(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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9)ある執務室での攻防3

 ああでも、本当にイルマさんと早くに出会えて良かったぜ。

 俺は思わずセバスへの説明の前に、彼女と出会った時の事を思い返した。

 

 それは生理道具開発の際、提案者サイドという事で、次々に出される提案の統計分析とかを、家の図書室で領内の者と一緒に作業してた時の事。

 その作業が結構な手間で。

 

「ああ、なんとか自動化できんもんかなぁ」

 

 なんて呟いたのが始まりだ。

 そんな時。

 

「ふふ、ゴーレム達がもう少し賢ければ良いのですけどね」

「え、その話詳しく」

 

 なんて言われれば、誰だって飛びつく。

 それが見た目から研究大好きなのがひと目で分かる、ボサボサヘアした白衣の女性。つまりイルマ君であったのだ。

 見た所、二十代前半位だろうか?

 

 いきなり話に食いついて来た俺に、イルマ君はあたふたしながら答えてくれた。

 

 計算って出来る、出来ない?

「えっと、一桁の計算が限界でして」

 

 その時、俺に衝撃奔る。

 え、一桁の計算が出来ちゃうんですか。もの凄いなゴーレム。もの凄く凄いなゴーレム。その後俺は不屈の意思でイルマ君に詰め寄って、怒涛の如く質問攻めし。

 

 それが、大きさに拘らなければ最小で手のりサイズのおもちゃとしても作れる。そしてその頭脳は、大きさに比例しないものであるらしいと知った時。

 ならば人の形に拘らなければもっと小さくできるか、との問いに。

 

 できると答えが返ってきた時。

 

 確信した。これでコンピューターが作れることを。

 やばい、やばすぎる。異世界。

 コンピューターの最小単位が2進数じゃなくて、10進数とか。本当にやばい。そんなの量子コンピューターに近い代物じゃん。

 完成すれば、1と0しかないスイッチ回路の集まりだった元の世界のコンピューターより、確実に高性能なぶっ壊れになるぞ。作ろうゼロシステム。

 

 すごぶる興奮する俺を前に、ポカンとした表情のイルマ君。なぜ俺がそんなに喜んでいるのかわからない彼女に俺は。

 ちょっと領一の秘匿技術になりそうなので。二人きりの場所で、しゃべらないと契約用紙を使ってくれるなら話そう、と持ちかけると。

 俺の迫力に怯えたのかおどおどしながら頷いてくれた。

 それから彼女と二人きり、狭い個室で説明会。

 

 例えば

 392

+259

 

 あるゴーレムに一桁の足し算をさせ。繰り上がったなら隣のゴーレムに知らせ、自分は残った数字1を記憶。

 次のゴーレムは2桁目同士を同じように計算。ただし隣のゴーレムから知らされているので1をさらに足す。繰り上がり、数字は5を記憶。

 最後に3桁目同士を同じように計算。繰り上がりがあるのでさらに1を足し、数字は6を記憶。それらを表示させる仕組みを作れば651という計算ができる。

 

 これらは一桁の計算しか行わせていないが、我々にとってはちゃんと計算しているようにしか見えない。

 

 そう言った瞬間、イルマ君から全ての表情が消え、次の瞬間に大爆発した。

 

「す、素晴らしいですわ公爵。せ、世紀の大発明ですわ!」

 

 好きな事に興奮する妙齢の女性ってかわいいよね。

 

 そう思いながら俺は次々と、引き算、掛け算、割り算の計算を実演してみせた。

 その度に大興奮し、気絶しそうになる彼女を引き止めながら、続けて文字を描かせる手法やら、彼等へのたくさんの命令をまとめて、決まった事をやらせる機械語、この場合ゴーレム語か。の概念を語り。

 

 そして、これを用いて現在手作業でやるしかない計算を自動的に行ってくれる道具や、文字を打ち込める道具、そしてそれらを発展させた自動計算や高度演算を行える物。さらには領の全ての知識を集めた図書館のような道具が作りたいなどと言った時。

 

 彼女が顔を赤くしながら、俺の手をとって言ったのだ。

 

「い、偉大なる公爵様。どうか私にそれらの道具を作る栄誉をお与え下さい」

 

 そして彼女の側から技術漏洩を防ぐ為、今すぐ奴隷にして欲しいと持ちかけられて現在に至る。

 そっからは彼女に、パソコン作りに集中して貰う為に生理道具開発から外れて貰い、他にもパソコンの簡単な仕組みなどを説明して。最初に計算機が出来ればいいなぁ。なんて話してたら。

 

 なんともう帳簿計算機。仕上げてきた。

 

 完全に天才の仕事ですイルマ君。キミは偉い。そしてエロい。

 ちなみにモニターとかどうやったのって聞いたら、使用時に属性色に光る魔力石の性質を利用して、それを微小化したものをゴーレムにつど点灯させるようしているらしい。

 

 それを光らせる為には魔力が必須で、今の所、重力がある所なら、つまりどこでも魔力が微量ながら自動回復する重力の魔力石、重力石を大量に使用することで補っているようだ。

 

 まぁ重力石なら特産品だし、この領地のモノなら自分の魔力で充填できるし、使い勝手が良いのでは。

 実際、重重力機関にも使われていて完全に電池代わりである。光がなくても動く太陽電池みたいなもんだけど。

 今は単色だが、魔力石は虹の七色と白と黒の9色ある。いずれカラーモニターなんてのも出来るようになるかもしれない。

 

 しかしモニター代と、大量すぎるゴーレム並列回路。そしてその小型化にかかった研究費用がバカ高いな。公爵でもちょっと考えちゃうレベル。

 まぁこれは元クリフ時代に割かれていた妻用予算の中から支払っておく。すでに解体したものの、集めた予算が膨大すぎてな。使い所よ。

 

 ジルクリフ、お前もう、ホントお前ぇ……。

 

 ……よし整理終了。改めて説明に戻ろう。

 

「で、これは一体どういうモノなのですか?

 と、いうよりイルマ男爵は何故、奴隷契約などを?」

「それは私が公爵様より受けた知識があまりにも偉大すぎるからですわ。

 技術漏洩を考えましたら、奴隷化は最適の手段でしてよ。

 ですから私はこの身も心も、命さえも、もはや公爵様のモノなのですわ」

「言い方ぁっ」

 

 ええ、確かにしましたけど奴隷に。本人たっての願いで。

 そんなにモジモジしないでおっぱいの人。ああ、こうして見るとブラジャーも作りてぇなあ。生理道具開発の際に、誰かが作ってくれるって言ってたから信じるか。

 

「ふむ。公爵様、お世継ぎは計画的に……」

「してないからな!」

「「いっそ手を出して下さればよろしいのに……」」

「おい、俺で遊ぶな!

 取り敢えずコイツの説明だ、説明!」

 

 では改めて本日の目玉である、このゴーレム式自動帳簿計算機1号の説明を始めよう。

 

 コイツは簡単にいうとパソコンのようにキーボードでデータ入力していく、関数ソフトに似た作りの代物だ。マウスがないのと、今の所最初から設定してる計算以外をやらせようとすると、かなり動きが重くなるという自由度の低さが難点だが。

 それでもコイツは画期的だった。

 

 その機能と言えば、自領のそれぞれの村ごとで取れた税収を入力することで、今まで手作業でやっていた数々の計算を全部まとめて行ってくれる。

 

 さらに面倒な基本税収の計算などもデータ入力であっという間。さらには家の家計簿だってつけられるスゲーヤツである。

 

「こ、これは、また凄まじいモノですな」

「じゃろ」

「ええ、これはとても良いモノです」

「「いえーい!」」

 

 よっし、プレゼン成功。

 我が宿敵のポーカーフェイス、セバスが驚愕した上で慄いていらっしゃる。

 とりあえずイルマさんと、手を叩いて喜び合う。コラ、抱きつくんじゃない。そんな格好で抱きしめられたら、色々やばいんだぞおい。

 

 さらに過去データの打ち込みも今の所、前5年分なら可能。以後増量中である。

 というか実はそれも奴隷を使って終わらせている。

 

 この奴隷というのは古代王国時代の奴隷魔術をかけられたモノで、奴隷となったモノは主人の言いつけに逆らえない、それでも逆らおうとすると死ぬといった物騒な代物で、いわゆる相手の生殺与奪や行動の自由すら握れる、真にヤバい魔術の事である。

 

 わりと貴族社会では一般的らしく、よく犯罪者や、使用人相手にホイホイ使われるモノであるこちら。そちらを使った読み書きはできるけど計算はできない奴隷に、ひたすら入力をやらせ続けたのである。

 計算が出来る奴隷は少ないが、読み書きが出来る奴隷はわりといる。そういう事だぞ。

 

 すると今まで手こずっていたあの忌まわしき手計算作業必須の書類達は、みるみる数を減らしていき、この魔道具の中に吸い込まれていったのだ。めでてぇ。

 

 そして、ここで俺の計略発動。

 実は俺の机の上に乗っている書類はブラフ。

 もうすでに帳簿計算機に打ち込み作業済のものがほとんどだったんだよ!

 

「そして残りの書類も、今、これで確認終了だ」

「な、なんですと!」

「はっはっはっ、約束された勝利とは存外楽しいモノだなセバス」

「ああ、素敵ですわ公爵様~」

 

 かたわらに巨乳の美女を侍らして嗤う邪悪な魔王。

 誰が見ても今の俺の姿はそう見えるだろう。

 

「ではな、セバス。

 俺はこの勝利を、我が娘に捧げよう。

 イルマ君。キミは引き続き、この素晴らしい魔道具の使い方をセバスに教えて差し上げろ」

「わかりましたわ、公爵様」

「だ、旦那様。どれだけセシリア様の事を可愛がりたかったのですか!」

「無論。どれだけでも、だ。

 ふはははは、さらばだ、セバス!」

 

 くく、勝った。

 もうコレ以上ない位。

 私は昼間からセシリアに会いに行ける喜びを深く噛みしめると、颯爽とその部屋を出て。

 

「俺が来たぜ!」

 

 呼んでもないのにやってきた、ちょっとDQNな感じの若作りのおっさん。

 隣の領を治めているハズの風の領の主に会うことになった。

 

 は、は?

 

 え、なんで。ほわい?

 

「俺が来たぜ!」

 

「わぁい、公爵様~」

「すまん、ジルクリフ卿。止められなかった」

 

 無駄に元気、無駄なテンションなそのおっさんの。

 横には、例の開発で知り合った、

 空の公爵令嬢ソランと。

 なんだか、かわいそうな青の公爵令嬢のウェンディ。

 

 そして多くの使用人達が、その後ろでおろおろ困惑している様子が窺えた。それを見て、彼を止めようにもまったく聞かなかったことが分かり、合掌。

 後で使用人と一緒に水の子も慰めてやろう。

 分かってる。キミはきっと被害者だ。

 

「おう、オメェ。最近スゲェモン作ってんだって!?

 俺が、それを、見に来たぜ!」

 

 いや呼んでねーから帰ってくれおっさん。

 せ、セシリア~~!

 

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