AnotherStory―4番目の813スキル   作:有栖川アリシア

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アンダーウッド襲撃

――アンダーウッド地下都市

 

「ん~中々のうまさ」

龍嗣は一人ブラブラと屋台村みたいなところをうろつき、片っ端から目に留まった屋台の商品を食べていた。

そのどれもが、龍嗣を興奮させ、あれよあれよと食べていると

 

『キャアアアアアァァァァァ!!!』

叫び声が聞こえたと同時に視線をそちらに向けると、全長30尺もある巨躯の巨人が其処にいた。巨大な長刀を片手に握る二の腕は、大木のように太い、顔には二つ穴がある仮面をつけ、ぎょろりと瞳を覗かせていた

 

そして、やれやれといった表情でささっと食べて立ち上がろうとした直後

 

ズドンッ!!ズシャ・・・

 

空から降ってきた巨人族の足によって、龍嗣の屋台で買った食べ物が踏み潰され、見るも無残な姿になった。

それを見た龍嗣は

 

「ふざけるなよォォォお!!!デカ物がぁぁぁぁあ!!」

「オオオオオオオ―――――――――!!!」

巨人が叫ぶと同時に龍嗣めがけて襲いかかってくる。直後、龍嗣は、爆発を司るスキル『発破六重死(アハトアハトデッサン)』、防御不可能のスキル『たどたどしい拳(ビギナーズハードラック)』、急所を突くスキル『人の一刺し(ピンホールショット)』、打撃を浸透させるスキル『痛信内臓(キルミーブロー)』、反撃不可能のスキル『一方的な一撃(アドバルーンアタック)』等などを使って

 

グワァァンッ!!

 

その場にた三体の巨人を天高くふきとばした。視線の先には、あと6体の巨人族の群れ、龍嗣は間髪いれず走り出す。龍嗣の存在に気づきその巨大な長刀を振り下ろしてくる巨人族、しかし、その一発も龍嗣に当たることはない。

そして、彼らに近づくと背中に背負っているそれに手をかけ――肉を気切らずに骨を断つスキル『裁人の手技(ボーントゥビーミート)』、命中のスキル『狙数増(ゲットターゲット)』、居合のスキル『健脚の抜き足(レッグウォーカー)』を使う。そして、龍嗣がその6体の巨人の真下を駆け抜けたと同時に

 

 

チンッ……

シュパァァンッ!!

ズゴォォォン!!

巨人族が音をたてて崩れ落ちた。そして、動かなくなったことを確認し、龍嗣は収穫祭本陣に向けて走り出した。そして、途中、黒ウサギとジンと合流した。

 

 

収穫祭本陣営

 

 

「んで、どういうことなんだよ?」

「サラ様、魔王は十年前に滅んだと聞いていましたが」

龍嗣とジンの追求を聞くサラは背もたれにのけぞり天を仰いだ

「……すまない、今晩詳しい話をさせてもらおうと思ったのだが、奴らの動きが存外早かった」

「あぁ、ペリュドンっつうのを始め、殺人種の幻獣まで集まり始めてる、遠くから見させてもらったが、あのグリフォンの威嚇にすら動じないからな――洗脳されているな」

今まで見てきたことを言う龍嗣

「あぁ、実は今回、招待したのはわけがあってな――話を聞いてくれるか?」

「はい」

「ヤホホ……まあ、聞くだけでしたら」

「もちろん」

即答するジンと龍嗣に笑ってごまかすジャック

「この"アンダーウッド"が魔王の襲撃を受けていたとい話は既に聞いたな?」

「はい、十年前の話だったとか」

「そうだ、魔王を倒すことはできたのだが、傷跡は深く残ってしまった、そして魔王の残党が、"アンダーウッド"に復讐を企んでいるらしい」

「……それがさっきの巨人族とあの幻獣ってわけだが…ありゃなんだ?少なくとも、俺は見たことがないなあんなものは」

「あの魔王の残党は……箱庭に逃げ込んできた巨人族の末裔、その混血種だ」

そして、言葉を続ける彼女

「箱庭の巨人族はその多くが異界での敗残兵だ、ケルトのフォモール族などが代表格なのだが、北欧の者たちも多い、敗残してきた経緯から、基本的に戦いを避ける穏やかな気性で物造りに長けた種なのだが――」

「サラ様、そういうのはいい、こっちが今一番知りたいのはただ一つ、元が気性の穏やかな一族ならなんでこの"アンダーウッド"を狙い続けるのか――端的に言えば、あいつらの何が目的だ」

サラの言葉を遮って龍嗣が言った。それを聞き、彼女は壁に掛けてあった連盟旗を捲り、その後ろにあった隠し金庫から人の頭くらいの大きな石を取り出して一同に見せる。龍嗣は見た瞬間にそれが何かわかった

「――おいおい、ケルト神話郡最強最悪の死の魔眼!!バロールの死眼じゃねぇか!?そんなデタラメなもんがなんで!?」

血相を変えて言う龍嗣

 

「しかし、"バロールの死眼"はバロールの死と共に失われたはず、それがなぜいまさら」

「そうおかしなことではない、聞けばケルト神は多くが後天性の神霊と聞くからな、第二のが現れても不思議ではないだろう」

サラの言うことに一同納得する

「確かに、ケルトの方は――"人の信仰が集まれば神に成れる"からな、偶発的に開眼させる巨人族は少なくはないな」

龍嗣が顎に手を当てながら言う。そして、龍嗣が言葉を続けた

「話の大まかなものは見えた――現状、俺の知る限り、南側に"階層支配者(フロアマスター)"はいない、そしてそれを狙ってかどうかはしらんが巨人族が襲ってきた、目的も明確ってことは、大方、襲撃から街を守るためにってことじゃないのか?」

「――全く、君は本当にすごいな」

少し面食らいながらもそういうサラ

 

「あぁ、その通りだ、"階層支配者"になれば、主催者権限と共に強力な恩恵も賜る、巨人族を殲滅するには、主催者権限を用いたギフトゲームで挑むしかない、南側の安寧のためにも、この収穫祭は絶対に成功させねばならないのだ」

強固な決意で宣言するサラ

 

「次期"階層支配者"という立場を捨てて、"龍角を持つ鷲獅子"連盟に身を置いた私が、南側の"階層支配者"になろうとしている、さぞ滑稽に見えるだろうが……今は手段を選んでいる場合ではない、南側の安寧のためにも力を貸していただけないだろうか?」

「そう言われましてもねぇ――」

ジャックは事情を聞いてもまだ難色を示す。それでも引けないサラは、"バロールの死眼"の上に手のひらを載せ

「無論、タダとはいわん、多くの武功を立てたコミュニティには、この"バロールの死眼"を与えようと思う」

「は……!?」

驚くジャック

「聞けば、ウィラ=ザ=イグニファトゥスは生と死の境界を行き来する力があるという、ならばこの"バロールの死眼"も使いこなせよう、我らの手元で腐れせておくよりは、彼女の下で力を振るったほうが有益というもの、どうだろう?」

「また、破格の条件だな」

「それは……まあ、おっしゃる通りですが、ウィラなら"バロールの死眼"の適性は高いでしょうが――」

「どうするんだ、此処に居る三つのコミュニティ以外が武功を立てたら」

ジャックの言葉を遮って龍嗣が言った

「安心して欲しい、"バロールの死眼"を譲渡するのは、"ウィル・オ・ウィスプ"か"ノーネーム"か"桜出雲"の何れかに限らせてもらう予定だ」

「ぼ、僕たちもですか!?」

「ん?だが、サラ様、ノーネームの同士に適性持ちはいないはずだが」

そういうと、彼女は思い出したかのように言った

「おや、そうだったな――」

「では、どうする?」

「龍嗣くん、君に渡そう――」

「へっ?」

「君もノーネームの一員であろう、これなら問題ない」

「・・・おぅ」

突如のことで少し面食らう龍嗣。そんな中、何かに気づいたように言った。

 

「ジン、これを持っておけ」

そういうと、龍嗣は指輪のようなものを投げた。

「はい?なんですか?」

「ギフトゲームThe PIED PIPER of HAMELINをクリアしたからな――それのおまけさ」

「おまけ…」

少し不思議がるジンであった。

 

その後――

『やっぱり、犯人がわかっただけじゃ駄目だ、何とかしてヘッドホンを直さないといけない、……手伝ってくれる?』

『えぇ、喜んで』

後々耀が気絶したという情報を聞いた龍嗣は、緊急の救護施設として設けられた区画に行ってみると、そこには飛鳥が先に来ていた。龍嗣は大方の話と近くにいた三毛猫の表情を察する。

「そんで、なにを、手伝うんだい?」

龍嗣は、耀のベットのカーテンを開けた

「あら、龍嗣くん」

少しばつの悪そうな顔をする飛鳥

「…龍嗣――聞いてたの」

「ん、あぁ、正確には聞こえただけさ、耀が何とかしてヘッドホンを直さないといけないってところからさ」

「盗み聞きは感心しないわね」

飛鳥がいう

「まぁ、いいさ――それで」

「うん、これ」

耀が炎のエンブレムを出してくる

「これは…十六夜の」

「……うん」

龍嗣は構成把握をすると――

「(圧倒的な創世力…これを作ったやつは化物か…)」

内心でそう疑ってしまう龍嗣

「そんで、破片は?」

「「えっ!?」」

二人の声が重なった。

「……宿に」

「龍嗣君――まさか?」

「お前の悲しんでいる顔は、見るに耐えない、お前は笑っていたほうがいいんだよ」

窓の方を向きながら言う龍嗣――次の瞬間、二人の目の前から彼はいなくなっていた。

 

 

宿舎の瓦礫前

「物理的には、無理だが――無理を通すのが俺だ」

目の前にはヘッドホンの残骸がある。その近くでは南側の住人が忙しなく動いていた。

「さてと…どうすっかねぇ…」

流石の龍嗣でもこれは、困った状態であった。なにせ、ここまで壊れているとは思わなかったからだ。

 

「けど、まぁ、出来ないことはないが・・・」

そういうと、龍嗣は、時を操るスキル『時感作用(イムバニー)』で、その破片を集めて時間を巻き戻し元のヘッドホンに戻し、後に起こるであろう、壊れるという運命を運命支配のスキル『命令配達人(トランスポートプラン)

其の後にバックアップを取るスキル『私のかわりはいくらでも(マイオルタナティブ)』でヘッドホンのバックアップを取った

「――ッ…」

体に負担がかかり、目眩がする龍嗣

 

そんな中――

「……龍嗣!!」

耀と飛鳥がやってきた。

「おう、耀か、どうした?」

「その……どう?」

「ちょっとな、キツいかもしれん…」

そういうと、外装が滅茶苦茶になったヘッドホンを差し出す。

「龍嗣君を持ってしても、無理なことがあるのね…」

少し期待はずれのような顔をする飛鳥

「まぁ、そうしょげるなって、多分――ここまで出来たってことは、ほかにやり方があるはずさ、」

そういう龍嗣。

「そうね、こうなったら十六夜君の機嫌をとる事を考えましょうか」

「多分、ロクなやり方ないと思うぜ、それにどう考えても黒ウサギが」

「なら、ラピッドイーターを黒ウサギとセットで贈――」

「るわけないでしょうこのお馬鹿様!!!」

スパァァンッ!!といい音と共に、ハリセンが一閃された。

 

「あ、それ名案!」

「ボケ倒すのも大概にしなさい!!!」

更に一閃追加された。見てみるとそこには、ジンとジャックと黒ウサギがそこにいた。ジンの片腕には、しょんぼりとした三毛猫が抱かれていた。

「全くもう……耀さんっ!詳しいお話は三毛猫さんからお聞きしましたよっ!!どうして、黒ウサギに相談してくださらなかったのですか!?」

「え、えっと……巨人族が襲ってきて、それどころじゃ」

「その話ではありません!収穫祭の滞在日数の事でございます!相談してくだされば、黒ウサギや十六夜さんや……飛鳥さんや龍嗣さんだって、耀さんを優先的に参加させました!なのに、どうして相談してくれなかったんですか!?」

「で、でも、ゲームで決めるっていう約束が」

「ゲームは所詮ゲームでございます!我々は同じ屋根の下で暮らし、同じ苦楽をともにし、同じ旗の下で戦う同士でございますっ!悩んでいることがあるなら、まずは我々に相談するのが筋でございますっ!ましてや――耀さんが戦果を誤魔化すほどに悩んでいたなんて………!黒ウサギは、まるで気づいておりませんでした………!!」

耀と飛鳥はジャックの方をみる

「ジャック……貴方」

「ヤホホ…ここに来るまでの道中、彼女とお話させてもらったのですが……どうやら、まずいおはなしだったようで」

かぼちゃ頭をボリボリと気まずそうに掻くジャック。そして、黒ウサギは半泣きになりながら二人を見つめ

「"ウィル・オ・ウィスプ"のギフトゲームは……お二人が一緒にクリアされたと、ジャックさんから伺いました、おふたりは素晴らしい連携プレーを見させてくれて、すごく参考になった……敗北したゲームを、とても誇らしげに語ってくれました」

「……ッ…」

黒ウサギの切実な声に、二人は俯く。

「ち、違うのよ黒ウサギ!春日部さんに話を持ちかけたのは私で………」

「違う、私が悩んでいたから飛鳥が気を遣って――」

「いえ、そんなに気を遣わせたのは、黒ウサギにも責任がございます、黒ウサギの過度な期待が、お二人と小さな壁を作ってしまったのです、本当に……申し訳ありません」

三者三様に頭を下げる

 

「ヘッドホンはダメそうですか?」

「いや、龍嗣君が――」

「そういえば、龍嗣さんが見当たりませんね」

「ヤホホホ…さっきまでここにいたのは確かなのですけどね」

少し周りを見渡した直後

「なにか、嫌な感じがしますね」

ジンがそういった直後、それを示し合わせるかのように"アンダーウッド"に緊急を知らせる鐘の音が鳴り響いた。

 

「大変です!!巨人族がかつてない大軍を率いて……"アンダーウッド"を強襲し始めました!!」

直後――地下都市を震わせる地鳴りと共に爆音のような轟雷が辺り一帯に響いた。

 

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