【ドイツ産】SSSレート喰種だけど質問ある?【パツキン巨乳】   作:ちゅーに菌

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えー、食べちゃダメなの……?

半人間って結構美味しいのにぃ……

ちょっとだけ、ちょっと……心臓のひとつぐらいだから

ダメ? そんなー!(ロロナ似せ裏声)






鳥刺し

 

 

 

「しょんぼり……」

 

 旧多二福という半人間らしい青年をヴィルヘルミナが倒し喰らおうとしてから数分後。

 

 芝生の上に互いに座りつつ、あなたに諭された彼女の姿があった。

 

 これも最近になって気づいたことだが、いつもあなたを振り回しまくる彼女ではあるが、安価等の決まった予定にないことは割りと普通に折れてくれるのである。

 

 まあ、今回は半人間は美味しいらしいので彼女も渋っていたが、彼女のために用意した六台のゲーミングパソコンをメンテナンスまでキチンと小まめにしに来ているV(ヴィー)の涙ぐましい努力と配慮を語った辺りで、義理堅いと自称している彼女は、口をへの字にしつつも折れた。

 

 あなたからすると、メンテナンスの度にスーツ姿の体格のいい男性数名が家に来るのは、未だに余り慣れないがそれはそれである。 

 

「あの……なんでもいいですけれど、助けていただけるならそろそろ何かしらの処置か、救急搬送を手配して頂きたいのですが……こう見えて僕結構ギリギリでして……」

 

 すると地に伏しながら辛うじて頭だけ上げてそういう旧多が、笑みを浮かべたまま、まだ余裕そうに余裕の無さそうなことを言っていた。

 

 確かに笑みは浮かべてはいるが、脂汗とも冷や汗ともつかぬ汗を額から流しており、割りと限界そうにも見えるため、何かしらの処置が必要なのかも知れない。

 

 しかし、処置をしようにもヴィルヘルミナにあれだけボコボコにされたとなると、あなたが出来るような処置の範囲は超えているだろう。また、救急搬送にしてもここは閑静な山間の施設のため、多少時間が掛かるのも目に見えている。

 

 ならばと、あなたはヴィルヘルミナに声を掛けた。

 

「えっ、デジマ?」

 

 マジもマジである。あなたはペットを拾ったら最後まで面倒を見なければならないように彼にも責任を最後まで持つように諭す。

 

 要するにヴィルヘルミナの赫子は治療も出来ることはあなたも知るところのため、彼女が治療するように促すのであった。

 

「なんか日に日に図太くなってるような……」

 

「――もがっ!?」

 

 "SSSレート喰種なんだぞぅ"等とブツブツ呟きつつもヴィルヘルミナは、あなたに従って旧多の傷口や口に向けて赫子を差し込む。

 

 相当根深く体内まで赫子を入れているのか、若干白目を向き、ビクビクと身体を痙攣させる旧多だったが、30秒もしない内に処置が終わったようで赫子は引っ込められた。

 

 しかし、まだ地に転がっている旧多に彼女は口を尖らせる。

 

「おい、治療は済んだぞ? オマケに幾つか病の根になりそうな部分も治しておいたから、むしろ戦う前よりもマシなはず――」

 

「リゼ……お婿に行けなくなっちゃった……」

 

「………………」

 

 流石のヴィルヘルミナもそんなすっとんきょうなことを言っている旧多に、話の途中で閉口した。

 

 やはりまだまだ余裕があったのかも知れないとあなたも思うが後の祭りである。

 

「まあ、なんでもいい……。旦那もこう言ったことだ。それに免じて物理的に歯向かわなければ不問にしてやろう。もちろん、頼んでいたコイツのクインケは持って来ているな?」

 

「え……? いや、確かに持って来ていますが、制御もままならないあれを素人にいきなり使わせるだなんて自殺行為以外の何物でもないといいますか、そもそも一般の方なら倫理的に見せるのも控えた方が――」

 

「うん、そんな些細なことはどうでもいいから今すぐに持って来い」

 

「アッハイ」

 

 自身の妻に凄まじいジャイアニズムを感じている中、旧多は健気にも今いる広い庭に隣接する平屋の日本家屋の豪邸までダッシュで向かう。

 

 そして、暫くするとクインケが入っている銀のアタッシュケース――と言うよりもマジシャンが脱出マジックで使うような人が入る大きさの改造ロッカーのようなものをひとつ抱えて持って来た。

 

 どう軽く見積もっても10~20kgはありそうなものに、中身が詰まっているとなると70~80kgはありそうなそれを重さを感じさせずに持っている辺り、確かに旧多は実力者なのだろう。

 

「ぜぇ……ぜぇ……お待たせいたしました。確かにここに――ナチス・ドイツ製旧式オルゴール"ナグルファル"、識別名"鳥刺し"です」

 

 鳥刺し――野鳥を籠や鳥餅や長い棒などで捕獲する昔の職種名が付けられた棺桶のようでもあるそれの扉が開かれ、中身が露になる。

 

 そこにはあなたよりも一回りほど小さな体格をした色白で黒髪の女性の姿があり、ヴィルヘルミナのものよりも若干簡素なナチス親衛隊制服を着ている。そして、そんな彼女はまるで眠るように安置されていた。

 

 あなたは一見したところではアラブ系の美人に見える女性を見つつ、本来あなたのクインケが入っている筈のところに、服装から恐らくは喰種かヴィルヘルミナの所縁の者であろうと予想の立つ女性が入っていることに首を傾げる。

 

 

「んもー、これが前に私が言ったあなたのクインケよー?」

 

 

 するとあなたの肩に手を乗せて、いつぞやのお姉さんっぽいものとしての口調でそんな事をヴィルヘルミナが言ったため、考えないようにしていたあなたは遂に観念した。

 

「よし、ではまずドイツ語でシュピールドーゼ。日本語でオルゴール、そして我がナチスの"ナグルファル"というクインケの事から説明しよう――」

 

 それから彼女は非常に懇切丁寧な説明が始まった。

 

 ナグルファル――第二次世界大戦時代にA~SSSレート相当の戦闘能力を持つ"最後の大隊(ラストバタリオン)"の兵士が戦死し、喰種の死体が残った場合にそれを余すこと無く有効利用しようとした結果と、いつまでも戦争をしていたいという隊員の総意が生み出した悪魔の産物である。

 

 クインケの赫包コントロールと遠隔起動機構を応用し、兵器として造られたナチス・ドイツ製の試作クインケの総称であり、自立式人型クインケである。喰種本来の身体能力と赫子を生かす事がコンセプトなのだが、当然のように人道の配慮などされていない。

 

 そして、後世になるとナグルファルと似たようなコンセプトで造られたクインケはシュピールドーゼ(オルゴール)と呼ばれ、ドイツCCGでは試作運用されたが、結果は芳しくはなく、表向きには破棄されたアイデアとなっている。実際は(ヴィー)が回収して日夜開発が行われていたところ、最近になってレッドプールが参入した事によって技術提供されたナチス・ドイツのクインケ技術の一部により、大幅に研究が躍進したらしい。

 

 また、ナグルファルとは、北欧神話に登場する死者の爪で造られた巨大な船であり、ラグナロクの際には巨人や死者の軍勢を乗せてアースガルズに攻め込むこととなる。

 

 更に心底どうでもいい蛇足だが、死者あるいは妖精の狩猟団(ワイルドハント)とどちらの名前がいいか、"最後の大隊(ラストバタリオン)"内で多数決を取った結果、ワイルドハントになったのだが、命名者のヴィルヘルミナがブー垂れたため、ナグルファルになったらしい。

 

「ちなみにナチス・ドイツの形振り構わぬクインケ技術は現代のクインケ技術でさえ、オーパーツと言わしめる程に高かったぞ。実際、当時の技術の粋を集めて造ったナグルファルは未だに(ヴィー)ですら完全なブラックボックスだ」

 

 "まあ、当時はクインケではなく単純に生体兵器だったがな。戦争は技術を最も躍進させるとはよく言ったものだ。それ故にブラックボックスの現物以外の技術を"最後の大隊(ラストバタリオン)"の残党ごとほぼ全てを持ち逃げした私を、いち組織として奴等は恐れているのだ"等と更に言葉を続けるヴィルヘルミナ。

 

 つまり目の前にあるこの女性は、紛れもなく人型女性の形をしたあなたのクインケらしい。悪意で造られた善意のプレゼントである。

 

「あのー……一応、僕は(ヴィー)なのですが、べらべらと喋って宜しいので?」

 

「こやつめ、ハハハ。私の経験上、君のような者はより長いモノに寄生し、虎視眈々と宿主の首を狙い、あわよくば己とすげ替えようとする。それが、今は大人しくしているとは言え、(ヴィー)と正面から十全以上に殺り合える"最後の大隊()"の感情を少しでも逆撫でする理由があるかね? 最低でも勝手に潰し合わせ、あわよくば私の力を己の手にしたい。そんな算段なのだろう?」

 

「ははは、いえいえ、そんな滅相もありませんよー! 買い被りすぎですって!」

 

 更にヴィルヘルミナによれば、この旧多二福という青年もかなりの腐れ外道らしい。あなたはどこから突っ込むべきか悩んだ結果、とりあえず自身に一番関係のある方に意識を集中させた。

 

「おお、そうだ。このナグルファル(オルゴール)の説明が未だだったね。彼女のナチス・ドイツ時代のコードネームはパパゲーノ。本名はアシラ。元ドイツ喰種対策局"SSSレート喰種"であり、当時は"鳥刺し"と呼ばれていた尾赫の赫者だ――」

 

 ヴィルヘルミナ曰く、彼女はパパゲーノ、あるいはアシラという名のアラブ系女性喰種。美しくも可愛らしい容姿とは裏腹に、人体に風穴を開けることに快楽を覚える異常者とのこと。基本的に人間と喰種の生存競争などは本人にとってはどうでもよく、己の意思で自分自身の欲求を満たせればそれで良いと考えている。性格は根暗ツンデレ。

 

 また、ヴィルヘルミナ曰く、赫子は喰種の想いや、意思や精神の強靭さが反映される訳で、SSSレートともなると基本的に性格が捻れ狂い我が強過ぎるアレな奴しか居ないらしい。

 

「この辺りは完全に(我々)の記録上のお話ですが……。"最後の大隊(ラストバタリオン)"の前身組織の"赤い霧(ローター・ネーベル)"を、然したる思想もなく、純粋な一個人の戦闘能力とカリスマ性のみで、後にSSSレートに認定された"十数体"の喰種を幹部に置いて纏め上げていたため、ヴィルヘルミナ様は世界初のSSSレートに指定されたそうです」

 

「よせ、褒めるでない」

 

 旧多の呟きに、絶対に誉めてはいないと思いつつ、確かにそんな危険分子が、ナチス・ドイツと合流したら誰だって危機感を覚えるとあなたも理解する。

 

「さて、早速起動しようじゃないか。君のクインケだぞぅ?」

 

 "絶対に嫌でござる! 絶対に嫌でござる!"と全力で首を振るあなただったが、その反論は虚しく、絞首台に吊るされる大海賊時代の死刑の罪人の如く無理矢理クインケの前に立たされた。

 

 明らかにさっきよりも距離を取ってニコニコしながらこちらを眺めている旧多を横目に見つつ、あなたは大きな溜め息を吐き、とりあえず操作方法などはどうすればいいのかを聞いた。

 

「んー……? そんなものは無いぞ?」

 

 とんでもない聞き返しに耳を疑うあなたに、ヴィルヘルミナは心底愉しそうな様子で口の端を歪めて更に言葉を続ける。

 

「制御装置? 操作? ハハハハ、そんなものは設計段階のレベルで最初から付いてなどはいない。生き物と同じさ。ナグルファルはオルゴールと違って、そもそも死者となりてもまだ闘争を続けたいということがコンセプトなのだからな」

 

「……なので(こちら)としても正直、もて余していまして。何せ、最初に起動させた時はA~Sレート相当のナグルファルを数体実験として起動させたそうなんですが、その瞬間から襲い掛かって来まして、大変なことになったそうです。ちなみに後の調べで、人体組織を与えるか、少しでも傷付けると即座に起動するそうで、リスクが高過ぎるために高レートのナグルファルの赫包の採取をするわけにも行かず、こちらでは完全に爆弾扱いですね」

 

「まるでSCPオブジェクトだな」

 

 "まあ、だから管理面倒臭くて置いてったんだけど"等と昔を懐かしむように呟くヴィルヘルミナ。

 

 果たしてそれはクインケどころか、それ以前に武器と呼べる代物なのだろうか? あなたは訝しんだ。

 

 それではまるで、死者蘇生であると思い――ナグルファルは(ヴィー)では完全にオーパーツ扱いにされているということを思い出し、そう言うものだと自身を納得させた。

 

「鵜飼い、鷹狩、猟犬など現代でも人間は生き物を武器として用いる。また、古来より伝書鳩などで遠距離の通信手段を確立したり、闘魚や闘犬や闘鶏などの様々なブラッド・スポーツが嗜まれてきた。他にはヴォイテクというポーランドのヒグマを知っているかね? ヴォイテクは成り行きでポーランド軍に育てられ、軍内で親しまれた結果、移動の規約を乗り越えるために階級を与えられるまでに至った。ヴォイテクはポーランド語を理解していた他、他の兵士と相撲に興じた際にはクマが人間に負けてやるといった気遣いまで見せており、仕事では人間数人掛かりで運ぶような砲弾をひとりで運んでいたという。つまり……喰種そのものがクインケでも何も可笑しくはないのだよッ!!」

 

 "そうかな……そうかも……"と納得しそうになったあなただったが、やはり可笑しいことに気づく。

 

 しかし、指先に痛みが走ったかと思えばいつの間にかヴィルヘルミナの甲赫の赫子で薄皮が切られており、僅かに血が滴ると共にそれを彼女は小瓶に少し集めた。

 

「………………」

 

 いつものことだが、流石に少し止まるあなたに、小瓶に血を集め終えたヴィルヘルミナはまだ血の滲む傷口をそっと眺める。

 

「ん……ちゅ……うま」

 

 そして、何を思ったのかあなたの指をくわえて少し吸う。血が止まるまでそうしていた彼女は、口を離してから最後に赫子で傷口をひと撫ですると即座に傷口は塞がっている。

 

 そんななんでもないたまにある夫婦の日常の風景を、旧多はどこか羨ましそうな表情でここではない遠くを眺めながら見つめていた。

 

「ていっ」

 

 そして、あなたの血の入った小瓶を女性型クインケ――パパゲーノの口に入れて、中身を流し込んだ。

 

 量にすれば数滴程度だが、それをされた直後、パパゲーノの喉が動くのがあなたにも見えた。

 

 そして、ピクリと身体を震わせた後、彼女の瞳が開かれ、煤のような灰色の瞳が露になると共にやや気だるげで訝しげな表情に変わる。

 

「おハロー、アシラちゃ――」

 

「――――――」

 

 その次の瞬間、あなたは浮遊感を感じた。

 

 何かと思えばいつの間にかヴィルヘルミナが伸ばした赫子で後方に投げ飛ばされており、無理矢理距離を取らされているのだ。

 

 そんな状況に困惑した直後――パパゲーノが入っているケースが音を立てて吹き飛ぶと共に、パパゲーノの背にある腰部に近い部分の赫子用の袖から黒々とした樹の幹のような一本の赫子がヴィルヘルミナへ向けて伸ばされたことに気づく。

 

 パパゲーノの赫子は一度くねると直線的にヴィルヘルミナへと迫り、その間に先端は削り立ての鉛筆のように尖ったと思えば、大量の針のようなものが先端の周囲を埋め尽くした。

 

 そして、あなたが声を上げるよりも前に、ヴィルヘルミナは既に伸ばしていた赫子を金属のように硬化させると、パパゲーノの赫子を正面から受け止める。

 

 つばぜり合いによりギチギチと金属と金属が擦れ合うような異音が響き渡り、接触部から激しく火花が生まれる光景から互いに並みの赫子ではないことは明白であろう。

 

 そんな最中、パパゲーノは目を細めてヴィルヘルミナを睨み付けながら先に口を開いた。

 

 

「折角、地獄で日課の釜茹で(お風呂)の後、針山で遊んでたのに……なんでまた呼び戻したの……?」

 

「ほう……? あの世とは仏教圏だったとは知らなんだ。私もそのうち愉しみにしておこうじゃないか」

 

 

 芝生に背中から着地しつつ、あなたは知り合い同士の挨拶のようなものであると思い当たり、そのまま暫くそっとしておくことに決めたのであった。

 

 ちなみにパパゲーノはドイツ語を話しているが、あなたはヴィルヘルミナの影響でドイツ語を半ば強制的に身に付けたため、それが初めて役に立ちそうなことを密かに喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 お昼時、修行は中断されて庭から見えていた平屋の日本家屋にあなたは居た。

 

 外観とは裏腹に洋間もあるらしく、長いテーブルを挟んだあなたの目の前にパパゲーノはおり、椅子には横に座りながら面白くなさげに他人と目を合わせないように床をじっと眺めている。

 

 ちなみにこの空間の中には、何故かヴィルヘルミナはおらず、あなたとパパゲーノの二人っきりにされているため、何とも居心地の悪い状況が続いていた。

 

 ヴィルヘルミナに襲い掛かったパパゲーノは、少し打ち合った後に攻撃を止め、そこにすかさずヴィルヘルミナが"昼食をご馳走する"と言ったためにこうなっているのである。

 

 目の前の女性喰種は第二次世界大戦時代のSSSレート喰種であり、ヴィルヘルミナの言葉を信じるのならば、かなりキレた女であるということは明白である。しかし、比較的マシな部類とも前に言っていたことを思い返し、対応を決めかねているのだ。

 

 そんな折りである。

 

「――…………」

 

 ふと、パパゲーノに目を向けると、彼女は視線だけこちらを視ており、目が合った瞬間にまた目を逸らして床を眺めた。

 

 どうやら向こうもこちらを気にしていなくはないらしいと考えたあなたは、彼女に当たり障りのない話題から振ってみる事にする。

 

 とりあえず、あなたはパパゲーノに今の体調を気に掛ける。死体をどういうわけか、ナチス・ドイツのクインケ技術で擬似的に蘇生させられたわけで何処かしらに異常があっても可笑しくはないであろう。

 

「別に……生前のままよ……」

 

 しかし、それだけで会話は切られた。態度からわかってはいたが、どうやらこのパパゲーノという女性喰種はかなり口下手か、相手への興味が薄いらしい。

 

 後者ならば怒らせる原因になりかねないが、ヴィルヘルミナとの日々で精神とコミュニケーション能力が鍛えられているあなたは、何てこともない話題を彼女に振り続けた。

 

 その度に短い返事だけは返してくれるため、どうやら口下手なのではないかという線があなたの中では濃厚になる。

 

「貴方ってなんなの……? ヴィルヘルミナ(アイツ)が珍しく気にかけているのはわかるけど……」

 

 すると10分程後にようやくパパゲーノの方から質問が来る。

 

 そのため、スレで結婚するに至ってから今までの顛末を話そうとしたが、50年以上前の者に伝わる筈がないと考え、とりあえず旦那になったという事実だけ伝えた。

 

「は……? 結婚……? アイツが……アイツが?」

 

 するとよほどに驚いたのか、パパゲーノは目を見開いて驚いている。そのうち、わなわなと震えて口を開く。

 

「いちゃついてる恋人たちなんて、もれなく全員死ねばいいのに……」

 

 それは理不尽な呪いであったが、なぜかあなたにもスッと共感出来るものがあるであろう。

 

「…………ねぇ貴方。ところで穴はすき……?」

 

 するとパパゲーノは、若干机に身を乗り出して唐突にそんな事を言う。よく見ると何故か頬を少し染めており、話す内容がよほどに好きなのだということがわかるであろう。

 

「うふ……ふふふ……うふふふ……。私ね……小さい頃は砂場でよく遊んでたのよ。それで山を作ってそれにトンネルを掘るのが好き……開通して手と手が触れたときが愉しいわ……」

 

 全体的に黒く暗い印象から呪術師や魔女的にも思える見た目に似合わず、可愛らしい趣味を持っているらしい。

 

 あなたはそれに頬を綻ばせ――。

 

「だからそれを死体に開けた穴で初めてしてみたときはもっともっと愉しかったわ……!」

 

 尾赫の赫子を出して針のように尖っている先端を撫でつつ、恍惚な光を暗い瞳に宿し始めた彼女を見れば、やはり彼女もヴィルヘルミナと同様にSSSレート喰種だと言うことを思い知らされた。

 

 彼女の赫子の異様で用途の明らかな形状から彼女が、何に執着し続けて大成した喰種なのかは明白であろう。そして、SSSレート"鳥刺し"とは職業と共に、読んで字の如くの意味なのかも知れない。

 

「貴方にも……素敵な風穴を開けて――」

 

「ただいまアナタ! ご飯にする? 昼食にする? それとも昼餉(ひ・る・げ)?」

 

 突如、ヴィルヘルミナが帰って来るなり、新婚一択を披露して見せる。

 

 それにカチンと来たのか、パパゲーノはあなたに伸ばそうとしていた赫子をヴィルヘルミナへ弾丸のように跳ばす。

 

 しかし、後に展開した筈のヴィルヘルミナの方が速く、パパゲーノの尾赫を渦を巻くようにがんじがらめに押さえ込んだと共に、密かに先端が赤熱した赫子をパパゲーノの首筋に突きつけて止めていた。

 

「図に乗るなよパパゲーノ大尉? 誰が法だか忘れたとは言うまいな?」

 

「………………」

 

 パパゲーノは心底嫌そうな表情でヴィルヘルミナを睨むが、直ぐに赫子を収めて大人しくなった。

 

 やはりと言うべきか、どうやらSSSレートの中でもヴィルヘルミナの戦闘能力は突出しているらしい。また、これまでパパゲーノがSSSレートならば使える筈の赫者形態を取らない理由は、恐らくは使っても勝てないことが解り切っているからなのであろう。

 

「新鮮な猪と野鳥、田舎の人間を仕留めて来たからな。ジビエだジビエ」

 

 ヴィルヘルミナは特にパパゲーノを気にした様子もなく、それぞれの腕に持っていた大きな猪と、近くに偶々いたと思われる成人女性を机に置いた。

 

 両方とも既に事切れており、ほんの小さな外傷のみで殺しているようで、死体の表情から死んだことにすら気づいていないような様子で死んでいることが見て取れ、あなたはヴィルヘルミナの流石の所業に感心する。

 

「フフン、スゴいだろスゴいだろ?」

 

 ヴィルヘルミナはパパゲーノに赫子を突き付けるのを止め、あなたの目の前で猪と野鳥と成人女性を赫子で解体し始める。

 

 血抜き、脱骨、脱皮に至るまでその手際も一流の猟師すら舌を巻くほどで流石と言う他無く、どこからか持ってきたボトルに人血を入れている彼女にあなたは獲って来た一部始終を何気なく聞いていた。

 

「えぇ……」

 

 何故かそんなあなたをパパゲーノは半眼で眺めていたが、あなたは思い当たる節がなく首を傾げる。

 

「じゃあ、旧多クン調理任せれる?」

 

「はい、シェフが駐在しているのでお任せを!」

 

 やがて解体も終わり、血塗れで毛だらけになった洋間をあなたも片付けつつ、昼食を待つ時間となったが、ヴィルヘルミナが現れてから更にパパゲーノの口数が少なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたのテーブルの前には猪と野鳥で出来た食欲をそそる料理が並んでおり、それはヴィルヘルミナの希望であなたの隣に座っている半喰種の旧多の席にもあった。グレイビーソースが香り、存分にジビエの良さを引き出していると言える。

 

 あなたの目の前に座るパパゲーノと、彼女の隣に座っているヴィルヘルミナには当たり前だが、ほぼ素材そのままで調理法の違う人間料理が並んでいた。とは言っても見た目や並びがハイソなため、人間から見ても一見はただの簡素な肉料理程度に見えるであろう。

 

 そして、特に荒れることもなく昼食は進んでいた。隣にいるため、食事中のためか、パパゲーノ自身からヴィルヘルミナに話し掛けている。

 

「アンタ、(ヴィー)に入るだなんてどういう神経してるの……? とっくに世界でも壊していると思ったわ……」

 

「買い被り過ぎだ。私とて、人らしい生活を魅力に感じないわけではない。近年は娯楽も増えた故に特にね。そも世界を破壊したくば、とっくの昔にそうしているさ。私はこれでも今の世界をそこそこ気に入っている。故に(ヴィー)に不満は無い」

 

 "まあ、奴等が裏で何をしようとしているのかは知らんし、興味もないがな"と言って更にヴィルヘルミナは続ける。

 

「やはり、喰種と人間は殺し合わねば面白くもなんともない。大戦中は人間の元で大手を振って人間を殺せたからそうしていたまでだよ。今は捜査官の質も悪くはない故、娯楽には困らんさ」

 

「……私が言うのも可笑しいけれど……大隊長として死んだ仲間やドイツ兵への哀悼や責任が少しはないの……?」

 

「哀悼に責任だと……? ククク……この私がか? 見くびるなよパパゲーノ大尉。私の本質は何も変わってはいない。根暗ツンデレな君と違って、仲間や愛郷だけなら兎も角、人間なぞに愛着を覚えるものか」

 

「ツンデレ……?」

 

 1990年代にすら概念もなかった単語に頭を傾げているパパゲーノを他所に、ヴィルヘルミナはあなたと旧多を見る。

 

 ヴィルヘルミナを見ていると、なんだかパパゲーノの方がよほどに真人間にあなたは見えて来ていたが、実際のところそうなのかも知れない。

 

 ヴィルヘルミナは最後の大隊(ラストバタリオン)で比較的マシな部類とは言ったが、自身の位置付けは話してはいなかったからだ。ぶっちぎりで彼女がアレな奴なのはあなたがよく知るところである。まあ、それが人外らしくて好きなわけだが。

 

「そうさな……。ひとりと半分は人間もいることだ。少し昔話をしてやろう」

 

 そして、少し考え込むように顎に手を触れてからまた言葉を続けた。

 

英国(ライミー)が1919年に施行したローラット法を知っているかね? 植民地のインド民族運動弾圧法で、簡単に言えば逮捕状なしに逮捕し、裁判なしに投獄出来るという法だ」

 

 "ガンジーが非暴力で戦った事でも有名だな"ともヴィルヘルミナは付け足す。

 

「そもそも今私が吐いた蔑称もそれだ。イギリス人(ライミー)黄色人種(イエローモンキー)黄色人種の白人思想(バナナ)日本人(ジャップ)ドイツ人(クラウト)フランス人(フロッギー)etc……。他には黒人(ニガー)黒人と白人のハーフ(カフェオレ)、イギリスの流刑地だった故にオーストラリア人(エクスコン)や、最近なら日本鬼子などもそれに当たるか」

 

 一旦話を区切ったヴィルヘルミナは、人肉のステーキのひと欠片にフォークを突き立てて咀嚼し、ワイングラスにあなたが注いだ血液を飲み干すと再び口を開く。

 

「一世紀程度も経たぬ昔は他民族をヒトとも思わぬことが当たり前のように横行していたのだ。いいや、常識だったのだよ。それに現代の倫理観を当て嵌める方が余ほどに烏滸がましいとは思わんかね?」

 

 "まあ、今が改善されたかと言えば多少マシになった程度だがな"と付けたし、ヴィルヘルミナは調子外れに笑う。

 

「また、我がナチス・ドイツ等が、今でもやたらと民族差別や選民思想の槍玉に挙げられるのもまた原罪だろうさ。結局のところ、歴史とは勝者こそが全てというな」

 

 "完全に負け惜しみだが、我々が勝っていれば世界はまた違った形になっていただろうな。やはりノルマンディー上陸作戦(ネプチューン)は部下に任せるべきではなかったかもなぁ。なあ、パパゲーノ大尉?"と呟き、ヴィルヘルミナはクツクツと笑う。

 

「うるさいわね……」

 

 それを聞いたパパゲーノは露骨に顔をしかめつつ、そう呟きながら目線をヴィルヘルミナから逸らした。

 

「何れにせよ。今の世は過去の戦争の果てにある。それは紛れもない事実だ。何れだけ言葉を飾ろうが、平和を謳おうが、愛を尊ぼうが……過去の(おびただ)しい数の敗者と、それを遥かに超える戦うことさえ出来なかった理不尽な死者を忘れ、踏みつけながら知りもしない平和や愛を語る。あるいは争いを繰り返す」

 

 "百年以上生きた私なりの失笑と答えだよ"とヴィルヘルミナは特に愉しげな笑みを溢す。

 

「過去は過去、水に流す。なるほど良い言葉だ。しかし、私には現代の人間が、蕩け切った腐肉と煤けた人骨の山の上に立ち、足元を見ずに張り付けた笑みを浮かべ、高らかに世界平和を説く……そんな滑稽で愛らしい生き物にしか見えぬのだよ。故に私より余ほどに悪趣味だ、人間という生き物はね」

 そう言うとヴィルヘルミナは皿の上のやや断面赤い人肉のステーキに、勢いよくナイフを突き立てて見せた。

 

「人間は誰しも一度はどこにでもあるようなナイフで、顔も知らん通行人をひとり殺してみるといい。それまで立って歩き、当たり前のように今日を生きていた無辜なる人間が、致命傷を負わされつつも抵抗し、直ぐに四肢も満足に動かせぬほど衰弱していき、やがてひっそりと明日を奪われて事切れる。その一分程度で済む過程を己の手で、加害者側から感じ取りでもしない限りは、生と死が如何に仲の良い友人なのかを真に理解は出来んよ」

 

 "そして、それが人間の大好きな戦争というものだ"と言いつつナイフを持ち上げ、ステーキを頬張った。

 

「故に万人が語るであろう平和や愛など、そもそも全て薄っぺらな戯れ言なのだ。そこには何の価値も意味ない。嘘だと思うかね? ならばそのようなことを宣う詐欺師に人殺しをさせて見ればよく分かるさ。ほとんどの連中は二度とそんな戯れ言は吐けなくなるものだぞ?」

 

 そう言えばとヴィルヘルミナのグラスが空になっていたことに思い当たったため、あなたはボトルに入った人血を注いだ。

 

「昔は侵略した国でよくやったものだ……なあ、パパゲーノ大尉? 神父や活動家を捕らえて散々痛め付けてからナイフを持たせ、目の前に捕らえた敵兵や民間人を手足を縛って並べ、一言耳元で"殺せば助けてやる"と囁く。するとどうだ? 躊躇はすれども最終的に殺さぬ者など数える程も居なかった。そして、生き延びて戦後にまた平和や愛を説けた者は更に居なかった。所詮、その程度なのだよ。そして、その行為自体は私だけがやっていたことでもない。戦争中ならば似たようなことを人間は幾らでもやったのさ。全く愚かで憎らしい生き物だ」

 

「…………私はそんなことしてないわよ。積年の恨み、憎しみ……でも……くだらないわ。そんなもの、自分の気持ちじゃないもの」

 

「ああ、そうか。君はそういう優しい娘だったね」

 

 "まあ、私としても今と違って、テレビもネットもなかったから当時の娯楽のひとつ程度だったがね。今はクリスマスにダイ・ハードでも観た方が面白い"等と言ってヴィルヘルミナは言葉を区切った。

 

 "相変わらずゲームのラスボスみたいなヴィルヘルミナらしい"とあなたは思っていると、彼女はあなたに目を向けて何か思い出したように別の話を始める。

 

「1920年代頃の日本での話だったか、戦前に"説教強盗"と呼ばれていた男が起こした事件を知っているかね?」

 

 どうやらこれだけ扱き下ろした後で人間の話をするらしい。いつものことなので、あなたは微笑みだけ浮かべて首を振って何も言わずに話を聞く。

 

「まあ、バラバラ殺人なども名付けた大手新聞社が名付けたそのままの意味の強盗事件なのだが……なんとその強盗は、強盗に押し入り、立ち去る前にわざわざ家主を起こして防犯の注意をするという律儀な男だったのだ」

 

 どうやら本当にあなたが産まれる前どころか戦前の犯罪の話をするらしい。最早、歴史を聞いている気分である。

 

「まず、説教強盗の生まれは獄中出産だった。父親とは幼くして死別し、母親の再婚先で育つ。そして、小学校を卒業すると奉公に出されたが、直ぐに奉公先で横領と窃盗で捕まり、刑務所に入れられている」

 

 "時代とはいえ、ここまで底辺の生活環境と悪辣な倫理観を受け付けられて育つ環境もそうあるまい"とどこかヴィルヘルミナは遠くを見る。

 

「その後、強盗をしなければならない状況に陥り、人を殺さず、傷つけずを信念に強盗を繰り返した結果、説教強盗が生まれたと言うわけだ。まあ、当然彼は暫く犯行を重ねた後に捕まり、無期懲役の判決を受けて投獄された。獄中で当時の両翼の大物から文字の読み書きの手解きを受けるなどという妙な体験をしつつ、戦後になって新憲法公布による恩赦によって、模範囚として表彰されつつ、18年の服役生活を終えて仮釈放される」

 

 境遇や貧困を語る姿勢から、彼女が言いたいことはなんとなくわかってきたあなただったが、それを言ってしまうほど野暮ではない。

 

「その後は全く犯罪に手を染めず、刑務所で習得した印刷業などに従事して収入を得る平凡な生活を送る。まあ、若干は惡の華として持て囃されはして、防犯講演などを依頼されて行脚してはいたが、それだけの人間に彼の生涯は汚くも価値のあるものに映ったのだ」

 

 "まあ、時代背景として、社会の底辺による反抗を他人事とは思えない程度には日本全体が貧困していたというのもあるだろうな"とヴィルヘルミナは付け足す。

 

「そう、決して他人事ではなかったのだ。そして、一般家庭で一般的に生まれ一般的に育った人間が普通なのは当たり前のことだ。しかし、説教強盗は生まれも育ちも当時から見ても最底辺、その男が良心を保ち続けるとは奇跡にも等しいだろう」

 

 "似たような境遇の私や大多数の喰種を見れば一目瞭然だろう?"と笑うヴィルヘルミナ。

 

「そんな説教強盗は罪滅ぼしとして自身で願い出て、生涯無期懲役囚として保護観察のままだった。よほどに出来た人物でなければ出来はしないさ。薄汚れて穢れ貧しい中に清廉さを感じる……清貧とはこの事を言うのであろう。私が彼の存在を知った頃には既に死んでおり、とても残念に思ったものだ。一体、どのような心理を得ていたのか、是非とも本人の口から聞きたかったモノだよ」

 

 "そも刑罰には犯罪を犯すな等と書いてはいない。したらどうなるのかが書いてあるだけだ"と区切ってから、ヴィルヘルミナはあなたにそっと問い掛ける。

 

「さて、綺麗な手で何も知らぬ者の語る上っ面だけの世界平和と、説教強盗のようなものが語る取るに足らない汚れた良心。君はどちらにより価値があると思うかね? まあ、私にとっては、それが人間の全てだよ。多くの人間にとって喰種とは、また多くの喰種にとって人間とは酷く遠いモノなのだ。それは交わることのない平行線のようだが、平行線とは常に隣にいる。その関係が酷く陳腐で愛らしい」

 

 それにあなたは答えなかった。彼女が言うことを信じるのならばあなたもまた、彼女に取っては前者の人間であろう。

 

「いや、目の前で人体解体されるの流してたんですけれど……」

 

 あなたの隣に座る旧多が非常に小さくそう呟いたが、あなたは少し負い目のある表情ながら言葉を返す。

 

 ヴィルヘルミナにとっての食事にこれまで幾度となく付き合ってきたあなたには日常のことであり、基本的に彼女はあなたとの取り決めによって食べる分しか人間を殺さない。

 

 食べる前には"いただきます"もキチンというため、人間が他の生き物を食べるのと大差ない事であろう。そもそも

 

「うーん……割れ鍋に綴じ蓋」

 

「さて、そんな我が旦那のクインケにアシラちゃんはなったのだ」

 

「抉るわよ……?」

 

「ああ、そう言えばこれから私と、旦那は捜査官になることを伝えていなかったな」

 

「は……?」

 

 ヴィルヘルミナは事の顛末とパパゲーノの起動させた理由を全て伝える。無論、電子掲示板については省き、彼女の思い付きであなたと結婚し、果てに暇潰しに夫婦で捜査官になるという内容である。

 

 そして、さも当然のような表情を浮かべてそれらを伝え終えたとき、パパゲーノは真顔でポツリと呟いた。

 

「頭可笑しいんじゃないの……?」

 

「何を今更、一世紀ほど言うのが遅いぞ」

 

 確かにヴィルヘルミナの実年齢を自己申告通りの124歳を信じるのならば、一世紀前の彼女の年齢は24歳になるため、まだ止められたかもしれない。

 

 しかし、あなたとしてはどうにも124歳という自己申告すら若干嘘臭いと思っており、実際はもっと上なのではないかと睨んでいるが、流石にそれを口に出すほど野暮ではなかった。

 

「はぁ……まあ、いいわ……隊長に逆らったって無駄だもの……」

 

 するとパパゲーノは溜め息を吐いてから諦め半分な様子でそう呟く。どうやら彼女もまたヴィルヘルミナの扱い方を心得ているようである。

 

「では食事も済んだことだ。また、外に出ようじゃないか」

 

 全員の皿が空になったところでヴィルヘルミナはそう言う。それに逆らえるものなど居ないため、あなたたちは庭へと再び向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 庭にて、あなたは"武器は装備しないと意味がないぞ!"と豪語するヴィルヘルミナに言われるがまま、パパゲーノを装備させられていた。

 

 装備なる状態はあなたの背にパパゲーノがしがみついて、前に手を回してほぼ手の力だけで掴まっているというとんでもない状況である。どうやらヴィルヘルミナにとってパパゲーノは背部装備らしい。

 

「双王子スタイル」

 

 よくわからないことをヴィルヘルミナは満足げに呟く。

 

 確かに人型の武器を使うとなると自然に持ち方は幾つかに限られるが、このようになるのはあなたもパパゲーノも予想しておらず、あなたは日頃の運動不足が祟り、あなたより一回り小さいながらパパゲーノの重みで震え、パパゲーノはこれまで堪えていたツッコミ心にうち震える。

 

「それはパパゲーノ大尉が最後の大隊(ラストバタリオン)の中で一番、スタイルが良いからだな」

 

「――――」

 

 そして、遂に堪忍袋の緒が切れたパパゲーノは、そのまま尾赫の赫子を伸ばし、地面へと突き刺す。

 

 その直後、やや離れた位置にいるヴィルヘルミナが横に跳ぶと、彼女の居た位置に棘で出来た大樹のような赫子が天を貫く。腐ってもSSSレート喰種のため、凄まじく大迫力である。

 

「避けるな……」

 

「当ててみろ!」

 

 地をひょいひょいと跳ね回るヴィルヘルミナが居た地点を地中から生える棘の赫子が断続的に貫き続ける。さながらもぐら叩きの逆のような光景である。

 

 そんな様子を少し眺めた彼はポツリと背中にいるパパゲーノに小さく声を掛けた。

 

「なによ……? アイツのクセ……? なにそれ……?」

 

 絶えずヴィルヘルミナへ攻撃が行われ続ける中、少しあなたは助言する。それはヴィルヘルミナと何気ない日常を過ごして来た為にわかる感覚と、今の状況をゲーム画面のように見立てた場合の勘であった。

 

「まあ、いいけど……」

 

「お? おお?」

 

 パパゲーノは助言の通りにヴィルヘルミナを追い立てると、当然だが彼女の行動が多少変わる。

 

 そして、暫く追い立て続けた直後、あなたは"今です"とどこかの軍師の如く呟いた。

 

 

「にゃー!?」

 

 

 パパゲーノの赫子はヴィルヘルミナの腹に突き刺さった。正確には当たる直前にさも当たり前のように赫子でガードしたため、弾かれて上方に突き飛ばされる。

 

 スポーンと擬音が付きそうな様子でヴィルヘルミナは飛んで行き、硬い地面に落ちた。

 

「……あ、当たったわ……」

 

 何故か当てた当人のパパゲーノが一番驚いている。どうやら彼女にとってヴィルヘルミナは何をしても絶対に死なないし、倒せないぐらいの認識の相手だったのかも知れない。

 

「やはりいいじゃないか。流石、私よりもゲーム上手いだけはあるなアナタ」

 

 直ぐに復帰したヴィルヘルミナは腕組みをしながらそんなことを繁々と語る。

 

 ちなみにスマ○ラやよくあるアーケードのような格闘ゲームや、ダークソ○ルのような対人ゲームではあなたの方が何故かヴィルヘルミナよりも得意である。数少ない自身の利点であり、考えていると悲しくなってくるところだ。

 

「だから素敵なクインケだと言ったろう? センスはあるが、身体能力がクソ雑魚ナメクジなことを補うのはこういったクインケでしかやりようがない」

 

 それだけ言うとあなたの背中にいるパパゲーノを猫でも抱えるように回収し、地面に置くと笑顔で命令を下す。

 

「旦那の参考に赫者になれ」

 

「……? まあ、別にいいけれど――」

 

 その直後、パパゲーノは伸ばした尾赫を全身に纏わせて隠れたかと思えば、急速に体積を増す。

 

 まるでアニメやゲームでも見ているかのように現実感のない光景が暫く続き、そして遂にパパゲーノは完全に赫者へと変貌を遂げた。

 

「わぁ……これが本当に人間と戦争していた赫者ですか……やっぱり(うち)の喰種とは迫力が違いますねぇ」

 

「左様。"鳥刺しパパゲーノ"と言えば昔は皆、震え上がったものだぞ?」

 

 感心した様子の旧多にそう言ってからパパゲーノに目を向けるヴィルヘルミナに釣られ、あなたもそちらに意識を向ける。

 

 パパゲーノの赫者形態を目にしたあなたは、無意識に"モンゴリアン・デス・ワーム"というUMA、あるいはそれをモデルにしたと言われている"トレマーズ"というB級映画に出て来るグラボイズという地底生物を思い浮かべた。

 

 まず、開かれた口にはヤツメウナギなどの円口類のように円形の口の内側に向かって牙や爪のように鋭利な大量の針山が並んでいる。

 

 更によく見れば下部には短いながら爪のある腹脚を持ち、どちらかと言えば有爪動物のカギムシにも似ているとあなたは思い当たった。

 

 そして、何よりもその太さは樹齢数百年の巨大な大木のようで、ミミズに節を付けたような赤黒い胴体は"30~40m"はあろうかという異様な長さをしていることが、圧巻と共に余りにもこの星の生物らしからぬ生理的な悪寒を覚えさせるであろう。

 

『やっぱり……少し反応が遅れるわね』

 

「肉体的に半世紀はブランクがあったからな。少し動かして来い」

 

『ええ……そうするわ』

 

 するとパパゲーノは円口類のような口を蠢かせ、そのまま地面に頭を押し当てると、即座に穿孔すると共に地響きを伴いながらあっという間に全身が地面へと潜る。

 

 そして、数秒か十数秒経つと、数百m離れた箇所で頭だけ数m出して首を鳴らすように左右に頭を振るとまた地中に潜った。

 

 それから暫くして比較的近くにある山の斜面で顔を覗かせる姿が見え、若干可愛らしくあなたは思う。

 

 その一部始終を見た旧多の顔は引き攣っており、話には聞いていたが眉唾物だったと言わんばかりの良い反応をしつつポツリと呟く。

 

「戦時中にこれはヤバいですね……」

 

「わかるかい旧多クン? コンクリートや、並みの金属ではパパゲーノの前には柔らかいプリン同然だ。その能力は他のドイツ兵の為に大量のトンネルや塹壕、地下施設のスペースを掘り抜いたのだ。荒れ地に半日で前線基地を建てた伝説もあるぞ? 国連では私の次に重要な標的にされていたのだ」

 

「昔の人はあんなのよく倒せましたね……いや、ホントどうやって倒したんですかあんなの」

 

「にんげんこわい」

 

 どうやらそもそもパパゲーノというSSSレート喰種とは、単純な戦闘員ではなく、極めて優秀で重機を内蔵した戦闘工兵だったようだ。

 

 これまであなたは無意識に最後の大隊(ラストバタリオン)は、個々の戦闘能力に特化した組織だと思っていたが、どうにも戦争も上手い集団だったらしい。

 

「ところで厚かましいようですが、こちらの要求の品は……」

 

「わかっている。パパゲーノの赫包の定期的な提供だろう? とりあえず幾つか採ってやるから好きに使え。そうだ、迷惑料にひとつは君にもやろう……内緒だぞ?」

 

「……本当に食えないお人だ」

 

 "ククク……しかし、彼女がいなければあそこまで戦争が泥沼化することもなかっただろうなぁ"等とヴィルヘルミナは呟きつつそんな会話を旧多としており、争いの火種になることに率先的なのは流石彼女だとあなたは思っていた。

 

「さて、アナタ。大方、パパゲーノ大尉のスペックは理解できたことだろう。では――」

 

 ヴィルヘルミナは愉しそうに笑みを浮かべ、あなたに言葉を掛ける。

 

 

「アシラちゃんを、かわいがって、あげてね!」

 

 

 ゲーム脳も考えものだとあなたは思いつつ、平常通りなヴィルヘルミナに内心で溜め息を溢すのであった。

 

 

 

 







~ラストバタリオン内での人格や思想のヤバさ度合い~

・パパゲーノ=中の下ぐらい(ひかえめ)

・ヴィルヘルミナ=上の上ぐらい(あたまおかしい)

・ナグルファル開発したヴィルヘルミナの友人=上の上ぐらい(あたまおかしい)




~クインケ~

ナグルファル
 第二次世界大戦時代に戦死したA~SSSレート喰種の死体にクインケの赫包コントロールと遠隔起動機構を応用し、兵器として造られたナチス・ドイツ製の試作クインケの総称。自立式人型クインケであり、喰種本来の身体能力と赫子を生かす事がひとつのコンセプト。当然のように人道の配慮などされていない。
 更に死者を再び戦争に投入させることもコンセプトのため、制御装置や安全装置など付いているわけもなく、実質的な喰種に対する死者の蘇生をやってのけているため、CCGでは負の遺産と共に完全なオーパーツとして扱われている。
 また、後世では複製を試みようとし、シュピールドーゼ(オルゴール)と呼ばれ、ドイツCCGでは試作運用されたが、結果は芳しくはなく、表向きには破棄されたアイデアとなっている。しかし、(ヴィー)が回収して未だに日夜開発が行われている。レッドプールの参入により提供されたナチス・ドイツの技術の一部により、大幅に研究が躍進したらしい。

 ちなみに開発者は私ではなく、当時の研究者たちと"最後の大隊(ラストバタリオン)"私の片腕だゾ。




~SSSレート喰種~

パパゲーノ大尉
 パパゲーノはナチス・ドイツ時代のコードネーム。多少気を許した者にのみ本名のアシラと呼ばせている。元ドイツ喰種対策局SSSレート喰種であり、当時は"鳥刺し"と呼ばれていた尾赫の赫者。アラブ系の女性喰種であり、人体に風穴を開けることに快楽を覚える異常者。基本的に人間と喰種の生存競争などは本人にとってはどうでもよく、己の意思で自分自身の欲求を満たせればそれで良いと考えている。
 パパゲーノの通常形態の戦闘スタイルは自由に棘を隆起させれる尾赫による攻撃や、地面に差し込んで地中から広範囲を攻撃する単純な手段が主。赫子形態では30~40mほどのワームと化し、あらゆる地形や構造物内すら用意に穿孔して高速で移動する。金属すら豆腐のように抉り抜く突進はそれだけでも脅威。

 第二次世界大戦中、アシラちゃんはその能力を遺憾を覚えつつ遺憾無く発揮し、即行で大規模な土木工事を行っていたのだ。後、赫子は喰種の想いが反映される訳で、SSSレートともなると基本的にアレな奴しか居ないと私的には思う。更に蛇足だが、世界対戦時を生きた多くのSSSレート喰種たちは、現代とは比べ物にならないほど幾らでも死体が手に入った飽食の環境で育った兼ね合いで、現代の貧相な食環境のSSSレートよりふた回りは強いんだゾ。




~QAコーナー~

Q:トレマーズなんて最近のナウなヤングがわかるわけないだろいい加減にしろ!

A:実写版トランスフォーマー三作目(ダークサイドムーン)に出て来るショックウェーブが連れてるドリラー(ニョロニョロしてるアレ)


Q:ナチスのクインケ技術がヤバすぎるだろ……。

A:我がナチスの科学力はァァァァァァァアアア世界一ィィィイイイイ


Q:この世界線のナチス・ドイツの戦績と実施の大きな違いは?

A:最後の大隊(ラストバタリオン)のせいで、軒並みどの戦線でもナチス・ドイツのキルレが倍以上になっている(泥沼)


Q:結局、どうやってパツキン巨乳姉貴は他のSSSレート喰種を大量に抱え込んでたの?

A:ラオウと同じ(世紀末覇者)


Q:つまりパツキン巨乳姉貴って(ヴィー)から見たらどういう立ち位置なの?

A:
最初はSSSレート相当を十数体保有している世界最悪の喰種テロ組織"赤い霧"を率いる首領(この時点で既に(ヴィー)には喧嘩を吹っ掛けている)

ナチス・ドイツにスカウトされ、そこで更に勢力を増しつつ"最後の大隊(ラストバタリオン)"と名を変え、急速な喰種技術躍進を遂げながら(ヴィー)ごと世界と正面から大喧嘩をした末、最終的には"最後の大隊(ラストバタリオン)"残存戦力と喰種技術の全てを持ち逃げして雲隠れ

最後の大隊(ラストバタリオン)残存戦力ごと、中国や日本の渡り歩き、比較的(当社比)平和に過ごす(和修家狩りを行い幾つも分家を潰すなど(ヴィー)とは水面下で殺り合っている)

何故か突然、安価スレを始め、最後の大隊(ラストバタリオン)の頭領だけ(ヴィー)に参加し、結婚生活をスタートさせ、ゲーミングPCを6台ねだってくる

自分と旦那が捜査官になるから、前に置いて行ったSSSレートの死体で作ったクインケちょっと寄越せ。代わりにソイツの赫包あげる←イマココ

V「お前精神状態おかしいよ……(ガクガクブルブル)」


Q:結局、ラストバタリオンもいるのになんでナチスは戦争に負けたん?

A:新型爆弾



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