魔法科高校の「大賢者(嘘)」 作:ギャングスタ
授業を受けて、というか見学してみて。小学校の頃の授業とはだいぶ違うなって思った。先生が一人一人つかないし、専門的な授業になっていたり、それこそ選択式の授業だったり。
授業も面白かったけど、楽しみだったのは食事。学食やカフェテリアはとても美味しいとあずちゃんから聞いていたので、お昼休みが楽しみだった。
あずちゃんは生徒会であまり食堂に来られないみたいだけど。ボクも遠くない内にそうなるんだろうなと思って、食堂でご飯を食べてみたかった。
けど、深雪ちゃんを巡って達也くんのお友達とボクのクラスメイトが衝突。ご飯は美味しかったけど、楽しめなかった。
放課後。ボクは教師に呼び出されていた。何だろうと思っていたら、教職員枠で風紀委員をやってくれないかということだった。風紀委員会は何というか、魔法を使ったりして暴れた人を取り締まる人たちのこと。
それを聞いて、ボクは首を傾げる。
「ボクって実技試験は成績いいかもしれませんけど、実戦は苦手ですよ?」
「まあ、相田なんて名前まともに聞いたことないし、魔法師としては無名だろ?簡単に内情を暴露すると教職員推薦ってやつは存外適当で、だいたい男子最優秀成績者を風紀委員会に送り出すんだよ。中学までの成績なんて当てにならないってわかってるからな。それでも人数は選ばないといけないわけで」
「ボクより適任そうな森崎くんは?」
「ああ、森崎を知ってるのか。彼も教職員枠で推薦済みだ。部活連と生徒会推薦、それに教職員推薦で風紀委員会のメンバーを九人出さなくちゃいけないんだが、部活連が推薦者を一年生から出すのは難しくてな。部活動の新入生勧誘期間の前に部活に入るやつはいないことが原因で」
だから成績が良い男子をとりあえず推薦しておこうと。それくらいしか判断材料がないからと。生徒会推薦の一年生もそうなるんじゃないかな。
風紀委員会については、あずちゃんにあまり聞いてなかったなあ。
「何で森崎くんは呼ばなかったんですか?」
「相田が生徒会の中条と親しいと聞いていてな。生徒会枠で潰されるのを防ごうとしたわけだ」
「大人って汚い……」
「そうだな。森崎には明日にでも伝える。教師としては良い経験になるから、苦手と言わずにこなして欲しい」
「ちょっと考えます」
「ああ。話は以上だ」
「失礼します」
面倒なことになったなあ。部活はやるつもりなし。生徒会は総代になった子が前期は務めるって話だから、ボクがあずちゃんの手伝いができるのは後期になってから。
だからって風紀委員会は。呪文は使いたいけど、人相手に使いたいわけじゃない。
呪文は危険だって自覚した。人を殺せる力。それは魔法もそうなんだろうけど、確かに表立って使えない力だよね。隠そうとしてくれた真夜様には感謝しかない。
でも、どうしても使わないといけない場面だったら使うと思う。それこそ三年前のように、達也くんや深雪ちゃんが危険になったら。
あずちゃんが危険になったら、すぐに呪文を使うと思う。
学校に預けていたCADを返してもらってそんなことを考えながら、今日は帰ろうと思ってあずちゃんに連絡して一人で帰ろうとしたら校門の前で騒ぎが起きていた。
あれ、達也くんたちじゃん。もしかしてお昼みたいにまた深雪ちゃんを求めて口喧嘩してるの?深雪ちゃんの気を引こうとしたら逆効果だよ。
深雪ちゃんに取り入るなら、達也くんを本心からヨイショしないと。三年くらい付き合ってるボクが言うんだから、間違いない。
わちゃわちゃ揉めてるなあ。高校生にもなってみっともない。好きな人、憧れの人にちょっかいかけるなんて小学生かな?
魔法……は禁止されてるか。CADはあるのに。
じゃあ、朝と同じ手段だ。
「ピオラ」
呪文?使いますけど?
すばやさ、つまり速度だけ上がる魔法。スタミナも上がるから効果が切れるまでマラソンも短距離走もへっちゃらになる。
これでどうするかと言われたら、全力ダッシュで突っ込むのさ。
「深雪ちゃーん!一緒に帰ろー!!」
ボクの大声で気付いた人は気付いて、口を開けている。全力ダッシュの勢いのまま人混みを跳び越える。トベルーラは使ってないよ。
ちょうど対立してる集団の真ん中に着地。そんでもって深雪ちゃんに笑顔を向ける。
「深雪ちゃんごめん!お父さんたちから預かってた誕生日プレゼント渡し忘れてた!だからさ、お詫びついでに何か食べに行こうよ!」
「新さん……」
「お前、何だよ!抜け駆けか!?」
叫んできたのは、クラスメイトなんだけど知らない男子。名前なんだっけ?まともに自己紹介してないからわかんないなあ。
「うん、そう抜け駆けー。達也くんにも奢るよ?前祝い。早く行かないと美味しいお店しまっちゃう」
「図々しいな!?俺たちが先に司波さんを誘ったんだ!」
「ねえねえ。深雪ちゃん。ボクと一緒に食事と、達也くんと一緒に帰るの。どっちが良い?」
「……はぁ。今日は予定があるので、お兄様と一緒に帰ります。新さんとはまた今度で」
意図を汲み取ってくれてありがとう。
決定的なこと言ってくれて、ありがとう。
「聞いた?
つまり、親しくもないただのクラスメイトの君たちじゃ深雪ちゃんと一緒に帰る資格がないってこと。君たちは二科生を、ひいては達也くんをバカにしてるんでしょ?
そんな人と深雪ちゃんが仲良くなるわけないじゃん。
「お前は何でウィードの味方をするんだ!ブルームとしてのプライドはないのか!?」
「
「はぁ!?」
目の前で食ってかかってきた男子に問いかける。彼女はいないだろうね。深雪ちゃんにお熱みたいだし。
差別用語使っちゃうような人だもんなぁ……。
「兄弟が一緒の学校にいたら、一緒に帰るのって変?恋人と一緒に帰るのが、何か変?ボクは少なくとも、魔法師としての優劣じゃなくて、一般的な家族愛とか、人情で話してるんだけど?予定がある人をこうやって引き止めるのは、高校生としてどうなの?──魔法師は事象をあるがままに、冷静に、論理的に認識できないと務まらないんじゃないの?」
「な、あぁ!?」
逆上してるけど、タイムリミット。生徒会長様が来たみたい。というか、深雪ちゃん?なんで例として恋人を挙げたら達也くんの横顔をチラチラと盗み見てるんだい?兄妹だよね?
生徒会長がわざわざ来るって、誰かが通報したんだろうなあ。隣の女性は風紀委員会の人かな。それにタイミングが良すぎる気がする。図ってた?
「校門前でたむろしている生徒たち!他の生徒の下校の邪魔になっていると苦情が来ています!」
流石に入学式で挨拶をしていた生徒会長の声は覚えていたみたいで、クラスメイトの動きも止まる。
上級生が二人、勧告に来たんだから。新入生としては固まるよね。
「ごめんなさーい。すぐに帰ります」
「あら?あなた、あーちゃんの……」
「中条の知り合いか?」
あれ。あずちゃんボクのこと紹介したんだろうか。生徒会長は入学式の準備でも片付けでも姿を見なかった気がするんだけど。
「ボクが説明するから、達也くんと深雪ちゃん帰りなよ。予定、あるんでしょ?」
「新、いい。俺も説明する。すみません、お二方。勉強熱心な深雪のクラスメイトが帰る前に質問がしたかったようで。深雪は総代ですから」
「……まあ、そういうことなら。ただし校門前は他の生徒もたくさん利用します。できるだけ他の人の迷惑にならない場所、範囲で行なってください。騒ぎ立てるようなことではありません」
「生徒会長がこうおっしゃっていることもあるし、今回は不問と致します。以後このようなことがないように。……魔法が用いられていようがいまいが、風紀委員会の処罰対象になりかねないからな」
風紀委員のあの人、多分魔法が使われる直前だったってわかってたんだろうなあ。だからボクたち──正確には一科生の一部──に向ける目線が鋭い。
「いいじゃない、摩利。達也くん、ただのお勉強だったのよね?」
「はい」
「ではすぐに解散するように」
摩利と呼ばれた女性の声で、特に睨まれた一科生がすごすごと校門から出ていく。残ったのは達也くんの周りにいた二科生とほのかちゃんと雫ちゃんだけ。
「君たちももう帰りなさい。次はないぞ?」
「ベー」
なぜか赤髪の女子生徒だけ注意してきた人にあっかんべーしていた。そんなことする人、初めて見たよ。摩利ちゃんは呆れてる。
一応頭を下げてから、僕たちも校門から出ていく。その際にほのかちゃんと雫ちゃんを手招きで呼んで、全員に紹介した。
この二人は止めようとしていたために、他の人たちに好意的に受け止められていた。
「新。あれは逆効果じゃないか?」
「えー。そう言われても。魔法師って普通の常識通じないの?ボク、あずちゃんと一緒の学校ってだけで第一高校選んだから、ここまでなんて思わなかったんだけど?」
「それは言うな。俺もこの幼児性には驚いてる。深雪は注目を浴びやすいとは思っていたが、ここまでとは」
「達也くんも大変だねえ。でも、あの二人は大丈夫だから」
「魔法の結果か?」
「そんなことしてないよ。使うまでもないし」
達也くんとそんな話をしてから、達也くんのクラスメイトと自己紹介し合った。ボクと深雪ちゃんとの関係を聞かれたけど、達也くんの妹として仲良くしてるってことを伝える。
ほのかちゃんが閃光魔法を使ってでも止めようとしていたようで、それをしきりに謝っていた。ボクと達也くんにお礼を言ってたけど、達也くんが例の憧れの人だとわかってほのかちゃんの顔が赤かった。
あ、ふーん?ボクは何もしないよ?
あとで深雪ちゃんが怒ったら大変だからね。凍傷になりたくないし。
「そういえば新くん?あんな人垣を跳び越えるなんて凄い身体能力してるのね?魔法でも使ったの?今度戦わない?」
さっきあっかんべーをしていた、エリカちゃんからの質問。来るかなって思ってたけど、答えは用意してある。
この中でさっきボクが呪文を使ったことがわかっているのは達也くんと深雪ちゃんだけだ。
「そうだよ。秘密にしてね?止めた側が違反行為してたってなったら問題だから。ボク変なBS魔法師みたいでねえ。身体強化の術式がそこそこ得意なんだ。でもボク魔工師志望だから、戦っても勝てないからね?」
「やってみないとわからないじゃない」
「ボク、そういう近接戦闘で達也くんに全く敵わないんだ。魔法も最低限使えればいいし、求めてるのは知識。戦うなんてとてもとても」
「あー……。まあ、確かに?君、武芸とかはやってないね。護身術とか?」
「そうそう。最低限殴り合えるだけ。で、その殴り合いは達也くんとやったら五秒もたないよ」
「なんで一々俺を基準にするんだ……」
深雪ちゃんに対する達也くん凄いよねえアピールだけど?それに近接戦闘は達也くんに教わったし。師匠を基準にするのは普通じゃない?
あれ、ほのかちゃんが釣られて達也くんに輝いた目線を向けてる。エリカちゃんも達也くんに興味あるみたいな表情。見せた身体能力をものともしない対応力とでも思われたんだろうか。間違ってないけど。
魔法あり、呪文ありでも結果は変わらないからなあ。
あれ?これボク、やっちゃった?
深雪ちゃんによる凍傷コース?
深雪ちゃんが向ける表情は、とても良い笑顔でした。
……今日はあずちゃんに慰めてもらおう……。
森崎?奴さん真面目に校内探索して地理の把握してたよ。