(旧)娘が悲劇の悪役令嬢だったので現代知識で斜め上に頑張るしかない   作:丹波の黒豆

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14)重力の魔王1

「どうだ、世界に果てなどなかっただろう。

 ああ。太陽は直接みるなよ。この場所には我々の住む場所と違って遮るモノがない。

 あまりの光に目が潰れるぞ?」

 

「うぉっ、そうなのか?

 ソラン、絶対見んなよ!」

「にゃー、危なかった!」

「ああ、夢みたいな光景だ……。

 我々の世界は青かった。あんなに青かったんだな……」

 

 さすがにみんな驚いとるな。

 異世界人にも宇宙の偉大さは有効だったわ。

 

 おおう、水の子ちゃんが感動のあまり泣き震えてガガーリン(動詞)してる。

 そしてこの振動は、ちょっとまずい(社会的に)。

 やりたくないが俺も力業を使わざるを得ない。

 

 ……今すぐ彼女を後ろから抱きしめてでも止めないと、死んでしまいます(社会的に)

 

 ついでにごまかしの為にこちらもガガーリンネタで返してみよう。これでこのセクハラも有耶無耶になりますように。

 どうか雰囲気でごまかされますように。

 

「泣いているね君。神の姿でも見えたかね?」

「ははっ、…いえ、そんなモノは見えませんでした。神殿の言ってる事なんて嘘っぱちだ。

 神々は、……天になど居なかった。

 居なかったのです。…ジルクリフ卿」

「……ありえねぇ事だがな。これでまた神殿が胡散臭くなったぜ」

「それはよかった」

 

 俺もよかったです(社会的に)。

 許された。許されたよ俺。

 ありがとうガガーリン。

 

 地球じゃなくて俺が青くなるトコだった(白目)

 

 しかし神殿か。

 アイツラ胡散臭いよなぁ。

 

 娘の事を悪く言うし、俺は全力で神殿が嫌いだ。

 別に神様は否定しないけども。

 この世界に転生した俺自身が、そういう未知の存在がいる事のある意味証明だしな。

 

 だからなおさら俺は神殿のヤツラが大嫌いだ。

 

 しかし奴らの信憑性が落ちるなら、いつかお手軽宇宙体験ツアーとかやってもいいかもな。

 ツアー料金も美味しそうだし。

 

 くっくっくっ。

 

 そんな黒い事考えてたら、後部座席から歓声が爆発した。

 ふぉっ、なにごとですか?

 

「すっっごぉいっ!

 ねぇねぇ公爵様、ここが“果て”じゃなかったら、どこが“果て”なのー? “果て”なんてホントにないの?」

 

 あ、はい。

 これはどうしましょう。彼女らしいコドモっぽさ満載のご質問よ。

 でも良い質問だな。

 

 ここは一科学者として、素直に世界の素晴らしさを伝えよう。

 

「ふむ。それが分からないんだ。あまりにも広大だからな、ここは」

「そうなのぉ?」

 

「我々の目にしている空に浮かぶ星々は、我らがいつもみている太陽のようなモノでね」

「えっ!」

「ああ、聞いた事があります。天体学者たちの言う説の一つですね」

「へぇ、アレ全部太陽なんか?

 なんで眩しくならねぇのよ」

 

「それはあまりに遠くにあるから、眩しくないんだ。

 仮にもし我々が風の限界速度で一番近い場所に向かい続けても、我々の人生では到達できない程に、……遠いんだ」

「ふぇぇぇ、そんなにっ!」

「はぁっ!?」

「………(静かに目を閉じ思いを馳せる)」

 

「ああ。

 世界は広い。

 

 我々もそんな宇宙に浮かぶ、太陽の周りにある一つの小さな星に生きる存在に過ぎない。

 そんな我々の生きる星の中だって見ろ、まだまだ見知らぬ土地だらけだ」

 

「ああ、そうだな。……その通りだ」

「(わくわくを溜め込んでいる)」

 

「王国など、宇宙基準で考えれば小さすぎるというわけさ。

 喜びたまえ風の民。世界はまだまだ知らぬ事に溢れているぞ。君たちの人生では決して味わいきれん程にな」

 

「(爆発)ふぁぁぁっ、すっごぉぉっい!!」

「はは、マジかよ……。サイコーだな……ソレ……」

「なんて素晴らしい。探求に終わりはないんだ……」

 

 ロマンが溢れる真実だよなぁ。

 

 しかし全員に信じてもらえたか。

 証拠がないから誰か疑ってかかっても可怪しくなかったんだけども。同じ学者肌相手にゃ苦労すんのよね、こういうの。

 まぁそんな余裕もない程に、魅せられるよなこの光景は、さ……。

 

「ねぇねぇ、なんで公爵様はそんな事知ってるのー?

 なんでそんなにいろんなモノが作れるようになったの?」

 

 おおう、ソランちゃんの良い子のお子様質問コーナーが止まらんぞオイ。

 そいつに答えてもいいんだけれど。

 

 でも実は機体の太陽熱を火の魔力石で反らし続けているだけだから、出来れば早く帰りたいんだけど。ほっとくと蒸し焼きになるし、なんかで影が差すと凍え死ぬのよね、実際。

 

 それに放射線とかマジで怖いしな。

 娘が大きくなってればソレは(・・・)彼女の魔力で防げたかもしれんけど。

 

 しょうがない。進みながら話そうか。

 とりあえず落ち着いた水の子から手を離して操縦に専念よ。

 実は操縦桿に重重力ギア仕込んでるから魔力通せば手放しでも操縦出来るけどね、コレ。

 

「実はここにはあまり長居出来なくてね。

 今は機体の外の灼熱を、火の魔法石でコントロールして温度上昇を防いでいる最中だ。

 他にも長居できない原因はあるが、それを語るには時間が足らない。

 

 出来れば帰りながら話したい。

 ソラン君、高速飛行の魔法を空気作成に切り替えてくれるか。後は機体の方で調整してくれる」

 

「わぁ。わかったぁ」

「おいおい、物騒な話だな?」

「火の魔力石で熱を遮断しているのか。すると本当は火使いも組み込みたい所なんだな」

 

 よし、重重力機関内部に空気の生成成功だな。しっかり推進力が得られてる。

 後はこのまま放物線を描くように、自分の星に向かって下っていけば帰れるな。宇宙はこっちもアレ(・・)の実験の時以来だからな。

 帰りは慎重に行きたいもんだ。

 ああ、大事な事をまだ聞いてないな。

 

「これでよしと。ああ、それとギドリック」

「あん?」

 

 不意をつかれてボケっとしてるおっさんに、チェックメイトを突きつけてやる。

 

「これで賭けは俺の勝ち、という事でいいのかね?」

「おう、いいぜ。流石にこれだけやられりゃ降参だ。認めるぜジルクリフ(・・・・・)

「!?」

「くく、こんだけの事が出来る男を、いつまでも坊主とは呼べんわな」

「……そうかね」

 

「わぁ、仲直りだね!」

(それは少し違うんじゃないかソラン?)

 

 いよっしぁあ!

 

 あああああああ、長かったわぁ。

 これにてDQN中年来訪編めでたく完よ。

 最後に変なツンデレ見せて、全力でいい笑顔しやがったおっさんが引き起こした騒動もこれで解決。俺よく頑張った。

 

 褒美は娘との時間でいいぞ(要求)

 

 そんな風に内心舞い上がってると、おっさんが更にデレを見せてくる。

 

「これならオメェとは手ぇ組んだ方が良さそうだ。どうだ。その印を交わさねぇかオイ?」

「ふん。考えてやらん事もないな」

「は、そりゃ結構なこったジルクリフ」

 

 デレ期ですか?

 いつも通り元クリフが邪魔をして俺がツン期に入ったけれども。

 おお、ホントに?

 ここで風の領と手が組めるなら今回の件、余裕でお釣りがくるな。

 

 一気に空方面の問題が解決するし、上手くすれば航空列車(・・・・)構想がもう動かせる。

 しかも隣国の陽光の国との取引も、その道中の空の領が許可するなら普通に食料払いで貰えて大バンザイよ。

 歪みの大森林の上を通って無理やり空輸しなくてよくなったのは、本当にデカイ。

 

 これならいくらでもコンソメの生産量を上げられるし、大幅にコストカットも図れる。

 ……これは他国との大規模交易が可能になるぞ。

 

 そうなったらまずはあの、激高足元価格の砂糖をばら撒く北のど畜生エルフ達を、逆に俺の甘味沼に沈めてやんよ(愉悦)

 

 そんで次はその金で航空戦力を揃えたら、海の上を飛んで行く大航海時代の幕開けだ。

 ふはは、愉しくなって参りました。

 

 新食材でセシリアに一杯美味いモン作ってやれるぞ!

 

 無限に広がる明るい未来に、俺が軽くトリップしてしていると。

 

「そうだ、こういう時ぁ同盟の証ってのがいるわな。

 どうだ、テメェんトコの娘とウチの坊主。どっちも生まれたばかりで年もチケぇしよ。

 いっちょ婚約させとくか?」

「断る」

 

 急に現実に引き戻された。

 コイツ何言った?

 ウチの娘とお前んトコの風のヒーロー(ボンクラ息子)が婚約だって?

 

 冗談じゃない!

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