(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない 作:丹波の黒豆
7)ある執務室での攻防1
あれからまた数カ月程、経った。
もうそろそろ夏が始まりそうな時期。公爵家ではすっかりコンソメの味が馴染み、そろそろ国営の冷凍倉庫と浴場が領地にチラホラと出来始めた頃。
それはある日の執務室。
重重力式動力クーラーが利いた涼しい部屋の中で、俺は何気ないありふれた会話を、年老いた執事長へと切り出した。
「なぁセバス」
「はい、なんでしょう旦那様」
「もう、…限界だ。俺はもっと娘との時間を、……大事にしたい」
それはもう本心だった。ここしばらく我が領では「バカかよ」って位に忙しい日々が続いていた。
役員に残業手当が付かない事を理由に馬車馬のようにこき使われる、まるでブラック経営の中小企業管理職のような状態が、もうずっと続いているのだ。
その間、足りない時間は全て睡眠時間と、愛する娘とのふれあいの時から捻出された。
正直もう睡眠は減らせないから娘分が減り続けている。
もう、耐えられない。
「……旦那様、お気持ちはよく分かりますが、これらはご自身の提案なされた事の結果でしょう。不正貴族や役人達を炙り出す為に、信用できるモノで書類確認を行うべきだと、ご自分でおっしゃったではないですか」
我が優秀な右腕にして、この地獄を共にする戦友はもっともな事を言う。
せやねん。クソ役人多すぎ問題。
むしろクソ役人しかいない説まである。
領主が民に税の徴収を希望すると、クソ役人が一人関わるごとに一つ、また一つとそこに自分の取り分を敷いていき、平民が払わされる額が1.5~2倍に膨らんでいくという、どこかの国で聞いたことがあるような税金中抜き問題。
これでウチの領は随分マシな方というのだから、もう本当にこの国は腐っている。
これをまず解決しないと平民の暮らしなんざ絶対よくならない。それが分かっていたから、こう。
ブチギレた俺はすごく専制国家らしいやり方で解決した。してしまったのである。
つまり役人のトップである貴族を物理的に重力で潰して、次の役人長にこう言ったのだ。
「次に税を集める際、同じように税をごまかす輩が出れば、君もこうなるだろうな」
周囲に全力で重力の魔力を張りながら、そう言ってやった。
20G、つまり自重の20倍の重さをいきなり落とされた小太りのその男は、何の抵抗もなく潰された。
この国では
やれる事こそ少ないが、閉鎖された場所で俺に勝てる貴族は、実はそう居なかったりする。
腐っても将来的に国一番の大魔力を持つ、公式チート・セシリアたんのパパなのよ。血筋で魔力が引き継がれるこの国で、その娘の親の魔力が、少ないなんて事はない。
実は魔力量だけなら娘とも張り合える、規格外品だったりするのだ、この体。
これでゲーム内では娘の虐待しかしてないちょい役って、ホントどうなんだジルクリフ。
……まぁええわ。話を戻そう。
そうして俺が罰を与えた結果、そこに汚いシミが出来たが、こういう問題は罰が軽ければ軽い程に発生も、再発もしやすくなる。
手加減は一切しない。
ん、人を殺す事に抵抗はなかったのか?
……ゆっくり領地を変えてたら根本から折れそうな国で、その大本が分かってて犯罪者殺せないとか、甘い事言ってたら領地ごと沈むわな。
一応普段から人の命預かっとるし。
そこはもう覚悟完了よ。
それに、娘の為にできる事はやらざるを得ないよね(執着心発動中)
はい。害虫駆除が領主のお仕事です。
悲しいけどコレが現実なんですよ。
でもこういう事が出来るから、専制国家は民主主義より経済の復帰力が強い。上がマトモになれば十分立て直しが効くからな。
流石に自分の死すら恐れずに、ちょっとした贅沢がしたい程度の事で罪を犯そうとする輩はそう多くない(居ないとは言ってない)
爵位が1つ違えば逆らえず、2つ違えば生殺与奪を握れるこの国では、組織のトップが意識を変えるだけで、速やかにその正常化が行える。
多くの血は流れるだろうが、方法を選ぶ時間がない。
まぁ上の足をわざと引っ張る為に中抜くヤツとか、誰かを貶めようとするヤツが絶対出てくるから。その辺りきちんと背後関係を洗う必要があるけども。
ああ。ちなみにコレ。自分に社会的な地位や、実績。あるいは多くの支持者がいないと逆に反感買って、内外から潰される原因になるから気をつけてね。
俺の場合はまず公爵であり、生理用品という実績があり、女性という大きな支持層が居たから出来た事なのよ。
一度ついた名声って、苛烈な改革に無駄にいいイメージ与えてくれるから。
やっぱオムツは偉大なんやなって(白目)
ま、その分敵も増えたけれども。
そんなわけで目出度く、我ら管理職の仕事はオーバーフロー。現状の状況を作った原因は、……俺だ。セバスがそれを責めたくなる気持ちはよくわかる。
だがな。
俺にはソレより大事な事がある。
理由が、……あるんだ。
「それは分かっている。必要な事だった。
だがなセバス。
乳母のメアリーに聞けば娘のセシリアは、もういつでもハイハイが出来るようになってもおかしくない時期だというのだ。
親としてその姿を見守ってやれないと言うのは、どうだろうか!?」
そう、一大事なんだ(執着心発動中)