AnotherStory―4番目の813スキル 作:有栖川アリシア
――"アンダーウッド"大樹天辺
「――平野ごと吹き飛ばすつもりだったなんて、過激だね、ウサギさんは」
「―――――………」
黒ウサギは、目の前の黒髪の少女に驚いていた。
「しかも、私が避けられないように、儀式場と直線の立ち位置を選んで使った……うん、とってもクールでクレバーです、噂で聞いていたよりずっと優秀なウサギさんです」
土煙が晴れる。そこで黒ウサギは驚いた。なにせ、その彼女はまるで何事もなかったかのように棒立ちで無傷だったのだ。しかも、擬似神格である
「(これは……防いだものでもなく、霧散させたものでもない……!?)」
ありえないほどの熱量なのにも関わらずこの状況に驚く黒ウサギ。
「さ、続けよっか――私も熱が入ってきたし、早くしないと儀式が――――」
黒髪の少女リンが、"終わっちゃいますよ"と言おうとしたとき――不意に黒い影が黒ウサギの目の前を通過した。
「やぁ、リンちゃん――リンちゃんなう、しているかい?」
「あらあら――私にうしろから迫るなんて、一体どちら様かな?」
そういって、明るく振り向くと――
「――ッ!?!?!?」
そこにいた存在にリンは驚いた。
「あ……あ…あなたは――」
「やぁ――少し"おはなし"しないかな?」
その一字一句に底知れない恐怖を感じるリン。
「あ…あ……」
ゆっくりと近寄ってくる。リンだったら、龍嗣いがいだったら簡単に逃げられるが、龍嗣相手だと簡単に逃げられない。
「さてと……リンちゃん、お兄さんといいことしようか――」
そう言って、龍嗣が肩を叩くと
ガクンッ……
その場にヘタリと座り込む彼女――
「りゅ…龍嗣さん?」
黒ウサギが声をかけるが、それを無視して龍嗣はその場から消えた。
――吸血鬼の古城・黄道の玉座
『久しいな、ガロロ殿、継承式で別れて以来か……しかし今は、お前に構っている暇はない!!』
恫喝し、黒い翼を羽ばたかせるグライア――突風に巻かれたガロロは瞬く間に壁に叩きつけられ、なすすべもなく崩れ落ちた。
「ぐ、ぉ………!」
『昔のよしみだ、殺すのは最後にしてやる、今は主の命を優先させてもらうぞ』
ガロロを横目に黒い鷲獅子は、嬉々として耀を見た。
『嬉しいぞ、コウメイの娘、よもや解答に辿り着くのが本当に貴様であったとは……!この星の廻りに感謝せねばなるまい!』
「な、何を」
『我が名は、グライア=グライフ!兄・ドラコ・グライフを打ち破った血筋よ!今一度、血族の誇りに決着をつけ――』
そう言いかけたとき
ザクンッ!!ブシュ――!!
『あ……あ…』
突如現れたその串に、その鷲獅子の羽はあっさりと串刺しにされ、磔にされるグライア=グライフ。床には、グライア=グライフの翼から出た血が床を汚している。
「お、おい――」
「――!?」
いきなりの目の前の光景に思わず絶句するガロロと耀。耀に至っては、その場で気絶しそうなほど顔を蒼くしている。
『翼をもがれた鷲獅子はただの獅子になるんだよね?――なら、やってみるか』
王座に通じる通路から聞こえるその声。直後――
ヴォンッ……
「「「ッ!?」」」
グライアの両脇に――巨大な手が現れ、それがその翼を持ち
『ぐあぁああああああああ!!!やめろおおおぉォオオ!!やめてくてぇぇぇええええ!!!』
咆哮を挙げるグライア。ミシミシと翼が呻きを上げていくのが耀でも分ける。生命の目録を使って対抗しようとするが、何者かに妨害されて、発動できないグライア。そして、通路から"それをやった本人"が現れた。
『き、貴様は――』
苦し紛れに名を呼ぶグライア。視線の先には、"魔王"がいた。
「龍嗣!?」
「兄ちゃん!?」
ガロロと耀が、龍嗣の姿に驚く。
「はっ、黙ってここを去っていればいいものを――随分と舐めた真似をしやがって」
そういうと、龍嗣の身体がゆっくりと化物に変化していく。そして、龍嗣の姿はいつの間にか――巨大な四肢と龍角を持つ黒龍になった。
『そ、その能力は!?』
「貴様がやろうとしたことと、対して変わらんだろ――鷲獅子」
『――どうして、それを……』
「それは、神にでも聞いてみろ――というわけだ」
『貴様――こんなことをしておいて、常識を知らんのか!?』
「黙れ、鳥野郎!!常識なんて最初からねーよ」
『なにっ!?』
「今更驚くことでもあるまい――というわけだ」
龍嗣の口にゆっくりと炎が溜まっていき
「では――"跪け"」
そういうと、炎がグライアを焦がし始めた。そして、龍嗣はその場から消えた。
「――突き破りなさい!!ディーンッ!!」
「DEEEEEEEEeeeEEEEEN!!!!!」
雄叫びを上げ、黒い光が渦巻く沼へと突進を仕掛けるディーン。中で佇むアウラは、小賢しいとばかりに高笑いを上げ、飛鳥たちの雄姿を愚行だと断じる。
「何をするかと思えば、力任せの突進だなんて!とうとう自棄を起こしたのかしら"黒死斑の御子"!?」
「さぁ、――「それは、結果を見てから言ってみろ」えっ!?」
飛鳥の声は、第三者の声によってかき消された。そして、その言葉を聞いたアウラは、顔を青く染め始める。そして、永久駆動の神珍鉄の人形が突撃していく。そして
ザクンッ!!ザシュッ!!
惨たらしい音が――アウラから響いた。
「そんな…うそ……」
「ど、どういうこと――」
「こいつは――」
あまりにも惨たらしい光景に、絶句するペストと飛鳥、それにサラ。アウラはゆっくりと自分の体に起きた事を確認するため、胸元を見ると、そこには赤く染まった無骨な槍が一本。
「やぁ、アウラさん――君も"忠告を破った"んですか、なかなか面白いことをやってくれますね」
「ぐっ…貴様は――」
「顔と名前を忘れたとはいいませんよ~ってか、忘れてました?」
「――貴様のことを忘れる…わけ、ないだろう」
「それは――よかった――では、こちらをご覧下さい」
そういうと、龍嗣の手元に現れたディスプレイに
「ドラコ!!それに、リン!?」
アウラが絶叫する。
「いや~楽しいな、圧倒的な勝負というのは、馬鹿馬鹿しくてもやっぱり楽しい」
言うと同時に龍嗣の雰囲気が一変した。
「宣告は与えたはずだ―――貴様の前には、いくつかの選択肢があったはずだ―――私の宣告を受けた上で熟知し、自分の命を預けると足ると判断した選択肢が『これ』だと言うのなら、私は真っ向から立ち塞がる……率直に言おう、もう少しまともな選択肢はなかったのかね?」
常軌を逸したその龍嗣の雰囲気にアウラが狼狽し始める。そんな中――
雷雲犇めく空から、全長はかれぬほどの存在が鎌首を下げて大地を見下している。参加者を一飲みにできるほどの巨大な顎を開き、巨龍は、天地を揺るがす絶叫とともに大地へ舞い降りようとするが
「邪魔だ――やれ、アンス」
龍嗣が、その巨龍を睨むと同時に
ガスッ!ドガッ!!
『ギギャゴオオォオオオォォンッ!!』
『グギャァァンッ!?』
アンスによって、その巨龍の首が恐ろしい角度でネジ曲がる
「(――あまりやりすぎるなよ、アンス)」
無理もない、人間で言う首が後ろに曲げられるようなものだ、かなり痛いというか、一歩間違えればレティシアがどうなるかわかったもんじゃない。それに加え、その拳で殴っているのだ。やりすぎである。無論、地上に被害が出ないように、ある程度の高さに、龍嗣の能力、波動を司るスキル『
「そ、そんな……」
「企みは潰えたようだな――アウラ」
「何故名前を――」
「そんなのは、どうでもいいのだよ」
彼女の喉元を思いっきり締め上げる龍嗣。
「グライア及びリンは共に負傷、貴様もこの体たらく、それに加えもう魔眼うちの神様が葬ってくれた、この意味がわかるな」
何も言わないアウラだが、その顔は絶望に染まっている。
「このまま、貴様の殿下を倒しに行ってもいいが、それよりも、白夜王をここに呼び寄せるのもいいな」
「き・・・貴様……」
と苦しんでいるアウラを尻目に、勝利宣言がなされる。
「さてと…殿下に伝えておけ――次は段取りを整えてこいってな」
「…覚えてろよ、人間が」
「言ってろ、魔術師――」
そういうと、思いっきりアウラの体が龍嗣のスキルなどによって地面に叩きつけられた。その衝撃で背骨が折れ、口から多量の吐血をするアウラ
「あぁ、一応言っておくが、やり過ぎなけりゃ正義じゃねえ!それがオレのポリシーだ!!」
少しポーズをつけながら言う龍嗣。それから、龍嗣は一気に加速し吸血鬼の古城に向かった。