたり。
CADって機械だから、組み立てさえしてしまえばどんな部品を使ってもいいという考えの人もいるけど、それは違う。部品ごとに相性の良いものもあるので、適当じゃダメ。
そういうわけで速攻組み始めた中学生男子、アウト。ボクは端末にペケマークを押す。
FLTで用意した部品が大多数だからそれなりに良い部品があるけど、粗悪品もあえて混ぜている。その審美眼も確認したいわけで。CAD作るのに適当はダメなんだよね。精密機械だもの。
組み上げていった人から術式をインストールしていくわけだけど、最初の二人はCADが起動しなかった。組み立て方が悪かったんだね。まあ最初の人は速攻組み上げた人だから当然だろうけど。というわけでペケ。
色々手際や選んだパーツなどを採点していく。もちろんボクだけじゃなく、他の人も採点している。出来上がったCADでプロのライセンスを持っている魔法師に起動を確かめてもらい、感触なども確かめてもらう。
一応参加した人達には後日総評を送る予定だ。だから結構しっかりメモしていく。
気になったのは茶髪で小柄な女子学生。何を考えたのか、シルバー・ホーンを造ろうとしている。部品もあったからできなくはないだろうけど、何でFLTの最高傑作を?彼女の工程を覗き込むと、彼女の課題の術式を見て確信した。
ループ・キャスト・システム。トーラス・シルバーが産み出した術式だもの、造るよねえ。涙目になりながら、不安になりながら組み立てている。
「俺も噛んで良いのか?じゃあ、シルバーからの挑戦状だ」
達也くんそんなこと言ってたけどさあ!そんな悪戯するなんて思わないじゃん!しかもしっかりシルバー・ホーンの部品を用意してあるし!
達也くんが使っている銀色で銃身が長い型じゃなくて、一般的な銃の形をしたハードだ。それでも結構細かい部品に分けられてたから、探すだけで大変だっただろうに。
今は白い銃の形になっている。
部品だけあっても、知識があってもできないんだよね。ボクもシルバー・ホーンは無理。達也くん、落とす気満々じゃん。
でも彼女、シルバー・ホーンを組み上げて術式のインストールを始めた。「ヒィッ!」って悲鳴を上げたり、泣きそうになりながらも指定された術式を落とし込んでいる。
でも、調整機に接続できたということは、CADの組み上げには問題ないということ。それだけでボク達試験官は彼女にチェックマークをつけていく。たとえインストールし始めたのが一番遅くても、それだけで高得点だ。
ボクは他の人にも目を向けながら、親友に連絡を取る。
「どうした、新?今は大会中だろ?」
「責任とって出向してくれる?あの課題こなしそうな女の子がいるんだけど」
「何?」
通話先の達也くんが心底驚いてる。だってループ・キャスト・システムってまだ発表して一年経ってないんだもの。それをやろうとしてるんだから。
「ハードは?」
「シルバーが隠していたものを見付け出して組み上げてる。インストールの段階までは行ったよ」
「起動したのか?」
「デバイスオタクなのかな。内部構造把握してたよ。実物なんて高くて買えないだろうから、雑誌とかで見たんじゃないかなあ」
「すぐ行く」
達也くんは四葉本家にいなければ、東京の邸宅にいる。すぐ来るって言ってたから東京にいるんだろう。
達也くんも本家と東京の行き来大変だろうなあ。今ではFLTで働いているようなものだから、東京によくいるんだけど。そのせいでボクも会う機会が少ない。困ったものだ。
だから他に友達が欲しいんだけど。
大会が終わる前に達也くんは会場に着いて、彼女のCADの起動をお願いした。製作者本人が確認するのが一番だよね。
全員の提出が終わって確認に移る。ぶっちゃけ皆、シルバー・ホーンもどきに夢中だ。他の物ももちろん起動したけど、平凡の域を出ないとのこと。
達也くんが実際にCADを起動させて、一言。
「商品として売り出すことはできませんが、ループ・キャストの再現やシルバー・ホーンの性能の引き出しは七割を超えます。専門知識のない中学二年生ということを考慮すると、末恐ろしいかと」
「はい、決定〜。今回の優勝は中条あずささんです」
ボクの言葉に試験官全員同意。ただの中学二年生がトーラス・シルバーの模倣をしたのだから。
達也くんのお父さんが表彰して、彼女を別室に呼び出す。その時にはボクはモシャスを解除していた。
部屋にいるのはボクとボクのお父さんだけ。達也くんが別室でモニターしてるけど。
中条さんは案内されても、ビクビクしていた。ボクの姿を見て、どうしてここに子供がいるんだろうって表情をしていた。疑問だよね。ボクがこの大会の主催者だなんて思っていないだろうから。
彼女を座らせて、ボクは開口一番、当初の目的を伝える。
「中条あずささん!ボクの友達になってください!」
「ふえ?」
「ん?新、友達でいいのか?婚約者じゃなくて?」
「「………………え?」」
どういうこと?