AnotherStory―4番目の813スキル 作:有栖川アリシア
6人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔――そして、水平に太陽が廻る世界だった
「・・・・・・なっ・・・・・・!?」
「面白いじゃねぇか」
あまりの異常さに十六夜たちは息を呑み、龍嗣は不敵に笑った。
「今一度名乗りなおし、問おうかの。私は"白き夜の魔王"――太陽と白夜の精霊・白夜叉、おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?」
少女とは思えぬ凄みのある笑みを浮かべる白夜叉に三人は息を呑み、笑みを浮かべる龍嗣――心地よい冷や汗が龍嗣の背中をかける
「水平に廻る太陽と・・・・・・そうか、白夜と夜叉、あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を豹変してるってことか」
「如何にも、この白夜と湖畔と雪原、永遠に世界を薄命に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の一つだ」
十六夜の質問に白夜叉が答えた。
「おいおい、これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤……!?」
ここに来て驚く龍嗣
「如何にしても、して、おんしらの返答は?"挑戦"であるならば、手慰み程度に遊んでやる――だがしかし"決闘"を望むなら話は別、魔王として、命の誇りの限り闘おうではないか」
「おいおい、さすが魔王だぜ、俺の考えの斜め上を行くな~」
返事をすぐにした龍嗣に対して、返事を渋る十六夜
「参った、やられたよ、降参だ、白夜叉」
「ふむ?それでは、決闘ではなく、試練を受けるということかの?」
「ああ、これだけのゲーム盤を用意できるんだからな、あんたには資格がある――いいぜ、今回は黙って試されてやるよ魔王様」
苦笑いと掃き捨てるような物言いの十六夜に笑う白夜叉
「して、他の者も同じか?」
「・・・・・・・ええ、私も試されてあげるわ」
「右に同じ」
「ん~いいぜ~」
苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人――満足そうに声を上げる白夜叉
「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!"階層支配者"に喧嘩を売る新人と売られた喧嘩を買う階層支配者なんて、冗談にしても寒すぎます!!それに白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前の話じゃないですか!!」
「何?じゃあ、元魔王ってワケか」
龍嗣が言う
「さてのぉ~」
シラを切る白夜叉――そんな中、彼方の山脈から獣とも野鳥とも聞こえる甲高い声が聞こえた。
「――なんだ?」
「何?今の泣き声、初めて聞いた」
いち早く気づいたのは春日部耀と龍嗣だった。
「ふむ・・・・・・あやつか、おんしら4人を試すには打ってつけかもしれんの」
湖畔をはさんだ向こう岸にある山脈に、ちょいちょいと手招きをすると
バサッ!!バサッ!!バサッ!!
体長5mはあるグリフォンが現れた
「グリフォン・・・・・嘘、本物!?」
「マジかよ、幻獣の類かよ」
「フフフ、如何にも、あやつこそ鳥の王にして獣の王"力・知恵・勇気"の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
手招きすると、白夜叉の隣に降り立つグリフォン
「さて、肝心の試練だがの、おんしら四人はこのグリフォンで"力・知恵・勇気"のいずれかを比べあい、背中に跨って湖畔を舞うことができればクリアということにしようかの」
というと
「なぁ、白夜叉――それに速度を付け足してくれないか?」
「おぬし、正気か?」
「あぁ、おおマジだ――ダメか?」
「まぁ、グリフォンじゃし、負けぬと思うが――よいぞ」
「ども」
それから、虚空から羊皮紙が現れ、なにかに記述した
ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱と疾走"
プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
九十九 龍嗣
クリア条件 グリフォンの背中に跨り、湖畔を舞う。一周の間にグリフォンを追い抜くこと
クリア方法 "力・知恵・勇気"の何れかでグリフォンに認められる
敗北条件 降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトマスターを開催します サウザンドアイズ "印"
「私がやる――」
読み終わるや否や指先まできれいに伸ばして手を挙げたのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望のまなざしで見つめていた。比較的におとなしい彼女にしては珍しく熱い視線だ。
「ついでに俺も、速度のほうは言いだしっぺだし、やらせてもらうよ」
龍嗣も手を挙げる。その目は、今か今かと駆け出しが始まる子供のような視線だ
「春日部でいいか?」
「耀でもいい」
龍嗣の問いに聞いてくる
「そっか、大丈夫?」
「大丈夫」
瞳はまっすぐグリフォンに向いている。少しあきれたような苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥
「んじゃあ、先行は譲ってやる――龍嗣、春日部失敗するなよ?」
「気をつけてね、二人とも」
「あぁ、頑張る」
「うん、頑張る」
それから、龍嗣と春日部は白夜叉を巻き込まないように為に離れたグリフォンに駆け寄る
「さてと――いざ、会話となるとな・・・」
少し考えると何かを閃いたように動物と会話するスキル『
「え、えーとはじめまして、春日部耀です」
グリフォンと話ている春日部耀
それから、春日部がグリフォンと話しているので、流石にここで話すのは野暮だろうと思いながらも軽くストレッチをしながらいると。ある程度話が終わったらしく不安定なところにしっかりと手綱を握った春日部が乗り込む――龍嗣は、話を切り出した
「お~い、そこのグリフォンさん、俺の声が聞こえて理解できるなら、右前足を上げて意思疎通ができてるって合図くれないか?」
春日部が乗っているグリフォンは右前足を上げるを何事も無いようにこちらを見る
「おぉ、聞こえたみたいだな――んじゃあ、俺と勝負しませんか?速さで」
『ほぉ、お主――それでは対価に何を差し出す?』
「そうだな――」
龍嗣は春日部のほうを見て
「命だ――命を俺は賭ける」
親指を心臓に指して、堂々という
『よかろう――小僧、この鷲獅子の疾走簡単に抜けると思うなよ』
「OK、っとその前に――おい、ゴールはどうするんだ?」
『・・・まぁ、見ておれ』
そういうと、地面が裂け、そこからでかい鳥居が現れた
「んじゃあ――ショーと垂れ込もうじゃないか!!」
龍嗣とグリフォンはスタート地点に並び――グリフォンは翼を三度羽ばたかせ、前傾姿勢をとる。龍嗣は爆発を司るスキル『
グリフォンが大地を踏み抜くようにして薄明の空に飛び出していくと同時に
バンッ!!
巨大な爆発音と同時に龍嗣は空にとびだし、翼を生やすスキル『
グリフォンは話しながらも春日部と話している――その顔には少し焦りが見える
それから、大気が揺らぐ――グリフォンが翼を用いて旋風を操り始める
『――ついて来い、小僧!!』
「は、そっちこそなぁ!!」
頂から急降下する際、グリフォンの速力が二倍に近いものになる。
「へぇ・・・楽しいじゃねぇかよ!!」
そういうと――龍嗣はグリフォンの上の三倍のスピードで空を疾走し始める
ギュオォォォォォン!!
まるでジェット機同士のドッグファイトのような感覚に陥る龍嗣
それから、一気に距離の勝負になった。そこで一気にラストスパートをかける。そして、龍嗣はダメージをキャンセルするスキル『
キュィィィン!!バシュゥゥゥン!!
超音速を軽々しく越え――
ズドォォォン!!
轟く様な大音響と共に龍嗣は軽々しくかなり距離があった状態でゴールすると、直後、白夜叉や黒ウサギ、十六夜や飛鳥、それにツクヨミのいたところの地面がソニックムーブでえぐれ、もろで飛ばされかける四人であった
そして――
バサッ!!バサッ!!
龍嗣と春日部の勝利が確定した――しかし、その瞬間
「春日部!!」
『何!?』
「春日部さん!?」
安堵の息を漏らす暇も無く、春日部の手から手綱が外れた
『は、離し――』
「待て!まだ終わってない!」
助けに行こうとしたあせる黒ウサギを十六夜が手をつかんで止めたのだ。
そして、龍嗣でも驚いたことが起きた
ふわっと春日部の体が翻り、歓声を殺すような緩慢な動きはやがて彼女の落下速度を衰えさせ、
「――なっ」
春日部耀が湖畔に触れることなく飛翔した。このことに龍嗣も絶句した。湖畔の上で風を纏って浮いている春日部。ふわふわと不慣れな飛翔を見せる春日部に
「はい」
龍嗣は春日部に手を差し伸べる
「・・・・・・ありがとう」
「いえいえ」
少し微笑みながら耀と龍嗣の二人は降り立った。
それから、十六夜が春日部に近寄った
「やっぱりな、お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
軽薄な笑みに、すこしむっとしたような声音で耀が返す
「・・・・・・違う、これは、友達になった証、けどいつから知ってたの?」
「ただの推測さ、黒ウサギとあった時に、"風上に立たれたらわかる"とか言ってただろ?それでさ」
「うん」
「十六夜の説明に付け加えるとすれば、人間の成せる業じゃないしね、それにあの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
「おい、龍嗣それは少し矛盾しているだろ、だってお前さっきまであれより早い速度で飛んでたろ?」
「う~ん、それはいわなくていいだろ十六夜」
「まぁね」
そんな中
『見事な滑走だったな小僧』
「どうも」
そんな中、空中からツクヨミが降りてきた
「お疲れ、龍嗣」
「おう、被害なかったか?」
「うん、被害あったけどね」
苦笑いしながら指を指した方向にはかなりえぐれた地面――
「さすが、私を打ち倒しただけあるわね」
とイタズラっぽく笑みを浮かべるその近くでは、どうやら春日部の木彫りの彫刻をみんな見ているようだ。そんな中
「いやはや、大したものだ――このゲームはおんしの勝利だの・・・・・・ところで、おんしらのは先天性なのか?」
「違う、お父さんの木彫りのおかげで話せるようになった」
「俺は、そうだな――こういったほうが良いかな、一は全、全は一ってところかな」
「ん?一は全、全は一、意味合いとしては、社会全体は1人の集合体であり、1人が集合すると社会全体ってことじゃないのか?」
「こっちのだと――ある一つのギフトが全てを作って全てがあるギフトを形作っているという感じなのさ、ところで、春日部の胸のって系統樹じゃないのか?」
「・・・・・・?」
系統樹という言葉をしらなそうな耀
「もしかして、お父様の知り合いに生物学者がおられたのではないですか?」
黒ウサギが聞く
「うん、私の母さんがそうだった」
「ってことは、決まりだな――春日部、系統樹って言葉は知ってるんだろ?」
「・・・・・母さんの作ったのは樹の形をしていた」
そんな中、龍嗣は目を細めて
「白夜叉――どうみる?」
「どうみるもなにも――神代の大天才ってレベルじゃな」
「確かに――俺の目から見ても、その系統樹は森羅万象のスキル『
「お主、そこまで把握しておったのか、中々のバケモノじゃな」
「バケモノどうも、そんで、黒ウサギ、今回の目的があるんだろ?」
唐突に話を振られ、少し戸惑う黒ウサギ
「白夜叉様、今回、この4人方の鑑定をお願いしたいんです」
そういうと、気まずそうな顔をする白夜叉
「よ、よりにもよってギフト鑑定か、専門外どころか無関係もいいところなのだがの」
どうやら、何かと勘違いしていたらしく着物の裾を引きずりながら、三人の顔を両手で包んで見つめる。
「どれどれ・・・・おぬしら四人とも実力が高いのはわかる、おんしら自分の力を程度把握している?」
「さぁ~」
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「うおおおおおおい、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのはわかるが、それじゃ話がすすまんだろうに」
「いや、どれがギフトでどれがギフトじゃないんだかわからないし」
「わからないっていわれてものぉ」
「それに、人に値札を貼られるのは趣味じゃない」
思いっきり拒絶している十六夜に同意する二人
「ふむ、何にせよ"主催者"として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには"恩恵"を与えばならん、ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティの復興の前祝としてはちょうどよかろう」
そういった白夜叉が拍手を打つと、4人の前に光り輝く三枚のカードが現れた。
コバルトブルーのカード 逆廻十六夜・ギフトネーム"
ワインレッドのカード 久遠飛鳥・ギフトネーム"威光"
パールエメラルドのカード 春日部耀・ギフトネーム "
フロスティグレイのカード 九十九龍嗣 E+
それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る、そうすると黒ウサギが興奮したように四人のカードを覗き込んだ
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「お金?」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのですか!?」
黒ウサギのことに納得する龍嗣
「このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!」
「へぇ~つまり、素敵なアイテムってことでオッケーか?」
龍嗣が聞くと
「だから、何で適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
黒ウサギにしかられながら三人はそれぞれのカードをものめずらしそうに見つめる
「そう、ならこんなことはあり得ないよな」
「俺のはレアケースなわけだ」
龍嗣と十六夜がいたずらっぽそうに言うと
「そんな馬鹿な!」
バシッっと白夜叉は二人から顔色を変えてギフトカードを取り上げる。その雰囲気には尋常ならざるものがある。
「なんじゃこれは・・・"
「けど、現状起こしている――」
「あぁ、なんにせよ、鑑定はできなかったってことだろ、俺的にはこの方がありがたいさ」
二人は、パシッっとギフトカードを白夜叉から取り上げた。だが、白夜叉は納得できないような怪訝な瞳で十六夜をにらむ
「さてと、今日は超豪華アイテムありがとな、白夜叉」
「おう」
「ありがとう、また遊んでくれるとうれしい」
「あら、ダメよ春日部さん、次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」
「ああ、吐いたつばを飲み込むなんて、格好つかねえからな、次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「ふふ、よかろう、楽しみにしておけ・・・・・・ところで」
白夜叉は真顔な顔をして
「今さらだが、おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか理解しているのか?」
「魔王にやられて、やり返さないといけない――それも徹底的に」
「おやおや、では、おんしらは承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「あぁ、そうだ」
「そうよ、打倒魔王なんてカッコイイじゃない」
飛鳥がいうと
「"カッコいい"で済む話ではないのだがな・・・全く、若さゆえのものなのか、無謀というか勇敢というか――」
「おい、白夜叉なにか忘れてないか?俺達には邪神さまもついているんだ」
龍嗣がいう――その後ろではにこやかに笑っているツクヨミ
「白夜叉―― 一つ良いかしら?」
「なんじゃ?」
「あのルール、離れてから変わってないわよね?」
「――再びやるというのか、おぬし?」
「えぇ、そのつもりよ?」
「けど、批判も多いし、目も付けられやすいぞ?」
「大丈夫よ、今度は失敗しないから」
そういいながらも――あの巨大な荷物を持ち上げる。そういうと、6人と一匹は女性店員に見送られて、"サウザンドアイズ"二一〇五三八〇外門支店を後にした