魔法科高校の「大賢者(嘘)」 作:ギャングスタ
深雪ちゃんと会って二年半くらい。ボクたちは高校生になった。しかも達也くんたちとは同じ学校に通うことにした。
国立魔法大学付属第一学校。通称一高。ボクは昔の家に戻ってきて、達也くんと深雪ちゃんは一軒家を借りて二人暮らしだとか。深夜さんは有名だから一緒に住んでたら四葉ってバレちゃうみたい。残念。
その入学式の日。校舎の前では深雪ちゃんの声が響き渡る。
「納得いきません!」
そう達也くんに寄り縋ってたみたいだけど。
ボクはその場にいなかった。
・
「あずちゃん、手伝うことある?」
「あっくん!?」
あずちゃんがビックリしてくれる。今日もかわいいなあ。
場所は講堂。入学式の会場で、入学式を執り行うために朝早くから生徒会や風紀委員会、部活連執行部の人たちが準備をしてるってあずちゃんから聞いてたけど。教師も含めて結構な人たちが準備している。
大変そうだなあ、生徒会って。
「あっくん何してるの!?新入生はまだ開場時間になってないんだから!」
「えー。暇だったから手伝いに来ただけだよ?」
「新入生が入学式手伝おうとするなんて前代未聞だよ!?」
「あずちゃんとの学校生活楽しみで早く来ちゃったんだからしょうがないでしょ?」
「もー!もーーーーー!!」
あずちゃんが憤慨してる。いつ会ってもあずちゃんは感情豊かでかわいいなあ。
あずちゃんが騒いでるからか、生徒の数人がこっちを見てる。黒髪の女性がこちらに歩いてくる。大人っぽい人だなあ。長身ですらりとしてる美人さんだ。
「中条さんと仲が良い新入生ということは、相田くんでしょうか?」
「はい。新入生の相田新です」
「申し訳ありませんが、入学式の準備に新入生を起用するわけにはいきませんので。明文化はされていませんが、入学式の運営は学校側と生徒会主導です。まだ入学をしていない生徒には手伝いとはいえ関わらせることができません。これからすることはリハーサルでもあります。いくら中条さんの婚約者といえども、その辺りはご了承ください」
「わかりました。じゃあ開場まで時間を潰してます」
「あっくんは何でわたしの言うことは聞いてくれないのに、市原先輩の言うことはすんなり聞くんですか!?」
「んー?こうやって理路整然と説明されたらボクだって折れるよ?あずちゃんの仕事ぶりが見たかっただけだし」
「不公平ですー!」
ポカポカとボクを殴るあずちゃん。全然痛くない。達也くんに言われてこの二年間、そこそこ身体鍛えたんだよね。魔法師は身体が資本だとか何とか。
もし戦闘に巻き込まれた時に、逃げられるだけの手段は備えておけって言われて、逃走と護身術にはかなり力を入れた。
ボクが憧れる大賢者も、オリハルコンでできたナイトに接近戦を仕掛けたりしてたから、ある程度は必要かなって思って達也くんに習ったけど、スパルタだった。おかげで腹筋が割れた。スパルタすぎてよくあずちゃんに泣きついたけど。
「申し遅れました。中条さんと一緒に活動する、生徒会会計の市原鈴音です」
「ご丁寧に。いつもあずちゃんがお世話になっています。改めて、あずちゃんと婚約関係の相田新です」
「いえいえ。中条さんにはいつも助けられています」
「あずちゃんも学年主席だったってことですね。良かったです。ボクは学年主席を逃しちゃいましたから」
「いえいえ。実技三位、筆記三位。総合三位。とても優秀かと」
「何でわたしの保護者みたいな挨拶してるの!?あっくんってば!」
ボクとちょうど頭一つ分下からあずちゃんの抗議の声が届くけど、あずちゃんが心配だからに決まってる。能力はあるんだけど、性格が心配なんだもの。
ボクの婚約者は可愛くて有能で年上だけど。心配でドキドキしちゃうんだよね。
「じゃああずちゃん、お仕事頑張ってね」
「あっくんはおとなしくしててよ!」
「はーい」
お邪魔しちゃダメそうだからボクは退散。そろそろ深雪ちゃんが講堂に来る頃かな。挨拶は後でいいや。達也くんさーがそっと。
それにしてもボクが三位かあ。筆記は達也くんと深雪ちゃんに負けたとして。実技は深雪ちゃん以外に誰に負けたんだろう?ボクってサイオン量以外はそこそこ特化したBS魔法師ってやつみたいだけど。
達也くんほど普通の術式が苦手ってわけじゃないんだよね。でも実戦になると達也くんには全然敵わない。むしろ魔法師の誰かと正々堂々戦ったら、ボクはボロ負けだと思う。
術式の展開速度と規模、強度は四葉でも普通って言われたけど、逆に言えば実技と総合二位の人は四葉の普通よりも実技で上ってこと。魔法師としてはボクよりも実力は上なんだろうなあ。
それにしても筆記一位なのに実技がダメダメで二科になっちゃった達也くん。実技優先とはいえ、普通は一科だよね。実戦は凄いのに、実技はダメってちょうどボクと真逆だ。
そんなことを考えながら達也くんを探したけど見付からず。結局一人でぶらぶらして入学式に参加した。
「隣空いてますか?」
「どうぞー」
ボクの隣は二席空いていたようで、そこに話しかけて来た二人組の女子が座る。この入学生の座席だけど一科生と二科生で綺麗に別れていた。差別はダメって学校で教わらなかったのかな?魔法師だから、人間だからいじめられることがあるって聞いてたけど、まさか魔法師同士でこんな確執があるなんて。
達也くんの隣行こうとしたらすごく首を横に振られた。残念。せっかく深雪ちゃんを褒めまくる会合を開こうとしたのに。
「私、光井ほのかって言います」
「わたし、北山雫」
「初めましてー。ボクは相田新。同じクラスになったらよろしくね」
「はい」
せっかく隣になったのだからと会話をしていたら、すぐ入学式が始まった。全く楽しくなくて眠りそうになったけど、深雪ちゃんの新入生総代挨拶は起きて聞いておいた。
なんか「皆等しく」とか「魔法以外にも」とか強調していたけど、その内容をどれだけの新入生が聞いてただろうか?深雪ちゃんの魔性の美貌にやられてほとんど聞いてなかった気がする。隣の光井ちゃんもその美貌にやられちゃってたし。
女の子も魅了しちゃうのかー。すごいなあ、深雪ちゃん。
入学式も終わって、学校で使うIDカードの発行とクラス分けの発表があるから、そのカードを受け取りに行った。さっきの光井ちゃんと北山ちゃんと一緒に行く。
「私1ーAだった。雫は?」
「わたしもA。新くんは?」
「ボクもA。すごい偶然もあったもんだね。光井ちゃんも北山ちゃんも同じクラスだなんて」
「雫でいい」
「私も、ほのかでいいですよ?」
「そう?じゃあ雫ちゃんとほのかちゃんね」
入学式で隣の席に座った人が同じクラスなんてすっごい偶然だよね。確率は四分の一だったのに、全員一緒なんて。
深雪ちゃんはどうかな?なんかすっごい人に囲まれてるけど。
「さすがだなあ、司波さん。魔法式も綺麗で、あんなに綺麗な人だなんて。憧れちゃう」
「あれ?ほのかちゃん、深雪ちゃんのこと知ってるの?」
「入試の時見て、憧れたんだって。新くんこそ知ってるの?」
「うん。深雪ちゃんのお兄ちゃんがボクと幼馴染でね。その紹介で三年前くらいに知り合ったよ。そのお兄ちゃんが過保護だから、なかなかボクに会わせてくれなかったんだ」
「司波さんのお兄さん……。きっと美形なんだろうなあ」
達也くんはイケメンだよ。でもそれは会ってからのお楽しみだと思う。
深雪ちゃん、あの様子じゃ近寄ってもダメだろうなあ。挨拶はヴィジホンですればいっか。
「ほのかちゃん、雫ちゃん。ボクこの後用事あるから」
「用事?」
「うん。ちょっと生徒会に行ってくるー。また明日ね」
晴れて新入生になったんだから、入学式の後片付けを手伝ってもいいはず。
手伝いに行ったら案の定あずちゃんがプンスコしてた。何で?
あずちゃんじゃ重い物持てないだろうから手伝いに来たのに。魔法も使っちゃダメだろうし。
ずっと顔が赤いのはなんでなんだろう?ボクはさっさと終わらせてあずちゃんと一緒に帰りたいだけなのに。
それに家に色々と荷物が運ばれてるけど、流石にボクが開けるのはまずいものもありそうだし。荷解き大変だろうから早く帰れるようにって手伝ってるんだけどなあ。