【ドイツ産】SSSレート喰種だけど質問ある?【パツキン巨乳】   作:ちゅーに菌

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安価スレはお休み(休みとは言っていない)

作中で登場するネタの年代がおかしいことはお兄さん許して。






胡乱な娘

 

 

 

 

 ふと飲み物を取り出すために自宅の冷蔵庫を開けたあなたは、その冷蔵室のタッパーに入っている赤々とした何かの生肉に目が止まる。

 

 それはなみなみと血液が注がれた中に沈んでおり、明らかに肉類の管理方法としては間違っていることが見て取れるであろう。また、それが何の肉か知っているあなたは、怪訝な表情になりつつ身震いをした。

 

 そして、リビングにあるパソコンを叩いている彼女――ヴィルヘルミナの前まで来ると、声を荒げて彼女に投げ掛ける。

 

 

「えっ……なに? "ヴィルヘルミナちゃんの禁止リスト その3"を守って? 冷蔵庫に血抜きしてない人肉を入れるな? 他の食べ物に匂いが移る? なんだァ? てめェ……」

 

 

 そして、あなたの言い分を話した彼女は、口を尖らせて眉を顰める。どうやら彼女にとっても譲れないことらしい。

 

 ちなみに"ヴィルヘルミナちゃんの禁止リスト"とは、ヴィルヘルミナが人間の妻としてきちんと夫婦を全うできるようにあなたが発案し、渋々彼女が了承した約束事である。最初は"夫婦のお約束"という名前だったのだが、彼女が安価で名前を募った結果"パツキン巨乳喰種姉貴の禁止リスト"になったためこうなった。まあ、約束という割には禁止事項ばかりだったため、強ち間違ってはいない。

 

「むー……いいじゃないかそれぐらい。血がひたひた滴るぐらいの肉がいいんだぞぅ。むしろ、色々な食べ物が芳ばしくなるのでは? えっ、血(なまぐさ)くなる……? そんなー」

 

 人間からすれば当然の話だが、喰種からすれば食い違いがあるため、このように時々夫婦喧嘩とまでは行かない程度の軋轢を生むのだ。

 

 とは言え、彼女が最大限譲歩していることもよくわかるため、あなたは彼女に提案をした。

 

「ん? 人肉用のミニ冷蔵庫を買ってくる? ふむ……まあ、それなら別にいいか」

 

 言葉に出されると、とんでもなくグロテスクなものに感じると思いつつ、あなたは適当な他所行きの服を着込むとリビングを後にする。

 

 

「のしー」

 

 

 そんなあなたを見送るため小さく手を振りつつ、口でそう呟く彼女をあなたはまた可愛らしいと思いつつ、近場の電器店を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ今、ヒマ? 私と遊ばなーい?」

 

 小型冷蔵庫を購入し、それを抱えつつ電器店を後にした直後、そんな声を掛けられてあなたはそちらに視線を向けた。

 

 そこには茶髪の短い髪をした小柄な少女の姿があった。少なくともあなたよりも歳上ということはないだろう。にまにまと笑みを浮かべており、茶髪の天辺には3つの芽のようにくせっ毛が生えていることが特徴的である。

 

 そんな彼女の無邪気で人を喰った笑みを見たあなたは、ふとそれが自身が知る者と重なるが、他人の空似だと決めつけ、少女には自身が既婚者で自宅に嫁を待たせているということを伝えた。

 

「ほぁ……意外に一途……」

 

 すると少女は目を点にして呆けた顔になる。しばらく首をかしげた少女は何を思ったのか手を叩き、ポンと小気味良い音が鳴った。

 

「まー、そうじゃなければ私が殺してたかもねー」

 

 更に彼女は感心した様子で更に笑みを強め、あなたに詰め寄ってくる。そして、何を思ったのか、彼女はあなたから小型冷蔵庫を引ったくると、少しあなたから離れてこちらに手招きした。

 

 小柄な少女が、十数kg以上はあるであろう小型冷蔵庫を軽々と持つ様を見て、あなたはやはり彼女は少なくとも喰種だと確信する。

 

「ほらほら! 早くコッチに来ないとコレ貰っちゃうよー! ママの大切な玩具(ヒト)?」

 

 最後の言葉を聞いて、疑問が半ば確信に変わったあなたは、仕方なく少女の後を追って、ビル街の裏路地へと誘われて行った。

 

 人間の取り分け大きな街というのは不思議なもので、栄えているビル街の少し奥に入った裏路地では人通りが全くなく、日の光すら満足に届かない場所も多い。

 

 空は晴れているというのにジメジメとした湿度と、どぶ板から上がってくるような何とも言えない臭いを感じながらしばらくあなたは少女を追い掛ける。

 

 少女もあなたを引き離す気は無いようで、進んではこちらを振り向くことを繰り返し、しばらく進むと公園のような場所に入って行った。

 

 正しくは廃公園なのであろう。裏路地にあるビルとビルの間に挟まれるように存在するだけの価値を見出だせない小さな公園。遊具も滑り台と砂場とベンチだけという簡素なモノで、長いこと子供に使われた形跡は窺えない。そんな場所のベンチに彼女は体育座りで座ると、隣の場所をポンポンと手で示す。

 

「はい、おりこうさん」

 

 少女の隣に座ったあなたは彼女にヴィルヘルミナの娘なのかと問い掛けた。

 

「うーん……仮に私が娘を騙る不審者だったら、あなたの命は既になくなっちゃってますから気をつけてくださいよー? よかったのか? ホイホイついてきて。私はノンケだってかまわないで食っちまう喰種なんだぜ?」

 

 口を尖らせてそんなことを言う彼女は目を赫眼に変える。どうも彼女の言動や様子がやはりヴィルヘルミナに似ていると思いつつ、全くもってその通りだと頭を掻く。

 

「まあ、私はあのスレで言われてるところの"ターバンのガキ"や"チビちゃん"で間違いないよ。私が7歳の時だったね。腐り蕩けた人間ばかり食べるのに嫌気が差して、美味しいもの食べたさに初めて襲った人間が――人間じゃなくて来日ホヤホヤのマッマだったんだよなぁ……」

 

 "いや、ありゃ反則でしょ。チートにも程があるっての"等と言いつつも少女は顎を触りつつ何処か懐かしげに眉を上げる。

 

「しかし、君スッゴいねー。私は全くあなたに興味は覚えられないけれど、人間なのにまだお母さんに殺されないだなんて勲章ものだよー?」

 

 そう言われ、あなたは全くその通りだと考える。ヴィルヘルミナは殺人どころか同族殺しすら躊躇するような者ではなく、あなたは綱渡りを続けて彼女との日常を成立されていることを改めて自覚した。

 

「まっ、聞きたいことがあったら何でもは答えないけど、程ほどに答えてあげる。あんなに愉しそうなお母さん久し振りに見るからねぇ。精々いっぱいあなたには足掻いて欲しいなー」

 

 何処かで聞いたような言い回しや、トゲのあることを言いつつ少女はあなたからの言葉を待つ。どうやら彼女は一応、善意でここにあなたを連れてきたということらしい。

 

 ならばとあなたはスレッドに載せている経歴は全て真実なのかをまず聞くことにした。

 

「ああ、あれねぇ……うーん、だいたいあってるんだけど……まあ、嘘は吐いてないかな? 肝心なことを言っていないだけで」

 

 まだ、ヴィルヘルミナには隠し事があるのかとあなたは何とも言えない気分になる。まあ、120年を超える生涯の全てを話してくれるほど好感度がないこともまた事実のため、あなたは同時に納得もした。

 

 また、あなたはヴィルヘルミナが母親としてはどのような人物なのか少女に質問を投げ掛ける。

 

「たぶん、君が知るママと大差ないと思うよ。ざっくばらんで、突拍子もないことして、快楽主義者のクセになんだかんだ献身的で、自尊心が高い割には身内に甘い……だいたいそんな感じ」

 

 どうやら特にキャラクターを作っているというわけではなく、素でヴィルヘルミナはあのような言動と性格をしているらしい。あなたはやはりひねくれていると思うと共になんとなく可愛さも覚えた。

 

 あなたは次にヴィルヘルミナと少女の名前について聞く。ヴィルヘルミナが偽名を使う理由と、少女の名前についてである。

 

「ないよそんなものは。ママも私も産みの親に名前を付けられなかったから。だから名前って言うものは私たちにとってまるで重要なことじゃない」

 

 そう少女に言われ、あなたはヴィルヘルミナが少女を拾った理由。そして、どことなく少女が彼女に似ている理由を知る。

 

「ママはある意味、世界全てを愛している聖人だけど、私にとっては家族と自分が全て。他は全て無意味で無価値。後は楽しめればなんでもいいの」

 

 そう言うと少女は背伸びをしてベンチからひょいと退いた。

 

「まっ、そう言うわけで億が一でも私のパッパになる可能性があるなら一応、挨拶ぐらいはしておこうかと思ってね」

 

 そして、少女は"ちなみに"と呟き、背中から多数の赫子を伸ばすとあなたへと襲い掛かり――その瞬間あなたの鞄から何か飛び出し、それが少女の赫子の全てを受け止めた。

 

 

『オいたはソこマでダむスメよ』

 

 それは数cmの肉々しい球体であり、その全面から伸びた無数の赫子が少女の赫子を全て受け止めていた。また、肉の玉からは掠れて水音を含むようなヴィルヘルミナの声が発せられている。

 

 更に肉の玉は水が溢れ出すように押し広がると、どことなくヴィルヘルミナに似た血の氷像のような形を取った。それは赫子を受け止めたまま佇み、一切他の動作を取らない。

 

「私が君を見つけられたのは君からママの匂いがしたから。それママの赫包のひとつね。ママの赫子の化け物みたいな赫子はこんな風に分離行動も出来るの」

 

 "私でもちょっと手強く感じるぐらい強いし"と言いつつ少女は赫子を戻す。するとヴィルヘルミナの赤い似姿はパシャリと水音を立てて崩れ落ち、後には肉の玉だけが残った。

 

 あなたはその肉の玉を拾って鞄に戻しつつ、ヴィルヘルミナが"私だと思って肌身離さず持つように"と言って手渡してきた物体であることを思い浮かべ、万全の体制で護られていることを実感する。

 

「じゃあ、そろそろ私はこの辺りで。こんな善人みたいなことする柄じゃないんだけどねー。今日はママに免じて特別」

 

 それだけ言うと彼女は軽くスキップをしながら公園を後にする。そして、入り口まで差し掛かったところで立ち止まると、あなたへと勢いよく振り向いた。

 

「あー、そーそー」

 

 口に手を当てて悪戯っぽい笑みを浮かべ、どことなく人を小馬鹿にしたような表情を浮かべる少女は本人の性格が滲み出ていると同時に、やはりヴィルヘルミナの娘なのだとあなたは感じた。

 

「別にママが日本に来たのは20年以上前……というか少なくとも40年は前だし、チビちゃんが一人しかいないとは一言も言っていないからそこんとこヨロシクね?」

 

 最後に少女は小さくあなたに手を振りながらこんな言葉を送った。

 

 

 

「エトしゃんは私よりこわいぞー? "妹"によろぴく」

 

 

 

 そして、その場から少女は居なくなる。しばらく彼女の言葉や今まで起きたことを整理したあなたは小型冷蔵庫の箱の上に、彼女が残して行った物があることに気づいた。

 

 それは"拝啓カフカ"というタイトルの文庫本である。背表紙を見ると"高槻泉(たかつきせん)"という名前があり著者名が見え、最近話題の売れっ子小説家であることに思い当たる。

 

 とは言え、特にこう言った芸術性に重きを置くような純文学にはあまり明るくない上、少女の忘れ物だと考えたあなたは読む気にはなれず、次にあったときに返そうと考えつつ帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたぁ! おかえりなさぁい! ロロナするぅ? ソフィーにするぅ? それとも……ラ・イ・ザ?」

 

 玄関を開いたあなたは、目の前に聞き覚えのあることを言いつつ、見覚えのある裸エプロンをして、何故か3本のゲームソフトを掲げたヴィルヘルミナを認識した。

 

 どうせまた安価でも取ったのだろうと考え、それとなく聞いて見ると彼女は屈託のない笑顔をやや焦りを浮かべたようなニヤケ面に変える。

 

「うん……安価取ったらね……。アトリエシリーズのソシャゲ以外のナンバリングタイトルを全作品プレイすることになったの……」

 

 あなたは少し思案し、確か移植版やDX版を含めずに30タイトルほど出ているような気がしつつ、ふとリビングの方を見ると(うずたか)く積まれたゲームソフトの山と、それをプレイするためであろう新旧様々なゲーム機の箱が置かれていることに気づく。

 

 どうやら既にどうにか買い揃えたらしい。無駄に洗練された無駄のない無駄な行動力である。

 

「ただでは転ばんぞ……ニ○動にアトリエ淫夢のプレイ動画をうpしてやる……」

 

 "私の編集技術と淫夢フォルダとプレアカが火を吹くぜ……"等と言いつつ彼女の表情は決意に満ち溢れていた。

 

 掛かる莫大な時間を考えての武者震いか、裸エプロンで正座したままぷるぷると震えている様子に世界最悪のSSSレート喰種の面影は見る影もない。

 

 "というか、この喰種は淫夢フォルダを集めているのか"等とあなたは思いつつ、彼女の好きにさせながら運び入れた小型冷蔵庫に人肉を移すのであった。

 

 

 

 







~後日談~


「アナター、ご飯だぞー」

 そんな言葉を掛けられたため、作業を中断したあなたは何故か味見を求められなかったことに首をかしげつつ、既に料理が広げられた机まで来た。

 するとそこには全体的にオレンジ色をした料理の数々がところ狭しと並んでいることに気づく。

 というのも全て"にんじん"なのである。

 生にんじんのスティックサラダから始まり、にんじんグラッセ、にんじんオンリーのきんぴら、にんじんの白あえ、にんじんラペ、にんじんグレック、にんじんと柑橘類のマリネ、にんじん汁、にんじんチャウダー、にんじんミネストローネ、にんじんケーキ、オレンジ単色の野菜ジュース等々小癪なレパートリーに富んだにんじん料理の数々であった。

 そして、彼女は微妙にあなたにとって既視感のある白と緑を基調とした長い丈の衣装を身に纏っており、何故か生のにんじんを少し齧って咀嚼してから呟く。


「にんじんを喰え」


 どうやら彼女は以外と愉しくアトリエシリーズをプレイしていることがわかったと共に、形から入る流されやすい性格だということもあなたは理解した。





~関係のない捕捉~

あなた
 俺ら。型月主人公ぐらい普通な一般人。嫁が大好き。ちなみにスレでは暗黙の了解で兄貴にされるだけで、作中で別に男だと言及していないため、男でもおんにゃのこでも好きな方で考えるとよい。


アトリエ淫夢
 ニコニコ動画でうpされている淫夢を用いたアトリエシリーズのプレイ実況動画及びそのタグ。どの方もやたらプレイ内容や淫夢語録の使い方が下手な実況よりもやたら丁寧な作りなのが特徴。にも関わらず、全体的に再生数が少ないからお前ら見ろ。俺も見てるんだからさ(同調圧力)


原作:東京喰種
 の総合評価が高い順で検索するとこんなクソみたいな内容の小説がトップに出てくるんですがそれは……(困惑)。もっと他作者様も東京喰種の二次創作書いてホラホラホラホラ、俺もやったんだからさ(同調圧力)




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