(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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2)とりあえず女性を巻き込んでゴー

 おむつの吸水性は、とても大事なモノである。それは子育ての手間を大きく減らすし、衛生面の維持にすこぶる役に立つ。

 

 現在この国のおむつは、貴族でも絹とコットンを貼り合わせたとても分厚い代物であり。正直これで子供のおもらしを全て解決することは、できないのではなかろうか。

 多い日には不安しかない。

 

 ぜひ娘の清潔を保つ為にも、至急の改善を要求したい。

 

 しかし子供をあまり大事に扱わない中世文化を下地に持つこの世界で、そのまま“もっといいオムツ作りてぇ”などと提案するのは、ちと難しい話だ。

 そう思った俺は、平民はともかく貴族の中では大きな力を持つ一大勢力である、女性達を味方につけてこの問題の解決にあたる事とする。

 

 そう。皆さんご存知。

 生理問題である。

 

 おむつと生理用品に必要とされるのは、共に吸水性。同じ分野の品ならば、より多くを味方につけやすい題材を選んでの発言の方が、遥かに実現させやすいのは誰しも理解する事だ。なりふりなんて構わない。

 

 俺は現実主義者なんだよ、理系だからな。

 

 そこで俺は、その生理用具のプレゼンの為に、この世界でのそれらの事情をまず調べ上げる事にした。知らないモノは改善できない。

 物の改善において、事前調査ほど重要なモノはない。

 

 そこで分かったのはまず、この生理にあたって、この世界では。いやおそらく中世では女性のソレを担っていた道具はこう、ふんどしに近い一枚布で。

 それをベルト状のガードルで留めただけの簡単な道具だけで、彼女らからでる経血を全て受け止めていたという事実である。

 

 そんなモンを使う必要があったから、女性達はスカートを履いていたし、洋の東西問わずその文化が育ったと考えると趣深い。女性の服が筒状なのには、しっかり意味が有ることなんやな。

 

 んで、この布な。たまに女性のお月のモノをたっぷり含んで、地面へ落ちるらしくて。もちろん血まみれで。

 また彼女らから出たその体液は、それ自体は汚くないが、それを媒体に流行り病の元が生まれることもある。血液は栄養いっぱいで、雑菌もそれが大好きだからね。

 

 それらを指して女性は“不浄”の者と扱われ、様々な方面で割と忌避されていて、だからどこでも女人禁制というルールがポコポコ出来上がるのが、中世というご時世であるし、この世界での女性の立場であるようだ。

 

 これはもう、なおさら娘の為にもオムツを完成させざるを得ない。

 

 史実においてそんな経緯を払拭し、女性の社会進出の原動力となったモノのひとつが、間違いなく生理用品の発達だからだ。

 

 少なくとも私は将来立派な淑女となるだろう娘に、そんな理不尽な環境で暮らして欲しくはないし、今も吸いきれないオムツの不快さをかかえる彼女を、このままにはできない。

 

 と、言うわけで領地の貴族の淑女達、錬金術工房、魔術開発局の女性達を巻き込んでのプレゼン開始。

 

 結果、反応は上々、すぎた。

 

 男女で差のない魔力という力の性質から、わりと男女平等雇用の機会が多い貴族社会では、より身近な問題でもあったのだろう。

 

 女性達の食いつきが、もの凄い。

 

 後に育児分野にも繋がる技術という話も好感度の後押しとなり、このプロジェクトは堂々発進。

 皆で優れた吸水性を持つ素材の発見と、開発に取り組む事に相成った。

 

 多くの女性スタッフに包まれての開発は、何やら色々気を使ったが、一番ぶったまげたのは、この国の性的モラルの低さである。

 こう、現代人なら女性のデリケートな部分の話なので、普通はマネキンとか使う所を、貴族社会では迷いもなく連れてきた、若い使用人の娘さんを使うとかね。

 

 封建社会にセクハラとか言う言葉はないんやね。

 コラ、メイドさんの口にスカートの端を咥えさせてパンツを脱がせるのはやめなさい。

 それは俺に効く。

 いやはや童貞パパには刺激の強すぎる、過酷な労働環境であった。

 

 しかしここである事実がわかる。元々貴族の礼儀やら言い回しやら知らん俺が、貴族の彼女達相手にどうすべな、と悩んでいたら。

 なんと脳内に元のジルクリフの言語能力が残っていて、俺の言葉は全て、ヤツの使う言葉遣いに変換出来ることが判明した。以後これを元クリフ言語変換と呼ぶ。

 

 だがヤツの言葉遣いはやたらキザったらしい言葉を重ねる妻モードと、その他の人に使う傲慢魔王モードしかない為、もはや選択肢はなく、実質妻モード一択の縛りプレイである。

 

 俺の言葉で歯が浮くぜ。

 本当にジルクリフお前、お前さぁ(怒)

 

 まぁそんなこんなで苦労しながら、平民達からも案を募集し、様々な素材で吸水性を試したこの一大プロジェクト。

 その栄光を勝ち取ったのは、なんとあのスライムさんだった。とある冒険者が、自分の村の民間伝承的に使っている乾燥剤だと言って持ってきた、乾燥スライムの粉こそが、もっとも優れた吸水性を誇る素材であったのだ。

 

 この世界では水辺をうろうろし、貴重な水源から多量の水を奪うだけの迷惑生物が、多くの人の役にたつ無二の存在へとその価値観を変えた瞬間である。

 

 これをスライムポリマーと名付けよう(適当)

 

 このスライムポリマーは彼等の持つ性質通り、少量で多くの水分を吸い取れる為、それを使った試作品はそれまでの生理用品では考えられない薄さを実現し。

 試しに使用感を見て貰ったうちの使用人達からは、泣いて喜ばれる結果となった。

 

 やっぱみんな苦しんでたんやなって。

 

 後日、領内の川沿いに大規模なスライム農場を作り、彼等を計画的に増やす事と、その加工工場を作る事が満場一致で可決。他領の女性貴族達という多くのスポンサーを経て、実働する運びになるのだが、それはもうわりと俺の興味の外である。

 

 技術の特許についてもフリーで他領、他国も使えるように伝えた。

 もう面倒になってきたからが、本音なのだが、

 

「こういう生活必需品に関する技術は、どこかで囲い込むより開放して少しでも安くなった方が、世の女性と子供達の為だから」

 

 と体面を気にしてインテリぶったら公爵株爆上がり。なんか後に他領、他国問わず色んな女性から感謝状やら招待状をもらう羽目になり、更に面倒が増えた事は、この公爵の目を以ても見抜けなんだわ…

 

 そしてスライムナプキンの名前に俺の名が使われそうになった時は、本気で止めた。

 いつか娘に自分の名が付いたもん履かれるとか、まぁちょっと勘弁して頂きたいと。

 

 と、ともかく。

 

 そんなわけで今俺のこの手の中に、薄く履きやすくなった新型のオムツをつけた娘の姿がある。

 生まれてもう三ヶ月。

 そろそろハイハイを覚えても可笑しくはない頃合いだろうか。

 

 セシリア様が元気に這い回るその時まで、なんとか動きやすいコイツが、間に合ってくれて本当によかった。

 

「ばぁ、ばぁ」

 

 今日も俺の腕の中で元気に動き、お気に入りの俺の紫の長い髪で遊んでいる彼女を見ると。すっかり髪の毛が黒く生え揃い、将来母親譲りの美人さんに育つと確信できる、実に賢そうな顔立ちであると窺える(親バカ)

 

 最近、時折彼女の黒髪を見て失礼な事を抜かす奴が出てきたが、そんな奴には相応の目に遭ってもらっている。

 “呪わしい黒髪の悪魔を即刻殺せ”とか言ってくる宗教とかホントなんなの。あんなのが国教として蔓延ってるのはありえないので、即行この国から追い出してやった。

 その後宗教者達が行っていた、大小たくさんの不正が見つかり正直げんなりする。どいつもこいつも腐ってやがるぜ。

 

 まぁええわ。終わった事ですわ。

 

 さて次はアレだ。

 アレしかない。

 俺はオムツと同時に取り掛かってきた、この国一番の大問題にとりかかる。

 

 つまり。

 

 この国のメシは、まずい。

 

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