☆10 Bellさん様 ☆9クロムス様 ヴィラン・シラユキ様
☆4ケチャップの伝道師様
新しい評価ありがとうございます!
更新に少し時間が掛かってしまい申し訳ありません。
不定期更新なのでご了承を。
「それじゃあ、一旦休憩しましょうか」
「んじゃ飲み物でも注いでくるわ」
若干ラッキースケベがあったものの、なんとか説得することに成功したので本題である練習を始めて既に2時間が経過していた。その間、母さんは主にしのぶに付きっきりで指導を行い、響子は天音と一緒にセトリとフライヤーの作成。そして、絵空と由香の二人はセトリに合わせたダンスパフォーマンスの確認を行っていたので、俺はそれにずっと付き合っていた。まぁ付き合ってたって言っても、ほぼ二人が踊ってたのを見てただけなんだよな。
「それにしても、2時間動きっぱなしとかスゲェな」
「絢斗も一緒に踊れば良かったのに」
「うおっ!?ゆ、由香?ビックリするからいきなり声掛けるなよ」
「ごめんごめん、一人じゃ全員分は辛いだろうから手伝いに来ちゃった」
手伝いに来てくれたのは素直に嬉しい。嬉しいのは間違いないが、今の由香や絵空の服装は布面積が少ない。練習着とはよく言ったものだ。動きっぱなしで汗もかいてるから、余計に変な感じに見えてしまう。由香に関しては、ジムとかでトレーニングしてる時に見てるから若干慣れてるけど、やはりそれでも目のやり場に困るのだ。
「トレイに乗せて持ってくから大丈夫だ。ここは俺に任せて由香達は休んでてくれ」
「わかった」
「......本当にわかってんのか?」
「うん、私は放っておいて絢斗は飲み物運ばなきゃ」
「だったら早く部屋戻れよ......」
なんだか由香がワザとらしく怪しい手の動きをさせているのは気のせいだろうか。この場合、俺は由香を信じても良いのだろうか。嫌な予感しかしないけど、ここで時間使うのも馬鹿らしいから持っていくか。
「ほら、由香も早く部屋にぃ!?ちょ、おま!脇腹は勘弁してくれぇ!!」
「ほらほら〜、絢斗は脇腹が弱いんだよね〜?」
「ばっかお前なぁ!!ふっ、弱いわけが......ふひひ。ちょ、マジで無理ィ!!」
「あら、二人揃って何してるの?」
「絵空か!?頼むから、由香を止めてくれぇ!!」
飲み物持ってくのが遅れたせいか、絵空が心配そうにやって来たので急いで救援要請を出す。だがこれも虚しく届かず、絵空相手だと寧ろ逆効果になってしまうことにも気付くことが出来なかった。一瞬ニヤリと笑った絵空だが、すぐに可愛らしい笑顔に戻る。まぁこの後の展開はお察しの通りである。
「知ってた由香?絢斗は脇腹だけじゃなくて、耳も案外弱いのよ」フゥ
「ほえぇ......って絵空も楽しそうに加わるなよ!!」
「じゃあ私は逆の耳に」フゥ
「ちょ......あ、駄目だコレもう立てん」ガクッ
アニメや漫画なら、普通この場合立場が逆だと思うんだけどな。誰も男が好き放題に弄られてるシーンなんて必要ないだろ。まぁ一部のコアな人間にとっては受けが良いかもしれんが。いやでも真面目に立てなくなってきたから、そろそろ勘弁してほしい。というかどこでその情報手に入れてきたんだよ。
その後も数分間は二人のオモチャにされてしまった俺であった。
コンコン
「入るぞ〜」
由香と絵空にオモチャの様に弄ばれてから数分、やっと回復したので響子の様子見がてら天音の部屋へと足を運んでいる。ドアは開いていたが、ノックしないと天音に何言われるか分からんからな。これぞ紳士的対応というやつだな。
「絢斗どうかしたの?」
「いんや、ちょっと様子見に来ただけ」
「お兄邪魔」
「いきなり邪魔者扱いですかそうですか......」
何やら天音は響子の持ってきたノートパソコンと天音のデスクトップとを忙しなく行き来している。邪魔なら避けて通れば良いものの、わざわざ足の指を踏んでまで通っていく我が妹。もしかしてお兄ちゃんとの秘密のスキンシップだろうか。いや違うな、絶対違う。響子が居るからいつにも増して俺の事など眼中にないのだろう。
「調子はどんなもんだ」
「うん、天音ちゃんのお陰で進んでるよ」
「響子さん、ここはどんな感じにします?」
「ん?どれどれ......」
入室から僅か1分、既に空気より存在が薄くなっているのは気のせいか。周りを見た感じだと水分補給もロクにしてなさそうだし、仕方ねぇから俺が珈琲でも注いでやるとしますかね。まぁさっきは三人分しか用意してなかったから当然っちゃ当然か。にしても水分補給で珈琲ってのもアレだが、残念ながらウチには珈琲か水かお茶くらいしかないからな。
「何か欲しいもんとかあるか?」
「んー、じゃあお茶で」
「響子さんと一緒で良いよ」
「ならお茶二つな。あと適当にお菓子も持ってくるから」
「ありがと」
そう短くお礼を言ってくれた響子は、すぐにPCの画面へと再度意識を集中させ天音と話し込み始めてしまった。やはりこの二人は似た者同士というか何というか、集中力で例えるなら天才と言えるのかもしれない。天音に関しちゃ俺がいると思考のノイズになるから機嫌悪くなるんだけどな。
とか考えてる間もリビングへ降りて、手だけはせっせこ動かしてお茶やお菓子を用意する。先程のように不意を突かれないように警戒しながら。いやマジで、次やられると俺のメンタルが持たないからな。既にほぼ無いに等しい俺のメンタルがね。何故だろう、ピキピキメンツには立場的な意味でも勝てる気がしない。学内カーストでも家内カーストでも低ランクに位置する者の宿命なのだろうか。
「おまちどーさん。一旦休憩にしようぜ」
「天音ちゃんも休憩しよっか」
「あれ、もうこんな時間なの?」
「時間忘れるくらい集中してたんだな」
「あんな絵で済ませようとしたお兄は黙ってて」
酷い、あれでもお兄ちゃん真心込めて描いたんだけどな。化け物とか言われて結構傷付いたんだからね。
「フライヤーは綺麗に仕上がってんな」
「天音ちゃんの力作だよ」
「これぐらい普通ですよ」ドヤッ
「んで、さっきまでは曲についてアレコレ考えてた訳だ」
「色々話し合ってたら、こんな時間になってたけどね」
誇らしげに胸を張る天音をさておき、お菓子を口へ運びながらお茶を啜る。なんだろう......わびさびとでも言うのだろうか。何とも形容し難い感情が沸々と沸き上がってくるのを感じる。The・日本人って感じのブレイクタイムだからか。Theとかブレイクタイムとか使っちゃう辺り、やはり俺の語彙力はアニメや漫画に少々毒されているのだろう。
「他のみんなの調子はどう?」
「ん?そりゃもう相変わらずキレッキレよ」
「何その感想。もしかしてお兄も一緒に踊ったの?」
「んなわけ。俺はずっと眺めてたからな。まぁ特になーんにもしてねぇな」
まぁ色々弄られはしたんですけどね。しのぶは母さんと一緒に部屋に篭って練習してるし、絵空と由香のダンス練習は俺がボーッと見てるだけだし。あれ、もしかしてこの家で一番要らない存在は俺なのか?いや、もしかしなくとも俺だけ何もしてねぇな。やべぇ働かざる者食うべからずが俺の密かなポリシーなのに。まぁ良いよね、普段結構苦労してるし。主にピキピキ関係で。
「お、この漫画懐かしいなぁ。読んでも良いか?」
「好きにすれば。でも絶対ベッドには上がらないでね」
「分かってるって」
「絶対だよ。上がったら怒るから」
口調から察するに、もう半分くらい怒ってませんかねぇ天音さん。大切な事だから2回言ったのだろう。別に読めるなら地べたにでも座って読むけどな。寝転がってると眠くなるし。久しぶりにこの漫画見たから、今すぐ読みたい衝動に駆られてしまった。俺も天音も漫画とか小説からアニメに入る事が案外多いからな。二人共本棚が部屋に2つか3つは置いてある。
「響子さん、このお菓子美味しいですよ!」
「見た感じだとそこら辺で買えるような物じゃなさそうだけど」
「えーっと......お兄、コレどこで買ったんだっけ?」
「それ親父が仕事帰りに買ってきたヤツな。1ヶ月前くらいに1週間くらい家空けてた時だと思うけど」
帰ってきた時に"コレは絢斗には食わせん。母さんと天音と俺だけだからな!"とか言って隠してたけど。残念ながら天音に隠し場所教えてる時点で終わりだな。美味しく頂きました。
それからはお菓子とお茶を楽しみつつ、響子と天音が作業しているのを横目に漫画を読んでいた。どうせ降りても絵空と由香に捕まってしまうだけだ。それならここで堂々とサボってしまおう。どのみち俺が居ても見てるだけだしな。
「んー......ここはどうしますか?」
「もうちょっと音の変化は欲しいかもね」
「こんな時のお兄......って、寝てるし」
「まぁ寝かせておいてあげよっか。色々と頑張ってくれてるみたいだし」
「相変わらず響子さんもお兄に甘いですね」
漫画読みながら色々と体勢変えてたら、いつの間にか横になってていつの間にか夢の世界へ。何回か漫画が顔に落ちてきて痛かったけど。まぁ仕方ないよね。甘くて美味しいお菓子食べたし、温かいお茶も飲んだしでお腹いっぱいだったからね。
~数時間後~
「......」zzz
「寝顔は可愛らしいんだけどね」ナデナデ
良い睡眠の3箇条とは。
"寝つきが良い" "ぐっすり眠る" "寝起きがスッキリ"の3つだとさ。この3つが当てはまると良い睡眠が取れているらしく、睡眠の質が良いと疲労回復や健康維持的な意味合いでも良いらしい。
「......んぁ」
「起きた?」ナデナデ
「やべぇ......今何時だ」
時計を確認すると、既に7時を半分ほど回っていた。寝始めた時間を正確には把握してなかったが、予想だと2.3時間くらいは余裕で寝てたな。というか起きたら響子の顔が凄い近いんだが。これは世間一般的に言うと膝枕というやつでは?
「何で膝枕してんの?」
「覚えてない?絢斗寝ぼけてたのか知らないけど、天音ちゃんのベッドに上がろうとしてたんだよ」
「腕とか付いてる?片足無くなったりとかしてない?」
「大丈夫。天音ちゃんがベッドから強引に離そうとしてたから、仕方なく膝枕で我慢してもらったよ」
響子の膝枕は勿論嬉しいが、違う意味で天音が怒ったりしなかったか心配だ。あの響子大好きな天音のことだから、何か文句の一つでもあったのではなかろうか。まぁ俺としては、膝枕のお陰でとても良い睡眠が取れたから良いんだけど。
「他のみんなは?」
「一段落着いたからご飯にしようって何分か前に来たよ」
「そうですかい。っと、そろそろ俺も起きるか」
「もうちょっとこのままでも良かったのに」
「また機会があればな。俺達も降りて飯にするか」
本音を言うとするならば、結構寝心地良かったから是非お願いしたいな。寝る前にお菓子とか食べたはずなのに、起きたらお腹減ってるとか俺はいつから食いしん坊キャラになったのだろう。今の気持ち的にはガッツリお肉っていうよりかお魚の気分かな。
散らかった漫画を本棚に戻して電気を消し、先に洗面台に行って顔と手を洗ってからリビングへ向かう。すると既に良い匂いがしており、それによって益々空腹感が増したような気がした。
「あら、二人共早かったのね」
「まぁな。夕飯は母さんが作ったのか」
「ハズレ。今日はみんなに作ってもらったのよ」
「味付けとか大丈夫かね」
「そこは大丈夫だよ!O型で大雑把な絢斗と違って、私達A型だからね!」
何だその意味不明な超理論。由香の言った通りの理論なら、A型のお前らはええざっぱなのかよ。AB型だとエビざっぱにでもなるのか。新しい言葉完成しちゃったよ。何だよエビざっぱって。結構面白そうじゃねぇか。
由香に絵空にしのぶ、それに加えて天音は奇遇にも全員A型。レシピ通り作れるのなら、きっと今日の夕飯は美味しいのだろう。であれば、俺はさっさとお皿やらお箸やらコップを食卓に並べるとしますかね。さっきから腹の虫がうるさいしな。
『頂きます!』
「まずはこれから食べるとするか」パクッ
やはり最初に目に入ったのは焼き魚。綺麗な焼け目が付いており、香ばしい匂いがより一層海の味を引き立てる。親父があんな筋肉バカだから、昔っからタンパク質を効率良く摂取出来る魚料理が多かったのだ。それに加えて料理上手な母さんときたもんだ。魚料理に関しては舌が肥えていると言っても過言では無いだろう。まぁウチで出てくる料理全般美味しすぎて、外食があんまり無いレベルなんだけどな。
「ふむふむ」モグモグ
「......」
「美味い!」
「良かったぁ......」
言っちゃ何だが、母さんの料理と遜色無いレベル。焼き魚なんて誰にでも簡単に作れるじゃん、と思っていた時期が俺にもあった気がする。実際のところ、やはり普通の人が作るのと料理上手な人が作るのでは何かが違うのだ。それに関しては経験済みだからな。ソースは俺と母さん。俺も料理は人並みに出来る自信があったが、母さんと比べるとその辺の蟻レベルなのだと実感する。
「それはしのぶが作ったのよ」
「ちょ、絵空!」
「良かったなしのぶ。将来は良いお嫁さんになれると思うぞ」
想像してみて欲しい。あのしのぶが好きな人の為に、一生懸命になって料理を頑張る姿を。それだけで萌えるというもの。きっと旦那さんになるヤツは幸せに違いない。それで幸せじゃないというのなら、その時は俺がしのぶを貰おう。畜生、毎日しのぶが作った飯食えるとか前世でどんな徳積めばいいんだよ。
「次はこれか」
「それは私のよ」
「うむ、普通に美味い」モグモグ
「あら?しのぶの時と違うのは気のせいかしら。もっと他に意見はないの?結婚して欲しいーとか」
「絵空に関して言えば、手料理何回か食ったことあるからな」
最後の方は聞かなかったことにしよう。絵空はハンバーグか。まぁハートマークのソースとか、俺のだけ大きかったりとかしたから若干分かってたけどな。そして、残念な事にもう一人あからさまに分かりやすいヤツが居るのだ。
「由香のも美味しいから安心しろよ」モグモグ
「え!?何でそれが私のだって分かったの?もしかして絢斗は超能力者?」
「いや、だって天ぷらとか由香しか考えられんだろ」
覚えてないの?俺と初めて会った時に、好きな食べ物聞いたら"スシ、テンプーラ!!"って大声で言ってたの。あれ結構恥ずかしかったんだからな。周りに他の生徒いっぱい居たのに、気にせず胸張って言ってたんだよ君。流石に家で寿司は作れなかったんだろうな。
「というか、今日の夕飯まとまりが全然ねぇな」
「焼き魚にハンバーグ、天ぷらにサラダにお吸い物だからね。サラダは天音ちゃんが作ってくれたんだよね?」
「はい!響子さん用にアレンジしてみました!」
何だよ、サラダを響子用にアレンジって。曲をアレンジしてみました、みたいに軽く言ってるけど。食卓だけ見れば、何処かのバイキングにでも来てる気分になるな。まぁ味は一級品ばかりなんだが。
その後も、ライブや学校の事を話しながら食べ進めていった。最初は全部食べ切れるか心配だったものの、どんどん食べ進めていき知らぬ間に完食してしまった。やはり、料理が美味しいと食べ過ぎてしまうのだろうか。そろそろ運動しないと太ってしまいそうで嫌になる。
因みに、前に俺が母さんに料理の秘訣を聞くと"お料理が上手くなるコツは一つ。それは愛よ"とか意味の分からんことを言ってました。おかしいな、家族愛なら地味に自信あったんだけど。親父以外で。
「はぁ〜、さっぱりした!」
「由香おかえり」
「はい、次は絢斗の番よ」
「......なぁ」
皆さんはトランプで遊んだ事があるだろうか。
ダイヤ、ハート、スペード、ジャックの4種類のスートというものと、1から13までの数字が書かれたカードで色々なゲームが出来る優れものだ。まぁ説明しなくても分かると思うが。
「絢斗お風呂ありがとね!」
「あぁ、それは良いんだけど......」
「はい私アガり〜」
"スート"と一口に言っても、世界各地でその内容は異なっておりラテンタイプでは剣や杖がスートとなっているらしい。他にもドイツタイプやフランスタイプ等も存在しており、フランスでは基本的にフランス語を使用するのでAやJ、QやKといった英米式のカードは使わないんだってさ。
「これかな?」シュッ
「......くそっ、また負けた」
「絢斗3連敗中〜」
「アンタはもっと練習して出直してきな」
「今回は勝てると思ったのに......って違ぇよ!!」
絵空の言った通り、現在3連敗中の俺である。いやいや違くて、そもそも何でババ抜きまったりやってんの?流れで3回もやっちゃった俺も俺だけど。君達は今日練習をしに来たのでは?
「負けたからって怒らないの」
「いや怒ってないから。なんでトランプなんかやってんだよ。ダンスの練習は?ライブの曲作りは?」
「負けた人が次の準備する約束は?」
「おい、質問を質問で返すな」
夕飯を終えた俺達は練習の疲れを癒す為、次はお風呂へ入るという流れとなった。もちろん風呂掃除は俺がやらされましたよ。まぁ肝心なのは順番なんだが、先に入れば"後から覗くつもりなんでしょ?"と言われ、後でと言えば"私達が入った残り湯で何するのかしら?"と言われる始末。発言者は絵空である。別にナニもしねぇよ。
という事で、比較的安全だと判断して先にお風呂へと入った。しかしながら、男子高校生には少し刺激が強すぎる状況の為、"この後アイツらがこの風呂入るのか......"とか変なことを考えてしまうのも仕方ないのだと思いたい。無事何事も無くお風呂を終え、次々とピキピキメンツがお風呂を終わらせて部屋へと戻ってきたその後、今のような状態へ流れるようにシフトしていったというわけだ。
「次は神経衰弱しようよ!」
「ダメ」
「んー、じゃあ7並べ!」
「どうあってもトランプ自体をやめないつもりか」
「アンタも負けたままでいいの?」
しのぶの安い挑発も毎度のことである。ゲームや遊びに関しては俺としのぶはライバルと言ってもいい。そんなライバルの安い挑発になど乗るはずもなく。俺は誰にも指図されず、我が道を行くと昔から決めているのだ。
「あ、やんのか?まだ本気出してないだけだから。言っとくけど、負けすぎて泣いても許してやらないからな」
「またしのぶと絢斗のいつものやつが始まったよ」
「これはこれで面白いから良いんだけどね♪」
「何言ってんだよ絵空。お前も参加するに決まってんだろ」
こうなりゃヤケだ。全員まとめて相手してやろうではないか。自慢じゃないが、今まで遊ぶ相手が居なかった分、一人回しして技術を磨いてきたのだ。マジックから一人ババ抜き、果てには一人神経衰弱や一人ポーカーを極めてしまったからな。
......何だよ一人ババ抜きって。一人神経衰弱とかマジで俺の神経が衰弱しそうで怖いわ。別に寂しくなんてないもんね。一人だけでも出来るもん。
「じゃあ負けた人は勝った人の言うこと聞くっていうのはどう?」
「ナイスアイディアねキョーコ」
「それって何でもアリとかじゃないよな?」
「何?もしかして負けるの怖いの?」
「おっしゃマジで本気見せてやるよ。とことん付き合ってやるから覚悟してなベイビー」
それからは負けた人が勝った人の言うことを聞くという、いかにも青春っぽい感じの罰ゲームをかけた戦いが繰り広げられた。1回戦目は先程の延長戦ではないが、5人でババ抜きを開始。結果、最下位は俺。まぁ序盤はこんなもんだろうと高を括っていたのがそもそもの間違いだったと思う。
2回戦目はポーカー。それぞれ持ち点を与えられ、それを賭け金として戦っていくシステムを提案。しかしながら、最初の親で俺が全ての賭け金を無くすという最悪の事態が発生。結果、俺の一人負け。
最終戦は神経衰弱。これに関しては記憶力に自信があったので、大差をつけて勝てる......はずだったのだ。だが忘れてはいけない。他の4人も基本的に能力は高い傾向にある。しのぶは勿論のこと、絵空や由香だって地頭が悪い方ではないし響子に関しちゃ幼い頃から良く知っている。総合順位は火を見るよりも明らかだろう。
「やっぱりアンタ最下位じゃん」
「はい、すみませんでした」
「じゃあ誰からいく?」
「私からいこうかしら」
「ちょっと待て。言うこと聞くのは一人だけじゃないのか?」
「そんなこと一度も言ってないわよ?
いや、そりゃ最下位の俺からすれば全員に負けたようなもんだけどさ。そういうことは先に言っててくれないと。俺は今から4回分コイツらの言いなりにならなきゃならんのか。勘弁してほしい。
「なるべく可能な範囲で頼むぞ」
「今日は私と一緒に寝てもらうわよ」
「......は?無理に決まってんだろ」
「ちょっと絵空?流石にそれはダメだよ」
そーだそーだ、もっと言ってやれしのぶ。大方、前の保健室での誘いの続きとか思ってるんだろうけど。そもそも女の子が家に泊まりにきてるだけでもヤバいのに、それに加えて一緒に寝るとか俺捕まっちゃうよ。別に変なことする気も余裕もサラサラ無いんだけどね。ホントだよ、絢斗嘘つかないもん。
「じゃあ私も一緒に寝る!」
「じゃあってなんだよ!というか由香も悪ノリしてくんなし!」
「なら私も1票入れようかな」
「バカなこと言ってないで止めてくれよ響子......」
「......だったらアタシも」
それからも絵空を筆頭にあれよこれよと無理難題を押し付けられること数十分。なんとか全員説得に成功し、また今度買い物やら何やらに付き合うということで罰ゲームは幕を閉じた。まぁ響子に関しては来週既に約束しちまってるからな。その時に飯でも奢ってやるとするか。
そして、由香と絵空としのぶの三人はリビングで、響子は天音の部屋にて布団を敷いて眠りについた。思い返せば今日一日は中々に濃い内容だった気がする。まぁ偶にはこんな休日も悪くはないか。天音も楽しそうだったし、なんなら母さんも生き生きしてたし。ウチの親父?俺が風呂から出たタイミングで帰ってきやがったから、適当な理由付けて母さんに捕獲してもらいました。それからは見てないな。親父が迷惑かけなくて助かった。
そして翌朝、俺が起きたら目の前に楽園が広がっていたのは別の機会に話すとしよう。
Next→