ゲーミングクラブのチャンネル登録数が僅か1日でマイナス2万人と、凄まじいことになっている。それに対して運営側は、V(バーチャル)tuberではなくC(キャラクター)tuberという概念を打ち出している。パワハラを受けた子は、幾らでも代わりの人間はいるんだぞと言われたそうだけど、本当にそう思っていたのかな。
中の人があまり表に出てこないアニメやゲームの声優ですら、交代したら大きな騒動になる。中の人が前面に色濃く出るVtuberで、中の人を交代するとどうなるのか、簡単に予想することは出来ると思うけど、トップが現場から離れているからこその考え方なのかな。
「最後に告知っぽくなりますが、1日でも早く世間に知らせるため、6期生は立ち絵と声だけでも一足早く公表いたしますわ」
コメント:おつー
コメント:お?
コメント:え、早くない?
コメント:ついこの前5期生がデビューしたばかりなのにもう?
コメント:絵師とか決まってるの?
「まだ全然決まってませんわ。ですが、簡易的な立ち絵なら2日3日で用意できます。SDキャラでも良いですわね。とにかく6期生だけは、すぐに発表したいですわ」
コメント:デフォルメキャラの立ち絵だけでも発表したいの?
コメント:……まさか
コメント:姫が慌ててる?
コメント:こういう時の姫は絶対何かやらかすぞ。というかもうやらかしてそう。
「……ちなみに、6期生は5人組ですわ。詳細はまた後日の配信でお伝えしますわよ」
コメント:え?え?
コメント:5人組っておい
コメント:ああああああああああああああああああああああああ
コメント:復讐の時間だああああああああああああああああああああああああああ
コメント:はえ?マジで言ってる?
コメント:FA移籍されてて草
コメント:何の話なんだこれ
ゲーミングクラブの人達とディスコードで話して、全員玉手箱所属のVtuberになるという意思があるのを確認したために配信の最後で告知をするとTwitter上でとんでもない勢いで拡散されていく。マージで影響力強かったVtuberグループの集団移籍みたいなものだし、玉手箱にとっては大きな追い風になった。
「早ければ、明後日にはSDキャラで自己紹介してもらうからそれまでに名前を考えといてね。あ、前世と同じ読みの漢字は避けてほしいけど、1文字までなら大丈夫だと思う」
「……本当に、良かったのか?下手すれば、向こうから訴えられる可能性も」
「前世についてのことを一切話さないって誓約書に書いて貰ったし、話すつもりは無いんでしょ?それなら大丈夫だよ。
間違っても『前に所属していた会社でパワハラを受けていた』とかは喋らないでね」
「それぐらいの良識は持ち合わせているし、前世を思いっきり利用するつもりも無い。……ただ純粋に、また一からVtuberとして頑張らせてもらおう」
崇禅寺海斗改め
あ、待遇面はしっかりと説明しなきゃ。
「事務所の人間はS1からS5までの階級があるんだけど、S1が社長、部長クラス。S2が課長クラス。S3が係長クラスでS4とS5が一般社員だね。今いる6人の内、A子さんだけはS3で、その他の社員はS4だよ。4月に新卒の子を入れるけど、大卒がS4で高卒以下がS5ということになる。ここまではOK?」
「OKも何も、公式HPに載ってる公開情報だから流石に頭には入ってる」
「うん。で、ライバー達は全員がS3相当だね。給与形態も特殊だし、昇級や賞与というものはないよ。S3だからS4以下の人間を、使って貰っても構わない。それこそライブの時とか、何か食べ物を買って来て貰う、という機会もあるだろうしね。でも人を使う時は、ちゃんと責任を負ってね?」
「責任……」
「飲み物を買いに行かせて、その人が事故に遭ったら、買いに行かせた人の責任ってこと。大量の作業を頼んで、その人が過労で倒れたら、作業を頼んだ人の責任ってこと。そういう意識は持っておいて」
ライバー達は、会社の中ではちょうど中間の階級ということにしてある。係長クラスと同等という扱いだね。ライバー達が軽んじられないように、ライバー達が怠慢にならないように、ここら辺はきっちりとしている。後はスパチャの取り分や広告収入についての説明をして、専属契約書にサインしてもらう。
……よし、これでこの5人は玉手箱が確保出来たね。そうこうしているうちに、ゲーミングクラブのチャンネルの方で、動きがあった。何食わぬ顔で新しく動画を投稿したのだ。その声は、当然今までとは変わっている。
その動画には批判が殺到して、あっという間に低評価が1万を超えた。いやあ、アクティブ率が高いし更にチャンネル登録数が減っていく。下手すれば、全盛期の半分にまで登録数は落ち込むだろうな。しばらくは野次馬効果で再生数こそ伸びるだろうけど、再生数すらどんどんと落ちていくはず。この5人が戻れなくなった以上、再起の芽はない。