AnotherStory―4番目の813スキル   作:有栖川アリシア

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第3巻――アンダーウッド
黒死斑のメイド


 

 

黒ウサギは、若干絶句気味だった。無理もない――目の前で、魔王が自身のコミュニティの一員に隷属しているのだ。それも、神霊を一度奪ったのにも拘らず、再び神霊のギフトをもってだ。龍嗣は、このゲームの決着が着く直前、敵を味方にするスキル『昨日の敵は今日の奴隷(フレンドリーワールド)』、精霊を司るスキル『見えなくてもそばにいる(ニアバイシースルー)』を使ったのだ。

 

 

 

"黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)"との戦いから一ヶ月が経った。ここは、ノーネームの本拠の大広間、龍嗣とツクヨミは今後の活動方針を話し合うためにここにいた。今いるのは、上座からジン=ラッセル、十六夜、龍嗣、飛鳥、耀、、黒ウサギ、ツクヨミ、メイドのレティシア、そして年長組筆頭のリリだった。ノーネームでは、会議の際コミュニティの席次順に上座から並ぶのが礼式であり、リーダーであるジンの次席に十六夜が座っているのは、水源の確保などさまざまな成果を挙げているからだ。その隣の龍嗣は、言われることもなく、色々なことを未然に防いでいるためである。後は、ノーネームと同盟コミュニティ桜出雲の頭領だからである。

ちなみに、ジンはガチガチに緊張していた。

 

「まったく、ガチガチになってどうした」

「そうだぜ、俺よりいい位置に座っているのに、随分と気分が悪そうじゃねぇか」

「だ、だって、旗本の席ですよ?緊張して当たり前じゃないですかっ」

「あのなあ、御チビ、これは何度も言ってきたことだが、お前は"ノーネーム"の旗頭であり、名刺代わりなんだ、俺達の戦果は全て"ジン=ラッセル"の名前に集約されて広がっている、そのお前が上座に座らないでどうするのよ?」

「そうだぜ、もっと気張れや」

「YES!お二人の言う通りでございますよ!事実、この一ヶ月間で届いたギフトゲームの招待状は、全てジン坊ちゃんの名前で届いております!」

黒ウサギが封蝋を取り出す―― 一枚は参加者として、二枚は貴賓客としての破格の待遇招待状だった。

「あぁ、それと黒ウサギたちには初披露となるが――同盟宛にも来てたぞ、ほれ」

龍嗣は一枚の招待状を黒ウサギに渡す

「ふ、増えました!」

驚き騒ぐ黒ウサギ

「それで、今日集まった理由は、その招待状について話し合うためなのかしら?」

飛鳥がせかすように言った

「はい、それももちろんあります、ですがその前に、コミュニティの現状をお伝えしようと思って集まってもらいました・・・・・・・・・リリ、黒ウサギ報告をお願い」

「わかりました」

「う、うん、頑張る」

そして、リリが立ち上がって報告し始めた

「えっと、備蓄に関してはしばらく問題ありません、最低限の生活を営むだけなら、一年は問題ないかと思います」

「へえ?何で急に?」

「一ヶ月前に十六夜様達が戦った"黒死斑の魔王"が推定五桁の魔王に認定されたからです、"階層支配者"に依頼されて戦ったこともあり、規定報酬の桁が跳ね上がったと白夜叉様からご報告がありました、これでしばらくはお腹いっぱい食べられます」

「リリ、はしたないことを言うのはやめなさい」

「え・・・・・・あ、す、すいません」

二尾を振りながらはにかんで喜ぶリリをレティシアが繭を潜めそっとたしなめた。ツクヨミと龍嗣と耀は苦笑いしていると

「推定五桁――コミュニティが三人にもかかわらずとは、すごいな、まぁ、あの難易度と神霊を含めれば納得はいくな」

龍嗣がそういう

「ん?ゲーム難易度も桁数に関係するのか?」

「YES!ギフトゲームとは本来、神仏が恩恵を与える試練そのもの、箱庭ではそれをわかりやすく形式化したものをギフトゲームと呼び、ゲーム難度は己の格を表すのです」

ふむ――とうなずきながら黒ウサギの説明を静聴する

 

 

「そんで、五桁の魔王を倒したんだ――別途報酬あるわけだろ?」

「あ、あぁ、YES!金銭とは別途にギフトを預かることになりました」

「あら、本当なの?」

「YES!これについては、後ほど通達があるので、ワクワクしながら待ちましょう!」

全員から喜色の篭った声が上がった

「それでは、リリ、最後に農園区の復興状態をお願い」

ジンが話を振った瞬間、顔を輝かせ、今までにないほどの勢いで報告を始めた

「は、はい!農園区の土壌はメルンとディーンが毎日毎日頑張ってくれたおかげで、全体の1/2は既に使える状態です!これでコミュニティ内のご飯を確保するには十二分の土地が用意できました!田園に整備するにはもうちょっとかかりますけど、葉菜類、根菜類、果菜類を優先して植えれば、数ヵ月後には成果が期待できると思います!」

「あれ?あの開拓依頼しておいた土地はどうなったの?」

「はい、そこもメルンとディーンがやってくれました」

「おぉ~」

龍嗣が驚きの声を上げる――隣で飛鳥が誇らしげな態度をしている。

「当然よ、メルンとディーンが休まず頑張ってくれたのだもの、復興なんであっという間よ」

メルンとディーンとは、飛鳥が契約しているコミュニティの新たな同士の事

開拓の霊格と功績を持つとんがり帽子の地精・メルン

神珍鉄で作られた永久駆動の鉄人形・ディーンのことだ。メルンは土地の復興に必要な地精の恩恵とそれを耕す巨大な労働力は、飛鳥がいたからこそ手に入った。

「特にディーンは、本当に働き者です、毎夜毎晩、飛鳥様がゲームに参加する時以外はずっと土地の整備をしてくれて!メルンが分解した若木や廃材なんかも休まず混ぜてくれ本当に助かりました」

「さすが飛鳥」

「ふふ、喜んで何よりよ」

「人使いが荒いとも言うけどな」

褒める龍嗣に気分良く微笑む飛鳥を茶化す十六夜

「リリ、開拓の所の雑草はどうなってる?」

「それも混ぜています」

「ん、それで、スキルの必要性は?」

「特にはないです」

「了解――んじゃあ、ジン、こっちからも報告させてもらっていいかな?」

「はい?何でしょう」

「まず最初――桜出雲の農園区画で売れるもの以外はそっちに提供することになった、それと今度、誰か農園区画を視察で見に来て欲しい、後は、種や苗と肥料用の雑草を提供することを決定したってことと、コミュニティの本館が出来たから黒ウサギに見に来て欲しい、以上かな」

ちなみに、現状とある斑メイドに任せている。

「こっちの復興とあっちの復興、同時にやっていたんですか!?」

「えぇ、まぁ」

「・・・・・龍嗣らしい」

耀が言う

「そうか、それはいい話だ――しかし、主達には、農園の特区にふさわしい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」

「ヤギや羊とかでいいよな、龍とかじゃなくて」

「主――農場にドラゴンがいたらそれは農場ではない戦場だ」

ドヤ顔でいうレティシア ドラゴンのギフトを持つお前が何をいうと思う龍嗣

「そんで宛ては?」

「都合がいい事に、南側の"龍角を持つ鷲獅子(ドラゴグライフ)"連盟から収穫祭の招待状が届いている、連盟主催ということもあり、収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多く開かれるだろう、中に種牛や希少種の苗も賭けるものも出てくるはず、コミュニティの組織力を高めるにはこれ以上ない機会だ」

なるほどとうなずく5人

「けど、南側だろ――俺は、言葉悪いが問題ないとして、それ以外の面子の路銀はどうするんだ?前は、白夜叉からのがあって一瞬でいけたみたいだけどさ」

「えぇ、龍嗣さんの言う通りですが、今回の招待状は前夜祭から参加を求められたものです、しかも旅費と宿泊費は"主催者"が負担するという、"ノーネーム"の身分では考えられない破格のVIP待遇です、場所も南側屈指の景観を持つというアンダーウッド大瀑布!境界壁に負けないほどの迫力ある大樹と美しい河川の舞台なのです!皆さんが喜ぶことは間違いございません!」

「まぁ、黒ウサギがいうんだ――結構なところなんだろ?」

「これほどまで推しているんだから、目もくらむ神秘的な場所に違いないわ、そうでしょ、春日部さん」

「これでがっかりな場所なら――黒ウサギはこれから"箱庭の貴族(笑)"だね」

「"箱庭の貴族(笑)"!?!?な、何ですかそのお馬鹿っぽいボンボン貴族なネーミングは!?我々"月の兎"は、由緒正しい貞潔で献身的でございますっ!」

「献身的な貴族って言うのがもう胡散臭いけどな」

からかう十六夜

「ほどほどにしておけよ十六夜」

「はいはい」

「まぁ、それでだが――こっちの事前状況調査によるとだ、この収穫祭相当長いらしいな――前夜祭を入れれば25日、約一ヶ月だろ?その間――コミュニティに主力が居ないのはよくないな――どうする?」

「「「嫌だ」」」

「即答だな…まぁ、こっちにも宛があるからいいけどさ」

「宛?」

ジンが首を傾げてくる

「あぁ用心棒の宛がな」

「用心棒――?なんですか?それは」

「まぁ、警護みたいなものだ」

「誰ですか?」

「まぁ、驚くなよ――来い、用心棒さん」

そういうと、龍嗣は、ギフトカードを掲げるとそこから黒い一陣の風が現れ

 

「御用でしょうか?ご主人様」

そこには、メイド服姿のペストが居た

「「「「「…えっ!?」」」」」

ツクヨミ以外の全員の顔が引き攣った

「あぁ、紹介のためだけさ、すまんな呼び出して」

「まぁ、いいわ――ってかさぁ、まだなの!?いい加減あの広大な土地、一人じゃ無理なんだけど!?」

「あれ、屋敷はどうなった?」

「もう終わってるわよ!」

「「・・・」」

「ツクヨミいや、なんでもないさ」

「言わなくてもわかるわよ、先に本拠に居るわ」

「ん」

そういうと、ペストと一緒にそこから離れていくツクヨミとペスト

 

 

「ま、そういうこった」

「「「「「まてまてまてー!!」」」」」

約全員だった。

「な、なんで"黒死斑の魔王(ブラック・バーチャー)"がいるのよ!?」

飛鳥が聞いてくる

「えっ、そりゃスキルで仲間にしたからだよ」

「しかも、メイド服だなんて、隷属させたんですか!?」

ジンが驚きながらも聞いてくる

「まぁね――ジンにはおいおい、こっちの状況を明記した書類をペストかツクヨミか黒ウサギ経由でそっちに回す、それで手を打て、いいな?」

「はい、いいですが」

「そうか、なら、俺は、これから北に向かうジンがいう

「まぁね――というわけだ、十六夜と飛鳥と耀は、どうする?」

「俺はいいや、白夜叉から頼まれてることもあるし」

「私も、農園のほうを見ないと」

「私も、行く」

「オッケー、んじゃあ、行きますか」

そういうと、会議は解散となった。

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