(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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 こちら前話の文字隠しなしバージョンです。



10)”夜明けのラプソディア”1(文字あり)

 さて、ここでちょっと原作を振り返って見るとしよう。

 

 この世界の原作である鬱乙女ゲー“夜明けのラプソディア”は異色の問題作などと言われているとはいえ、乙女ゲーなのである。

 つまりそこにはプレイヤーの代わりに物語を導く主人公であるヒロインと、その攻略対象である5人のヒーロー達が、当然存在するわけで。

 

 ゲームの中盤までこのゲームのヒーロー達は、とても魅力的なキャラクターとしてプレイヤーの目に映る。

 

 だが残念ながらこれは鬱乙女ゲー。

 それは紛れもない製作者サイドの罠であり、彼らの魅力はハリボテだ。

 

 なぜならばこのゲーム。

 悪役令嬢とその仲間達以外。

 無知か無能かクズしかいないのだから。

 

 これがこのゲームの隠された真実であり。

 その軽快で明るく楽しげなOPムービー を見て、こんな真実にたどりつける人など、いるわけないし。

 「真実の愛を探しましょう」というどこにでもありそうなキャッチコピーの真の意味を理解出来たなら、頭がおかしいと断言してあげるべきだろう。

 

 さて、そんなゲームのあらすじは。

 

 【出身の知れない】平民の出であり、王国の伝説に謳われる光の聖女候補として、

【この国では見ないだけの、北のハイエルフの、魅了の魔力を無自覚に持っている】ヒロインが。

 

【あの権威主義者の】神殿に見いだされ、【身に合わぬ野望を抱いた地方】男爵の養子になる所から始まり。

 

 魔力持ち達が通う事実上の貴族学校である、王国魔法学院に、

【最低限の貴族の礼儀作法すら教えられずに】入学し、そこで些細なことから【身分違いの】上級貴族であるヒーロー達と知り合って仲よくなり、その絆を深めていく。

 

 という流れになっている。

 

 この時点でもう色々不穏な言葉が混じっているが、【 】の部分は中盤以降までプレイヤーに隠されている情報なので、気にしない方向で。

 そうしないと君も乙女ゲーの暗黒面に囚われることになるぞ?

 

 いいね?

 

 大丈夫。【 】を飛ばせば割とどこかで見かけるような設定だから。その中身は保証できないけども。

 危険物かな?

 

 で、ヒロインちゃんなんだけど。

 

【封権社会の平民なら命惜しさに、決して貴族と平等などとは思わないハズなのに】

 彼女はまるで現代人のように、皆に命の平等をささやき。

 

 平民達や下級貴族に対するより上位の貴族の横暴を、

【何の権力も持たない聖女候補という無意味な肩書でもって】身体を張って止めようとする好人物だ。

【いつ無礼打ちされてもおかしくないのに、である】

 

【身分差を重要視する封建社会で】

 誰にでも別け隔てなく、身分など関係ないと主張する彼女は、我々プレイヤーにも共感できる事が多く。

 まさに【現代のお優しい民主主義国家ならば】聖女と呼ばれるのにふさわしい人だと言って良い。

【王国のルールを破壊する、罰されるべき側の人間だけども】

 

 そんな【どこか平和な環境で育ったような】、誰にでも優しく、気高く、美しすぎる少女に、上級貴族達である5人のヒーローは恋をする。

 

【爵位で魔力に大きく差が出るし、魔力継承が子3人までしかできないから、階級を大きく超えた恋愛は、禁止されていても。

 全員に婚約者がいてもお構いなしだ】

 

【まずは揃ってクズスタート。それがこの安心のラプソディア・クオリティよ】

 

 じゃあここで。

 気になる彼らの魅力を少しだけ紹介していこう。

 

 まずはこの人。メインヒーロー。

 

 この【もはや形だけとなった王家の】金色の髪の雷の王子は、婚約者であるウチの娘、悪役令嬢セシリアがヒロインちゃんを、

【次期女王の立場として、身分違いの行いを悟らせ、他の貴族から彼女が行き過ぎた罰を受けぬように】何度も何度も怒鳴りつける度に。

 

 それを【本来彼女を叱るのは、自分の役目なのにも関わらず】激しく叱責して、ヒロインちゃんの事を守り。

【国の秩序を自らがガンガン乱していく問題児だ】

 

【もう王家には何の力もない癖に】この傾いた国を立て直したいという【過程すら深く考えていない】自分の夢を【経済や政治すら学ぶ事なく、なぜか】

 手に持った剣を振るいながら笑顔で彼女に語る姿は、多くの乙女の心をときめかせた。

 

 後にヒロインちゃんへの数々の非道から、【彼女が貴族的に何も間違ってないと理解しながら】セシリアに【後ろ盾が欲しくて婚約を頼み込んだ王家側から一方的に】婚約破棄を言い渡す彼は、まさに理想【しか描いていない、夢の中】の王子さまと言えるだろう。

 

 とりあえず、この王子はゲーム内害悪1位の座を俺と競うライバルであったりもする。

 絶対許さぬぞ貴様。絶対な?

 あと俺もな。

 ……死にたくなるわぁ。

 

 お次は火のヒーロー君。赤い髪の、いかにもストイックな騎士という見た目をした公爵家の跡取りだ。

 

【上級貴族なのに、下級貴族職の騎士になりたいという】赤髪の火のヒーローは、他者に奪われぬ為に誰よりも力をつけたいと、【統率側であるにも関わらず、個人の剣技ばかり】いつも鍛錬をかかさない、【組織の一員になりたいハズなのに】一匹狼を貫く熱血漢だ。

 

 【ええ、矛盾しかない……。】

 

 下級貴族を【身分差から来る、正当な理由で】痛めつける上級貴族達を、【やはり身分差の為、抵抗すら許さない彼が】その自慢の剣技で蹴散らして、ヒロインちゃんを抱きしめて言う「騎士の手は唯、自身の愛する者を守る為にある」というセリフは多くの乙女の心を射止めただろう。

 

 【軍人がその力で国より自身の家族とか愛を優先する事は、基本的に最低の行為だけどな。】

 

 水のヒーローの事は長くなるし、胸クソ悪いんで割愛するが。

 

「キミと一緒ならボクはなんでもやれる気がする」

【光の聖女というお前の肩書を利用できるという意味でな】という言葉で彼の人となりをなんとなく掴んで頂きたい。

 【ドクソメガネめ。】

 

 土のヒーローは辺境育ちでヒロインちゃんと共に常識に疎く。朴訥で、王都に関わる騒動に無関心な性格の人。よくも悪くも話題にならない。

 

 でも正義感も金銭感覚も十分まともで、多くの金を【貴族に危ない遊びが流行らぬよう、流行を探し、資金が少しでも新規市場に流れ込むように、呼び水として】市場でばら撒く悪役令嬢の姿を見て、憤る位にはまともな奴だったりする。

【貴族的に正しいセシリアの行動に全く気づかず、コイツだけ純粋に分かってないのはダメすぎだけどな。大領地の跡継ぎが義務教育レベルの常識も学ぶ気ないとか、ひどすぎる】

 

 まぁ自分のストーリーでも辺境の食料問題の為に古代王国期に作られた種を探している辺り、このヒーローの中では一番マシである。

 実際ヒーローランキングでは、彼がいつも実質トップの2位だしな。

 

 ゲーム内でも彼の願いだけは、ちゃんと叶うしね。

【早くに遺跡を調べさせ、種がないと知ったセシリアが長年の研究成果を、遺跡に置いていくからな。すでに踏破報告済みの遺跡を延々調べる男に、一度の社交で渡せた種を、そっと仕込むしかないと言う、ヒーローの闇深すぎ問題よ……】

 

 どうだろうか。

 これだけを知れば“夜明けのラプソディア”がいかに素晴らしいゲームであるか伝わっただろうか。

 

 なんだか胸が熱くなるね。

 

 こいつらがウチの娘の非道を訴えて、よって集って悪役令嬢の排斥を行うのが、ゲーム中盤。

 以降彼女は学園から姿を消し、それまで彼女が抑えていた数々の問題にヒロイン達が直面して初めて。

 “プレイヤー”はこの【 】の事実を知る事になるんだわ。

 徐々に、パズルのピースを集めるように。

 いつか気づくのよ。

 

「ふぁっ? あ、あの悪役令嬢。

 ホントは悪役演じてただけなんじゃ。

 むしろ誰よりも重要人物じゃん」って

 

 あ、ちなみにこれ、誰がそんな騒動を抑えてくれてたかっていう話。ゲームの登場人物はみんな基本的に気付かないから?

 

 ここがポイント。

 ひどすぎワロタ。いやワロエナイって(泣)

 

 そりゃあ、こんなモン。

 ネットじゃあ色々騒がれるわな?

 

「う、うわぁ。私の推し、クズすぎっ」

「何このプレイヤーの夢を根本から折ってくるゲーム(怒)」

「ふぇぇ、私はなんて事を……!

は、このクズ男達。何なんですかね、一体(怒)」

「気づいたら私は自分で本当のヒーロー? ヒロイン?を追放していました。許されない……(泣)」

「え、アレ。私がやった事って。え?

 うぉぉ、ろ、ロードじゃあ!

 時は戻る。

 彼女こそ真のヒーロー。追放なんてダメゼッタイ。

 せ、選択肢がない、だと……?(絶望)」

 

 と、よくみんな重い思い(誤植ではない)に燃え上がったモンである。色んな意味で。

 

 これが世にいう、第一次セシリアンショック。

 我々ラプソディアンが味わった世界最初の奈落の底よ。

 地獄の底は乙女ゲーの中にあったんや。

 

 こうしてひどすぎるヒロイン、ヒーロー達の姿を目の当たりにした俺たちが、徐々に選ばれたセシリア臣民へとその在り方を変える事は、世の当然の摂理であろう。

 

 んで。

 

 ここでもうやってられるかって。

 辞められるようなゲームなら良かったんだけれども。

 それでもやりたくなる程に、このゲームを作ったシナリオライターには腕があって、BGMから演出まで手が込んでたのが、みんなの不幸の始まりよ。

 

 だからこそ、だからこそ。

 俺たちはその後にこれ以上の絶望を都合7回、味わう事になったんだわ(血涙)

 

 ド許さぬ。

 姉よ、オマエはなんてモン弟に無理やり押し付けてくるんだ。完全にトラウマだわ。

 セシリア様、絶対幸せにするからな。

 

 ……うん。それはおいとこうか。

 長くなるし、関係ないからね。ぐぬぬ。

 で、ここでもう1人、語っていないヒーローがいるんだけどもな?

 

 それが風のヒーローであり、今回の主題なんだけども。

 ま、何が言いたいか、と問われますとね?

 

「なんだこりゃ、ウチで食うコンソメよりも格段にウメェじゃねぇか!

 てめぇ、ウチに手抜きのモン送り込みやがったなぁ」

「そんな訳ないじゃん、パパのバカァ。

 前に何度も説明したジャン!!」

「ほ、本当にすまないジルクリフ卿、こ、こういう人なんだ……」

 

 只今俺、その風のヒーローの親である人物から絶賛、罵倒を受けている最中なんです。

 

 なぁ、アポなしでいきなり訪ねてきたヤツに、“まぁいつも世話になってる子の親だから”って、飯出してもてなしたら、それが美味いってキレられるヤツの気持ち考えて。

 

 ……。

 

 ああ、もぉ。コイツ絶対風のヒーロー、ゼリック・W・スカイバレーの父親じゃねぇかぁ。

 だってこんな感じなんだよ、アイツって普段から。もう顔と家柄と実力も揃ってるけど、性格だけが完全に、我が道を行く系ヤンキー兄ちゃんなんだよぉ。

 年とってそのまま四十手前に育ったら、多分こんなおっさんになるわ、きっと。 

 

 このワイルド系空髪褐色金ネックレス親父。

 記憶の中じゃ領主会議で何度か会ってるから知ってたんだけど、実物のインパクトが酷すぎる。のっけからもう、ストレスしかない。

 

 なんで娘のソランちゃんがいい子に育ったか、甚だ(はなはだ)疑問なんじゃけど。

 うごご。

 

「テメェコラ、聞いてんのかおいっ。このクソガキっがぁ!」

「もぉー、話聞いてよパパ~~~、ボクも怒るよぉ!」

「ダメですよギドリック叔父様! ほ、ホント、ごめんなさい公爵様……」

 

 もう今すぐ謝って、つかもう帰れよぅ、うう。

 

 ど、どうしてこんな事に。

 世界の意思が俺をセシリアから引き離そうとしてやがる。

 

 あ、諦めねぇ。

 俺は絶対セシリアたんを可愛がるんだ!!

 

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