「...一人でログインとか久しぶりだな。」
昼。
ダイキは一人でGBNのラウンジに居た。
今日はユイハはなにやら忙しいらしく、どうしても暇で退屈なのでログインしたのだ。
周りは相も変わらず沢山の人が思い思いのGBNを過ごしている。
そして俺はミッションカウンターでミッションを見ていた。
なんでもこのゲームはランクを上げることで、必殺技なるものを使えるようになるらしい。
正直ガンダムゲーにそんな要素加えて大丈夫か?とか思うが、どうやら人によって全然違う自分だけの必殺技は大方受け入れられているようだ。
まぁかく言う俺も興味がない訳ではない。
よってミッションを見ている。
...やっぱフォース専用ミッションは実入りが良いな。
採集クエストなんてあるのか。
これとか楽でいいかもな。
そう思い、花を摘んでくるミッションを選ぶ。
まぁ俺は知っているんだ。
こういうなんもない風に見せているミッションほど危険なんだ。
なんか某暴れざるみたいに採集クエストの途中で乱入してきた利するんだ。
まぁなんにせよ非戦闘ミッションも一度はやっておくべきだろう。
ミッションを受諾すると、操作で格納庫に移動する。
目の前にはなんの改造も施していないイージスガンダム。
正直、対人戦を行うのであれば何かしら改造を行った方が良いのは確かなんだが....。
生憎コイツを買ったことで俺には金がない。
他のMSを買って別の武器を使ってみるとかも出来ないのだ。
周りを見ると、どことなく鉄華団っぽいジャケット来ている人や、なんかずっとジークシオンとか言って男に囲まれて騒いでる女。
多分アレ姫プだな。
まったく群れちゃって...馬鹿らしい。
ネトゲなんだからネカマの可能性だってあるだろ。
そう思い、心中で冷笑するとイージスに視線を戻す。
そして昇降機に乗ると、イージスの中に入った。
するとイージスがカタパルトへ送られる。
「えっと....目的地はここか。」
どうやら時間制限などないらしく最終的に花を納品できれば良いらしい。
「サクラン・ズラ、イージスガンダム。出撃する。」
適当にそう言うと、発進する。
場所はそこそこ離れている。
ならば近くまで変形していこう。
機動力は変形した方が上だ。
操縦桿を動かしてイージスを変形させる。
そして目的地の周辺を目指して飛んでいく。
...正直、ミッションを見るとフォースのミッションは報酬も良いし、なんなら数も多かった。
やっぱソロは少しキツイだろうな。
...でもなぁ、正直ユイハの誘いに応じるのは正直きつくなること請け合いだろう。
元々経験者ばかりの所に初心者が入れば早く追いつくように指導されるだろう。
そういうの、嫌だ。
俺はゲームくらいは自由にやりたい。
飛んでいると戦闘区域の横を通り過ぎる。
爆発音や射撃音が微かに聞こえてくる。
横を見ると、編隊を組んだザクがグレイズ相手に戦闘を繰り広げていた。
動き的に対人戦だろう。
ああいうのやりたいんだけどなぁ。
なんとなくボッーとしながら飛行していると、ミッションエリア周辺に就いた。
よし、ここら辺で降りるか。
イージスをMS形態に変形。
そして地面に降り立つと降りた。
すると俺が降りた瞬間、イージスは霧散する。
どうやら非戦闘エリアでは降りれば消えるようだ。
まぁ良い。
簡単なクエストだし、さっさと終わらせるに限る。
地に降りると場所を目指して森林を歩き回ろうとする。
が、林がまたガサっと揺れた気がした。
「ッ!?」
そちらの方向を見るも、そこには誰もいない。
「...疲れてんのかな?俺。」
これではまるで被害妄想の強い痛い奴だ。
俺はお前が俺を見てたのを見てたぞとか言い出しそう。
まぁいい。
さっさと行こう。
◇
「あの人が、...あのイージスガンダムの、パイロット.....」
男が森林を歩いていく中、一人の少女がそんな男を見ていた。
そしてずんずんと進んでいく男の背後から尾行し始めていた。
◇
「あぁ、なんで俺ゲームでこんな歩き回ってんだ?意味不明だろ。」
そうぼやきながらも森の中を歩いていると、前方が少し明るくなっている。
どうやら森地帯を抜けたようだ。
「....すげぇな。コレ。」
森地帯を抜ければ、目に焼き付くほどの青空と緑。
そして桃色の花弁の色をした花が所せましとびっしり自生していた。
その光景は仮想現実とは思えない光景だ。
「....これがヤナギランって植物か。これ取ってくれば良いのか。....乱入とかは、ないのか。」
少しがっかりしながらも、それならそれで花を取ってくればいいだけだからな。
ヤナギランを適当に一つ手に取って降り取る。
質感も本当の花みたいだな。
ま、とりあえずこれでクリアしたも同然。
ストレージの中に入れておこう。
メニューを開いてストレージに放り込む。
....なんかアイテムボックスが正式名称っぽいけど、これどう見てもストレージだよな。
そう思いつつも、その場をさっさと後にする。
...なんかまだ視線を感じる。
「マジで、何なんだ.....。」
若干さっきから感じている原因不明の視線に辟易しながらもその場を離れる。
そしてヤナギランの群生地を抜けた所で、一人プレイヤーが立っているのが見える。
金髪の、女か.....。
ユイハもそうだが、金髪をよく見るな。
すると相手側も俺を見て口を開いた。
「あら?貴方が私を呼びましたの?」
少女は笑みを浮かべてそう言う。
大して俺はよく分からない奴相手であるので警戒心を解かずに答えた。
「お前なんか知らねぇよ。待ち合わせしてるなら人違いじゃねぇか?」
そう言うと、彼女は笑う。
「そうなのですね。ならここら辺は離れておいた方が良いですわよ。お連れの人にも伝えてくださいまし。」
「はぁ?ツレだぁ?なんの話をして....」
「来たんだなぁ!」
ダイキが聞き返そうとして男の声に遮られる。
見ると、パイロットスーツを身に纏った男3人が目の前の女と対峙していた。
「そこの男も、その女の仲間か?」
「いいえ、私はフォースは取りませんの。それに、彼はどう見ても初心者でしょう?」
そう言うと男はこちらに視線を向けて、口を開く。
「そうか、ならここから離れるんだな。今からここは戦場になるんだから!」
「は、はぁ,,,,,要するにバトルするんすね。」
なんであんなノリノリでそんな寒いこと言えるの?
おっちゃん達のRPって見ているとキツイ物があるな。
多分、これは俺がまだこのゲームに入り込めていないからもあるだろうが。
「あら?私も一応、初心者ですけれど。」
「GPD経験者を初心者とは言わねぇ....。テメェのせいで2人もやめちまった。経験者が、初心者に負けたままじゃ、カッコつかねぇんだよ!!」
そう言うと相手はガンプラを展開する。
それは二本の剣を持ったイフリート。
そしてそれに続いて後ろの二人がドムを展開する。
「くすっ、おかしい人達。でも良いですわ。ちょうど暇してた所なんですのっ!!」
そう言うと機体を展開する。
それは黒いマントを纏ったギャン。
手には盾、そして左手には黒い槍だ。
そしてブーストを吹かすと激突する。
「戦闘が、始まったか。1対3とか勝てねぇだろ。終わったなあの女。」
そう言いつつ、逃げようとしたその時、
「あっ.....」
「あ?」
林から首を出していた女と目が合った。
コイツ、もしかして....見てたのコイツか!
「おい、お前か?さっきまで俺の跡を尾行していたのって。」
「あ、あ、あうぅ.....」
あうぅってなんだよ。
質問に答えろ。
目の前の藤色の髪の女はどこかキョロキョロとした後に困ったように声を出す。
どうやら見た目的にも俺の年下。
小学生か中学生くらいか?
そのくらい年齢に見える。
...;まぁアバターの外見年齢なんぞあてにはならないが。
「答えろ、なんのつもりで俺をつけていた。」
「あっ、...ああっ、きゃっ!」
俺が近づくと、涙目で後退しながらもこけて尻もちをつく。
...なんだコイツ。
なんか毒気抜かれて来たぞ。
俺がなんか悪いことしているみたいな気分になってしまう。
「....あぁ~、...悪い。こっちも不安だったからさ。なんで見てたのかくらいは教えてくれないか。」
このままではらちが明かないし、優しく彼女に問い掛けつつ、ゆっくりと歩み寄る。
なんか木の上から降りられなくなった猫を相手している気分だった。
すると彼女は涙目のまま、俺の顔を覗き込む。
「ご、ごめんなさい....あ、あの機体。ど、ど、どんな人が乗ってるか気になって...ごめんなさい!!」
「そ、そうか。」
機体を見て乗っている人に興味を持ったから....か。
ガンプラ自体が好きな人はそんな感じなのか?
いや、でも俺の機体は、
「俺の機体なんか見ても面白くなかっただろ。普通に作っただけなんだから。」
俺がそう言うと、彼女はさっきの臆病で控え目な感じはどこへやら。
こちらにずんずんと距離を詰める。
「そ、そんなことないっ!あ、あっ、あなたのガンプラは、貴方と戦えることを喜んでいた!傷ついても笑ってた!だ、だ、だからそのあんなガンプラは初めてで、あの.....」
「お、おう。」
やっべぇ....何言ってんのか分かんねぇ。
もしかして危ない子か?
なんかガンプラが喜んでいるとか。
もしかして新手の宗教?
サンダーボルトに出てくるNTのアイツなの?
そう思っていると、強く風が吹く。
その方向を見ると、既に機体はイフリートしか残っていない。
「マジか、アイツあの人数差でここまで持ち込んだのか。」
唖然とする。
3対1にも関わらず、大した傷はついていない。
対照的に対峙しているイフリートはボロボロだ。
『クソっ!当たれぇ!当たれェ!!』
『そんな糞雑魚攻撃当たりませんわっ!もしかして操作方法も分からないんですの?なら私が直々に教えてあげまちゅよ~~~?』
『ッッテメェ!!!』
イフリートがシュツルムを連射するも、どれも避けたり破壊したりして防ぎ、大して自分は盾から射撃する。
弾はイフリートを着実に削っており、イフリートは射撃戦を止めて二つの剣で突っ込んでいく。
しかし突っ込んでくるイフリートの斬撃を盾で受け止めるギャン。
『そもそも、初心者である私に負ける仲間さんに問題があるのでは?そんなんだから低いランクから上がれないってなんで分からないのか理解に苦しみますわ!』
『言わせておけば!!』
激昂して、タックルしようとするイフリート。
しかし、タックルを避けると背後に回って腕を切り落とした。
その戦い振りは洗練されていた。
「...って、おいおい.....!!」
しかしギャンが斬った腕。
それは空中を舞い、そして俺たち目掛けて飛び込んでくる。
「わっ、ど、どうしよ.....」
後ろであの少女が恐怖からか表情を歪めて、俺の腰に纏わりついている。
どうやら腰を抜かしてしまったらしい。
クソっ、逃げようにもコイツが邪魔で逃げれねぇ....
それならあの女の言う通り、コイツと無駄話してないでさっさとこの場から離れればよかった!
そう思いつつも、メニューを開いて機体を押した。
機体は彼を乗せて展開し、飛んできた腕を腕のビームサーベルで弾く。
「危なかった.....」
間一髪の自体を切り抜けてほっと息を吐く。
「....これが、あの機体の...中。」
「...なんでいんの?」
後ろから声が聞こえて来たと思えば何故かあの邪魔だった少女が居た。
なんで一緒に搭乗しているのか。
それが分からない。
しかし彼女も首を傾げる。
「わ、わからない.....。」
「そ、そうか。ま、まぁいいや。取り敢えずそこからあんま動くなよ。気が散るから。」
そう言って俺はイージスのスラスターを吹かす。
まずはここから離脱する。
そしてラウンジに帰ろう。
すると未だ、戦い続けている二人が一瞬離れる。
『弱い奴は消えて強いプレイヤーが残る。これが正しい私の貴族主義ですの!!甘ぇこと言う前に自分の機体磨きなおしてたらどうですの~~~ww』
『クソっ...勝てねぇ。ダメだ!勝つんだ俺は!あんなメスガキに舐め腐られたまま、帰れるかよぉぉ!!...ふっー、ふっー、ッッ!!』
するとその瞬間、イフリートが紫色に光る。
「あぐっ...っぅつ.......あのガンプラ、苦しんでいる.....」
後ろで呻く女。
どうしたんだ?
なんかもうわけわかんねぇ。
空間にヒビとか入ってるし。
困惑する俺たちを他所に目の前のお嬢様の口調の女は落ち着いたものだった。
『マスダイバー、ですの。しょうもな、つまらないですわ。』
どこか興醒めしたような様子だ。
しかし、イフリートはさっきとは違った動きでギャンに突撃する。
速度が上がっているのだ。
『うおおおぉぉぉおお!!!』
『だからGBNは嫌いなんですの。簡単に不正出来て、証拠も残らないなんて普通にクソゲーですわ。ほんっと初心者にそこまでしなきゃいけない自分を恥じなさって、どうぞ?』
そう言いながらも、相手の攻撃を避ける。
が、さっきとは違って結構ギリギリだ。
するとギャンは何を思ったか、相手を盾で押した後に上に飛び上がる。
何をするつもりだ。
すると、イフリートの目がこちらに向いた。
イフリートは小刻みに痙攣を続け、そしてこちらに肉迫してくる...って。
「なんでこっちに来る!?待て待て待て!!!」
「き、来た!ど、ど、ど、どうしよう!!」
後ろの少女がこちらに顔を寄せて聞いてくる。
「うるさい黙ってろ!なんとか逃げるから!!!」
逃げようとするも、相手の機動力はさっきの比ではない。
このままじゃ攻撃が届く。
戦うしかないのか....。
『どうして、なんで操作が出来ない!!動け、頼む!いう事を聞いてくれイフリート!!!』
男は悲痛に叫ぶ。
しかし反して機体は剣を振り回す。
「肉迫されたならサーベルで!!」
腕のビームサーベルで防ぐ。
彼のゲームにおいて困ったら格闘を振るという癖が出ていた。
が、相手の足がぐにゃりと動いたかと思えば、蹴り飛ばされた。
(攻撃が、捉えられない....!なんだあの動き!)
明らかに関節の可動域を超えている。
そして目にも止まらぬ剣舞で機体を傷つけ始める。
相手は実体剣であるのでPS装甲のおかげで大した傷ではない。
なら、ここで!!
足のサーベルを起動して蹴りあげると、相手の脚部に傷が入った。
然しそれをすると今度はイフリートは一度離れて、シュツルムの最後の一発を放つ。
シュツルムはイージスの顔面に当たり爆発した。
「クソっ、メインカメラが!!」
そして再度接敵し、腕の関節部に剣を挿し込む。
そしてもう片方の剣で執拗にコックピットに当たる部分を小突いた。
「うわぁ!ああああもう!クッソふざけんな!!そんな分からん殺しな動きは普通出来ないだろチートだろチートォ!!」
「ひうっ!!」
コックピットが揺れて、思うように機体を扱えない。
そんな苛立ちから台バンしてしまい、後ろの少女が怯える。
....いかんいかん。人が居るのにみっともない。
「わ、悪い。ちょっと苛立ってた。」
「だ、大丈夫。で、でも...台バンは止めてあげて?」
正直何故かは分からないが、相手は普通では考えられない挙動をし、動きも早く、力も強い。
これは勝てない....ダイキはそう確信する。
現にメキメキと機体が音を立てている。
『その子に気を取られている間に、私が後ろから胴体を貫いてやりますわ。初心者の子には悪いけど、これもGBNと知りなさい。』
一方お嬢様口調の少女は謀略を巡らす。
最早目の前の対象への興味を失った少女が取った行動は、他の人に相手を任せて自分はさっさと虚を衝いて倒すというものだった。
それだけマスダイバーは自分の目に収めておきたい物ではなかった。
「クソ....分かってんだよ。勝てねぇって。初心者相手にこれはないだろ。はぁ....。」
もはや相手が自分の装甲を削り切り、コックピットをぶち抜くのを待つのみ。
諦めの境地だ。
ダイキは項垂れる。
「ま、待って!...ください。まだっ!あなたの機体は....諦めて、ないです!」
「....あ?何言ってんだお前。」
急にまた電波なことを言いだした少女。
余裕がなくなっていた俺はそれを流す気力もなかった。
「まだ、機体は....機体は、貴方と戦おうとしているからっ、パイロットのあなたが、...諦めちゃ、駄目!」
コイツ、勝手なことを.....
この状況でどうしろってんだ。
てかコイツ、勝手にここに乗っているし、なんならコイツが腰に纏わりついたり、後を尾けたりするからこうなってるわけで。
コイツにも非が結構ある。
それに、やっぱり.....。
「あのさぁ、そうやって機体がどうとか意味わかんない事言うの止めろ!!お前のリアルじゃどうかは知らないし、他のフレンドは受け入れてくれるかもしれないけど、俺はお前なんか知らないんだよ!電波発されても迷惑だ!!」
「ひうっ!?...うっ、ううっ....で、でも!言ってるもん!本当に、機体は、あなたとまだ...戦おうって!!うぅぅぅ....。」
男に気圧されてとうとう泣き出す少女。
それを見て、ハッと冷静になるダイキ。
俺が今やったこと、それはただの八つ当たりだ。
年下の女の子に当たり散らして泣かせてしまったのだ。
考えてみれば自分が中学生の時とかどうだ。
なんか色々設定考えて、もっとこの子なんかより痛かっただろ。
それならガンプラが喋ってるなんかぬいぐるみと会話出来るんだぁ~ぐらいの可愛い主張じゃないか。
「....分かったよ。諦めない。」
「ふぇ.....」
彼女は俺の目を見る。
「お前が言うには、まだ戦えるんだろ。コイツは。だったらその言葉を信じてやる。....本当にごめん。怒鳴ったりして。」
「あえっ...い、いいです...。わ、私も、わかんないことがあったら慌てちゃうから...。」
彼女はそう言って笑う。
そう言いつつ、武装欄をチェックする。
相手には張り付かれてるし、サーベルは使えるかもしれないが、事態を変える程ではない。
また一旦離れられての繰り返しだ。
メインカメラも故障。
だからこそ射撃は当たらないし、見るにバルカンは壊れている。
正直本当に何が出来るんだ。
この状態で諦めるなって無茶言うな。
そうやってイージスの武装欄を隈なく見る。
もはやPS装甲を保つためのバッテリーは尽きる。
速く決めなければ....!
そう思い、探し回っていると。
見つけた。
一つの、致命的かつ劇的な一撃を。
「...機体と喋れるんだろ。お前。」
「えっ...いや、その...そういうわけじゃ。」
「なら、謝っといてくれ。」
そう言うと機体を動かす。
イージスはイフリートに抱き着いた。
イフリートは剣の柄でイージスの背を殴る。
揺れるコックピット。
だが、それにも動じずにダイキはその武装を選択する。
するとテンキー画面が現れる。
その画面に2887と入力する。
「イージスガンダムを、爆発させる。」
そう言ってEnterボタンを押した。
始まるタイマー。
そして、その瞬間ダイキは彼女を抱き留める。
「ふえっ!な、何するんですかっ!!」
「良いから近くに居ろ!ここに残りたくはないだろ!!!」
そう叫んだ瞬間、背にジェットパックが出てくる。
原作再現凄いな。
アスランがイージス爆破した時に逃げるのに使っていた物だ。
これも、完成度が高いからなのだろうか?
そう思いながらも、開いたハッチから彼女を抱えて飛んでいく。
イフリートと機体の間を抜けて、そしてできるだけ遠くへ。
『(なっ、まさか....機体を自爆しようと!?初心者が、ですの!!?)』
少女は驚く。
初心者と言えば初めて作った自分の機体に愛着を持っている物。
そんな簡単に自爆の決断はできないだろう。
だが、この状況ではそれが最適解だ。
そしてある程度離れた瞬間、ものすごい音と衝撃と熱を伴いイージスは自爆した。
辺りに立ち込める爆炎。
そしてその衝撃でダイキは彼女ごと吹き飛ばされる。
そんな彼女を庇うように彼は自分を下にして落ちた。
痛む背中。
そしてグルグルと視界が周り、胃液がせり上がる。
「ちょっ、どけ...うっ、おえぇぇ.....。」
抱き留めていた彼女を突き飛ばし、ゲロを吐く。
彼女はしばしぽかんとするも、彼に歩み寄る。
「だ、大丈夫...?ご、ごめんなさい。こういう時どうしたら良いのか...知らない。」
「あ、あぁ...うぉえ...気にすんな。GBNって本当にリアルで....おえぇぇうおぇ!いやマジで気にしないでそれもちょっと精神的にきついから。」
少女にゲボを吐いているところを見られて心配されている。
中々に生き恥だった。
そして煙はどんどんと薄れていく。
イージスを自爆までさせたんだ。
どうだ...これで無理なら走って逃げるぞ。
見ると、イフリートは目もバキバキに割れており、火花を機体全身からしきりに出しながらその場に立っている。
「マジか.....。」
あれだけやってまだ立っているとか....絶望的だろ。
そう思っているものの、隣の彼女は動じていない。
「だ、大丈夫。も、もう大丈夫ですから。」
「大丈夫...って。」
彼女がそう言った瞬間、イフリートは膝を付く。
そしてゆっくりと地面へと倒れた。
機体は霧散し、後に残ったのは倒れている男一人。
「...やったのか。」
「う、うん!やった!やったよ!」
彼女は嬉しさからか、こちらに抱き着いてくる。
近いなお前。
突然抱き着かれてドギマギしていると、さらに大きな機影。
そして目の前に飛び上がっていたギャンが着陸する。
そしてコックピットからあの金髪が降りてくる。
そう言えば....アイツが飛び上がらなければ俺たちは狙われなかった。
そして俺たちが狙われても助けに入らない。
つまりはコイツはヘイトをこちらに映したのか。
アイツのせいみたいなもんじゃないか。
「申し訳ありませんわ。巻き込んでしまって。」
「まったくだ。おかげでこちとら機体一個使ったんだぞ。どうしてくれるんだ。」
取り敢えずまだ気持ち悪いし、口の端にゲロ付いているけど舐められちゃダメだ。
毅然な態度を取れ。
オラ!損害賠償しろ!
すると彼女はこちらを見てメニューを操作する。
「これでよろしくって?」
そう言って2000BCコイン送ってくる。
「えっ、...こんなお金良いのか。」
「はした金ですわ。でも、私の誠意でもありますの。」
「いや、誠意をはした金とか言うなよ。」
なんかお金で解決された感強いが、まぁもらえる物はもらっておこう。
後ろを見ると、彼女はどうやら俺の後ろに隠れているようだった。
人見知りかお前。
ギャンに乗り込もうとする彼女は、振り返る。
「そうだ。貴方、私なんかと比べたら比べ物にならない程に弱いですわ。」
「なんだお前、いきなり喧嘩売ってんのか?」
俺が少女の言葉に噛み付くと少女は笑う。
「ふふっ、今じゃ喧嘩になりませんわ。...でも貴方の戦い、見てて面白かったですの。次も、あなたの自爆を見せて下さいまし。」
そう言ってメッセージ欄にまたメールが入る。
見ると、フレンド申請が届いていた。
そのままギャンは飛び立ってしまう。
「...アホか。もう二度と自爆はしねぇよ。」
そう言ってフレンド申請をゴミ箱に入れるのだった。
あんなこと言われてフレンド登録するわけないだろ何考えてんだ。
帰り道。
MSを失った後、二人は森の中を歩いて帰っていた。
「なぁ、お前さ。名前何て言うんだ。」
「へっ、な、...名前?」
彼女は聞き返してくる。
「そりゃそうだろ。二人きりなのに呼びにくかったら会話しにくいだろ。俺はダイキ。ウツバ・ダイキ。よろしく。」
ダイキは自己紹介する。
普段の彼なら面倒とこんなことはしないだろう。
しかし、共に戦ったことによる連帯感と怒鳴って泣かせてしまったことの罪悪感が彼の態度を軟化させていた。
「あっ、わ、私は...り、り、リアです。よ、よろしくお願いしますっ!」
名前を言うと勢いよく頭を下げる。
そんな彼女を見ながら口を開く。
「そういえばリアはMS持ってないの?もし今持ってたら乗せて送ってもらいたいんだけど。」
...まぁ持ってたらそもそも俺の機体になんか乗ってないだろうけど。
すると彼女は申し訳なさそうな顔をする。
「ご、ごめんなさい。で、...でもまだ出来てないだけで、一応作ってもらってはいるんですよ!え、えへへ...楽しみなんです。」
「そうか....。」
笑う彼女は本当に楽しみにしているんだろうと見ているだけでも思わせた。
こんなにもガンプラが出来るだけで純粋に笑える。
案外ガンプラってのはこういうものなのかもしれないな。
俺は言われて始めたからよく分からないが。
そう言う意味で言えば、俺は損しているのかもしれないな。
「?ど、どうかしましたか?」
「何でもない。」
彼女の言葉に返答する。
歩き続けて暫くすると、エントランスのある街が見えてきた。
すると彼女は足を止める。
「どうした?」
「そ、その...あ、あのっ.....。」
なにかわちゃわちゃしていると思ったらメッセージが飛んでくる。
見ると目の前の少女からのフレンド登録だ。
「ま、また...会ってくれますか?」
俺は彼女を見て、答える。
「...まぁ別に俺もフレンドいないし、いいぞ。」
そう言ってフレンド登録を承認する。
これで二人目のフレンドだ。
一人目?
幼馴染である。
登録を承認すると、彼女は俺に笑顔を見せる。
「あ、有難うございます....。じゃ、じゃあまたっ!」
そう言って消えていった。
ログアウトしたのだろうか?
....取り敢えず、納品するか。
そう考えた俺は、ラウンジのミッションカウンターに向かうのだった。
なんていうかこういうキャラが見てぇとかこういう機体どうっすかとか来ると割と嬉しかったりします。
改造案も面白いですしね。