AnotherStory―4番目の813スキル 作:有栖川アリシア
「さてと・・・あり得ないな」
龍嗣は黒ウサギの言葉を即効で否定した――視界の先には一面の廃墟が広がっている。
町に刻まれた傷跡を見た飛鳥と耀は息を呑む、十六夜と龍嗣は目を細めてその光景を見ていた。
「十六夜――どうみる?」
「百年単位だな」
十六夜がその通りだという感じで言うと
「黒ウサギ、魔王のギフトゲームがあったのは――今から何百年前の話だ?」
龍嗣がそう問うと
「わずか三年前でございます」
「ハッ、そりゃ面白いな、いやマジで面白いぞ、この風化しきった街並みが三年前の話だ?」
それほどまで風化していたのだ
「・・・・・・断言するぜ、どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方はあり得ない、この木造の壊れ方なんて、膨大な時間をかけて自然崩壊したようにしか思えない」
十六夜はあり得ないと納得しながらも冷や汗を垂らす
「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ、これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」
「・・・・・・生き物の気配も全く無い、整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」
二人の感想は十六夜の言葉よりもはるかに重い
「十六夜――さっきの"あり得ない"、あり得ないこともないと思うぞ」
「・・・なに!?」
龍嗣が十六夜に言った
「――もし、俺の仮説が正しければこういうことになるな・・・」
時を操るスキル『
それから、物質などが時間を巻き戻したかのように動いていき―――そこに、民家が現れた
「「「ッ!」」」
「今、この家の時間だけを巻き戻した――これができるって事は」
「――時間を加速させるってことは可能ってことか」
「あぁ――春日部さん、これ修復にはどれくらいかかると思う?」
「数百年単位――」
「そうか――おい、黒ウサギ」
「はい、なんでしょう?」
「仮に、ここ全てを草原に変えたら何ができる?」
「食物の栽培とかが、それにかなりコミュニティーの復興に近づきます」
「わかった――お前らは先に帰ってろ」
それから、三人を先に帰らせる
「さてと・・・ツクヨミ、だれもいなくなったか?」
「えぇ、なにすんの?」
「まぁ見てろって」
龍嗣がゆっくり瞳を瞑り――頭を最大限フルに動かしていく
「さぁ――降臨だ!!」
龍嗣は、神になるスキル『
「ッ!?神格!!まさか!?」
驚いているツクヨミを尻目に、森羅万象のスキル『
瞬く間に地面が昔のように豊潤な土壌に生き返っていく――それから、あっという間にそこに緑のねっころがるとちょうどいい雑草が生い茂る野原が一面に現れた。
「ふぃ~・・・」
一息ついて横になると――
「グハッ・・・」
龍嗣の口元から血反吐が出た――
「ちょ、龍嗣!?」
心配して駆け寄ってくるツクヨミ
「――心配するな、なに、少し無理しすぎただけさ」
どう考えても大丈夫じゃない状況だった
――"ノーネーム"居住区画・水門前。
春日部耀は石垣にたちながら物珍しそうに辺りを見回していた
「大きい貯水池だね――ちょっとした湖ぐらいあるよ?」
『そやな、門を通ってからあっちこっちに水路があったけど、もしもあれに全部水が通ったら壮観やろなあ、けど使ってたのは随分前の事なんちゃうんか?どうなんやウサ耳の姉ちゃん』
「はいな、最後にコレを使ったのは三年前ですよ、三毛猫さん、もともとは龍の瞳と呼ばれるギフトがあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」
「龍の瞳?なにそれカッコイイ超欲しい、どこに行けば手に入る?」
「さて、何処でしょう、知っていても十六夜さんには教えません」
黒ウサギは、話をぼかす――仮に十六夜や龍嗣に聞かれれば、確実に取りに行くだろう。龍嗣が行けば、どうなるかわからない下手したら彼の実力からしたら・・・ありえない状況でもないが――
それから、黒ウサギは苗を植えるのに忙しくなる、その間、三人はジンやコミュニティの子供達の話を聞いていた
「それでは、苗の紐を解いて根をはります!十六夜さんは屋敷への水門を開けてください!」
「あいよ」
黒ウサギに言われて、十六夜は貯水池に下って水門を開ける――苗の紐を解くと根を包んでいた布から大波のような水が溢れかえり、激流となって貯水池を埋めていった。水門の鍵を開けた十六夜は驚いた
「ちょ、少しはマテやゴラァ!!流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!!」
叫ぶ十六夜、無理もない、彼は今日、二度もずぶぬれになっているのだ。言わなくても、一度目は、蛇神との戦いでだ。
「うわお!この子は、想像以上に元気です♪」
黒ウサギが、水門から一気に溢れ出した激流に対して驚いていた。
「凄い!!これなら、生活以外にも水が使えるかも……」
「なんだ、農作業でもするのか?」
「近いです「ちょっと、待て御チビ」」
ジンが説明仕掛けたとき、その言葉を十六夜が遮ったと同時に
「十六夜さん――すいませんが」
黒ウサギが告げようとしたとき
「まて、俺も行く」
「私も行くわ」
「……私も」
ただならぬ雰囲気が漂う。
「――ジンぼっちゃん、ここで」
「はい」
そして、黒ウサギ含め四人があの廃墟地帯に向けて飛び出していく。
「おい、黒ウサギ――白夜叉と似ている感覚がするんだが?」
「多分、その感覚は神格の感覚で間違いないでしょう」
走りながら聞く十六夜
「神格って――白夜叉が言っていたやつだよな?」
「えぇ、そうですわ」
「ちょっと待って、このコミュニティに神格は――」
「――飛鳥、ツクヨミさんがいる、けど、この感覚は絶対違う」
耀が飛鳥の意見に言う。
「そうなると――黒ウサギ、どうなる?」
「正直、少しわからないところが多いです、ゲーム宣言が行われていない以上、一刻も早く確認しないと何とも言えません」
それから、飛鳥は黒ウサギに抱きかかえられ、一気に飛び始めた
「おいおい、これどういうことだよ…ありえねえ、ありえねえぞ」
十六夜はその現状に冷や汗を少しかきながら笑っていた。
4人がいるのは、居住区画の門の上にいた
「……生き返っている、虫もいるなぜ?」
「どういうこと、ここってあの場所でしょ?」
「はい、飛鳥さんの言うとおり、ここは魔王の力誇示と一種の見せしめとして荒廃した土地だったはずなのですが…?」
黒ウサギでさえも驚いていた。なぜなら、視界一面が野原で埋まっているのだ
「あいつの時間操作でさえ、ここまでは行えないはずだ…どういうことだ?」
「それは本人に聞いてみるのが妥当でしょう」
と黒ウサギが動こうとした
フワ~
黒ウサギの髪をそよ風が流した
「…黒ウサギ?」
うっすらとその頬から涙を流す黒ウサギ
「さてと、問題児様を探しに行きますよ」
「あぁ、とっとと捕まえて派手にネタばらしと行こうか!」
そういうと――4人は問題児を探しに飛び出した
「雑草がぼうぼうだが――まぁ、いいか…外っていいな」
「なにいっちゃてんのよ、シロツメクサやヤバラッコ、ノミノツヅリにナズナとか、レンゲ草やキキョウソウまで生えてるわよ」
「そうか~むちゃくちゃにやったけどそりゃよかった」
地面に横たわった龍嗣の隣には、足を伸ばしたツクヨミの姿――そよ風を感じながら星空を眺めていると
「見つけた!!見つけたのですよ!?」
千里眼のスキル『
「やっほ~待ってたって言ったら不気味になるのかな?」
「言っても言わなくても、十分不気味すぎだよ、あんた」
「それはそれは」
龍嗣が薄笑いしながら流すと、黒ウサギが前に出てきて
「龍嗣さま、ここで何がありましたか?」
黒ウサギが真相を問う質問をしてきた、それに対し、少しため息をつきながらも
「――
生命を与えるスキル『
「――な!?」
「草木が成長しただと!?」
「「ッ!?」」
驚く4人
「まぁ、こんなところさ――おいおい、色々と教えるさ――」
そういうと、龍嗣は、あの大きな風呂敷を持ち――
「さてと、黒ウサギ――寝床に案内しろ?」
「え、あっ、はい」
呆気に取られる三人を尻目に、少し荒っぽい方法で黒ウサギを興奮からたたき起こし、寝床に案内させた
「ほぅ、結構でかいな~んで、何処に泊まればいいんだ?」
コミュニティの屋敷に着いた頃には、すでに夜中になっていた。龍嗣は黒ウサギに問う
「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できるものには序列を与え、上位から最上階に住むことになっております……けど、今は好きなところを使っていただいて結構でございます」
「そう――それで、そこにある別館は使っていいの?」
飛鳥は屋敷の脇に建つ建物を指す
「ああ、あれは子供たちの館ですよ、本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんなここに住んでいます、飛鳥さんが良ければ」
「遠慮するわ」
即答する飛鳥――それから、しばらく使われてなかった大浴場を見た黒ウサギは真っ青になり
「一刻ほどお待ちください!すぐに綺麗にいたしますから!」
そう叫んで、掃除に取り掛かる――それから5人は宛がわれた部屋を一通り物色し荷物をおいて、来客用の貴賓室に集まっている。
それから、談話を少ししたあと
「ゆ、湯殿の用意ができました!女性様方からどうぞ!」
「ありがと、先にはいらせてもらうわよ、十六夜君、龍嗣君」
「んじゃあ、行ってくるわね龍嗣」
「俺は、2番目が好きな男だから問題ないよ」
「あぁ、それに少し戦利品の整理でもしておくさ」
それから、女性四人はまっすぐ大浴場に向かっていく――それから、少し寛いだあと
「さてと――今のうちに、外のやつらと話をつけておくか」
「OK、ついていくとするか」
そういうと、龍嗣は十六夜についていくのだった
――月は十六夜、皮肉なものだ
「おーい……そろそろ決めてくれないと、俺が風呂に入れないだろが」
「そうだぞ~暇だ~暇なんだぞ~」
風が木々を揺らす、構えを取る十六夜と、後ろで腕を組んで退屈そうにいう龍嗣――傍から見ればやる気ない
「ここを襲うのか?襲わねえのか?やるならいい加減に覚悟決めてかかってこいよ」
ザザァ~ともう一度だけ風が木々を揺らす――やはり誰かが隠れているみたいだ
「さてと、十六夜、燃やす?」
「やめとけ、よっ!」
ズガァン!!
軽いフォームからは考えられないでたらめな爆発音と共にあたり一帯の木々を吹き飛ばした。現れた人影を空中高く蹴散らし、別館の窓ガラスに振動を奔らせる。それから、異常を察知したジンが慌ててやってくる
「はぁ~手加減してもそれかよ?」
少し呆れたようにいう龍嗣
「ど、どうしたんですか!?」
「侵入者っぽいぞ、例の"フォレス・ガロ"の連中じゃね?」
「なにそれ聞いてないし、美味しいの?」
「美味しくねぇよ、コミュニティだよ、つか聞いてないのかよクソが」
「クソじゃねぇよ、バカが」
それから、意識がある者はかろうじて立ち上がり
「な、なんというデタラメな力……!蛇神を倒したというのは本当の話だったのか」
「まさか、あの髪は!?蛇神を倒した奴か!?」
「ああ……これならガルドのやつのゲームに勝てるかもしれない……!」
侵入者の視線に敵意らしいものは感じられない
「おいおい、おめえら人間じゃねぇのか?」
「我々は人をベースに様々な"獣"のギフトを持つ者」
「けど、ギフトの格が低いため、このような半端な変幻しかできないのだ」
侵入者が言うと、沈鬱そうに黙り込んだ。
「へぇ――あぁ、単刀直入に言うけど、そのつもりはないから、あと人質もうこの世にいないから」
「おい、お前どういうことだよ?知らないんじゃないのかよ?」
「スキルのひとつさ、答えをしるね」
「便利なものだな」
「ちょ、話が早すぎてわかりません龍嗣さん」
十六夜と龍嗣の会話に説明を求めてきたのはジン=ラッセルだった。
「お前に足りないものは、それは!情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!速さが足りない!!」
とジンにビシッと指差すと
「意味わからないですよぉ!!」
叫ぶジンだった
「ま、言っててなんだけど、俺は引くわ――おい、ジン=ラッセル、あとは任せたぞ」
そういうと――龍嗣はそこから離れた。
「――まぁ、飛鳥から聞いたけど、めんどくさそうだし、お祭りはお祭りで絶対的な抑止力がないとね」
そういうと――龍嗣は手早く近くにいたガルドの仲間と思わしきやつを催眠のスキル『
「(へぇ、吸血鬼の純血種ね、面白い)」
十六夜の赤い月を背後に、不敵に笑う龍嗣――眼下には金色の髪を持った覗き込めば吸い込まれそうな艶美で赤い瞳の少女――眼下では話が繰り広げられている
『ああ、それだ、実はあの"名無し"とは少々因縁があってな、もう再建は望めないと思っていたんだが……新しい人材が神格保持者を倒したと聞いて、様子を見に来たのだ』
『そ、それは何時のことだ?黒ウサギじゃねぇのか?』
言い争っている姿が見える
「(獣相手――まぁ、問題ないだろう)」
そういうと、フォレス・ガロの当主――ガルドは、いつの間にか暗示、いや誘導されていた。
「(これで、お祭りは面白くなったかな?)」
そういうと――龍嗣は館に戻った