独裁者の転生戦車道   作:会津潘

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『――というわけで、是非この練習試合を受けてもらいたいのですが』
「練習試合ですか、わかりました」
 一人の少女が電話をしている、電話の相手は大洗女子学園の生徒会長の角谷杏であった。
「聖グロリアーナ女学院はどんな相手でも、受けて立ちましょう」
『ありがとうございます、では日時ですが――』
 

 ……電話を終えて受話器を置く、そして少女はその部屋を後にする。
 向かった先は学院長が執務をしている部屋、少女は扉をノックする。
『入りたまえ』
「失礼します、先程大洗女子学園からお電話が来ましたので報告に参りました」
 少女は扉を開けて、机に座り執務をしている学院長に報告を始めた。
 しかし学院長はその言葉に戸惑いを見せる。
「大洗女子学園? わが校との接点は無かったはずだが……」
「それが、戦車道の練習試合を申し込まれました」
「なんと、それは本当か?」
 学院長は驚愕する。

「なんでも、かの学園は戦車道を再開したそうです」
 うーむ、と学院長は葉巻を取り出す。
「隊長であるダージリン君のことだ、試合を受けたのだろう?」
「はい、わが校はどんな相手でも受けて立ちます」
 それを聞いた学院長は口から煙を出してニヤリと笑みをこぼす。
「ならば見せてやれ、強豪校の実力をな」


「わかりました、()()()()()()()()


第二章「練習試合 聖グロリアーナ女学院編」
第十二話「練習試合の決定 作戦会議」


 ――大洗女子学園が戦車道を再開して1週間が経過した。

 訓練の日々を過ごしているが、慣れてくるもので着々と戦車の基本が生徒に身についてきていた。

 "ひとみ"達も元々がドイツ人だったからか、きびきびと訓練を行っている。

 それが他生徒の憧れにも繋がり、他の戦車長もパンター戦車に乗る5人を参考にするほどであった。

 誰よりも目を輝かせたのは一年生達であった。

 一年生が乗るM3中戦車リーの車長、澤梓は"ひとみ”の几帳面さ、"みほ"の心優しい性格を参考にして一年生チームの訓練を行っていた。

 そんなある日の事――。

 

「来週に他校と練習試合することになったから、その詳細を発表するよー」

『ええーー!?』

 唐突に杏から戦車道の生徒達に伝えられる。

 生徒達も動揺しているが、これには"ひとみ"達5人も驚きを隠せない。

「今回の試合の相手は聖グロリアーナ女学院だ、会長自ら試合の話を持ち掛けてきてくださった」

「そういうことー」

 

 生徒達は聖グロリアーナ女学院がどのくらい強いのかは、訓練の際確認した雑誌や前の大会などの映像を確認したので知っていた。 

 最初から強豪校である相手と戦うなど無謀だと思っていた。

 しかし決定した以上、聖グロリアーナ女学院と戦わなければならない。

 これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の試合なのだ。

 

 ここで河嶋の試合の説明が始まる。

「今回行う試合内容は殲滅戦だ。 聖グロリアーナ女学院は強豪校だが、戦車道の強豪校がどれくらいのレベルかを経験するのが目的でもある。 各車長は今日の訓練が終わり次第に生徒会室に向かうように、試合への作戦会議をするからな」

『はい!』

 各車長である西住みほ、独逸ひとみ、磯辺典子、カエサル(車長はエルヴィンだが、リーダーがカエサルなのでこちらが出席)、澤梓は同時に返事をする。

「そして最後に、これは練習試合であっても慢心をしてはならない。 訓練でした事をよく思い出して試合を行ってくれ、以上解散!」

 生徒達はぞろぞろと別の行動を開始する、普通に帰宅や戦車の手入れなど様々だ。

 

 

 ――場所が変わり、此処は生徒会室。

 "ひとみ"達は来週の試合の為に作戦会議を行っていた。

「試合の場では崖や荒野があるという、そこでなんだが……お前達の意見を聞きたい」

 河嶋は各車長に作戦意見を問うた。

 最初に出た案は典子の根性論だったので却下された。

 次に出たのはカエサルと"ひとみ"の優勢火力で敵を撃退するというものであったが、そもそも火力が出せるのがⅢ号突撃砲とⅣ号中戦車とパンター戦車のみだったので却下された。

 梓はそれらの作戦のメモを取っていた。

 

「うーん、西住は何かあるか?」

 河嶋が"みほ"に問う、"みほ"は少し考えて試合場の地図を確認する。

「では私が乗るⅣ号中戦車が囮に出て、市街地におびき寄せます。 皆さんは市街地に隠れて、合図を出したら一斉に攻撃を開始するのはどうでしょう?」

「しかしそれでは、攻撃が失敗した場合逆に攻撃を食らうんじゃないのか?」

 "みほ"の作戦に河嶋が質問をする。

「確かに今の状態では火力不足でもあります、だから市街戦にするんです」

 "みほ"の言葉に杏は「なるほど」と声を出す。

 

「つまり西住ちゃんは、まずは街の中で潜んで撃って、隠れてをするって言いたいんだね?」

「はい、今の私達には戦車道の経験が必要です。 ですので此処は各戦車の性能を考慮して戦い、勝利を掴まなければいけません」

 これには各車長達も納得する、河嶋も頷いて口を開いた。

「……確かにその通りだ。 わが校はまだ他校の試合をしていない、では今作戦の指揮官は西住が頼む」

 河嶋の言葉に"みほ"は頷く。

「わかりました。 出来る限り最善を尽くしてみます」

 

「ああ、あと負けたら()()()()()()をしてもらうからねー」

「「「「え゛?」」」」

「「……?」」

 

 ――こうして作戦会議は終了して各車長は帰宅していった。

 "みほ"は夜の太平洋を眺めていた。

 そこへ偶然通りかかった"ひとみ"がやってくる。

「珍しいな、こんな時間に」

「うん、ちょっと心配で……」

「……みほ、今回の試合は勝てるか?」

 "ひとみ"の言葉に"みほ"は少し黙る、月に照らされた水平線を眺めながら"みほ"は口を開いた。

「わからない、だけど勝たなくちゃ……練習試合で負けたら、大会なんて優勝できないしね」

「……そうだな」

 

 

 

 ――訓練を続けて数日が経ち、試合の前日となる。

 

 

 

    




 最近たくさん投稿できている、嬉しすぎる。

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