【ドイツ産】SSSレート喰種だけど質問ある?【パツキン巨乳】 作:ちゅーに菌
「アナタ、今からデートに行こうじゃないか」
ある日。脈絡もなく突然そんなことを言ってきたヴィルヘルミナの言葉にあなたは飲んでいたお茶を少し吹き出しそうになった。
いつも突拍子もないことをする彼女ではあるが、こういった色恋沙汰の直球の内容は稀である。
ようやく普通の恋愛観を身につけたのかと考えたあなたはとりあえず理由を聞くと、彼女はコロコロと笑いながら居間で起動しているパソコンの画面を指差す。
「うん、ちょっと"CCG見学"に行こう。さっき安価で決まった。所内の売店で限定販売している何かしらの土産品を買ったら達成だ」
あなたはどうせそんな事だろうと思ったと自身を納得させつつ、同意を得る前に出掛ける支度を始めているヴィルヘルミナを見ていた。彼女がやることなすこと事後承諾なのはいまに始まったことではないのだ。
そんな彼女が余所行きの服を身繕っている最中、またあなたに声が掛かる。
「ところでアナタよ。外国人妻っぽいのと、お姉さんっぽいのならどっちがいい?」
・外国人妻っぽいの
・お姉さんっぽいの
突然現れたギャルゲーのイベントスチル染みた選択肢にあなたは面を食らう。
それと共に互いに率先的に外出したがる質ではなく、テレビを並べて一緒にゲームをしたり、映画やアニメを見たりして休日を過ごしており、買い物は専らネットショッピングで済ませているため、全く二人で外出するということがなかったことに思い当たる。
また、彼女の食料事情の問題で外食に行く事がなかったり、行動力の化身のため何かするときはあなたを介さずに既に終わっている事も上げられるだろう。
・外国人妻っぽいの
・お姉さんっぽいの ←
とりあえず、あなたはお姉さんっぽいのを選択することにした。外国人妻っぽいのも惹かれたが、あなたよりも日本に長く滞在していそうなヴィルヘルミナにそれを求めるのは酷であろう。また、今度にすることにする。
「ほー、ほうほう……あいわかった。アナタも物好きだなぁ」
微妙に貶されているようなことを言われているが、あなたは果たして二択に正解はあったのかと内心首を傾げた。
口元を歪め、ペロリと赤い舌を出して見せたヴィルヘルミナは更に言葉を続ける。
「ああ、ついでに私の"食事"も少ししておこうと思ってな。そのつもりでいてくれたまえ」
嬉しげにそんな事を言う彼女にあなたは小さく肩を竦めるばかりであった。
◆◇◆◇◆◇
「ここがニッポンのCCG……はえ~、スッゴいわねぇー……。あっ、そうだ。記念撮影しましょ記念撮影? ちょうど……そこの人! このカメラで写真撮ってくださらない? 構えてここをぽちーっと押してくれるだけでいいから……そうそうありがとう。じゃあ、お願いしまーす! ほーら、アナタも入って入って!」
女は化け物ということわざがある。女が化粧や服装などによって見違えるほど変わってしまうという意味だ。
彼女は何故か言動や行動が明らかに可笑しく、現在は家から少し離れた17区にある喰種対策局の支部をバックに通行人に持参したカメラで写真撮影をねだり、異様な明るさと押しの強さを見せているのはまさにそれだとあなたは考えていた。
まず、彼女の容姿がガラリと変わっている。
ヴィルヘルミナは背中がザックリと空いた露出の多過ぎる灰色のセクシーなニット――"童貞を殺すセーター"等と俗に呼ばれる物に薄手のカーディガンを羽織り、ロングスカートを着て、ハイヒールを履いている。背の高い彼女らしく、それ自体は良く似合っているが、存在そのものから漂うネタ臭は拭えないだろう。
まあ、童貞を殺すニット等という凡そ現実の人間が着こなすことが不可能な物体を、ほぼ違和感なく完璧に着こなしている辺り、やはり彼女は人外染みた美貌の持ち主と言える。
「いい絵が撮れたわねアナタ! んー? 私の顔に何かついてるかしら?」
また、今の彼女の目は赫眼ではなく、人間と同様に白目があり、極上の雫のようなワインレッドの瞳をしていた。
どうやら元々の彼女の目はこのようなものらしく、こめかみに力を入れつつ少し眼輪筋にも力を掛けると、その間はこのように元に戻るそうだ。
「ほーら、早く入りましょうよ! 折角、予約したんだもの……ね?」
屈託のない自然な笑みを浮かべ、腕を絡ませてあなたを引く彼女を見るあなたは嬉しさと困惑が半々の表情をしている。
何故なら今のヴィルヘルミナは確かに人間のようで綺麗な瞳と態度だが、あなたはどちらかと言えば赫眼のままのいつもの彼女の方が綺麗に映り、その感覚に環境に適応しつつある溜め息と何とも言えぬ煩わしさを覚えていた。
「表面でもCCGの部署内を見れるツアーなんて滅多にないものねー。
"そりゃあ、ヴィルヘルミナなら建物ごと破壊しそうだから無いだろうね"等とあなたは思いつつ、局内のエントランスに入る。そこは吹き抜けで広々とした空間に厳格ながらも洒落た内装がされており、明らかに風体がサラリーマンのそれではないスーツ姿の人間が行き交う様子は、あなたから見ても異質に覚えた。
「すごいすごーい! あなたの部屋の何倍も広いわ。流石、人類の守り手の最前線って感じねー。お姉さん楽しみ」
ネアカでテンションが高い様子のヴィルヘルミナは、エントランスにいるスタッフや喰種捜査官であろう人間の視線を集める。それもそのはず、日本では中々お目に掛からないタイプの美女であり、大多数の人間目線で見れば何故あなたのように平凡な人間の隣にいるのかわからない程であるからだ。
そんな周りの視線はまるで気にせず、"ほら、行くわよ?"とだけあなたに声を掛けたヴィルヘルミナは、受付まであなたの腕を引いて向かった。
「Guten Tag. 見学を予約していたブリギッテ・シュレヒテと私のダーリンよ ここが受付で合ってるかしら?」
「わ、わぁ……」
「ああ、ごめんなさい。時間よりも少し早く来過ぎてしまったかしら……まだ、10分はあるものねー。私のことはぶっきーって呼んでいいわよ?」
「あっ――はい、すいません! 少々お待ちを!」
異星の女王様のような別次元の美貌を持つヴィルヘルミナに見とれていた受付嬢は、彼女の促しですぐに動き出し、ヴィルヘルミナはそれを微笑ましげに眺めていた。
当然ながらブリギッテ・シュレヒテ等という者は存在しない。ここまで惜し気もなく堂々とした態度で嘘を吐ける彼女は、確かに道化を自称するに足るであろう。
「あちらのソファーでお待ちを……時間までお待ち下さい。何かお飲み物お持ちします」
「あら気が利くわね。なら、メロンソーダをくださいな。子供っぽいかもしれないけれど私、昔から大好きなのよ。あなたは何を飲むかしら?」
手渡されたメニュー表からほぼ即答でそれを選ぶヴィルヘルミナ。メニューにはしっかりとコーヒーがあるにも関わらずである。
あなたは紅茶を頼むと、そのまま二人でソファーへと向かい少し辺りを見渡すと疎らに他のツアー客の姿も見え、そちらに目を向けていると直ぐに注文した飲み物が届いた。
鼻唄混じりな様子で直ぐにヴィルヘルミナはそれに口をつける。
「うーん、良く冷えてて美味しいわねぇ」
ヴィルヘルミナにとって全くそんなことはない筈であるのはあなたも良く理解している。それを全く表に出さない演技に舌をまくあなただったが、わんこそばを百杯食べ切った精神力を思い出してまだまだ序の口だとも悟った。
暫く一般人が知る程度のCCGや喰種の話や、日常の他愛もない話をしていると時間が来たようで、事務員らしき女性の誘導に従う。
そして、所内の入り口にある空港の金属探知機のようなゲートが目に入る。
それはRc検査ゲートと言い、Rc因子の値を潜るだけで即座に判定する機器である。普通の人間のRc因子数値は200から500、これが喰種になると1000から8000となり、平均的に高いRc因子を持っている。それを踏まえて伝説級の赫者であるヴィルヘルミナともなればRc検査ゲート程度の簡易測定器では測定不能なレベルの値であり、通常通れば確実に発覚するため、ただでは済まない。
ちなみに"私のRc値は53万です"とは本人談である。
「なにこれ? 空港に置いてある奴?」
「いいえ、Rc検査ゲートと言いまして――」
しかし、案内人に続いてあなたとRc検査ゲートを潜ったヴィルヘルミナは、ゲートに反応すらされなかった。
それもそのはず、ヴィルヘルミナが時々語る
つまり、元より喰種捜査官と喰種の争いは出来レース。互いが互いに喰らい喰らわれ、殺し殺されることこそ常とされるのが今の世の理なのだ。
ヴィルヘルミナが問題なくRc検査ゲートを通過したことで、彼女の容姿がとあるSSSレート喰種に酷似している事で、エントランスの端から目を光らせていた喰種捜査官も訝しげな表情と共に本来の職務へと戻る。
その後は一般向けに公開されているあなたにとっては退屈なツアーを、終始愉しげで驚きにコロコロと表情を変えるヴィルヘルミナと共に暫く過ごした。
◇◆◇◆◇◆
「ちゃっちい土産品ねー。原価は40~50円ぐらいかしら? もうちょっと安くしてくれたって罰は当たらないのにねー」
ツアーが終了した後、売店で買ったマスコットキャラクターがあしらわれたキーホルダーを指でくるくると回しながら口を尖らしているヴィルヘルミナは、あなたと共に喰種対策局の外に設置された掲示板を眺めていた。
そこには17区内で頻繁に捕食行為を繰り返す、喰種捜査官に顔が割れる等の様々な理由で手配されている喰種が、指名手配犯の手配状のような謳い文句で書かれている。
「アップルヘッド……なーんか弱くて美味しそうな名前ねぇ。却って変な興味を持った人達が近寄りそう……とまではいかないまでも警戒心は薄れると思うわー」
"リンゴ頭よリンゴ頭、名前の印象って意外と大事なのにねー"等と言いながらヴィルヘルミナはあなたに手を絡ませて引き連れながら、何処かへと歩いて行く。
どうやら標的を見据えたらしく、また今の彼女は喰種を食べたい気分らしい。鼻を少しだけ鳴らした彼女は目を瞑って蛇のような笑みを見せる。
ちなみにこれも本人談であるが、彼女の嗅覚は鮫よりも優れるらしく、人間や喰種を通常よりも多く食べているなどの食性に差異のある喰種は臭いだけで10km以上先でも解るらしい。まあ、そうでなくとも彼女は幾つかの捜索ルートを持つため、あなたが気にするようなことはないであろう。
いつまでも演技を続けている彼女に何とも言えない気分になりつつ、あなたは彼女に着いて行く。
「ところでこのニットどう? 結構可愛くて機能的だと思うんだけれど?」
暫く他愛もない話をしつつ目的地へ向かう途中で、ヴィルヘルミナはそう言いながらカーディガンを少しだけずらし、あなたにざっくりと空いた背中を見せる。
そう言われてみれば確かにこの童貞を殺すセーターなるものは、喰種の羽赫、甲赫、鱗赫、尾赫の全ての発生源に布地がないため、これ以上無いほど機能的である。その上、無駄に扇情的で情欲を掻き立てるような造形と彼女の素材の良さはあなたにとっても言うことがないほどであった。
「へー……へー、そう、お姉さん喜んでくれたなら嬉しいわぁ」
また暫く二人で歩いているとヴィルヘルミナは不意に足を止める。そして、鼻を小さく鳴らすと道の反対側の少し先をシルバーカーを押して歩いている老婆の姿を見つめた。
「手配写真とはだいぶ違うけれど背格好は大体同じ……それに老人車に何て大胆なモノ積んでるのよ。お弁当代わりかしら?」
ヴィルヘルミナの口振りからすれば、その老婆がアップルヘッドという喰種であり、シルバーカーの荷台の積み荷には人肉の類いがあるのであろう。大胆この上ない犯行である。
「もうちょっと人気の無い――あら?」
途中まで言ったところでヴィルヘルミナは言葉を止めてまた嗅ぐように鼻を小さく上下させた。
「人間と赫包の香りがふたつずつ……捜査官が二人いるわね。片方は……ああ、"
あなただけに聞こえるように小さくそう呟いたヴィルヘルミナは立ち止まると小首を傾げて空を見上げる。
「んんんー……」
そして、唇に人差し指を当てると、彼女の顔は次第にあなたのよく知る表情へと歪んで行く。
「今日は見学と食事だけのつもりだったけれど――やめたわ」
やめたらしいヴィルヘルミナは、口の端を吊り上げ、三日月のように目尻を歪めると彼女らしい悪戯っぽい笑みを浮かべて見せた。
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