AnotherStory―4番目の813スキル   作:有栖川アリシア

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第4巻――太陽と吸血鬼の狂宴
鳳凰の炎


アンダーウッドの最前線では、まさに地獄とも言える光景が広がっていた。

最前線を埋めるのは大軍を率いて押し寄せた巨人族と、無尽蔵に誕生する魔獣の群れと天には光と闇の巨龍。

 

 

龍嗣は、リミッターを解除するスキル『人間的得意点(シューマッチポイント)』と打撃を浸透させるスキル『痛信内臓(キルミーブロー)』、殴るごとに相手の五感を奪うスキル『五感性(クリティカルファイブ)』、敵を見切るスキル『識蔑視(アイコード)』、死角を消すスキル『開闢六十度の視界(モニターチェックフラッグ)』、限界を超えて戦うスキル『馬鹿者には限度がない(ピークアウトフール)』、敵が武器を持っていると強くなるスキル『不利要塞拳(ピラミッドナックル)』、ベストな動きをイメージするスキル『理想像(モーフィングゴースト)』をコンボのスキル『猛打傷(ヒットメーカー)』を繋げて、ほぼ無敵状態に等しい状態で龍嗣は巨人を圧倒していた。

 

「僕は今戦闘中――だから殺す」

巨人が龍嗣の巻き起こした炎に焦がれていく

 

「そして、君たちの相手をしている暇はないから殺す」

巨人が龍嗣が轟かせる雷鳴に撃たれていく

 

「僕の目の前に立ちはだかるから殺す」

巨人が龍嗣がなびかせた疾風によってバラバラに斬り裂かれる

 

「僕は争いが嫌いだから殺す」

巨人が龍嗣の作り出した数百発の弾丸で撃ち抜かれる。

 

「今日はとてもわるい天気だから殺す」

巨人が龍嗣のてづから握りつぶされていく

 

「そして、僕は悪くない――」

そういうと、ものすごい爆発とともに、血の雨が龍嗣の頭上に降り注ぐ。上空には二頭の巨龍が争っている。その余波は突風となって下層に被害をもたらすが――

 

ブオォォォオオオォォオンッ!!

その突風は、龍嗣の風を司るスキル『風の吹くまま(ウィンドウショッキング)』によって、全て龍嗣の力に変換されているのだ。

そんな中、地獄耳のスキル『話は聞かせてもらった(リッスンバイチャンス)』が、集合の合図を捉えた。龍嗣は、巨人族を見渡し

 

「――ただ一つ問題がありましてね」

そういうと、目の前に重力球体が現れ

「それは、こいつらが多いことなんですよ、そんでもって視界全てのステージが敵か、ま、俺にとっちゃ丁度いいハンデでしょ」

直後、球体が崩壊を始め、アンダーウッド一体を重力崩壊の爆発による振動が襲った。

 

 

――アンダーウッド地下都市、緊急治療所

急遽用意された治療所には、けが人が所狭しと並んでいた。そして、負傷者のほとんどが雑魚寝をしている。龍嗣はそこに来ていた。

 

「さてと・・・っと」

「あぁ、駄目だな、これだけ捜して見つからないとなると、春日部もレティシアと同じように何かしらの異常事態があったと考えていい」

「で、でも春日部さんは、空を飛べるのだから無事だと思うのだけど……」

「逆だな飛鳥、春日部は空も飛べるし五感も鋭い、なのに俺たちと合流できていない、なら、そこにはなにか重大な理由があるな」

真剣な声音で説明する龍嗣

「そもそも、レティシアが連れ去られたってほんとなの?」

「あぁ、間違いない――しかも、このゲームがレティシア――魔王ドラキュラの主催するギフトゲームだってこともな」

十六夜は学ランから契約書類(ギアスロール)を取り出し、内容を読み上げる。その内容に、複雑な表情をする飛鳥

「何度読んでも出鱈目だな」

「そうでもないさ、少なくともゲームとしての整合性は取れている、あとは何点か黒ウサギに確認すれば――」

十六夜が言いかけたとき

「十六夜さん!飛鳥さん!龍嗣さん!耀さんの行方が分かりました!」

黒ウサギとジンが帰ってきた。

「本当!?」

「YES……ですが、かなりまずいことになっているようです」

苦々しい表情を浮かべている黒ウサギ

「それで?」

端的に問いただす龍嗣

「目撃者によると、耀さんは、魔獣に襲われた子供を助けようとして、空にいったということです」

黒ウサギの報告に衝撃を受ける三人

「ってことは、あの城に単身で乗り込んだってわけか・・・」

「・・・YES」

蒼白になる飛鳥、その隣で十六夜も焦りを隠せず痛烈な舌打ちをした。如何に強大なギフトを有していても空をとぶことはできない二人。

 

「・・・なら、動くしかないな」

龍嗣が空を見上げてそういった。彼の視線の先には、古城がある。

「えっ!?」

「――乗り込む、下は任せたぞ」

「お待ちください、龍嗣さま」

黒ウサギがそれを静止する。

「龍嗣さまがいなくなってはあの二体の巨龍はどうされるのですか!?」

確かに、黒ウサギの言うとおりだが

「・・・ん、お前ら勘違いしていないか?」

「勘違い?」

ジンが聞いてくる。

「あの白い方は、俺の仲間だぞ?」

「「「「・・・えっ?」」」」

「龍の純血種の中にあるアンセスタードラゴンのアンスだ」

「そ、それはホントでございますか?」

「あぁ、ホントだ」

自信を持っていう龍嗣に

「なら――行ってきなさい、龍嗣くん、任せたわよ」

「あぁ、負けたら承知しねぇからな」

飛鳥と十六夜がそう言った

「んじゃあ――行ってくるわ!!」

そういうと、龍嗣は乗り込むのであった。

 

 

――アンダーウッド上空、吸血鬼の古城・城下街

 

「っ・・・またあの化物……!」

敵の気配を察知して、すぐにその場を離れる耀。息つく暇もなく、背後からぐちゃぐちゃと水気を含む不快な音を立てて近づく影。滅んだ城下を徘徊していたのは、血塊と苔の集合体のような赤黒い怪物だった。一体一体はどうということではないが――それが何百対も集まれば話は別だ。それに、彼女が守らなければならないのは、数十人近い負傷者と子供

 

「何処か隠れるところは……!?」

そう捜していると――

 

チュチュチュチュチュチュチュ!!

耀の頬を数発の弾丸が掠め――

パァンッ!!

 

威勢のいい破裂音と共に、周囲にいた化物が一瞬にして消えた。

「ッ!?」

耀は弾丸が飛んできた方に視線を向けると――

「無事か、お前ら?」

二丁拳銃をスタイリッシュに構えた龍嗣がそこにいた。

 

 

 

「(――なんとか、ってところかな)」

龍嗣は、銃火器精製のスキル失敗ばかりの銃作り(ガンスミステイク)、当たり判定操作のスキル任意的な審判(セルフィッシュアンパイア)、散弾丸のスキル蜂の巣落とし(ハニカムマグナム)、超々精密射撃のスキル紅一点突破(ジャストミートポイント)、弾丸軌道操作のスキル丸みを帯びた変化球(カービングボーラー)を使って、化物以外に弾丸が当たらないようにした龍嗣。

 

「無事か、お前ら?」

「う、うん」

「ありがとう、龍嗣」

「ああ、お嬢ちゃんと君のおかげで全員無事だ」

精霊の少女と年配の獣人が礼を述べる。

「――全く、寄生種はめんどいな」

「えっ?」

耀が龍嗣の言葉に驚く

「気づいていたのか?」

「あぁ、間違いないだろうな――苔に見える部分は奉仕で、生き物やその屍骸を苗床に繁殖する菌糸類だな」

「……もしかして、冬虫夏草みたいなもの?」

龍嗣の言葉に耀がいう。

「それだなが、名前が如何せん出ないな」

「あれは、性質が似ていることから、冬獣夏草とも呼ばれている種でな、昔は"アンダーウッド"でも見かけられた怪植物だ」

年配の獣人がいう。

「そうか――ってことは、燃やせば問題ないな」

「燃やすって、龍嗣やらないでよ?」

「あぁ、わかっているさ」

龍嗣は、年配の獣人の方を見て。

「・・・もしかして」

「どうした?小僧?」

「"六本傷"のガロロ=ガンタックさん?」

「あぁ、その通りだ、よく知ってるじゃねぇか」

と同時に、近くにいた精霊の少女キリノは、その名前を聞いて瞳を瞬かせた。

「"六本傷"のガロロ…"六本傷"の頭首・ガロロ大老じゃないですか!"怪猫のガロロ"といえば、"龍角を持つ鷲獅子"連盟の創設者の御一人!かつては、ドラコ=グライフと共に、南側の秩序のために戦った御方です!」

「おいおい、いつの話だそりゃ、今は連盟のしがない金庫番だぜ?」

謙遜する素振りを見せるが、豪快に笑うガロロ大老

「怪猫で金庫番……えっと、招き猫?」

「「ちょ…」」

「あっはっはっはっ!面白いなお嬢ちゃん!こんなむさ苦しいジジイ猫に誑かされて、千客万来なら、それこそ設けもんって奴さ!」

焦る龍嗣とキリノに、膝をたたいて笑い転げるガロロ

「……そういや、お嬢ちゃんたちとおまいさんの名前を聞いていなかったな」

「わ、私は"アンダーウッド"のキリノです」

「春日部耀、よろしくガロロさん」

「九十九龍嗣だ、よろしく――」

そういった時、龍嗣の顔がある一点を見つめた。

 

「さて、大老――あれは、植物でいいんですよね?」

「あぁ、その通りだぜ?」

「了解――なら、耀巻き込まれないように注意しろよ……」

龍嗣は、火を司るスキル『間違いなく放火(エキジビションマッチ)』と、風を司るスキル『風の吹くまま(ウィンドウショッキング)』、湿度を司るスキル『温湿口火(ドライアウト)』を一気に発動させると

ゴォオオォォオオォォォンッ!!

豪炎がこちらを囲んでいた冬獣夏草が一気に燃え上がった。

「耀!!みんなを連れて走れ!!」

「うん!!」

耀が先導し、子供たちは城の外郭沿いを走り抜ける。キリノはガロロに肩を貸して立ち上がった。すると、手負いの二人に目をつけた何体かの冬獣夏草が一斉に襲いかかる。

 

「――おっと、甘いぜ」

ズガカンッ!!

ドチュンッ!!

龍嗣の腕に現れた重力の塊がそちらの方に放たれ、襲いかかろうとした冬獣夏草が壁に叩きつけられる

「耀!!」

「うん!」

耀が動きを止まったで菌核を殴り潰して砕く。

「――さすが、っと」

ゴォオオォォォオォォンッ!!

隙を見せたのを好機と見た三人が襲いかかるが、龍嗣の豪炎によって阻まれ燃やし尽くされる。

「おいおい、二人共人間かよ・・・」

「うん、DNA的には人間」

「同じく」

周りを圧倒していく二人。そんな中、龍嗣の視界に逃げ遅れた子供が目に映った。

「――ッ!!」

龍嗣は、瞬間移動のスキル『足しげく通う(ルートセレクション)』、緊急避難のスキル『反射舞踊(ダンシングエスケープ)』を使い、二人の子供を抱えて再びスキルを使う。その直後

 

「――YAッFUFUFUUUUUUUUU!!」

「――地獄に落ちなさい!!」

紅蓮の炎と漆黒の槍撃が吹き抜けた。

「これは、まさか――!」

そこで、暴れていたのはツクヨミとカボチャの幽鬼――ジャック・オー・ランタンだった。

「ヤホホホ!呼ばれていないのにジャッジャジャーン!!大丈夫ですか、皆様方!」

「ナイスだ、ジャックさん、こっちは問題ない」

「それは、重畳!こやつらは私が引き受けますから、其処の建物にお逃げなさい!」

ヤホホホ!と陽気に笑いながら両手に提げたランタンを振り回し、業火を撒き散らすジャック。

そういうと、龍嗣と耀で手早く子供たちを避難させる。

「――全員隠れたよ、ジャックさん」

耀がいう。

「……解りました」

一変、陽気な声に重さが増す。同時にジャックの霊格が肥大化した。

「――"ウィル・オ・ウィスプ"の美旗を前にして、幼子を食い殺そうとするとは、何と無知、なんという冒涜、我らの美旗が掲げる大義を知らぬというのか……!」

「……ジャック?」

耀は遠くから呟く、しかしその声は彼に届かない。

「では、龍嗣殿――行きますよ?」

全身から陽炎を立ちのぼらせているジャックはギョロリと敵を睨み、

「知らぬなら我が業火で知りなさい、そして後悔なさい、我らが蒼き炎の導を描きし旗印は――"ウィル・オ・ウィスプ"の御旗は、決して幼子を見捨てはしないのだとッ!!」

「おうさ!やっちまおうぜジャックさん!」

そして、地獄の業火が大地を焦土とし、大気を灼熱に変え、影も残さず敵を焼殺する。轟轟と燃える業火は、城下町を飲み尽くす勢いで広がり、さながら悪魔の腕の如く敵を絡めて焼失させていく。

「わ、わわわ……!」

急いで上空に逃避する。間一髪呑み込まれずに済んだが、尋常外の規模の術だった。

 

「さてと…ツクヨミ!"アレ"を使う、ここは危険になる、他の参加者と共に――逃げろ」

「"アレ"を使うの――!?わかったわ!」

そういうと、連れて逃げていく。

「ジャックさん――あなたも一応、何とかしておいてくださいね?」

「ヤホホホ――あなたのその表情から見ると、なにやら面白いことが起きそうですね――では、任せますよ?」

「どうも――」

それと同時に、龍嗣は太陽を司るスキル『指害線(サンスロッシング)』、ブラックホールを操るスキル『穴崩離(ダークホール)』、火を司るスキル『間違いなく放火(エキジビションマッチ)』、森羅万象のスキル『全血全能(コンプリートジャングル)』、暗黒物質を操るスキル『晦冥住み(ダークマイスター)』を使い始め、

 

「さぁ・・・本舗初公開だ!!」

龍嗣は、懐からギフトカードを取り出す。そして、そのギフトカードが光だすと同時に、龍嗣の背中に黄金の翼が現れた。

「ちょ、それって!?」

近くにいたアーシャが驚きの声をあげる。

「さぁ、鳳凰の羽根よ――その輝きとともに、森羅万象――全てを燃やし尽くせ!!」

ゴォオオオオオォォォオオオォォォオオオオォォォォォォォォォオオオオオォォンツ!!

様々なところにいた冬獣夏草が一気に一点に収束されていき。

 

「さぁ、時間だ――答えを聞こう!!」

龍嗣の高らかな声が響いた。

 

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