やはり俺の後輩生活はまちがっている。   作:信濃氷海

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④ されど剣豪将軍はラノベ王を目指し続ける。(後)

 ……長い夜が開けた。いや本当に長かった、材木座先生の駄文を本気で読もうとした俺がアホだった。1ピコグラム程は期待していたのだが、蓋を開けてみればいつもの材木座クオリティ。

 

「……ねみ」

 

 しかしもう朝になってしまった。仕事でほぼ徹夜とかブラック企業かな?……え?本物のブラック企業はそんなもんじゃ無い?はーやはり社畜はクソ、時代は専業主夫ですよ主夫!

 

 で、眠気を押し殺しつつ自転車を漕ぎ、学校について駐輪場に放り込むと、そこでボフンと重量感のある物が背中にヒット!!狙撃か?!

 

「おはよーヒッキー!!あれ、元気ないじゃんどしたの?」

 

「……そりゃあんな怪文書読んでたらこうもなりま……つーかなんで先輩は元気なんすか」

 

 いつも通り元気一杯!な由比ヶ浜先輩を見て、素朴な疑問を感じる。アレ読んでこのテンションなら凄いを通り越して少々不気味なのだが——

 

「ゔぇ?!あ、あーダヨネー!!いやーあたしもつっかれちゃってさー!」

 

「あんた絶対読んでないだろ」

 

「つーん」

 

 ……まぁしかし、むしろそっちの方が正解なのかもしれなかったという気もするが。

 

 で、授業中に不足した睡眠をとり、まぁ覚醒度5割程度になった俺はいつも通りの死んだ目のまま部室に来た。ちなみに通常時の覚醒度は6割弱である。

 

 と、そこでは——

 

「——あ」

 

 僅かに身体を前後に揺らし、雪ノ下雪乃が居眠りしていた。その光景は妙に美しく、危うく俺は近づいて——

 

 その瞬間、ゆっくりと目を開けた彼女がこちらを見た。

 

「……お——」

 

「驚いた、あなたの顔を見ると一発で眠気が吹き飛ぶわね」

 

 ぐっ……!こ、このアマ……小さく欠伸する彼女に背を向け、心中で舌打ちする。危うく見てくれに騙されて血迷う所だった、この女永眠させてやりたい……

 

 しばらくすると依頼人の材木座がいつも通り厨二病全開で現れ、遠慮なくどっかり椅子に座ると何故かすんごく偉そうに喋り出した。

 

「さて!!!!では待望の感想を聞かせてもらうではないか!」

 

 ……今のうちに心の中で合掌する。ああ材木座よ、今から始まるのは恐らく感想を述べる会では無く、お前の公開処刑だ……

 

「ごめんなさい、私にはこういうジャンルの小説は疎いのだけれど」

 

「構わん構わん!凡俗の意見も取り入れねばハリウッド作家には成り上がれんものなぁ!忌憚ない意見を述べてくれたまへ!」

 

 なーにがハリウッド作家だ……

 

「そう……

 

 

——つまらなかったわ」

 

「ぐぽげはぁ!!」

 

 あーあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぶ、ぶひぃ」

 

 あれから、雪ノ下の容赦なき追撃で1つ、由比ヶ浜の何気ない一言が義輝をきずつけて2つ、そして俺のパクリ認定で3つ。計3コンボの即死技を食らった材木座は死んだ。

 

 息も絶え絶えに呻いていた彼だったが、しかし暫くするとゆらりと立ち上がって——

 

「……また、読んでくれるか?」

 

 不死鳥の如く蘇った彼は、そう不敵に言い放った。……おいおい、鋼のメンタルはもう持ってんじゃねぇか。

 

 これほどの猛撃に耐えられるのならば、思うままにやればいい。それが彼にとっての本物ならば——

 

「取り敢えず、次は完結したモン持ってこいよ」

 

「無論だ八幡よ!ふおおおおおッラノベ王に、我はなる!!!!」

  

 そう叫び、材木座は駆け出す。彼はようやくのぼりはじめたばかりなのだ……このはてしなく遠いワナビ坂をよ——

 

 劇画チックに走り去る材木座と、それを見送りうんうん頷く俺。

 

 それを薄気味悪そうにジト目で見る由比ヶ浜先輩と、下らなそうにこめかみに手を当てため息を吐く雪ノ下先輩。

 

 実に居心地の悪い男女間の温度差を残し、かくして奉仕部2つ目の依頼は達成された……多分。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談というか、今回のオチ(?)

 

「ククク……やはり時代は神絵師の時代!ぶっちゃけ内容がクソでも神絵師ガチャさえ成功すれば我は一気にアニメ化作家になるという寸法よ!」

 

 数日後、体育の授業で恒例の如くペアを組んだ俺と材木座は、準備体操をしつつそんな話を……っていうか材木座が垂れ流していた。

 

「そうなれば声優さんともお近づきになれ、ゆくゆくは運命のバージンロードを……」

 

 相も変わらず妄想が過ぎる……つーか流石に中身空っぽじゃいくら神絵師でも売れんだろ、知らんけど。

 

「ならばだ八幡よ!我はここでコペルニクス的大転回を試みた即ちィィィィ!!我自身が神絵師になれば良いのだァァァ!!!!」

 

 ……どこから突っ込めばいいのか分からんが、お前絵描けんの?

 

「くるっるくるっぷ、無論——描けぬに決まっておろ……あ痛いいいいいらめえええ八幡そこはそんなに曲がらないいいいい!!」

 

 おっと失礼、つい力が入り過ぎてしまったようだ失敬失敬。で?そんじゃ今から絵の練習でもしようってのか?

 

「問題はそこよ。楽して神絵が描ければ最高なのだが……」

 

 言ってる事は最低だがな。

 

「ハポンハポン、故にだ八幡。我はついに思いついたぞ全ての解決方法を!!——絵も描けるラノベ作家、即ち二刀流になれば良いのである!!正にラノベ界の大○翔平!メジャーデビューまっしぐらなりィィィィ!!!!」

 

 ……一応聞くが、理由は。

 

「え、そりゃ八幡よ、二刀流って言っておけばどっちも微妙でも許されるだろうJKでござる」

 

 ……さいですか。

 

「フゥーハハハ!!!!幾多の世界線を乗り越えついに辿り着いたでござーーーーる!!!!待っているが良いハリウッド、そしてノーベル文学賞よ!!ラノベ二刀流王剣豪将軍推して参る!!!!」

 

 天に向かって響く材木座の哄笑。ご都合主義すぎてもはや乙とすら言えんが、まぁ俺のことじゃ無いし適当に頑張って欲しい。奉仕部は貴方の夢を無責任に応援しますので……

 

 ……そういやこの依頼ってどっちのポイントなんだ?寄ってたかって材木座(の原稿)を罵倒して終わったが。

 

 ま、何でもいいか。最初の由比ヶ浜先輩の奴は間違いなく勝ったの俺だし、今回のもまぁ最悪材木座になりたけ奢っときゃ買収できるだろ。即ち俺が2勝したの確定。

 

 今の段階でそれだけ取れりゃ十分十分、後は暫くの間……出来れば年末ぐらいまで依頼が来なけりゃ完璧なんだが。呑気にそんな事を考える俺であったが、ここで問題その願いは叶うんでしょーか?

 

 答えはCMの後!(大嘘)

 

 

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