AnotherStory―4番目の813スキル   作:有栖川アリシア

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第5巻――ヒッポカンプの大宴
戦のあとの大宴


――二一〇五三八〇外門・"ノーネーム"本拠

 

――巨龍との戦いから半月が経過した。"ノーネーム"の面々も穏やかな日々の中で個々の活動位に専念し始めている。

魔王としてギフトゲームをしていたレティシアも正式にノーネームの従僕となり、今はメイド三人で年長組を仕切っている。

あの襲撃によって収穫祭は延期に思われたのだが、龍嗣の急速な復興の手伝いと援助と、サウザンドアイズの手広い広報のおかげでどうやら再開のめども早い段階でたってきた。

魔王の撃退という実績と功績を得た"龍角の鷲獅子"連盟は多くのコミュニティに着任を歓迎され、また同時に、"ウィル・オ・ウィスプ"や"ノーネーム"のコミュニティもまた名誉と社会的信頼を得ることに成功した。それに加え、"桜出雲"もだ――

 

「にしても――シンは、本当に規格外ってところあるわよね」

「それは同感する、巨龍が暴れ終わり、私を救ったあとにすぐさま"魔龍アジ=ダカーハ"の分隊を相手にするとは、常人の沙汰ではないな」

「――えっ、"魔龍アジ=ダカーハ"ってあの、拝火教の魔龍のこと?」

「そうだが?」

即答するレティシアに対して口元をヒクつかせるペスト。

「……何?箱庭って、そんな大物が首輪もないまま徘徊しているの?」

「まさか、"魔龍アジ=ダカーハ"だけは、特殊でな――本体が二百年前に解放されて以来、分身体とも呼べる群れを構築して、無作為に暴れ続けているんだよ」

「何それ怖い、本気で怖い、増えないうちに本体を倒せば良かったのに」

「バカをいうな、本体は叩けば叩くほど分身をつくり増やす上に、第一世代は全て神霊級だぞ、一匹で神郡を築く魔王なんて、馬鹿馬鹿しくて相手してられるか」

どうやら、関係があるのか、珍しく語調を荒げるレティシア。

「とはいえ、その分裂を食い止めたと考えると――流石は最強の"階層支配者"とあいつらしいな、一撃で五体の第一世代を葬ったとか、彼女とあやつがいなければ、東の下層は夥しい犠牲者で血の海に染まっていたことだろうな」

「――ふぅん」

ペストも気のない返事をしているが、内心冷や汗を垂らしているのであった。

 

 

――"アンダーウッド"の麓・収穫祭受付。

 

「くぁー……やっと解放されたのですよ」

とウサ耳を伸ばしながら、へにょりと再び脱力する。白夜叉に拉致られ、解放されてから三日が経った。

黒ウサギは、夕暮れの太陽を背に一息ついて背筋を伸ばし、一息ついていると

 

「お疲れ、黒ウサギ――」

受付の東側から、見知った顔というより仲間がいくつかの仲間を連れて現れた。

「あっ、龍嗣さん、それにアマテラス様もツクヨミ様も」

「やっほー」

互いに軽く挨拶し、龍嗣は、飲み物を渡す。

「疲れてるみたいだからな、ほれ飲み物だ」

「ありがとうございます」

龍嗣から受け取った飲み物を一気に飲み干す黒ウサギ。

「おや、その後ろの方は――まさか」

「あぁ、彼女か?」

黒ウサギの視線が、後方の淡く輝く羽を腰から生やした少女に向けられる。龍嗣も彼女に視線を向ける。

「もしやと思ったけど、"箱庭の貴族"さんだなんてね――お察しの通りよ、私の名前はアイテール、ギリシア神郡所属だったけど、コミュニティを追放されて今は彼のところのコミュニティーに身を置いているわ――よろしくね、黒ウサギさん」

「は、はい!!」

まさかの、天空神、太陽神、月の女神が揃ったことに驚きと緊張の黒ウサギ。語調もどこかおかしい。とはいえ、すぐにそれも直り、

「そういえば、龍嗣さん――飛鳥さんと春日部さんとで狩猟祭に行ったのでは?」

「あぁ、行ったよ」

本当なら、龍嗣はここにいないのだ。

「ということは、もう終わったのですか?」

「いんや、参加を断られてしまってな――」

「えっ!?あ…あぁ~」

色々と事情を察する黒ウサギ。無理もない、彼のちからは本気を出せばこの箱庭をひっくり返しかねないくらいの力を持っているのだ。

「とはいってもだ――流石に癪に触ったから、俺の仲間を送り込んでおいたさ」

「仲間ですか?」

「まぁな――」

と黒ウサギは、飛鳥と春日部がいる方向に耳を澄ますと――

 

「――っ!?」

ものすごい爆音と破砕音。それに加え、おびただしい数の獣の悲鳴が聞こえる。声の主はやはりペリュドンだ。

「あ、あの――どんな方が参加しているのですか?」

「それはおいおいだな」

ともったいぶる発言をする龍嗣。

「そんで、黒ウサギは?」

「あぁ、そうでした」

それから、黒ウサギは、受付のキリノと言葉を交わし、主賓室へ通してもらおうと、受付してもらう。そして、収穫祭の地図と進行予定をしるしたパンフレットを手渡され、再びいくつか言葉を交わす。すると、受付の奥から、隻眼に眼帯をした細身に細めの胡散臭い笑顔とエセっぽい関西弁の男が現れた。

 

『――っ!?』

龍嗣以外の四人は、相手に敵意がないのに警戒する。そして、龍嗣には面識がある人だ。

「おや、あんたは――」

そういって、何も警戒せずに龍嗣は黒ウサギの近くに行く。

「どうもはじめまして、"箱庭の貴族"殿とそのお仲間さん、僕は蛟劉といいます、姓は特にない風来坊なんで、お好きにお呼びくださいな」

悪意のない胡散臭い雰囲気の男だが、龍嗣は、彼の本質を一瞬で見抜く。

「どうも、桜出雲の九十九龍嗣です、お会い出来て光栄です――」

「そう言われると照れるわ、ありがとな」

「いえいえ、んじゃあ、黒ウサギを頼みますね」

「ほな、わかったで――」

「では、よろしくお願いするのですよ!」

「はは、元気やね、それじゃあまずは地下水路に向かおか」

そういうと、蛟劉は、黒ウサギを連れて地下の書庫に向かっていった。

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