(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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12)泣く子と風の民には勝てない

 あの後、DQN中年から端的に。

 “お前の手の内を他の領の奴らにバラされたくなかったら、飛ぶ乗りモンに乗せろや”

 と脅された俺は、結局従う事にした。

 

 理由は簡単だ。

 空の領と用意もなく戦う位なら、今はこちらが折れた方がマシだから。

 風の魔力って異常に厄介なのよ。

 

 風、というか空気はどこにでもあるから、他に比べて発生が速いし、風に剣とか矢を乗せて飛ばせば射程も長くて威力も十分。

 纏えば空を飛んで誰よりも高速で移動できるし、広範囲の音を拾って情報収集を行えて、逆に音を殺して無音すら作れる。

 しかも音を飛ばして遠距離通信網すら作り上げられるとかもうぶっ壊れてるとしか言いようがない。

 ゲームバランスぅっ! て、なる。

 

 絶対マトモに相手なんかしたくないんよね。

 

 しかもコイツらが国に固まってくれてたら、まだやりようがあるんだけど。アイツラ国営で郵便と通信任されてるから、一気に殲滅するのもそもそも無理だし。

 一回戦争始めたら、そのクソ速い機動力と射程活かして、遠距離通信しながら空からどこででも奇襲仕掛けてくるゲリラ集団とかね。

 ダメじゃないそんなん。

 

 だからみんな、神殿ですら風の民とは事を荒げたがらない。彼らと戦うなら多少の不利益は呑んだほうが、マシだもの。

 そんだけ優秀なのに中身はもれなくヤンキー兄ちゃんとか、本気でどうかなんだ空の領。

 救いがあるのはその性格で、ワリと知りたい事知って好奇心満たせたら、一つの事に全然執着しない事だろうかね。

 いや、情報カツアゲされるとかツラミしかないけども。

 

 それでも娘の為なら戦うけどさ。それならそれで用意の為に時間稼ぎは必須なんだわ。

 

 ならもう情報教えていいかなって。どうせ諜報完全に防げないなら、逆にここでまだバレてない凄いモンドカンと教えてビビらせるしかないじゃない。

 

 というわけでこれは想定内、想定内なんだよと。

 呪文のように唱えて自分を落ち着かせて見ているわけだ。ちくしょうめぇ(泣)

 

 そんでどんな思惑だよって一応尋ねたら、笑って。

 

「見たことねぇモンがあったら見てぇだろ」

 

 とか言うもんだから俺は不覚にも“ああ、風の民だわ”と、納得してしまった。ホントにノリで生きてるなアンタら…。

 確実にソランちゃんと、風のヒーローの両方の血筋を感じる。うむ。業が深い。自由と好奇心両立とか、もう探検にでもいけばいいと思うよ、君たち。

 

 もちろんその場に居たソランちゃんと、水の子はこっちの味方となってくれてたけど、そこは流石DQN中年。完全に迫力で有無を言わせずわがままを通したね。

 ……まぁ正直、途中からソランちゃんも飛行機に乗りたくてソワソワしてた感は否めんが。

 

 こ、これだから風の民は!!

 最初から俺の味方は水の子だけだ。仲良くしような?

 

 風のヒーローは力で無理やり屈服させようとするだけだったからよかったけど、コイツホントにシャレにならないな。

 自分の能力理解してなんでもやってくるとかよ。

 

 ……しかもなんかまだ隠してそうだし。

 

 まぁしゃあない。考えてもわからん事は後回しよ。

 わかってる事から解決せんと先に進めん。

 

 おし。とりあえずこの手の脳筋は、現物で殴ってわからせる。悲しいかなソレが真理よ。

 ならば俺の知識でその好奇心吹っ飛ばして、格の違いってヤツを見せつけてやるわ!

 

 このチキンレース、買ってやるからな!

 

「ふっ。いいだろうギドリック。そこまで言うなら見せてやろう。風魔法に頼らない、人の知恵が築いた未知への翼を」

 

 そんな強がりを言って、この不毛な戦いに挑むことに。

 俺にメリット、特にないんよな……。

 な、なんでこんな事に、娘よ……うう…。

 

 

「おお、コレよコレ。俺はコレに乗りたかったんだわ!」

「わぁ、何これおっきい、面白そう!」

「じ、ジルクリフ卿、……こ、これは。

 前に見たおもちゃよりもずっと無機質で、洗練されているじゃあないか!」

 

 只今現地入り。

 いや公爵家の玄関前の庭に、しょうがないからセバスに頼んで運んで貰ったんだけども。皆さんそれぞれに大変楽しんでいる模様。

 喜んで頂けて何よりです(白目)

 

 てか水の子お前もか?

 現物見るともう駄目か。そっち側か。

 まぁ俺も気持ちは分かるけども。未知のガジェットはワクワクするしね。仕方ないかな。

 とりあえず紹介しとこうか。

 

「これがウチの技術で作り上げた飛行する道具、その第1号だ。飛行機とでも呼んで貰おう」

「ヒコーキおっきい!」

「ほう、なんとも直球な名前じゃねぇか。そういうのは嫌いじゃねぇぜ?」

「ひ、飛行機。これが、この巨大なモノが空を飛ぶのか。……デタラメじゃないか」

 

 そうね。大っきいのよ。

 装置を小型化するより巨大化させた方が楽だったんで。

 作り手はもちろんあの人、職人チートの爺さんだ。

 

 その形は近代形の戦闘機に近い代物で。

 主翼がシュッとした三角形状で翼の両脇・胴体の根本に一つずつ、見た目だけならいかにもそこからジェット噴射出しそうな、胴体に対してでかすぎる立派な専用重重力機関が搭載されており。

 その噴射口の上部から翼にかけて突き出した2つの大きな尾翼が、最高に戦闘機っぽいシルエットを醸し出している。

 そしてその重重力機関の両隣には、さらにミサイルめいた秘密兵器の姿が2本取り付けてあるという、なんとも戦闘機らしい姿をした一品である。

 

 ある理由から複座型を採用したコイツの大きさは20mを超えていて、まぁ初めて見たらそれだけでちょっとした衝撃を受けるわな。

 

 そんな見た目だけ近代風戦闘機、それが実験戦闘機1号君だ。

 

 正直空力のバランスがしっかりつかめていないから、飛行効率はまだあまりよくないし、重量軽減しないと飛ぶことすら出来ないけれど。

 機体を無重力化したら取り敢えず墜落しないので、深く考える必要はなかった。自重軽くしすぎると空転始める車より、重重力機関の力をそのまま活かせるから、飛行機のほうが重力使いにとって遥かに扱いやすい代物だったりする。

 

「凄い。これは石で出来ているのか?

 そうか土魔法を使って石材を操ったんだ。だとしたら中には鉄の補強材が入ってるのだろうか。これは興味深い」

 

 おお、水の子。一気にテンション上がってるな。分かる分かるぞ理系少女よ。

 

 実はこの戦闘機。木材と石材を中心として出来ていたりする。木材を基本フレームにして土魔法の力を借りて石材をかぶせた木筋構造、そんな変態チックな代物だ。

 いや、あの石材の車作ったあとね。

 石材だけだとその、折れたりしたのよ。派手に車体が。そこから学び、軽量化と加工のしやす……

 

 

「おい、坊主。早く乗ろうぜ!

 ヒャッハーっ!!」

「わぁあい!」 

 

 説明させろや!

 くっそう自由人どもめぇ。

 

 そもそも複座なんで4人は無理と言ってみるも。

 

「そんなん、女どもは俺らの膝の上でいいだろ?

 コイツらも絶対乗りたいんだから、それでいいだろ。

 十分乗れるって、なぁ!」

「うん、乗れそうだよぉ!」

 

 そこにDQN独特の暴論が飛び出した(超偏見)

 貴様。その年で何の抵抗もなく年頃の自分の娘を膝の上に乗せて、しかも嫌な顔ひとつされんとは。やりおるわコヤツ(親バカ目線)

 俺もそんなパパになりたい。

 

 いや、じゃなくて。

 そりゃ、アンタは自分の娘だからええかも知らんがお前。こっちは他所様の年頃の娘さんやぞ。どんな顔して膝に乗せりゃあいいんだ。そんなのに慣れてたらとっくに童貞ちゃうわいと、抵抗するも。

 

 俺の嫌がる空気を察して、水の子が泣きそうな顔で震え出したので、断念。いや置いていかないから。

 その顔は、……卑怯だろ?

 

 そんなん誘うわ。

 

 というわけで奇しくも。

 スレンダーながらも出るトコはちゃんと出てる女の子を足に乗せて操縦する、絶対に反応させてはいけない童貞パパ・inフライヤーという、俺の社会的信用をかけたもう一つのチキンレースが同時開催される運びになった。

 

「あ、あうあう………」

 

 お、おう。

 乗りたくもない男の膝の上に乗ったストレスからか、はたまた飛行への緊張からか、小さくなって俺に腰掛けて震えるのは辞めて下さい水の子ちゃん。

 

 それは俺に効く。

 

 仕方ない。

 頭、は無理そうだからこう、手を重ねて落ち着くようにポンポンやってやろうじゃないか。安心しろ。これでも俺も娘相手に日々撫でテクを磨く男だ。

 そら、落ち着かれよ少女よ。

 

 あ、軽く睨まれてふいってされた。

 おや、コレってセクハラでは?

 すいませんでした!

 

 もはや一刻も早くこのイベントから解放されたい俺は、キャノピーを閉めて、手早く次々と発進準備を進めていく。

 

「わくわく!」

「(小声で)貴方ばかり私の心臓に悪いのは狡いと思う……」

「おお、コイツはどう飛び出すんだ、なぁ?」

「ああ、それはな」

「はい、かしこまりました旦那様」

 

 最後の準備が終わり、俺がセバスに合図を送ると、俺の重力魔法で重量が0になった機体を彼がひょいと掲げ。

 

「では皆さま。よい旅路を」

 

 空の方へとぶん投げた。

 

「なっ」

「おー」

「うわっ!?」

 

「発進!!」

 

 同時に各重重力機関に魔力を通し、そのまま出力を上げれば。ただ広い空そのものを滑走路にした異世界式の発進準備が整うのだ。

 なんせ無重力状態だから、落下しないんだよ機体がな。じゃあ滑走路とかいらないだろ。

 くく、初見じゃちょっと驚くよな?

 

「オメェの領のその変なトコで豪快なトコ、どうかと思うわっ!!」

「ふふ、味なモノだろう!」

 

 よし、無事に一泡吹かせてやったぜ。

 

 ああでも機体。やっぱ持ち上げられちゃうんだよなぁ重力魔法(・・・・)で。いくら重量0にしても、普通動くはずないのになぁ。

 つまりコレは重力魔法であって、重力魔法ではないんだなぁと改めて確信する。

 質量操作、出来てるんだモノ。

 

 そんな事を考えながら機体は空へと登っていく。

 さて、目にもの見せてやろうじゃないかギドリック。

 

 お前の心が、折れるまでな!

 

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