Re:DJ道   作:Lycka

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☆10 綯花様 Daniel様
☆9 リインフォース様
☆6 わけみたま様

新たに評価して下さりありがとうございます!

皆様遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
年末年始少しお休み頂きましたので、本日から投稿再開致します。



#4 何事も準備って大切だよな

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

「たーのもー!」

 

「たのもー!」

 

 

 

 

放送室のドアを開けて中へと侵入していく。おふざけで言ったモノまで愛本さんに真似されて少し恥ずかしい。案の定みんなでぞろぞろと放送室へ向かってたら、数人の生徒に声をかけられましてね。何とか誤魔化してきたけどこの後絶対バレるな。

 

 

 

「誰も居ない?」

 

「放送委員の人が居るはずなんだけどねぇ」

 

「多分DJブースの方じゃない?」

 

 

 

順番に由香、絵空、しのぶがテンポ良く会話を繋げていく。正直なところ、この放送室は俺より常連のしのぶ達の方が勝手が分かっているので任せたい気持ちがあるのだ。だからと言って、ここまできて投げやりになるのも愛本さんに悪いしな。

 

 

 

絵空やしのぶの言う通り、周りに人は見当たらないが音楽は続いている以上何処かに人はいるはずだ。ここに居ないのならDJブースしかないだろうと思い、ささっとDJブースの扉を開けると第一村人を無事発見する。

 

 

 

「......あの〜」

 

「うわぁ!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

恐らく曲を流していたDJであろう子に声を掛けると、いきなりでビックリしたのか飛び跳ねてしまいそれに動揺して俺自身もビックリしてしまった。俺の情けない声がそんなに面白かったのか、響子と由香は笑いを堪えきれていない様子。一旦それは置いておくとしよう。

 

 

 

「すまんいきなり声掛けて」

 

「いや、別に大丈夫だけど......ってえぇ!?」

 

「頼むから大声出さないでくれ。俺もビックリするから」

 

「ご、ごめん」

 

 

 

今度は俺の顔を見てビックリしたらしい。何か変なもんでも付いてるか。今日のお弁当はソース類も無かったし、付いてたとしても道中で他の人に会ってきたから分かるはずなんだけどな。

 

 

 

「もしかしてだけどさ......藤咲絢斗?」

 

「大正解。何で俺の名前知ってるんだ?」

 

「いやいやいや!あの有名なピキピキと一緒にいる君の名前を知らない人はほとんどいないと思うよ!?」

 

「......マジで?」

 

 

 

いつの間にか名前を知られる程の有名人になっていた件について。というか、理由が完全に響子達のついでみたいな感じになってるんだけど。合ってるっちゃ合ってるが、何となく気に食わんのは俺の性格故の問題だろうか。

 

 

 

「良かったわね絢斗〜」フリフリ

 

「随分と楽しそうだな絵空」

 

「えぇ!?ピキピキまで何でここに!?」

 

「いきなりで悪いけど交代してもらって良いか?」

 

「い、良いけど......」

 

 

 

これで何とかいけそうだな。愛本さんは周りにある機材を見て回って楽しそうにしてるし。しのぶは既に準備に取り掛かってるし。というかこの人の名前聞いてなかったな。後でお詫びに何か奢ってあげよう。

 

 

 

「名前教えてくれ。後で何か奢るからさ」

 

「あ、だったら私も欲しい!」

 

「却下、由香は絵空にでも奢ってもらえ」

 

「明石真秀。一応隣のクラスなんだけど」

 

「隣って事は......あの子知ってる?」

 

 

 

愛本さん隣のクラスにも間違えて挨拶に行ったって言ってたしな。何故だか分からんがDJにも興味持ってるっぽいから、この際明石?さんに愛本さんのお世話を頼んでしまおう。俺はピキピキで手一杯なんでね。

 

 

 

「今朝ウチのクラスに間違えて来た転校生でしょ」

 

「おう、んじゃ後の事はよろしく」

 

「......え!?私があの子の面倒見るの!?」

 

「静かに。そろそろ始まるぞ」

 

 

 

 

今まで明石さんがDJブースで流していたであろう曲をパッと止めるしのぶ。生徒達は何が起きているのか分からず少し騒がしい。この離れた放送室にまでザワつきが聞こえてくる。だがしかし、これも立派なDJクノイチの演出なのである。やっぱりウチのDJは最高だな。

 

 

 

 

それから数秒間は静粛が学内を支配する。まるで時が止まったような感覚に襲われる。そして、その止まった歯車は再び最高の形で動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─Ladies and gentlemen─

 

 

 

─Are you ready?─

 

 

 

 

 

 

 

そこからはDJクノイチであるしのぶの独壇場だ。0から100へ一気にテンションを上げさせるテクニック。それでいて強引になっておらず、巧みな技術で人を魅了し虜にする。俺達は目の前でしのぶのパフォーマンスを見ているから尚更だ。心の奥底から沸々と湧き上がってくるこの感情は、一体何に例えれば良いのだろうか。残念ながら語彙力足らずといったところか。

 

 

 

「す、凄いな本当に......」

 

「まぁ見てなって。しのぶの実力はこんなもんじゃないからな」

 

「なんで絢斗が自慢げに言ってるのよ」

 

「そこは良いだろ別に」

 

「でもやっぱりしのぶは凄いわねぇ」

 

「......雰囲気が変わったね」

 

 

 

 

響子が独り言の様に呟いたのを聞き逃す者は誰もいなかった。先程までとはガラッと雰囲気が変わったのは確か。だが違和感を感じさせる事なくスムーズに進んでいく。明石さんもしのぶのテクニックに驚いているのか、ずっと口が半開きなんだが大丈夫だろうか。

 

 

 

〜♪

 

「ん?天音から?」

 

「天音ちゃんから電話?」

 

「おう、響子出るか?」

 

「私に用事があるなら私にかけてくるでしょ」

 

 

 

それはごもっともの意見でございますな。でも何でいきなり電話なんてよこしてきたのだろう。俺からならまだしも、天音からなんて久しぶりな気がする。それもそれでどうなんだって話だな。

 

 

 

「もしもし」

 

『お兄今何処にいるの?』

 

「そんなこと聞いてどうするんだよ。まさかまだ諦めてなかったのかお前」

 

『違うし何勘違いしてんのお兄。さっきいきなり放送が始まって曲が流れ始めたの』

 

 

 

という事はしのぶが気分で中等部の方にも流したのだろう。実はここ、中等部の方にも放送が聞こえるように設定出来るのだ。まぁリミコンの発表とか特別なイベントとかないと基本やらないんだけどね。それを独断でやってのけるしのぶさんチョーカッコいいです。後で先生に叱られないと良いけど。主に俺が。

 

 

 

「お前の感想は?」

 

『しのぶさんがやってるんでしょ?聴けば一発で分かったよ』

 

「流石我が妹。その才能の一欠片でも良いからお兄ちゃんにも欲しかったよ」

 

『響子さん達もいるんでしょ?お兄ばっかりズルい』

 

「中等部にも流れてるんだったら別に変わんないだろ」

 

『私は実際にその場で聴きたいの!』

 

 

 

謎のこだわりを発揮する天音。こうして俺と天音がごく普通の兄妹の会話をしている間にも、しのぶがあれよこれよと忙しなくDJやってるんだ。アップテンポの曲が流れれば気分がアガるし、愛本さんなんかリズムに乗って踊り始めてしまった。明石さんはしのぶのDJから学ぼうとしているのか必死に見つめてるし。由香と絵空なんて愛本さんと一緒に踊り出す始末。もうこの状況意味分かんねぇな。

 

 

 

「私達も踊る?」

 

「勘弁してくれ響子......」

 

『響子さん!?お兄電話変わって!』

 

「ん、天音が変わってだとさ」

 

「了解、ちょっと向こう行ってるね」

 

 

 

 

悪戯っ子の様な笑みを浮かべて"踊る?"と言った響子。実に魅力的な提案だとは思うが、この状況が状況なのでお断りせざるを得ないだろう。それに踊りなんか俺は出来ないからな。響子の足でも踏んで怪我させたら母さんや親父から何て言われるか。

 

 

 

それからもう少しの間DJタイムは続き、お昼休み終了の5分前となったのでキリの良いところで幕を閉じた。その後、愛本さんに明石さんを紹介してお世話してもらう様にも伝えておいた。愛本さんがDJに興味持ってくれたので、明石さんが教えてあげるらしい。しのぶは"めんどくさいからパス"と言って絵空と由香と一緒に自販機へ向かった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「ん〜」

 

「......」

 

 

 

ドンッ!!

 

 

「あっ、ごめん前見てなかった」

 

「いたたたた.....」

 

 

 

 

時は過ぎて放課後。午後の授業も難なくクリアした。まぁ俺は寝てただけなんですけどね。お昼休みのあれで案外疲れてたのか、授業始まってすぐにウトウトし始めてしまった。そして起きたらほぼ授業が終わりかけていたというね。本当は授業中に響子が出してくれた曲について考えたかったんだけどな。仕方ないから靴箱へ向かう最中に考え事してたら、前から来てた女の子にぶつかってしまった。流石に体格差もあってか女の子の方が尻もちをついてしまった様子だ。

 

 

 

「ちょっとアンタ!前見ながら歩きなさいよね!」

 

「す、すまん.......あ」

 

「あ......じゃないわよ!怪我したらどうするつもりなの!?」

 

「それは悪かったって、マジで謝るからさ。だから─」

 

「だから何よ?」

 

「.......その、見えてる」

 

 

 

完全に俺が悪いのは分かってるが、些か話を聞かなさ過ぎるのではなかろうか。見えてしまったのは仕方ないから早めに伝えようと思ったのに。いや、さっきも言ったけど考え事してて注意してなかった俺が悪いんだけどね!

 

 

 

「はぅ!?」バッ

 

「ほら、立てるか?」

 

「......ヘンタイ」

 

「頼むからそれだけはやめてくれ」

 

 

 

それから、少し愚痴愚痴言いながらも態勢を立て直した女の子。もう一度怪我の確認もしたがそれは問題無いらしい。その後はそそくさと去ってしまった。しのぶくらいの小柄な子だったし、今まで見た事なかったな。それにぬいぐるみっぽいの持ってたし。先輩とかだったらどうしよう。あの子が話を盛って他の生徒に噂でも流せばいよいよ俺も終わりそうだな。

 

 

 

「......取り敢えず帰るか」

 

 

 

響子との約束もあるので遅れないようにさっさと帰ろう。約束したの俺じゃなくて天音ちゃんなんだけどね。

 

 

 

 

 

~藤咲宅~

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさい、響子ちゃんもう来てるわよ」

 

「知ってる」

 

 

 

だって響子の靴があるんだもん。その横にピッタリと張り付いている天音の靴は靴箱にしまっておこう。親父の靴は......靴箱の中にも無さそうだな。これで安心して過ごせるってもんだろ。まぁ帰ってこない時は1ヶ月くらい帰ってこないからな。

 

 

 

「リビング?」

 

「そうだけど、先に手洗ってきなさい」

 

「ん」

 

 

 

ここら辺は母さんの方が厳しいな。まぁ仕事してた時の方が厳しかったけど。体調管理も立派なお仕事の内なのだろう。

 

 

 

「......ついでに顔も洗っとくか」

 

「顔洗っとくついでに父さんとも遊ぶか!!」

 

 

 

完璧に油断していたところにまさかの親父登場。物陰に隠れていたらしく、洗面台に辿り着く前に拘束されてしまった。

 

 

 

「はぁ!?何で親父がいるんだよ!」

 

「帰ってきたからに決まってるだろう!」

 

「帰ってくんなってメールしただろーが!」

 

「分かるぞ絢斗......あれは所謂ツンデレというやつなのだろう」

 

「ちげーよバカ!!ツンデレならもっと身近にいるだろ!」

 

 

 

俺の妹とか親父の娘とか天音ちゃんとかさ。何であのメールがツンデレっぽく見えるんだよ。マジで気色悪いから勘弁してほしい。こんなムキムキ中年親父にデレる子供が何処にいるんだよマジで本当に。

 

 

 

「頼むから離れてくれ」

 

「無理だと言ったら?」

 

「母さん呼ぶけど」

 

「分かった、今はお前に従ってやろう」

 

 

 

この親父はどんだけ母さんが怖いんだよ。まぁ昨日の今日で椅子に縛り付けられるの俺だって見たくないしな。というか親父に2日連続で会えるのは少し珍しくもある。仕事があまりないのだろうか。それともただ単に親父が帰ってきたかっただけとか。可能性としちゃ後者の方がありえそうだな。

 

 

 

「それより絢斗」ガシッ

 

「だから離れろって言ってるだろ」

 

「お前、響子ちゃんとはどうなんだ?」

 

「響子?それどういう意味だよ」

 

「そのままの意味だよ。ABCならどの辺りなんだ?」

 

 

 

 

このクソ中年親父......響子のこと何だと思ってんだよ。ただでさえ鬱陶しいのに、今は家に響子本人がいるんだからそういうのやめろよマジで。聞かれてたら終わるんだけど。色んな意味で。

 

 

 

「母さ〜ん、変態親父がここにいま〜す」

 

「ちょ、絢斗ォ!?」

 

「......貴方?ちょっと二人でお話しましょうか?」

 

 

 

まるですぐ側にでも居たのかという早さで駆けつけた母さん。親父の首根っこを掴んで寝室へと引き摺り込んでいく様は、さながらホラー映画を見ているようで少しゾッとする。俺は将来ああはなりたくないもんだな。

 

 

 

「......あれ大丈夫なの?」

 

「響子か。気にすんな、いつもの事だから」

 

「それなら良いけど」

 

「天音は?」

 

「リビング。珈琲淹れて待ってるよ」

 

 

 

ああ、やはり俺の妹はお兄ちゃん想いの優しい子だった。反抗期真っ盛りの駄々っ子とか思ってた時もあったのだが、そんな風に思ってたお兄ちゃんを許して欲しい。これからはもっと甘えさせてやろう。

 

 

 

 

 

 

-リビング-

 

 

 

 

 

「そう思っていた時期が、僕にもありました」

 

「一人で何言ってんのお兄」

 

 

 

いやだってさ。ものの見事に天音と響子の二人分しか珈琲ないんだけど。しかも響子の分は響子専用のマグカップに淹れてるし。ねぇ俺の分は?お兄ちゃん専用のマグカップも買ってたはずだよね?お前はお水でも飲んでろ的な意味合いでも込められているのだろうか。

 

 

 

 

因みに響子のマグカップは星がいっぱい描かれている綺麗な物で、天音のは可愛らしいアニメキャラのマグカップだったりする。

 

 

 

 

 

「んで、取り敢えず母さんに練習見てもらう件だが」

 

「本当に良いの?」

 

「大丈夫だって。ここだけの話、ウチの母さん案外俺にも甘いから」

 

「でもお兄そんなに甘えないじゃん」

 

「ばっかお前、高校生のお兄ちゃんがお母さんに甘えてたらどう思うよ」

 

「キモい」

 

 

 

 

はい、天音ちゃんの直球ド真ん中ストレート頂きました。まぁ天音の意見抜きにしても、俺が母さんや親父に甘えるわけにはいかない。天音の前とかだと尚更だな。母さんや親父はそうでもなさそうだけど。悪いがそういう時期はとっくに過ぎ去ってるんでな。

 

 

 

「それで、他に話したい事は?」

 

「次のライブの事かな」

 

「いつやるんですか?」

 

「まだ内容とかあんまり決まってないんだけどね。来週辺りにはやりたいかなって」

 

 

 

猶予は一週間程度ということか。しのぶが参加するリミコンがあと三週間程で開催される予定だから、ダブルブッキングは一応してないみたいだな。それでもやっぱしのぶに任せるのは厳しいだろうけど。

 

 

 

「セトリはどんな感じで組むんだ?」

 

「二人に聴いてもらった曲を中心に考えるつもりだよ」

 

「だとすれば4曲か5曲辺りが妥当かもですね」

 

「トリがあの曲か?」

 

「一応そのつもり」

 

 

 

トリにするのであれば、それ相応のアレンジが必要にもなってくるだろう。ともなれば調整に時間がかかるのは必須。早めに取り掛かるに越したことはない。俺からもアレンジ案として天音にちょこっとだけ弄らせてみるか。そのまま通るって事は無いしな。何しろ響子としのぶが審査員だし。

 

 

 

「あの曲天音に弄らせても大丈夫か?」

 

「大丈夫だけど、どうするつもりなのよ」

 

「アレンジの案としていくつか作っておくだけだ。そのくらいなら天音でも出来るだろ?」

 

「勿論」

 

 

 

 

もし天音の案を気に入って貰えれば、しのぶや響子がそこから更に広げていけば良い話だからな。これで最終的にピーキーな曲が出来上がる事間違いなしだ。こうしてピキピキのお手伝いをしている間に、天音の音楽センスまでピーキーな響子寄りに仕上がらないかだけ心配だな。天音は大はしゃぎで喜びそうだけど。

 

 

 

 

「良し、これで一先ずセトリの件は終わりだな」

 

「あとはハコと日時を押さえるのと、ライブ告知のフライヤーとかかな」

 

「ライブするのって案外大変ですよね」

 

「まぁピキピキレベルになるとゲリラ的に開催しても人集まりそうだけどな」

 

 

 

 

なんてったって学園トップですから。俺が誇って言える立場ではないんだけどね。というか俺なんか何もしてない一人のピキピキファンだから。そういう風に考えると、これだけ側に居られるのは最高の喜びなのかもしれないな。

 

 

 

 

「それについては俺に任せてくれ」

 

「絢斗一人でやるつもり?」

 

「ハコ押さえるのは何回かやったことあるし、フライヤーは見様見真似で取り敢えず作ってみるさ」

 

「......お兄一つ忘れてる」

 

「ん、何だ我が妹よ」

 

 

 

ハコ押さえるのは正直ピキピキの名前出してしまえば一発オッケー貰えるから大丈夫だと思うんだけど。フライヤーは完成したら適当に貼り付けたり各クラスに配ってはい終わりなのでは?

 

 

 

 

「お兄、絵のセンス皆無でしょ」

 

「そんなことねぇよ。幼稚園の頃は"頑張ったで賞"貰った事あるんだからな」

 

「じゃあ人描いてみてよ」

 

「おうよ、絵画みたいな出来栄えでも驚くなよ」

 

 

 

 

頭、肩、腕、腰、脚と順番に持っていたシャーペンで流れるように描いていく。一つ一つに丹精込めてだな。まるで我が子を愛でるかの様な優しいペン捌き。そして、一人の人間の絵が完成する。

 

 

 

 

「どうよ?上手すぎて声も出ないか?」

 

「......絢斗」

 

「お兄、マジの化け物出来上がってるからねそれ」

 

「ば、化け物......だとッ!?」ガクッ

 

「すみません響子さん、フライヤーは私が作っときます」

 

 

 

 

ラスボスの不意の一撃を喰らってしまった主人公よろしく、天音の容赦ない攻撃......いや口撃とも言うべきか。それに膝から崩れ落ちる様にして倒れてしまった。おかしい、幼稚園の頃の頑張ったで賞は嘘だったのか。園長先生が上手だと褒めてくれたのは口先だけだったということか。仕方ない、あの頃の俺は純粋無垢な少年だったからな。今ではこんなに尖った性格になってしまって。親父のせいだなこれは。あと若干響子のせいでもある。だから俺は悪くない。

 

 

 

 

「はい、珈琲淹れたわよ」コト

 

「ありがとうございます」

 

「良いのよ、それで何の話をしてたのかしら」

 

 

 

どこからともなく現れた母さん。気を利かせて珈琲を淹れなおしてくれたらしく、そこには俺専用のマグカップもあった。やっぱ母さんは俺にも甘くて助かる。まぁ甘えないんですけどね。親父に何かされるに決まってるし。

 

 

 

「あ、肝心な事言うの忘れてた」

 

「何かしら」

 

「母さんに頼みたい事が─」

 

「別に良いわよ」

 

「即答!?というかまだ内容とか言ってないんだけど?」

 

 

 

 

母さんはまさかのエスパータイプだった。あれか、子供のことなら何でもお見通し系お母さんなのだろうか。その調子でいくと何もかも見透かされそうで怖い。

 

 

 

「この頃響子ちゃん達の練習見てなかったでしょ?だから久しぶりにどうかなって思ってたところなのよ。最近仕事も少なくなってきたし」

 

「いや、母さんが良いならこっちとしてもありがたいけど」

 

「だったらいっその事ウチでやりませんか響子さん!?」

 

「そこまでしてもらったら流石に悪いよ」

 

 

 

母さんや親父の仕事の関係もあって、ウチにはちょっとしたDJブース兼仕事部屋みたいな場所があるのだ。DJクロとDJシロの全盛期であれば、朝から夕方くらいまでは仕事で外出。夜になって帰って来れたとしても仕事部屋で作業。顔を合わせる事が朝と夜で1回づつしかないとか余裕であったしな。

 

 

 

そういった家庭的な事情も重なって、愛莉さんや色んな人が俺達兄妹の世話をしにやって来てくれてたというわけだ。響子んちの親御さんとかも来てたし、何なら響子自身も遊びに来てくれてたしな。そりゃ俺一人しか関わる人間が居なかった天音にとって大切な存在にもなるわな。

 

 

 

 

「良いのよ響子ちゃん。私からもお願いするわ」

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」

 

「それじゃあ取り敢えず掃除しなきゃね」

 

「もう暗くなってきたし絢斗は響子ちゃん送っていってあげてね」

 

「りょーかい。んじゃ帰るぞ〜響子」

 

 

 

 

リビングのテーブル席から立ち上がり、何か適当な上着を見繕って玄関へと向かう。響子は鞄を持って俺の後をついてくる。送っていってあげてねとは言われたものの、結局毎回家まで行ってんだよなぁ。まぁそこまで離れてないから良いんだけどさ。

 

 

 

 

「今日はありがとね」

 

「別に俺はまだ何もしてないけどな。これからやる事っつってもハコ押さえるだけだし任せとけ」

 

「うん、頼りにしてるよ」

 

「おうよ」

 

 

 

 

靴を履こうと思ったがそれすらめんどくさかったのでサンダルで我慢しよう。最近のサンダルは軽くて丈夫なので助かる。この前天音のサンダル履いていったらクッソ怒られたけど。そんなに嫌だったのだろうか。

 

 

 

「そういや明日何か課題出てたっけ」

 

「今日の5.6時間目の感想」

 

「......マジ?」

 

「マジ」

 

 

 

さてどうしたものか。ほぼ寝てたから全然聴いてなかったわ。適当に感想なんてでっち上げる事は可能だが、いかんせん担任にバレると厄介なのがなぁ。まぁ響子送った帰りにでも考えるとしますかね。

 

 

 

「明日しのぶ達にも今日話した事伝えないとな」

 

「そうだね」

 

 

ギュルルルル

 

 

 

 

先に言っとくけど、これは俺じゃないからな。俺じゃないとすればもう一人しかいないわけだけど。犯人であろう響子は恥ずかしかったのか、ちょっと顔を俯かせてるけど俺にはバレバレだ。ほんの少し頬が朱色に染まっている事には触れないでおこう。女の子は繊細なんだって母さん言ってたもん。

 

 

 

「響子お腹空いてんのか?」

 

「......うん」

 

「いつから」

 

「絢斗の家にいた時から」

 

「馬鹿かお前。それを先に言え、早く帰るぞ」

 

 

 

 

踵を返して少しだけ歩くスピードを早める。というか俺の幼馴染はいつから食いしん坊キャラに転職したのだろうか。まぁ響子は元より少食ではなかったが。男子の俺より食べてる印象もないんだけどね。

 

 

 

「ちょ、何で戻ろうとしてるの?」

 

「あ?ウチに帰って飯食うからに決まってるだろ」

 

「もしかして私も?」

 

「当たり前だろ。何でこの状況でお前放って帰らなきゃならんのだ」

 

 

 

それに、響子と一緒の方が天音も喜ぶだろうしな。親父が家にいるのがイレギュラーではあるものの、対応は母さんに任せておけば大丈夫。あ、先に母さんには連絡入れといた方が良さそうだな。

 

 

 

「ほら、帰るぞ響子」

 

「う、うん」

 

「晩飯何作ってもらうかな。響子は何が良いんだ?」

「そんな、リクエストなんて出来ないよ」

「良いから良いから。お前も母さんのご飯が美味しいの知ってるだろ?」

 

 

 

 

 

結局、響子と二人で帰ってから晩飯食べるまでは先程と同じ様にライブについて話していた。ほとんど天音と響子の二人が話し合ってたんだけどな。俺は相槌打ってただけ。だって天音ちゃん響子と一緒にご飯食べられるって分かったからテンション高かったからね。良かったね天音ちゃん。お兄ちゃんと一緒の時は無言の時もあるのにね。おかしいね。

 

 

 

 

 

因みに、晩飯は天音のリクエストでハンバーグになった。

 

 

 

 

 

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ガチャで響子出たのでご満悦の主です。
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