AnotherStory―4番目の813スキル   作:有栖川アリシア

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邂逅 月の神

それから、黒ウサギについていく4人。そんな中

 

「(この気配は――)」

こちらを遠く、それもかなり遠くからこちらを覗いている気配を感じる。龍嗣の直感のスキル『胸騒ぎの海勘(ハートブレイクシーセンス)』が、そっちの方向へ行けといっている。

「(暇を持て余した修羅神仏が人を試す試練――ジャブになるといいがな)」

何も言わず龍嗣は、距離を司るスキル『嚥距離恋愛(ドリンクレンジ)』で、その場から消えた。

 

 

数刻後――

 

「あーもう、一体何処まで行ったんですか!?」

黒ウサギは二人を探して早くも半刻が経った頃だった

「(しかも、このあたり一帯は特定の神仏がゲームテリトリーにしています、もしも彼らの口車に乗せられてゲームに参加させられていたら……)」

そう考える黒ウサギ――彼らの身が危ないのは明白だった。それから、森のユニコーンに黒ウサギが二人の消息話を聞いている途中に

 

ズドォォォォオオォォン!!

突如――大地を揺らす地響きが森全体に広がった。

すかさず大河の方向を見ると、かなたには肉眼で確認できるほど巨大な水柱と黒いエネルギーの柱がいくつも立ち上がっている。通常のゲームなら、あり得ない現象であった。

 

 

 

 

ついさっきまで、日差しの差し込む綺麗な昼下がりの晴天だったにもかかわらず辺りは、満天の星が瞬く夜になっていた。

「(これが、修羅神仏の力ってやつか)」

少しその変化に驚く龍嗣。龍嗣は、重力を司るスキル『躯重量(グラビト)』や、翼を生やすスキル『翼を砕砕(フェザーコンプレックス)』を使い、夜空を駆け抜けていく。

「(あれは――月か……)」

目の前には、夜にもかかわらず燦々と輝く月がある。龍嗣は森の中を駆け抜けていくと――突如、森は開け、クレーターが現れた。

「(ッ!?)」

龍嗣は、直ぐに止まり、森の木陰から様子を伺う。

「(こりゃ、デカイクレーターだな……)」

そういって、木陰から千里眼のスキル『眼の届く場所(エリアフリー)』でクレーターの中央に向かって使う。

映し出されたのは、頭部囲うように浮遊したリングにモデルのようなプロポーションの身体の線に沿うようにまとわりついた漆黒のドレス、そして、背中から生えている真っ黒いそれも漆黒の闇を体現したような翼に、同じ深紅色の瞳を持った黒いロングストレートの少女だった。その瞳を見た瞬間――龍嗣の背中に何とも言えない感覚が走る。

「(この感覚はなんだ――)」

何とも言えない不気味な感覚だ。

「……」

龍嗣はゆっくりと彼女に近づくと――あちらもこちらに気づいた。龍嗣は警戒しつつも彼女に近寄ると

「へぇ、面白そうね、貴方」

「ッ!?」

唐突に声が背後から聞こえたので、後方を振り向くと、そこには、今までクレーターの中心にいた彼女がそこにいた。

「あら、振り向くのが早いじゃない」

「そりゃ、後ろから驚かされればそうなりますよ」

そう言う彼女。

「ねぇ、あなた名前は、それとどこに所属しているの?」

「俺の名前は、九十九龍嗣、所属ってなにさ?」

「コミュニティ…?なにさ?」

「あら、ってことはこの箱庭は初めてなのね?」

「まぁ、そうなるな」

「そう――コミュニティってのは、チームのようなものね、基本的なことは聞いたと思うけど」

「この世界が、ギフトゲームでできているってことは、知っているな」

「なら、話が早いわね」

そういうと、どこからか出現させた漆黒の剣を構える彼女。

 

「少し――私とゲームしていかない?」

「俺が、あんたと?」

「えぇ、あなたが勝ったら、私をあげる――私が勝ったらあなたを頂戴」

いきなりそんなことを言われるが

 

「ははっ、いいじゃねぇか――その勝負、乗った」

そういうと

「なら、始めましょっか」

突如、星の輝きが一斉に強いものとなり

「月を神格化した、夜を統べる神の力で倒されなさい」

瞬間――彼女の頭上の輪っかが高速で回転し始め、龍嗣に向かって高速で光の粒をばらまいていく。

「――!!」

すぐさま、龍嗣は空間歪曲のスキル『掌握する巨悪(グラップエンプティ)』で、周囲の空間を歪曲させ、攻撃を防ぐ。

「空間を歪曲した!?なんて奴なの!?」

破滅の光弾の雨が何千万と降り注ぎ、爆音と共に、龍嗣の周囲のクレーターが、更にクレーターになっていく。

「(えげつない、攻撃力だな!!)」

その光景を見て、つばを飲む龍嗣。同時に、気分も高揚してくる。

「(埓があかないな――)」

龍嗣は、被弾覚悟でレーザーガンのスキル『超えてはならない熱線(ホットラインオーバー)』に、光を司るスキル『怠るの墓(サボタージュビーム)』で光学乱反射を起こし、さらに、波動を司るスキル『大把乱(グリップカオス)』などを使い、レーザー光線を繰り出す。が――

「甘いわよ――」

それも光弾で防がれる。そして――彼女の翼からいくつもの光線が現れ、龍嗣に襲いかかる。

ズガガガガッガッ!!

ものすごい勢いで周囲の焦土化した地面を更に蹂躙していく。

「(これが――修羅神仏なのか…)」

龍嗣は、刀を精製するスキル『見囮刀(ソードルックス)』で作り出した刀で次々とその光線を打ち払う。だが、いくつかの箇所に攻撃があたる。

「ぐっ――」

再生のスキル『蘇生組織(リピーターキッチュ)』で、傷ついたところを瞬間再生させたまま攻撃を打ち払っていく。そして、『嚥距離恋愛(ドリンクレンジ)』で、一気に距離をつめ

ギンッ!!

「一太刀――ってところかな?」

「やるじゃない」

挑戦的な笑みを浮かべる彼女。龍嗣は、滅多切りのスキル『定滅多標的(メタジャンクション)』で攻撃するが、全て捌かれてしまう。龍嗣は更に、全方位同時斬撃のスキル『多手多様(アロットオブハンド)』を使うが――

「全方位同時攻撃ね――なかなかね」

ズガァァンッ!!

龍嗣の攻撃は同じ全方位攻撃で相殺された。

「(相殺されただと!?)」

 

そんな中、彼女が剣を空高く振り上げると

 

キュイィィィィィイイイイィィィンッ!!

月の光や夜空の星の光が彼女の剣に収束していく。

「(これは――やばい!!)」

龍嗣の直感がそう告げる。そして、龍嗣は――決断すると同時に

 

ギュオォオオォォォオオオオオォォンッ!

瞬間――空が割るかのような音が辺りに響き渡る。そして、彼女の振るった剣の延長線上に当たるもの全てのものに一本の線が惹かれ――一切合切そこにあったものを粉砕していく。何の冗談でもない、文字通り"破滅の一閃"だ。星の黄金と夜空の黒で出来た奔流に触れた全てのものが、粒子となり、空に消えていく。

 

そんな中、龍嗣は――"本気"をだした。

 

ギャリリリリリイリリリリrィィィィィンッ!!

龍嗣は、リミッターを解除するスキル『人間的得意点(シューマッチポイント)』を使い、一瞬だけリミッターを解除すると同時に、暗黒物質を操るスキル『晦冥住み(ダークマイスター)』で、攻撃を相殺しつつ、魔法を司るスキル『ある魔法の一生(マジカルライフ)』で様々な魔法を一気に展開し叩き込み、その攻撃をぶち破った。同時に、その余波で空間を巻き込んだ巨大な爆発が巻き起こった。

 

 

 

 

「……うそ、でしょ――」

戦闘が終わり、ガクリと肩を落としている彼女。かくいう龍嗣も肩で息をしている状態だ。

「(勝ったってことだよな)」

おそらく先ほどのあの攻撃が彼女の"全力"だったということはわかる。そんな中――

「あ~あ、負けちゃった」

もはや諦めた様子で言う彼女

「あぁ、俺の勝ちだな」

「えぇ、あなたの勝ちよ――まさか、この私のあの攻撃が打ち破られるなんて、驚きだわ」

「正直、ギリギリだったがな、あと一秒判断が遅ければ、消滅していたところだよ」

「そっか~」

そういうと、彼女はこちらを見て

「んじゃあ、約束通り――あげるわよ」

「約束――あぁ、あんたをもらえるんだよな」

「そういうこと、私の身柄は貴方のものよ――煮るなり焼くなり、使うなり、なんなりして頂戴」

再び諦め気味で言う彼女。

「わかった――その前に、あんたの名前を聞いていいか?」

「…あれ?言ってなかったっけ?」

「あぁ」

「あら、私の名前はツクヨミよ」

「……えっ?まさか、ツクヨミって――って、あぁ!?」

「ちょっと、そんな大声で驚かないでよ、そうよ、神道神郡に属する月を神格化した夜を統べる神よ」

「ちょ――えっ!?」

「そんな、驚くこともないでしょ、ここは修羅神仏の集う箱庭なんだから」

「そういえば、そうか」

「(納得はや!?)」

納得の速さに心のどこかしらでツッコミを入れるツクヨミ。そんな中

「なぁ、ツクヨミさ――なんで、あんな条件を?」

「あんなってひどいわね、これでも命を掛けていたんだから」

「まぁ、それで――なんでさ?」

そういうと、夜空を見上げ、

「実は、私のコミュニティさ――"魔王"っていうものに潰されちゃってね、一文無しなのよ」

「だから、ここにいたと?」

「えぇ、ここなら、いろいろ水もあるし木の実もあるからね」

「まぁな」

近くの木の実をみる龍嗣。

「それで、魔王ってなにさ?」

「えぇ、箱庭で唯一にして最大最悪の天災よ」

「最大最悪の天災か――」

寝っころがり空を見上げながら、その存在はどんなものなのだろうかと考える龍嗣。

「そういや、コミュニティ潰されたって言ってたけど、コミュニティの名前は?」

「名前?桜出雲よ」

「桜出雲?なんか、かっこいいな」

「えぇ、日本神話系だからね、こうなったのよ」

と言葉を交わす。そういうと、龍嗣はゆっくりと身体を起こし

「ここにいても、何も変わんないし――いくか」

「行くって、貴方、宛はあるの?」

「ん、あるさ――黒ウサギってやつに招かれてここに来たんだし」

「黒ウサギ、あの箱庭の貴族の?」

「さぁ、知らんな」

「あ、そっか、初めてだったよね、ごめん」

「気にしないさ、それより行くぞ、ツクヨミ」

「えぇ、貴方のお側に」

こうして、いきなり頼もしい仲間が一人増えた。そして、龍嗣は黒ウサギと十六夜達のところに向かった。

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