蛇巫の少女、呪術高専に通う   作:猫島 合

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毎回の誤字報告ありがとうございました。とても助かります。
また、感想等もとてもうれしいです!ありがとうございます


六話 交流戦

鉈弥を除いた加々知家の人間は、その悉くが惨死した。現場の凄惨さは、語る事さえはばかられる程だった。現場に急行した術師数名も、残穢に当てられて気が狂う始末。敷地内に立ち入ることも出来ずに、厳重に結界が張られ禁足地となったのだ。

 

そして、生き残りである加々知鉈弥の処遇を考え直さねばと、上層部の人間は考えた。

姦姦蛇螺は、最適合者である彼女を狙って、加々知家を襲撃したと推測したからだ。半身を食らってきた彼女を取り込めば、姦姦蛇螺は完全体へと近付く。そうなってしまえば、取り返しがつかない。そんなもの、災厄だ。五条悟の手にだって余るかもしれない。

 

ならば。

 

ならば、姦姦蛇螺に取り込まれるより先に、彼女を処分してしまおうと考えるのは、腐ったミカンこと、上層部の人間なら当然の事だった。彼女さえ死んでしまえば、今度また宿儺の器のような馬鹿げたものが現れたとしても、彼女を引き合いに出されてゴリ押されることも無くなる。

 

その任を課せられたのは、元々姦姦蛇螺の上半身の見張りをしていた一族の生き残り、香露定次だった。

 

彼の一族は、姦姦蛇螺の上半身が逃げ出したことを隠蔽した挙句、その責任を負うのを恐れて、または、責任を負ったつもりなのか集団自決した。高専に通っていた嫡男を残して。自殺の見本市のような光景だったと、調査した呪術師は不謹慎に呟いていた。

 

 

「あの蛇を殺せ。貴様の一族の不始末は、嫡男である貴様が始末をつけろ」

「…………」

「案ずることは無い。あれは人でなく、蛇だ」

「残りの鱗はどうするのです。まだ残っていた筈でしょう」

「……それは追々考えるさ」

「……そうですか」

 

 

それじゃあ、意味無いだろうが。香露は、誰にも聞かれずそう呟いた。

 

 

■■■

 

最近、蛇をよく観察している。

“蛇の権能”を使いこなすためだ。蛇の生態を知ることで、よりこの術式の理解が深まるのではないかと思い、暇を見つけては蛇を見ていた。

 

今日は、アオダイショウを見つけたのでソレをまじまじと観察する。アオダイショウも見られていることを分かっているのか、鎌首をもたげて、私を見つめていた。

 

そっと手を伸ばしてみる。その蛇は、怯えることなく私の手に擦り寄ってきた。蛇って人懐こいんだな。と思いつつ、指先で撫でる。蛇は、それを甘受するように目を細めた。……目を細めた?

 

「……蛇って瞼あったか?」

“おひぃさま。もう おたわむれ は おしまいですか”

「……? なんか、聞こえた」

“おひぃさま? いかが なさいましたか?”

「……アナタ、喋ってる?」

“はなして おりますが”

「…………」

 

 

 

「伏黒! 私、ハ〇ー・ポッターだった」

 

伏黒は、私が首に巻き付けている蛇を見て、一瞬ぎょっとしていた。

 

「パーセルタングだった」

「……“蛇の権能”か?」

「多分そうだと思うけど……蛇と話したのは初めて。今まではどうして話せなかったんだろうか。不思議」

“わたしは、けんぞく で ございます から。そのへん の へび とは ちがう のです”

「眷属?」

“あるじさま の うつわ で あらせられる おひぃさま が、わたし ども けんぞく の ことば を かいされる のは、とうぜん の きけつ”

「……???」

 

よく分からない。さらに蛇は続ける。

 

“また、あるじさま との つながり が ここ すうかげつ で こくなりました ゆえ こうして わたしども けんぞく の こえ が つうじるように なったの で ございます”

「……?」

 

『あるじさま』というのは、姦姦蛇螺のことだろうか。私は、蛇の言っていることを伏黒につたえる。伏黒は、少し考え込んだあと、その蛇の顔を覗き込んだ。蛇も小首を傾げて伏黒を見ている。可愛い。また撫でると、蛇は目を瞑った。

 

「瞼……」

“けんぞく は みな あります”

「眷属は、皆あるんだって。不思議」

“うぃんく も できます よ”

 

ぱちん☆

 

「……か、可愛い……」

「…………」

 

こんなに表情が豊かな蛇は、海外アニメ位でしか見たことがない。可愛い。

 

「伏黒。この子飼いたい」

「元いた場所に返してこい」

 

……私に見えているということは、肉体を持っているということである。試しに目を瞑って見てみると、他の蛇よりも熱(呪力)を持っていることがわかる。聞いてみると、あるじさまに分けてもらったらしい。よく分からん。

 

“わたしども の こと は、なんなりと おつかい ください まし”

 

よく分からんが、敵意はないらしいので、よろしくすることにした。可愛いので仕方ない。

そういえば、私の家の相伝術式は蛇を操るものだった。が、私にはその術式は受け継がれていないので、操るとかは出来なさそうである。できるとしたら、協力してもらうぐらいだろうか。

 

「そういえば、もう明日か。交流戦……至極緊張するぜ。さながらセンター試験前夜」

「お前、割と適当な想像で例えるよな……」

「伏黒は緊張しない?」

「してない。ただ全力で挑むだけだ」

「……そうだね。打倒香露さん」

 

 

蛇を首に巻いたまま、2人で先輩達が待っている訓練場に戻る。先輩達も驚いていたが、説明するとどう役立てるか相談に乗ってくれた。とてもためになる。索敵に使えるのでは? とパンダ先輩から案が出たので、出来るかどうか蛇をに問う。

 

“ええ、なんなりと。 すぐ に しょうしゅう を かけます おひぃさま に いちど おめどおり させた ほうが よい でしょう”

「ありがとう!アオちゃん!」

“まあ すてき な おなまえ。きょうえつ しごく に ございます”

 

その後、招集された眷属達があまりにも多くて野薔薇ちゃんが卒倒してた。私もこんなにいるとは思わなかったので、取り敢えず軽く挨拶をして解散してもらった。

 

■■■

 

「こちら、新入生の吉野順平君です!」

 

そう言って、五条は吉野を紹介した。京都校のメンツが白々しい目付きで吉野を睨むので、彼は身を縮めてしまう。そんな彼を、更に京都校のメンツは鼻で笑った。

 

加々知は、首を傾げて彼に近付いていく。それに伴って、香露もズカズカと吉野に近寄って、至近距離で彼を睨めつけた。二人の視線を近くから浴びて、吉野は只管に困惑する。うち1人は、とても見たことがある顔付きである。

 

「五条さん。何故この男から姦姦蛇螺の残穢を感じるんですか? 御説明願いたい」

 

至極不愉快だと言うように、香露が顔を顰めて五条に問うた。五条はあっけらかんと笑って、吉野を指さす。

 

「その子、姦姦蛇螺に恋されちゃったらしいよ」

「……は?」

「やっぱり、鉈弥と定次には分かっちゃうか〜。

順平、こっちの小さい方が加々知鉈弥。姦姦蛇螺の鱗を食べ続けて処理をしている一族の子。

それで、こっちの大きくて目つきの悪い方が、君が出会って恋されちゃった姦姦蛇螺の上半身を監視していた一族の香露定次。

順平と同じ、姦姦蛇螺被害者の会だから仲良く出来ると思うよ」

「………???」

「は?」

 

加々知は、背後に宇宙を感じ、香露は眉をこれでもかと言うくらい顰めた。なんだその括り。香露はなにか言いたげに口を数回はくはくと動かしたあと、深く深くため息をついて順平を再度睨んだ。

 

「……ご愁傷さま。同情するよ」

「は、はぁ……」

 

表情と言葉があっていない。彼はそれだけ告げると、さっさと1人で控え室へ行ってしまった。

 

「……で、その箱なに?」

 

そこで、我に返った釘崎が、五条と吉野で運んできた大きな箱を指さす。五条は、待っていましたと言わんばかりに笑みを深くした。

 

「故人の虎杖くんでぇーっす!!」

「はい!! おっぱっぴー!!」

 

………………………………………………。

 

「何か言うことあんだろ」

「黙っててすんませんでした……」

 

「????、???????、??????」

「おい伏黒。加々知が処理落ちしてんぞ」

 

加々知は、真希に抱えられて退場した。色々と情報量をぶち込みすぎた。

 

■■■

 

「チッ! 蛇畜生のくせに、足が早い!!」

 

幼い時から敷地内の森を使ってパルクールもどきで遊んできた加々知にとって、この鬱蒼とした森林は、独壇場である。ひょいひょいと枝を避け、するりと木に登り、縦横無尽に駆け回る。

 

蛇というより、猿だな。と香露は独りゴチた。香露の術式は、射程範囲がある。先程から、加々知は、その範囲のギリギリ外を駆けていた。追い付かせず、かといって引き離すこともせず。誘い込まれていることは明白だった。だが、ここで見逃すのは、香露には出来ない。

 

香露には、“加々知鉈弥を殺す”という秘密裏の任務が課せられている。この交流戦は、絶好な機会だった。

他の生徒は、宿儺の器である虎杖悠仁を、学長の命で殺しに行っているのだが、それとまとめて事故という処理をしてもらう手筈である。

 

「おーにさーん、コチラぁ」

「舐めやがって……!」

 

ぺろ、とスプリットタンを覗かせながら、加々知が香露を煽る。

 

……香露は、別に煽り耐性が低い訳では無い。声を荒らげているのは、演技である。頭の中は、至極冷静だった。香露の姿を視認した瞬間、「行け」と真希に背中を押されて駆け出したところを見るに、この先に誰かが待ち伏せているのだろう。

 

彼の階級は、準1級。真っ向勝負では、4級の加々知に勝ち目は無い。

 

(いるとしたら、呪言師の狗巻か。それとも禪院の姉か……伏黒 恵が1番可能性が高いか?)

 

すっ、と目を細める。

 

「合流される前に、殺す」

 

目の前の加々知が、跳躍したのが見えた。どうやら溝になってる場所を飛び越えたらしい。香露は、そこで加速した。敢えて、最初からスピードを緩めていたのである。

 

(馬鹿が。この僕が、あの程度のスピードしか出せないとでも?)

 

随分と舐めてくれたものだな。

 

「__百日紅(ひゃくじつこう)」

 

落ちろ。

 

 

加々知が、対岸に着いた瞬間。彼女の足がズルリと滑った。そのまま、後ろへ倒れていく。

 

大した高さではないだろうが、あの落ち方では受け身もまともに取れない。どさり、と音が聞こえた。香露は、すぐに溝の縁に到着し下に倒れている加々知を見下ろす。頭を石に打ったらしい。鮮血が辺りを汚していた。

 

「……再生するんだったな。さて、トドメを刺すか」

 

下に降りる。

 

香露は、薄く目を開いたままの加々知の顔に足を乗せた。このまま踏み潰すつもりである。力を込めると、ミシ、と嫌な音が響いた。

 

「呆気なかったな、蛇。

…………は?」

 

その時。がしり、と加々知が香露の足首を掴んだ。両手で抑え込むように、がっちりと掴んでいる。一瞬、足を退かそうとしているのかと思ったが、逆である。その場に留めるように、自分の頭蓋骨が軋むのも構わず、足を固定している。

 

香露は、その不可解な行動に顔を顰めた。なんだ、仲間が来るまでの時間稼ぎか?そう思いつつ、更に足に力を込める。加々知は、その薄い爪を立てるように香露の足を握り締めていた。

 

そして、その加々知の袖口からするりと何かが這い出してくる。

 

それは、1匹の白い蛇だった。蛇はするすると香露の足に登り着く。

 

加々知家の相伝術式を知っている香露は、目を見開いた。

 

「白蛇操術!? 継いでいたのか!!」

 

咄嗟に加々知から離れようと足を引く。だが、加々知は腕を離さない。先程とは逆の方の袖口からも白い蛇が這い出てきて、香露に絡み付く。香露は、ひたすらに足を引いた。

 

すると突然。加々知が、パ、と手を離す。

 

香露は、バランスを崩して蹌踉めき、すぐ後ろの壁に背を着いた。すぐに足に絡み付いている白い蛇を掴み、引き離す。

 

「これは、……」

 

香露が以前に見た、白蛇操術で使役している蛇とは違う。あれは式神であったが、今加々知が出した蛇は、本物であった。種類はシロマダラ。本来はもう少しハッキリとした黒い斑模様が特徴なのだが、この二匹は色が薄い個体……いや、絵の具か何かに塗られている。つまり、ブラフ用である。

 

香露は、苛立ちながらその蛇を遠くへ投げる。

 

「なんのつもりだい、君。自分の家の相伝術式を馬鹿にしているのか?」

「…………」

 

加々知は、ゆっくりと血塗れのまま起き上がると、雑に顔に着いた泥と血を袖で拭った。

 

「穢らしい蛇め……これじゃあ、君の叔父上も浮かばれないだろうに」

「……蛇じゃない」

「あ?」

「確かに、私はいずれ蛇になる。

……だけど今は、蛇じゃない。伏黒が、みんなが、私を人間だと言ってくれた。

だから今の私は、人間だ」

「……へぇ。随分と、健気な事を言うじゃないか」

 

香露は、嘲るように口の端を釣り上げた。そして、体制を整えて、構えを取る。それに対して加々知はアイスピックを手に構えた。

 

「さて、僕は君より強いわけだが。どうするんだい?1人で勝てるとでも? 増援をよぶかい?」

「……そうだね。呼ばせてもらうぜ」

 

ピィ、と甲高い口笛の音が響く。そうすると、ゾロゾロと草の根を掻き分けるように大量の蛇が現れた。木の上からもぼとぼとと降り注いでくる。その量の多さに、香露は、思わず顔を引き攣らせる。谷底を埋め尽くす程の蛇。気が付けば、足の踏み場がないぐらいに犇めきあっていた。シュウシュウと、音を漏らしながら、みな香露を睨んでいる。

 

「ここが、アナタの蠆盆だ」

「はッ、バケモノめ……」

 

進もうにも、足に大量の蛇が絡み付いて動けない。毒蛇も紛れているようだ。加々知の合図ひとつで香露に噛み付いてくるだろう。

 

だが香露は、溜息をひとつ着いて、肩の力を抜いた。

 

「話をしようか」

「……?」

「君の今後のことさ。今から僕は、君を殺すつもりだ」

「何故? 私は、受肉の兆しも出ていない。衰弱もしていない。それに、どうせあと半年もすれば、死刑になるのに……」

「上の方々は、それが待てないそうだ。僕の家が逃した、姦姦蛇螺の上半身の被害は知っているね? 君の家族を殺し、あの吉野順平という男を呪った。きっと、それだけじゃない。これからも増えていく。

……そして、恐らく姦姦蛇螺の上半身は、君との同化を狙っている。そうなってしまえば、被害は計り知れない。だから。

だから……香露家の人間として、責任を持って、お前を殺す。そうしなければならない」

 

香露は、吐き捨てるように、まるで自分に言い聞かせるかのようにそう言った。

 

「……どんなに言葉を飾り立てたとしても、僕は加害者だ。そして、君は被害者。これから君を殺す僕をどうぞ恨んでくれ」

「…………香露さん」

「……なんだよ。命乞いか?」

「話が長い。校長先生の朝礼ぐらい長い」

「………………………は?」

 

加々知は、歩き始める。蛇達が彼女に踏まれないように道を開けた。木漏れ日が、彼女の金色の目に反射して淡く輝いている。香露は、その輝きから目が逸らせなくなった。金縛りにあったように、動くことが出来なくなる。いや、比喩ではなく、実際に動けない。声も出せない。

 

蛇に睨まれた蛙? かつゆ(蛞蝓)なのに?

 

(ふざけるなよ……)

 

「アナタだって、被害者だ。姦姦蛇螺の」

 

(だまれ、)

 

「蛇の尾に巻かれるように、雁字搦めにされているのは、同じだ」

 

(だまれ!)

 

「私は、アナタに害されていない」

 

(……黙ってくれよ)

 

「故に、アナタを恨む理由なんて、無い」

 

……まあ、アナタに恨まれる理由は、これから出来るけど。そう呟いて、加々知は脚を振り上げた。香露の股間に。

 

「ッッッッッ!!!!!!!!!!???」

 

蛇の上に倒れ込む。しかし、蛇は押し潰されないようにさっと避けたため、受け身も取れず地面に激突した。痛いとかそういうレベルじゃない激痛。前回蹴り上げられた時よりも威力が増している。まだ金縛りは解けない。患部を押されてることも出来ない。縮こまることも出来ない。ただ、荒く呼吸をして、痛みを必死に逃がそうとする。

 

「姦姦蛇螺に取り込まれる? なら、私が逆に姦姦蛇螺を喰らう。鱗みたいに、呑み込んでやる。その後に、きちんと死ぬ。

そうすれば、香露さんも吉野さんも自由。被害も出ない。モーマンタイ!」

 

香露は、痛みに震えながら眼球を動かして加々知の顔を見上げる。

 

彼女は、力強く笑っていた。決意を示すように。

 

その顔が、幼い時に出会った彼女の叔父によく似ていて。

 

(……本当に、アナタのことが、嫌いです……“游鉈(なみた)さん”。こんな厄介な女をどうしろと……)

 

『定次。いつか、俺の姪に会ってくれ。どうしようもないぐらい気味の悪い姪だけどよ、お前みたいな優しい奴と触れ合えば、少しは人間らしくなると思うんだ。……いつになるか、わからねぇけど。あの馬鹿と仲良くしてやってくれ』

 

香露は、そこで意識を手放した。もう今はなにも考えたくなかった。

 

「えっ、死んだ……?」

 

残された加々知は、急に動かなくなった香露を前にオロオロとしていたが、香露には預かり知らぬ事である。

 

■■■

 

やっちまった。

 

私は、焦っていた。周りにいる眷属蛇たちが、やんややんやと勝鬨を上げているが、それも耳に入らないぐらい焦っていた。

 

まさか、気絶するとは思っていなかった。自分が持てる力を全て出して蹴り上げただけだ。真希ちゃん先輩に言われた通りに。余程角度が良かったのだろうか。……いや、悪かったのか?

 

“にんげん は、きゅうしょ を しまえ ない ので、 かわいそう”

“おひぃさま みごと でした!”

“けらけら!”

 

蛇達が、目を細めて笑っている。それを他所に、私は香露さんの顔を覗き込んだ。ぐったりとしている。数回頬をつついてみたが、起きる気配は無い。

 

私の肩に、アオちゃんが乗ってくる。

 

“おひぃさま おつかれさま で ございます みごと な けんとう で ございました”

「アオちゃんこそ、ありがとう……おかげで迷わずにここまで来れた」

“おやくに たてて うれしい です”

 

アオちゃんが先に道を調べて、私の服の中に潜んでいたシロマダラ達が道案内をしてくれていたおかげで迷わずにここまで来れた。

 

本当は、香露さんがここを飛び越えようとした時に、蛇に脚を絡ませて落とそうと思っていたのだけれど、結果オーライである。

 

“この おとこ どうしますか?”

“かぷっ! と やりますか?”

“ならば、このわたしめに! おひぃさま の かんばせ を ふんだ ふとどきもの に さばき を!!”

 

ヤマカガシ達が騒いでいる。いや、君たちが噛むと洒落にならないから……

 

取り敢えず、拘束してて貰うことにした。

 

近くに呪霊はいないし、襲われたとしてもアオちゃん達が守ってくれるだろう。

 

上に這い上がる。

 

少しクラりとしたが、動く分には大丈夫そうだ。

 

他のみんなはどうしているだろうか。

 

私は始まって直ぐにみんなから離れたから、その後がどうなったのか分からない。

 

蛇達に聞いたところによると、京都校の学生達はみな固まって動いていたらしいが……

 

「……取り敢えず、合流……」

 

その時、空が陰った。咄嗟に目を閉じて見上げる。帳だ。帳が降りている。

 

なんでいま?

 

嫌な予感がする。

 

私は、香露さんの元に戻って、彼を揺り起こした。

 

暫く呻いていたが、思ったよりも早く起き上がった香露さんに、帳のとこを問う。彼は、顔をひたすらに顰めて、空を見上げた。

 

「…………加々知鉈弥。緊急事態だ。協力しろ」

 

そうして、産まれたての子鹿みたいな香露さんに肩を貸して、私達は歩き出した。

 




白蛇操術
白い蛇の式神を操る術式。加々知家の相伝術式。現代で扱えたのは、鉈弥の叔父である加々知 游鉈(なみた)のみ。既に故人。
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