月の少年と星に願う短冊   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回で最終回になります。
サブタイもちょっとだけ変えてみました。

それではどうぞ。



第6話 紗夜と悠里の願い、そして……

「んーっ、あったかくておいしー♪」

「日菜、こぼさないように気をつけなさい」

「だいじょーぶっ!」

「…いや。日菜ちゃん、口の右下にソースと青海苔が付いてるから……」

「えっ、嘘っ!?」

 

七夕祭りを一緒に楽しむ悠里と紗夜、日菜の3人。

悠里の指摘にそんなバカな!という表情をする日菜。

 

「そういえば、日菜ちゃん。短冊は飾らなくていいの?」

「あ、そっか! 忘れてた!」

「はあ……それじゃあ、あんなに走ったのはなんだったのよ」

 

悠里の一言で本来の目的を忘れてた日菜。

妹の反応を見て、あの時あんなに走った自分はなんだったと溜息を吐く紗夜。

 

「えへへ。ごめんごめん! ねえ、せっかくだからおねーちゃんと悠里くんも短冊、書いたら?」

「私は別に……」

「僕も別に……」

「いーじゃん、いーじゃん! ほら、あそこに書くスペースあるよ!」

 

短冊を書く事を渋る2人に、あたしは書いてる間に自分の短冊を飾ってくるからと言い残して行った……

 

「日菜! ……はあ……」

「……行っちゃったね……」

 

気は進まないが、悠里と紗夜は短冊が書けるスペースに向かう事に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……(願い事なんて……思いつかない)」

「……(流れで書く事になっちゃったけど……そもそも思いつかないし)」

 

短冊と軽く睨めっこする悠里と紗夜。

お互いに願い事というのが、思いつかないのだ……

 

「どの辺に飾ろうかなーっ! あたしのお願いごと♪」

 

日菜を見ると、短冊をどの辺に飾るか探してる最中だった。

 

「(ギターが上達しますように? バンドが成功しますように? ……何か違う)」

「(…歌が上達しますように? それとも、何回もループしてる自分の運命を変えられますように? ……何か違うな。そもそも七夕の神なんて当てにしてないし)」

 

とりあえず願い事を挙げてみる紗夜と悠里だが、何か違った。

 

「「((……そうだ))」」

 

ふと、ある事が浮かび、2人は短冊にペンを走らせた……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おねーちゃん、悠里くん、短冊書けた?」

「ええ。もう飾ったわ」

「うん。僕も飾った」

 

日菜が戻ってきて、紗夜と悠里に短冊は書けたのかと訊くと、2人はもう飾ったと言った。

 

「えっ、どれどれ?」

「日菜に見つからないような場所に飾ったわ」

「僕も紗夜ちゃんと同じ。そういう日菜ちゃんは飾れたの?」

 

自分達の短冊を探す日菜に、紗夜と悠里はそう言った。

 

「あたしはね……飾らなかった」

「えっ、どうして?」

「……」

 

悠里の言葉に日菜はそう答えた。

それを聞いて、紗夜は驚いた。訊いた悠里でもさえも驚いた……

 

「あたしのお願い……もう叶っちゃったから♪ えへへ」

「? どういう事?」

「……(なるほどね)」

 

紗夜は分かってないようだが、悠里は日菜の表情を見て解った。

 

「短冊にね、『おねーちゃんと仲良く過ごせますように』って書いたんだ。そうしたら、今日、叶っちゃった」

「日菜……!」

「…そっか。願い事、叶って良かったね?」

「うん! やっぱり今日って、すっごくいい日だよ♪ だからきっと、おねーちゃんと悠里くんが書いたお願いごとも叶うよ!」

 

笑顔で紗夜と悠里に言い切る日菜。

 

「ええ、そうね……いつか……私の願い事も叶う気がするわ」

「そうだね……いつか紗夜ちゃんの願い事も叶うかもね」

 

時間はかかりそうだけど……と、心の中で思う悠里。

彼女の願い事も実は検討がついてるのだ。

 

それは……

 

「(『日菜とまっすぐ話せますように』。きっといつか……叶えられたら────)」

 

という願い事だった。

紗夜ちゃん、顔に出やすいよって言ったら拗ねるかもしれないので、言わないでおく。

 

「日菜ちゃん。あそこに短冊が残り1枚あるから、もう1つ願い事、書いちゃえば?」

「あっ! ほんとだー! せっかくだから、あたし、書いちゃおーっと♪」

 

悠里が日菜にそう言った。

偶然なのか分からないが、水色と紫色が混じった珍しい短冊がポツンとテーブルに置いてあった。

 

「最後の1枚の短冊、どんなお願いごとにしよーかな……? そうだ♪」

「あの子、何を書いてるんでしょうね……」

「うーん……紗夜ちゃんと遊べる日が多くなりますように……とか?」

「それ、本当に書きそうですね……」

 

いつも以上に、るんるん♪と言いながら短冊に願い事を書く日菜。

その姿を見て何を書いたのか予想する紗夜と悠里。

 

書き終わった日菜は笹の葉に短冊を飾り、こちらに戻って来た。

 

「日菜、願い事、何を書いたの?」

「うん♪ 短冊にね、『汐里くんと友達になりたい』って書いたんだ」

「えっ……」

 

紗夜の質問に日菜は悠里を見ながらそう言った。

それを聞いた紗夜……特に悠里は驚いていた。

 

同時に思った。なんで彼女は短冊にそう書いたんだろうと……

 

「悠里くんから話を聞いた時……あたし思ったんだ。会ってみたいなって……」

「日菜! あなた、悠里さんの話を聞いてなかったの?」

「……紗夜ちゃん待って」

 

無茶苦茶な願い事を書いた妹に、紗夜は日菜が書いた短冊を取りに行ってきなさいと言いかけたが、悠里がそれを制止した。

 

「……もし仮に叶うとしたら、汐里の……友達になってくれるの?」

「うん♪」

 

その偽りない言葉は悠里でも解った。

実は生前、汐里は同年代の子達から変な目で見られていたのを悠里は知っていた。

 

 

どうして僕には友達ができないの……?

 

 

…僕がなんでもできちゃうから……?

 

 

ひっく!……大人の人達も僕が悪いんだって言うよぉ……

 

 

今でも悠里は覚えてる。

自分に弱音を言う汐里の姿を。

……人間は自分と違う物に嫌悪する。まだ幼かった汐里には辛過ぎたのだ。

 

推測だが、日菜も天才が故に汐里と似た経験をした筈だ。

けど、決定的な違いがあった……

 

それは男女の差で変わる評価……所謂、『男女差別』というやつだ。

 

自分も経験した事があるから解る。

尤も自分の場合は中学の時『落ちこぼれ』と『お前なんか死ねよ』という扱いだったが。

 

だから今日の七夕祭りに日菜が書いてくれた願い事と向き合わないといけないかもしれない……

 

「…そっか。汐里、()()()()()()()()()?」

『あはは……おにーちゃん、やっぱり気づいてたんだ……』

「「えっ……?」」

 

悠里の呼ばれた声に答えるかのように氷川姉妹の前に現れたのは、日菜と同じ156cmで遠目から見たら、少女にも見えなくもない中性的な少年だった。

髪色は悠里と同じミントグリーン色のショートヘア。瞳も薄い青紫色……

ただ唯一違うのは、前髪は紗夜と日菜から見て、若干短めで右に流しており、悠里と違ってややツリ目ではなく、クリっとした感じの目だった……

 

「あの、悠里さん、もしかしてその人が……」

「…ん。さっき話した弟の汐里。7歳で死んだけど、変わった思念体だから普通に成長はするよ。ちなみに僕と同じ16歳」

『おにーちゃん、自己紹介くらい僕だってできるよー!』

「…だって汐里、紗夜ちゃんを困らせそうだし」

『ひーどーいよー!』

 

澄まし顔をしてる悠里に地団駄をしながら抗議する汐里。

それを見た紗夜は、まるで自分と日菜のやり取りを見ているように感じた……

 

「でね、汐里。紗夜ちゃんの隣にいる妹の日菜ちゃんが、汐里と友達になりたいんだってさ」

『ほんと!? あ、でも……えっと……』

「? 日菜ちゃん?」

「……」

「? 日菜?」

「……」

 

何故か汐里を見て、ポケーッとした表情をしてる日菜。

悠里と紗夜が声をかけるが反応なし。

よく見ると顔が赤い事に気づいた悠里。

 

「あ、あの……あああ、あたし、氷川日菜だよ。じゃなかった……です!」

『えっと、水無月汐里(みなづきしおり)です。その……日菜ちゃんって呼んでもいーい?』

「う、うん……」

『おにーちゃんー、友達できたー♪ 初めての友達がこんなに可愛い子で、僕すごくピピピだよー♪』

「っ!? か、かわ……」

「はいはい。シオリズム、シオリズム。とりあえず嬉しいのは分かったから、握ってる手を離しなさい。日菜ちゃんがオーバーヒート状態だから」

 

日菜の手を両手で握りながら、ブンブンとはしゃぐ汐里。

よっぽど嬉しかったんだろう……

 

「日菜、どうしたのかしら……」

「……日菜ちゃん、汐里に一目惚れしちゃったか」

「そうなんで……えっ!?」

 

妹の様子がいつもとおかしい事に疑問を感じた紗夜だが、悠里の言葉で驚きの表情と声を上げてしまう。

あんまり興味を示さない日菜が異性に一目惚れである。

 

「…紗夜ちゃんの反応は尤もだと思うよ。現に僕も驚いてるから」

「あの……その割に落ちついてませんか?」

「そう? まぁ……紗夜ちゃんもその内、慣れるよ」

 

悠里と紗夜は、汐里と日菜……特に日菜には聞こえないように話すのであった。

 

「そういえば、悠里さんは短冊になんて書いたんですか?」

「僕? 紗夜ちゃんと似た感じ。『汐里とまた思い出を作れますように』って書いた。あ、2人には内緒ね?」

「ふふっ、はい。2人には内緒ですね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふんふーん! リサちー、瑠菜ちゃーん、おっはよー♪」

「ヒナ! おはよ♪」

「おはよ~♪」

 

翌日の羽丘女子学園。2年A組にて。

日菜は鼻歌を歌いながら、教室に入り、リサと瑠菜に挨拶をした。

 

「先週と違って、ずいぶんゴキゲンじゃん?」

「うんっ! 七夕祭り、おねーちゃんと一緒に行けたんだ」

 

それを聞いて、良かったじゃんと言うリサ。

瑠菜もおお~と言いながらパチパチと、手を拍手していた。

 

「色々あったんだけどね、すっごく楽しかったんだ♪」

「それで、紗夜とはいろいろ話せた?」

「うん! おねーちゃん、最初はいつもみたいに難しい顔してたんだけど……最後には笑ってくれて」

 

笑った顔、久しぶりに見たから、すっごく嬉しかったなーと2人に話す日菜。

 

「その気持ち、わたしも分かるよ~。来年はどうするの~?」

「うん! 来年もまた、一緒に行けたらなって思ってるの! だから、来年の七夕祭りの日、あけといてって言ったら……」

 

そんなに先の事、分からないよって言われちゃったと苦笑いで付け足す。

 

「あっはは! 紗夜の言う通り! けど、きっと紗夜は予定あけといてくれると思うな」

「そうかな? そう思う?」

「うん! ……あ、それじゃあ来年の七夕も、Roseliaの練習はお休みにしとかないとね?」

「あ~。わたし、リサちゃんの言いたい事が分かった~」

 

それは確かに大変だよね~と頷きながら、リサの言いたい事に納得する瑠菜。

 

「友希那、それでいいって言ってくれるかな~? 今年は偶々休みだったけど、来年はな~……」

「友希那ちゃん、休みにしてくるかな~……」

「えー! お願いっ! なんとかして、リサちー! 瑠菜ちゃーん!」

 

必死に2人に頼む日菜であった。

 

「あ! あとねー、七夕祭り、悠里くんも一緒に回ったんだよ」

「おっ。アタシと友希那も七夕祭りの夕方近くに公園で悠里に会ったけど、お祭り行ったんだー♪」

「日菜ちゃーん、ゆうくん、楽しそうだった~?」

 

瑠菜が訊くと、日菜はおねーちゃんと同じで笑ってたよと言った。

それを聞いた瑠菜は驚いた表情をしていた……

 

「他は~? 何かあった~?」

「他? えっと……」

 

他にはと聞かれた日菜はうーんと考える。

すると浮かんだのは、とある男の子の姿……

 

「……」

「ヒナ? おーい」

「……」

「日菜ちゃ~ん?」

「……えっ!? えっと……その……好きな人が……」

「「え?」」

 

すると今度は顔を真っ赤にして、もごもごと小声で何かを言う日菜。

彼女の突然の変化に驚いたリサと瑠菜は、聞き取れなかった為、もう一回言ってと促す。

 

「その、あたし……好きな人が……できちゃった……」

「「…………えーー!?」」

 

一瞬だけ目が点になったリサと瑠菜は、日菜の衝撃発言を理解した後、教室中を響かせるような大声を出してしまう。

 

「こ、声が大きいよ! リサちー! 瑠菜ちゃん!」

「あー……ゴメン。ヒナが好きな人ができたっていうから、驚いちゃって……っていうかそれって誰!?」

「七夕祭りの日にあったんでしょ~? 日菜ちゃんをこんな乙女チックな表情にさせた人って~……いたかな~?」

 

瑠菜とリサは日菜が惚れそうな人物を考えるが全く思いつかなかった。

まず自分達の通う学校は女子校だし、男子の知り合いと言えば、藍音学院に通う悠里とその後輩、合わせて3名くらい。

 

「? あっ。ゆうくんから電話だ~」

「悠里から? こんな朝から珍しくない?」

「うん~。どうしたんだろ~?」

 

瑠菜のスマホから悠里からの着信音が鳴った。

もうすぐ朝のホームルームが始まる時間帯だ。彼にしては珍しい……

 

本当にどうしたのだろうか?

とりあえず出てみる事に。

 

「は~い。もしもし~」

『もしもし、ルーちゃん? こんな時間にごめんね?』

「うう~ん♪ 気にしないでいいよ~。どうしたの~?」

『僕の学校、今から家庭科なんだけど、クッキー作るんだけど、昼休み辺りに羽丘女子学園(そっちのがっこう)に出来立てを持ってこうと思うんだけど……』

「わ~い。ゆうくんの手作りクッキーだ~♪」

 

用件は家庭科の授業で作ったクッキーを瑠菜がいる羽丘女子学園に昼休みに届けるというものだった。

実はこれ、初めてではない。

瑠菜がこの学校に転入した際に、理事長同士が知り合いな事もあってか、藍音学院の生徒である悠里が届けに来るのだ。

 

その時に悠里とよく昼食を食べるのだが、友希那とリサはこれが密かな楽しみだったりする……

 

『ちなみに日菜ちゃんって、もう来てる?』

「日菜ちゃん~? うん、隣にいるよ~」

『分かった。ルーちゃん、スピーカー状態にしてくれる?』

 

すぐ終わるからと言ってスマホ越しに瑠菜に頼む悠里。

喋り方から、日菜ちゃんに軽いイタズラしてやろうと感じだったのが、付き合いの長い瑠菜には理解できた。

リサもなんとなく、同じ事を思っていたらしい。

 

「もしもし、悠里くん? おっはよー♪」

『はろろーん、日菜ちゃん。今日は日菜ちゃんに、るんってするお知らせがあるんだよー』

「えっ? 何々♪」

 

スピーカー状態した瑠菜のスマホに近づく日菜。

悠里は、一度しか言わないから、よく聞いてねーと言うと……

 

『日菜ちゃーん♪ 今日、おにーちゃんとクッキー作るんだよ! 日菜ちゃんの口に合うか分からないけど、僕、頑張って作るからー♪』

「……あ、えっと……えっ……」

『…ほら。汐里、教室移動するよ『えー!? 日菜ちゃんともっとお話したいよー!』だーめ。授業に遅れちゃたじゃすまないの』

「……」

 

悠里とは別の声が聞こえた。

その声の主を聞いた日菜は顔を真っ赤にし、恥ずかしさのあまり悶絶していた。

 

日菜の反応を見た瑠菜は確信した。

彼女が言ってた『好きな人ができた』つまり……

 

「ゆうくんー、日菜ちゃんがさー……」

『すごい反応でしょ。ルーちゃんの考えてる事で合ってるよ』

「ああ~……しおくんか~。でもなんか意外だね~……」

「あのさ、悠里? アタシも訊きたいんだけど……悠里って1人っ子だったよね?」

『…まぁその事については、ちゃんと昼休みに友希那ちゃんと一緒に話すから』

 

そういう事だから授業頑張ってね?と言って悠里は電話を切った。

 

「リサちー! 好きな人が学校に来た時ってどうすればいいのー!?」

「え!? そこアタシに聞くの!? 瑠菜も笑ってないで、ヒナになんかフォローしてよ!?」

「え~? しおくんとお話すればいいんじゃないの~?」

「どうしよー! そうだ! 友希那ちゃんに訊けば……」

「いやいや、ヒナ!? 友希那に聞いても多分同じ事になるだけだと思うよ!?」

 

……尚、このやり取りは昼休みになるまで続いたという。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いてて、もしかしたら、また別の何かを書いてるかもしれません……(イッタイナニヲダ)

※最後にオリキャラの簡単なプロフィールです。


水無月汐里(みなづきしおり)


容姿イメージ:『美鳥の日々』の春日野美鳥

誕生日:12月12日、いて座

血液型:A型

一人称:僕


それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。
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