【ドイツ産】SSSレート喰種だけど質問ある?【パツキン巨乳】   作:ちゅーに菌

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メンゲレちゃん

 

 

 

「もー、そのジーパンお気に入りでしたのに……」

 

「ダメージジーンズとやらになったではないか」

 

「短パンにされたんだよなぁ……」

 

 足を失ったため、地べたに転がされているメンゲレは見上げ、彼女の足に口をつけているヴィルヘルミナは見下ろしつつそんな会話をしている。

 

 本物の悪魔並みに有言実行な性分かつ行動力の権現のようなヴィルヘルミナらしいと言えばそれまでであろう。

 

 些かバイオレンス過ぎる行動にこれが喰種同士のコミュニケーションなのかと頭を過るが、横目に見たパパゲーノが二人に心底関わりたく無さそうな表情をしているのでそれを振り払うあなたであった。

 

「伴侶さん起こしてー」

 

 

 ・起こす

 ・起こさない

 

 

 すると何故かメンゲレがあなたに助けを求めて来た。赫子を出して足代わりに立ち上がったりはしないらしい。

 

 割りと物臭なヴィルヘルミナは赫子を足代わりにして、新手の映画エクソシストのあれのような姿勢で寝たまま移動しているため、あなたは不思議な気分を覚える。

 

「喰うか?」

 

「食うわけあるか」

 

 ちらりと他のSSSレート喰種の二人に目を向けるが、ランチと漫才に夢中で気付いていない。どうやらあなただけで決めなければいけないようだ。

 

 

 ・起こす ←

 ・起こさない

 

 

「m8」

 

 まあ、メンゲレとは知らない仲でもないあなたは彼女の両脇に手を入れて持ち上げる。確かにこうして会うのは初めてだが、Apexは基本的に3人制のゲームのため、ヴィルヘルミナに付き合わされてパーティーを組んでよくやっているのであった。顔を知らないネット上の友達という奴である。

 

「gg」

 

 彼女に促されるまま椅子に座らせる。その拍子に足の断面から流れ出た血液が座面を染めてグロテスクな事になっているが、日頃からヴィルヘルミナと過ごしていると流血沙汰には慣れたあなたにとって大したことではない。

 

「そこの冷蔵庫の扉の内側にある栄養バーみたいな奴取ってくれません?」

 

 メンゲレのその言葉と示された指に従い業務用の巨大な冷蔵庫を開け――真っ先に体育座りの姿勢で冷蔵庫に収まっている十歳前後の少年と少女の姿が目に入った。若干姿が似ているところから恐らくは二卵性の双子のようだ。

 

 しかし、既に事切れており、死んだマグロのように虚空を見つめるばかりのため、あなたは喰種なら当たり前の事だと特に気にせず、扉の内側に立っている数本の栄養補助スナックのような棒状の何かを持つ。

 

 冷蔵庫の扉は珍しい下まである大扉のため、なんとなく足で閉めてみた。普段出来ない少し悪いことをしてみたような気になり、内心でほくそ笑む。

 

「えぇ……」

 

 何故かパパゲーノが有り得ないモノを見るような目であなたを見てくる。どうやら彼女的にメンゲレと普通にコミュニケーションしている姿はドン引きに値するものらしいと解釈した。

 

「相変わらず、小児食性者(ロリコン)なのかお前は」

 

「食性に人聞きの悪いこと言わないで下さいよ! 人間だって子羊とか、仔牛とか高級料理で大好きじゃないですか!?」

 

「せめて高校生ぐらいの年齢にならなければとても食べる気になれん」

 

「かー! 高校生のなんてもう初老ですっ! これだから枯れ専は!」

 

「なんだとぉ……」

 

 どうやら食性の相違らしい。ヴィルヘルミナは大人しか食べない事を思い出し、好みの問題であり、喰種にとって特に子供が不味い訳ではない事を知る。

 

 ならばパパゲーノはどうなのかとあなたは目を向けて見た。

 

「こっちを見るな……」

 

 あなたはパパゲーノにグイッと指で頬を押し戻される。どうやら彼女はあの二人の会話に入れられるとご機嫌斜めになるらしい。確かに二人に比べると彼女は相対的に常識人であろう。

 

 また、気持ちはわからないでもないと思うあなたであるが、片方が伴侶でもう片方はゲーム仲間なので何も言えなかった。

 

「全くもー……」

 

 するとあなたが冷蔵庫から持って来た栄養バーをメンゲレが食べ始め、それと共に凄まじい速度で両足が生え直す。

 

 喰種という生き物が人間と異なる価値観を持つ所以のひとつを目にし、あなたは指を食い千切っては食べて生やして再び指を喰い千切り、また指を生やすというループ染みた爪を噛むような癖のあるヴィルヘルミナを思い出していた。

 

 それと共に半喰種は人間の食物も食べられる事を思い出し、メンゲレは市販のそれを食べているのだろうと解釈する。

 

「足が生えたのならRc細胞由来のモノか」

 

「そうですよ。食べます? 市販のモノとそんなに遜色ないですよ?」

 

「そんなこと言っても騙されんぞ――モガッ」

 

 するとメンゲレはヴィルヘルミナの口に栄養バーを差し込む。そう言う問題ではないのではないかとあなたは思いつつ、暫くするとヴィルヘルミナの方が動き出した。

 

「………………」

 

 栄養バーが目に見えて徐々に減り、咀嚼しているヴィルヘルミナの口に吸い込まれていく。どうやら彼女の方から食べているらしい。

 

 そして、暫くの無言の時間の後、全てを口に入れてもぐもぐと咀嚼する彼女は呟いた。

 

「おいひぃ……」

 

「材料から拘ってますからね。ほらアシラちゃんさんもどうぞ」

 

「嫌よ……そんな得体知らな――もぐっ」

 

 いつの間にか、剥かれた栄養バーを先端に付けたヴィルヘルミナの赫子がパパゲーノの口に直撃する。

 

 強制的に栄養バーを咀嚼するはめになったパパゲーノは苦虫を噛み潰した表情になり――。

 

「――――――――」

 

 その直後、パパゲーノは完全に停止する。パントマイムの途中のように行動そのものが完全に中断されたかのようにさえ思える。

 

「………………」

 

 そのまま暫く無言で咀嚼していた彼女は、居住まいを正して直立不動になると、片目の端から一筋の鈍い輝きを落としつつポツリと呟いた。

 

「美味しい……」

 

「お二人とも語彙力死んでますよ?」

 

 まだ味を噛み締めているのか止まっている二人を他所に、メンゲレはあなたの前まで来る。

 

 それから(おもむろ)に栄養バーを剥くと、花が咲くような笑みを浮かべながらあなたに差し出して来た。

 

「伴侶さんもどうぞ」

 

 特に気にせず、それを受け取ったあなたは口に含んで半分ほど一度に食べる。食べてからそう言えば"Rc細胞由来のモノ――"等とヴィルヘルミナが言っていた事を思い出したが、既に後の祭りである。

 

 味はどこにでもあるような栄養バーであり、むしろ市販のものよりも若干甘めに感じるイチゴ味はスイーツっぽさもあり、女性に好まれそうな味だとなんとなく考えた。

 

「ええ、普通の栄養バーですよ? ただ、喰種も食べられ、同様の味に感じられるだけで」

 

「これが甘いという味か……」

 

「甘い……」

 

 そこまで言われてあなたはようやく気付いた。

 

 あなたにとってはなんてことのない馴染みある味であったが、喰種(ふたり)にとっては違うのだ。甘味、酸味、塩味、苦味、それとうま味。それらの全ては人間だから感じられることであり、生まれつきの喰種である者にはこれまでまるで無縁のことであったのだろう。

 

 いや、コーヒーは飲めるため、苦味や酸味は一部わかるかも知れないが、反応から二人にとっては青天の霹靂だったことは間違いない。

 

「前々から疑問だったんですよね。私のような半喰種は人間の味も人間の食べ物の味もわかるのに、なぜ喰種と人間の味覚はこうも解離しているのかと。不思議じゃないですか? なので"人間でも喰種でも同じ味に感じる食糧"を作った結果のひとつがこれです」

 

 どうやらあなたが考えていた以上にメンゲレ――このヴェーヌスベルクというSSSレート喰種は異次元の存在らしい。SSSレート喰種に指定されている理由のひとつもそれとなく察するというものだ。

 

「どうやってこんなものを……」

 

「喰種が食べれる食べ物や加工品を先に作り、それを原料にして栄養バーを作ったんですよ。苺、大豆、マーガリン、砂糖、卵、ナッツ、あんこ、チョコレート等々に添加物を少々です」

 

「………………前に喰わされた人工兵糧の時は糞のような味だったような……?」

 

ナチスドイツ時代の(50年以上前の)話じゃないですかそれ? その時は結局、"クソ不味い上に兵糧なんて戦場のそこら中にあるだろ常識的に考えて"とか言われておじゃんになりましたけど、私はあの頃からずっと()()()()喰種と人間の研究を続けていますから日々精進しま――」

 

「ギルティ」

 

「な、なんで!? 私、今回は何も悪い事……してなくはないですけどそんなには……それに私がしている研究の全ては大隊長も把握して――」

 

「私にこの研究成果を黙っていた理由は?」

 

「い、今の今まで興味を示してくれなかったじゃないですかぁ!? 言いましたよ私!? 30年ぐらい前に……今度こそ美味しくなったので食べてくださぁい♡ってバレンタインチョコにして贈ったら一言――"キモい"って言ってチョコを吹き飛ばして、私のチョコ持っていた片腕をバレンタインチョコ代わりに食べたのはどこの誰ですか!?」

 

「美味であったぞ」

 

「味は聞いてねーんですよ!?」

 

 メンゲレは残っていた数本の栄養バーを机に叩き付け――ぶつかる寸前に目にも止まらぬ速度でそれらを回収したヴィルヘルミナは、パパゲーノにも半分ほど栄養バーを配り、袋を開けると咀嚼し始めた。

 

 配られた栄養バーを見つめたパパゲーノはポツリと呟く。

 

「これがあれば人間と喰種の最大の軋轢が無くなるわね……」

 

「――は? なーに寝惚けたこと言ってんですか。そんなことしたら喰種と人間が相容れない根本原理がなくなっちゃうじゃないですか? 嫌ですよ」

 

 それにこれまでの笑みを崩し、真顔で即答したのは他でもないメンゲレであった。

 

 更にメンゲレはパパゲーノに詰め寄ると、酷く意志が籠ってはいるが、パパゲーノを全く見てはいない瞳で刺すように問い掛ける。

 

「私たちは"最後の大隊(ラストバタリオン)"。あなたもそうだったように誰もが最期のその瞬間まで自己の身勝手で倒錯した正義を謳歌し、ありふれた理不尽に殉じた世界最悪の反動組織ですよ。それこそ我々が歴史に刻んだ地獄という何物にも代え難い勲章。我々から世界の癌であったという偏執(プライド)を捨てたら何が残るというのです?」

 

「改めて言われなくてもわかってるわよそんなの……。だからどうするだなんて私、言ってないわ」

 

「――えへへ! そうですか、そうですか! いえいえ、そうですね! 我らが同士のアシラちゃんともあろうものが、そんな敗北主義者のようなことを言うわけがありませんものね! 私が勘違いしていましたっ!」

 

 "いやー、失敬失敬!"と破顔しつつ自身の頭を大袈裟に掻くメンゲレ。どうやらこう見えてもメンゲレは未だにナチスドイツ軍人あるいは、最後の大隊(ラストバタリオン)なのだということをあなたは知ったと共に、何か妙な既視感を覚えた。

 

「そうだな。私も今の世界の形が気に入っているのだよ。故にこれは我々だけの禁忌。それよりも折角、私の伴侶もアシラちゃんもいることだ。研究所見学と洒落込もう。まずはこれの製造所が私も見たいな」

 

「ガッテン承知の助でぃ!」

 

 強く返事をしたメンゲレに導かれるまま、ヴィルヘルミナらは研究室に隣接しているエレベーターへと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、ここが加工前の生産プラントですよー!」

 

 エレベーターの扉が開いた直後、明らかに地下とは思えない明るさに目が眩む。

 

 少し目が慣れたあなたは学校の体育館にある水銀灯を更に巨大化させたような照明が幾つも高い天井から等間隔に下げられており、都市部の地下貯水槽のような莫大な空間だということがわかる。

 

 そして、更に目が慣れたあなたは、赤と黒を基調とする余りにも常軌を逸した光景を目にした。

 

 まず、幹と枝と葉がヒト組織で構成された木々が立ち並ぶ果樹園が広がる。そして、その中央と周回を囲うように用水路があるが、それを流れるものは水ではなく、濾過されて全身に送り出されたばかりの動脈血のように鮮やかな赤々さをした人血のような何かだ。

 

 更にその中では人間の肌質感と寸分の狂いもない表皮をした無毛の牛が何をするわけでもなく何頭も放牧されており、それらが時折(ついば)む草はまるで黒や茶のまだらな頭髪のようであり、それらが生い茂る地は頭皮のように白くやや脂っぽいテカりが見受けられる。

 

 また、思わず頭皮のような地を強く踏み締めると、肌のようにやや赤みを帯びる様が見え、それとなくそっと力を緩めた。

 

「別にぞんざい扱って大丈夫ですよー。地上の自然の光景と違いは見た目ぐらいのモノなの――」

 

『タスケテ――』

 

 あなたに気を使ったのか、メンゲレがこの余りにも肉々しい生産プラントなる場所の説明をしようとした直後、近くに居た人間のような肌をした無毛の牛が明らかに人間の声を上げた。

 

 しかし、それはくぐもって掠れていた上、イントネーションも不自然だっため、辛うじて聞き取れたに過ぎないが、そう聞こえてしまえば少なくともあなたはそちらを向かざる得ない。

 

『モドシテ――』

 

『オカーザン――』

 

『イヤァ――』

 

 更に周囲の人間のような牛も、まるで音が漏れるようにそんな言葉を呟く。

 

 ただでさえ現実味のない肉々しい景色に、このような言葉が怨嗟のように響き渡れば、最早ここは地獄のようであった。

 

「前に来た時より随分増えたな」

 

「そりゃ、前に見に来たの15年前じゃないですか。それだけ経てば嫌でもぽこじゃか増えますよ。品種改良もして行きましたしね」

 

 そんな中、特に何か感じている様子もなく小首を傾げているヴィルヘルミナに、メンゲレはそんな対応をした。

 

 どうやら喰種にとってはむしろご馳走に見えているのかも知れない――とあなたは一瞬考えたが、パパゲーノが心底気色の悪いモノを見るように眉を潜めた絶妙な表情をしていることで、どうやら最後の大隊(ラストバタリオン)のトップと一部の幹部の頭が可笑しいだけだということを察する。

 

「気色悪い……」

 

「その分、味には自信ありますよ? ここは見ての通り果物と牛のエリアです。果物はなんでも実ります。牛は肉牛にも乳牛にもなりますね」

 

 パパゲーノにそう言ったメンゲレは近くに居た概ね牛に近付き、その頭を撫でる。するとそれは気持ち良さそうに目を細目ながら一声上げた。

 

『モウ,コロシテ――』

 

「まあ、このように()()()第一世代の子達が吐いてた言葉を何故か鳴き声にしてしまったので、なんか不気味なんですよねー。声帯も邪魔ですか」

 

「…………何人使ったのよ?」

 

 そうパパゲーノに投げ掛けられたメンゲレは撫でる手を止めて固まる。

 

 そして、気だるげに眉を潜めてわざとらしく肩を竦めて溜め息を吐く。

 

「あのですねぇ……。昔なんてA型の血液と、B型の血液を混ぜてAB型の人間に輸血したらどうなるかとか普通にしたんですよ? 今の医療も常識も、全て過去の非常識と無知と狂気の果てにあるのです。ナチスの人体実験があらゆる人体限界や基礎知識として医療に貢献したことは知らなくとも、生き返ってからちょっとお勉強すれば、エガス・モニスのロボトミー手術が一度はノーベル賞を取ったことぐらいは知っているでしょう? リスクや目新しさもない研究などゴミ同然。してはならないことを見出だすことすら出来ない。研究において倫理観や普遍などというモノは妨げにしかならない唾棄すべき世迷い言なのですよ」

 

 あなたは確信する。確かにメンゲレは非常にヴィルヘルミナに似ているという事を。

 

  本題と論点をすり替え、限界まで迂遠させつつ相手を論説で捩じ伏せるこのやり方はどう考えてもヴィルヘルミナ譲りであろう。

 

「アンタの場合、昔から研究そのものが目的で結果が後に付いてくるから質が悪いんでしょうが……」

 

「それで結構、それこそ私です。実績は上げているので問題ありません。そもそも誰が"ナグルファル"を作ったと? いまここにアナタがいるのも私の研究の副産物ですよ」

 

「別に頼んでないわよ。勝手にやったんでしょうが……栄誉の死を踏みにじられた気分ね」

 

「………………うーん、それを言われると駄目ですね。それに関しては私が全面的にゴメンナサイしなきゃですねー」

 

 そう言うとメンゲレは、両方の親指と人差し指を立てて銃のように見立てて構え、満面の笑みを作りながらウィンクをした。

 

 

 

「ごめんなちゃーい!」

 

 

 

 悪意100%のとんでもない煽りであった。対岸の火事なあなたが感心すら覚えてしまっても仕方のない事であろう。

 

「………………ッ!」

 

 パパゲーノは苦虫を噛み潰したような顔で、あなたにも聞こえるほど歯軋りをしつつ握り拳を作った。

 

 どうやらメンゲレは、そもそも人間性に凄まじく問題があるらしい。このヒトデナシ具合、流石はヴィルヘルミナの幼馴染み兼片腕だとあなたはとても感心する。

 

「なんだアナタその顔は? 喧嘩でも売ってるのか? 買うぞ。帰ったらスマブラだな」

 

「いい加減、細かいですねアシラちゃんは昔からもー!? そんなに我が儘言うとその栄養バー返して貰いますよ!?」

 

「嫌よッ!?」

 

 何気なくヴィルヘルミナを見つめていると思考を読まれたことに戦慄を覚える中、遂に逆ギレを始めたメンゲレに対し、パパゲーノはまるで我が子のようにまだ食べていない栄養バーを胸にぎゅっと抱いた。

 

 嫌なんだとあなたは喰種の価値観がまたよく分からなくなる。相対的常識人のパパゲーノではあるが、やはり何だかんだでSSSレート喰種なのは確かなのかも知れない。

 

 ついでに帰ったら嫁とゲームで遊ぶ楽しみが出来た。いつも通りドンキーで襲い掛かってくるだろう。

 

 

 

『■■■■■■■――――――!!』

 

 

 

 そんな事を考えていると、施設内にけたたましく無駄に軽快な警報が響き渡り、メンゲレのポケットに入っているとおぼしき携帯端末が赤く激しく点滅し続ける。

 

「ああ……白鳩(ハト)のもぐら叩きの連中が私の研究所(お家)の何処かの区画に誤って侵入しちゃったんですねぇ」

 

 "もー、入って来なければ素材が足りなくならない限りは何もしないのに……たまにあるんですよねー"等とメンゲレは続け、端末を暫く弄る。

 

「うわぁ……。今回のモグラ叩きの特等捜査官ガチャは"有馬貴将(アリーマー)"じゃないですか……(ヴィー)のSSRですねぇ」

 

 "またかよ……"とぼやきつつ、とてつもなく嫌そうな顔をするメンゲレと打って代わり、その名を聞いてから嬉しげに笑みを浮かべたヴィルヘルミナが印象的にあなたは思えた。

 

「ほぅ……なら私が出よう。なに、少し彼の実力には前々から興味があったのだ」

 

「あー……いやいや止めてください。何度かモグラ叩きで"メンゲレちゃんの犬"とか、実験体たちと交戦しているのでわかりますが……流石に大隊長でも半赫者ぐらいは普通に切る相手だと思うので……」

 

「ほほう……俄然興味が湧いてきたゾ」

 

「あなたが半赫者なんて使ったらこの前のコクリアの二の舞が、私の研究所付近で起こるから止めろっつッんてんですよ!?」

 

「ちぇー……」

 

 始めからわかっていたのか、ヴィルヘルミナは直ぐに引き下がった。

 

 最近あなたは知ったのだが、ヴィルヘルミナは、普通の喰種ならば少なくとも通常形態と半赫者形態あるいは赫者形態になるところ、通常形態、半赫者形態、赫者形態と三段階に少なくとも移行出来るらしい。また、基本的にまず、無手で戦っているため、相手からすれば実質四段階変身するクソゲーである。

 

 ならばとあなたはメンゲレの戦う姿が見れるのかと、少しの期待を込めて呟く。彼女もヴィルヘルミナやパパゲーノと同じくSSSレート喰種のため、無論実力者であると勝手に解釈していたのだ。

 

 しかし、当のメンゲレは呆けた顔をしつつ、人差し指を立てると自分の顔にそれを向けた。

 

「えっ……? 戦う? 私が?」

 

「そのゴマすりクソバードは比喩でもなんでもなく、産まれてこの方、両手の指で足りる程度しかマトモな戦闘をしたことないぞ?」

 

「そうだよ」

 

「ちなみに確かに赫者だが、マトモにやり合ったらS+レートにも普通に負けるぞコイツは」

 

「私YOEEEE!!」

 

 更に"コバンザメガチ勢舐めんな!"等と尋常ではないほど情けない宣言をするメンゲレ。どうやらスレで言っていた事は想像の斜め下の事実らしい。

 

「戦いはもちろんオレ以外が行く」

 

 これ以上ないほど自身の株を地面に擦り付けつつ、メンゲレは懐から別の携帯端末を取り出した。

 

「今回という今回は許さんぞアリーマー……。毎回毎回、私の実験体を壊して行きやがって……。えーと……ああ、侵入されたのはフィッシュちゃんの廃棄区画ですか。んー……なら最悪潰されてもいいか。でもフィッシュちゃん強いから流石に同格以上の娘たち使わないとなぁ……」

 

 端末を弄りつつ、独り言を呟くメンゲレ。言っていることがあなたにはさっぱり理解できないが、少なくともろくでもない事をしているのは伝わって来た。

 

「なら近くにいる子達は……っと――おお、"ジャックちゃん"と"シムナちゃん"ですかっ! こっちもSSRですね。前衛後衛揃っていていい感じですし、丁度いいですね!」

 

 そう言いつつメンゲレが端末を操作すると、何処からともなく数機のドローンのようなものが近くで隊列を組みつつホバリングを始める。

 

「では、私の長年の研究のひとつをお披露目しましょう!――ええ、ナチス軍人にして、"ピエロ"の一人として最高のショーを皆様にお届けいたしますわ……」

 

 それまでとは打って代わり、口許だけに笑みを浮かべて恭しく礼をして見せるメンゲレ。

 

 そして、隊列の中心に全てのドローンから光が放たれ、それは5m四方の立体映像を投影するに至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツ喰種対策局SSSレート喰種"ヴェーヌスベルク"。日本CCGの呼称でもそれが使われている珍しい喰種である。

 

 それはナチス・ドイツ創設以前に指定された数少ないSSSレート喰種の一体であり、現在は日本の東京の24区に根を下ろしている生粋の怪物であった。

 

 かつて世界そのものに挑んだ史上最悪の喰種反動組織"最後の大隊(ラストバタリオン)"は、ナチス・ドイツ崩壊前の時点で、世界中に構成員を拡散させ、それによって現在まで残存戦力の85%以上の駆逐が未だに確認されておらず、その所在が雲を掴むように不明である。また、時折末端の構成員が突如として表舞台に出ては、一切死を厭わずCCGに単身特攻し、甚大な被害を出して駆逐される程度であり、ヴェーヌスベルクは珍しい所在を掴めている元ナチス・ドイツSSSレート喰種と言える。

 

 しかし、その在り方はある意味、首領であるレッドプールよりも遥かに異常であった。

 

 まず、喰種にしては珍しく、一切顔を隠さない喰種であり、ネットを通じて頻繁にその存在を映像越しに誇示し、自らを"メンゲレちゃん"等と狂った呼称をする。しかし、余りにもCCGへの露出が激し過ぎるため、その存在そのものを作り物だと疑問視する声さえある幻のような存在なのだ。

 

 しかし、その発信源を逆探知すると、いつも24区で人間の知る限りでは存在しない区画に辿り着くため、虚偽ではないであろう。

 

 そして、日頃からCCGに対して度重なる挑発・脅迫・犯行予告・クインケの譲渡等を行い、実際にそれが行われる。東京とCCGを巻き込んだ劇場型殺人鬼のような何かなのだ。

 

 そのため、24区の掃討が行われる最大の目的は、ヴェーヌスベルクの駆逐であるが、あくまでも最終目標であり、24区の掃討を危険を冒してまで行う理由は主にふたつ。

 

 ひとつは喰種の本拠地であるため、潜伏している喰種の殲滅。そして、もうひとつは地下深くにあり、全容が掴めないほど大規模な研究所から"人ではない何か"あるいは"人で無くなった何か"である生物兵器が這い上がってくるからだ。

 

 

 

『さあさあ! 本日はお忙しいところ呼んでも居ないのにお集まり頂き、誠にありがとうございまぁす! 24区深層名物、メンゲレちゃんのラボにようこそぉ!』

 

 

 そして、現在特等捜査官"有馬貴将"率いるモグラ叩きは、図らずもそんなヴェーヌスベルクの研究所に足を踏み入れてしまった。

 

 ヴェーヌスベルクの研究所は、Rc細胞壁をこれ以上ないほど繊細かつ大量に用いて作られている兼ね合いで、施設そのものが、生きているかのように1ヶ月程で研究所の構造が全く別の配置に置き換わる。

 

 そのため、マッピングがほぼ不可能なため、このように一部だけ中層近くまで突き出していた研究所の一部区画に意図せず、踏み入れてしまう事があるのだ。

 

 まあ、モグラ叩きの最終目標はヴェーヌスベルクの駆逐のため、願ったり叶ったりではないかと思われるかも知れない。しかし、精々数十名の新人を含む捜査官を割くモグラ叩きの人員に対し、ヴェーヌスベルクの戦力はどう軽く見積もっても生物兵器の頭数だけで一個師団以上に相当するため、日本CCGが総力戦を仕掛けなければならない規模なのである。

 

 そのため、あくまでも形骸化した最終目標に設定し、研究所から地上に這い出てて来そうな生物兵器を間引く作業を新人研修に当て、生物兵器たちの醜悪さを新人に見せ付ける事で喰種への嫌悪とヘイトを上げることに役立てている程度なのだ。

 

 つまり、ヴェーヌスベルクと本気で事を構えるなど日本CCGは端からしておらず、現在の状況は藪蛇以外の何物でもないということである。

 

『つきましては、どういうわけかこんなところまで性懲りもなく来やがった皆々様ぁ! 一昨日来やがれってんですよぉ! というか、また来たなアリーマー!? これで何回目ですか!?』

 

「………………さあな」

 

 そんな中、特等捜査官の有馬貴将は、既に幾度となく研究所に足を踏み入れ、ヴェーヌスベルクの生物兵器たちを殲滅している。当たり前であるが、その事が彼女からすれば癪に障るらしい。

 

 有馬は振り返り、数十名いるモグラ叩きに参加している捜査官らに目を向けると、少し間を置いてから口を開く。

 

「全員退いてくれ。俺が殿になる」

 

「しかし……有馬特等――」

 

ヴェーヌスベルク(アイツ)……。いつもよりやる気だ。何か投入して来るぞ」

 

「――!? 皆退け! すいません有馬特等!」

 

「ああ」

 

 基本的にヴェーヌスベルクは研究所に侵入して来ても今のように音声でヤジを飛ばして来る

程度で、捜査官らが退けば特には何もしてこない。

 

 しかし、捜査官らに説明をしつつ性能チェックなどの理由で生物兵器を投入して来る事がある。有馬はヴェーヌスベルクがいつもよりも興奮しており、楽し気な声色から何かしらを投入すると踏んだのだ。

 

『あっ……逃げた。アリーマー!? あなたなんで私が殺しに掛かろうとした時だけ、モグラ叩きを退かせるんですか!?』

 

「………………なんとなく?」

 

『そっかぁ……なら仕方ないかぁ……。うん、今日も殺すわ』

 

「ああ」

 

 その言葉に呼応するように有馬は、自身のクインケであるIXAの柄を強く握る。その頃には既に捜査官らは足音も聞こえない程度には離れており、ヴェーヌスベルクが追撃を指示した様子もない。

 

『じゃあ、アリーマーを殺っちゃってください。"ジャックちゃん"、"シムナちゃん"』

 

 その言葉と共に研究所内から二人の人影が姿を現し、歩いて有馬の元まで来る。

 

 それは両方ともナチス親衛隊の浅黒い軍服と軍帽を身に纏い、ハーゲンクロイツの描かれた腕章をした高校生程度の年齢に見える少女であり、ヴェーヌスベルクがマトモなヒトの形をした生物兵器を投入して来た事に有馬は少なからず驚いていた。

 

 また、それだけでも異様であるが、先に有馬の近くまでやって来た少女は大柄で、何故かスコットランドの代表的な民族楽器であるバクパイプを小脇しており、ロングソード型のクインケを腰に下げ、ロングボウ型のクインケを背負っている。

 

 更にもう片方の少女は小柄で、スコープの付けられていないマウザー タンクゲヴェールM1918に似た大型クインケを肩に担ぎ、空いた手にドイツ製の短機関銃のベルグマンに似たクインケを持っていた。

 

「――――――!」

 

 そして、二人とも片眼だけが赫眼な事が特徴であり、その事に有馬は最も驚いているように見える。

 

「有馬特等捜査官ですわね? 御初に御目に掛かります。私はジャック、そちらはシムナ。見ての通り半喰種です。今日は良い死合いをお願い致しますわ」

 

「ジャック……。これから殺す……言葉……無為」

 

「シムナはドライですわね。向こうはわざわざ一人で殿に応じてくれたのですから、こちらもそれ相応の格式が必要でしょう?」

 

「死ねば……肉……無意味」

 

 バクパイプを持っている方の少女が恭しく頭を下げるが、小柄な体で対戦車ライフルを軽々と担ぐ方の少女はそれを怪訝な表情で諌める。どうやら行動も性格もほぼ真逆の二人らしい。

 

「では……そろそろ始めましょうか。こちらは二人ですが、捜査官とは本来そう言うものでしょう? 卑怯とは言わないで下さいましね?」

 

「お前……無謀」

 

 その言葉と共にジャックはロングソードをそっと引き抜き、シムナはタンクゲヴェールの銃口を有馬に向けた。

 

 対峙する有馬はIXAの切っ先を二人に構え、先に相手の動きを待つ。

 

 

『さてさて……神々の残されたものにして、神々の娘。我々のレギンレイヴたち。まだ、研究半ばですが……少しばかり……ナチスの終生の悲願――"超人計画(レーベンズボルン)"を見せてあげましょう。さあ、お行きなさい』

 

 

 ヴェーヌスベルクのその言葉が皮切りとなり、有馬と両者は交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 そもそもナチス・ドイツよりも以前に名付けられたヴェーヌスベルクとは、ワーグナーによって作曲されたタンホイザーに出てくる愛欲の女神ヴェーヌスが棲んでいるという禁断の地にて肉欲の異界ヴェーヌスベルクそのものを指す。

 

 すなわち、ヴェーヌスベルクとはそもそも彼女個人ではなく、それを中心とした領域そのものがSSSレート喰種として判定されているという異常存在なのであった。

 

 

 

 







大胆なキャラ追加は東京喰種とBLEACHの特権。


~メンゲレちゃんの用語解説~

・人ではない何か、人で無くなった何か
メンゲレちゃんの犬や実験体のこと。

・メンゲレちゃんの犬
 ネーミングの時点で明らかに目を覆いたくなるほどアレな物体。
 メンゲレが飼っている戦闘用人造生物たちの総称。捕獲してきた捜査官や喰種、女子供などあらゆるモノの全体あるいは一部を原料に使用しており、それらは飼い主足るメンゲレの指示を除いて本能の赴くままに行動し、知性は獣程度しか残ってはない。要するにただの実験で消費したモルモットの死体を継ぎ接ぎしてリサイクルした番犬たちのこと。
 あえて生前の顔や頭部をそのまま残していたり、人間らしい体つきは極力変えないでいる等々、対峙する者に生理的嫌悪と躊躇を抱かせる外見にしてあり、それらは24区の特定深度以下の下層全域に放たれ、時より群れを成して地上に這い上がってくる。戦闘能力は個体や集団によって区々である。

・実験体
 失敗作とも読む。何らかの研究で生まれた失敗作だが、サンプルとして保管している生物兵器たちの総称。メンゲレちゃんの犬よりは人の形をしてはいるが、中身は基本的に腹を空かせた肉食獣より貪食な何かであり、総じて戦闘能力が異様に高く、如何なる個体もSSレート以上に相当する。研究所を特定の区画ごとに物理的に区切る事で、封じ込めのための廃棄区画を作り、そこで飼育されている。
 誤って何度か研究所に侵入した有馬特等捜査官が既に何体か始末しており、それにメンゲレはご立腹なのである。

・レギンレイヴ
 神々の娘。ヴィルヘルミナが言うところの神々で造られた超人たち。


最後の大隊(ラストバタリオン)試作超人部隊"神々の娘(レギンレイヴ)"の娘たち~

ジャック
 ロングソードとロングボウ型のクインケを扱うイギリス系スペイン人の少女。バクパイプが趣味。片眼が赤い。身長190cm。

シムナ
 対戦車ライフルとサブマジンガン型のクインケを扱うアラブ系フィンランド人の少女。片眼が赤い。身長150cm。




・読まなくてもいいところ
なんか、また性懲りもなく二次創作(ムルシエラゴにエルフェンリートを捩じ込んだ奴)書き始めたのでよかったら読んでください♡(い つ も の)

https://syosetu.org/novel/266613/



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