先ず初めに読者様方の貴重な時間を無駄にしないためにも、第一話を読む前に活動報告に投稿した注意事項を読んで頂けたらと思います。
タグ付け等はご指摘あれば直すかもです。
『IS』『ウルトラマンガイア』のクロスオーバー作品(ウルトラマンはスーツとして登場)です。
人生初の長編作品はりきって行きましょー!
あと三人称視点の文章ですが、二章からは一人称視点にするかもしれません。
第一話 逃亡の果て
ほがらかな笑顔をよく浮かべる人でした。
誰よりもすごい人で、周りの大人達よりずっと物知りだったくせに、いつも子供みたいな我儘で俺を困らせてました。
周りはその人を『天才』と呼んで、敬遠していましたが、俺にとってはよく勉強を教えてくれる近所のお姉さんぐらいの感覚でした。
一緒に研究して、一緒に笑って、互いの夢を語り合いました。
研究が思うようにいかない時もあって、そんな時は必ず俺に八つ当たりしてました。
けど顔は楽しそうで、失敗だろうとあの人にとっては新しい発見のうちだったんだと思います。
あの人のことが好きでした。
あの人に教えてもらったことは、全部がかけがえのないものでした。
あの人と一緒に、無限さえ突き抜けるような夢を見ていたあの時間が、なによりも幸せでした。
……もう思い出に縋るのはお終いです。
いずれこうなる事は必然だった。早いか、遅いかの問題でそれが今だったってだけだ。
人間が利己的な存在である以上、あの人の夢はただの『兵器』としてしか理解されない。そして、それは変えようのない人間の本性だ。
どれだけ間違いを重ねようと、自らの過ちに気付く事は出来ない。
たとえ未来に希望があったとしても、それが実現する事はもう叶わない。
だから先生、あなたの夢は
ここから先には行けない。
深夜の日本海沖合には雲一つ無い。
文明が作り出した光が埋め尽くす陸地では見ることの出来ないような、美しい星明りが大海を静かに照らしていた。
そんな星空の下、一隻の大型貨物船があろうことか船のすべての明かりを消し、日本へ向け航行していた。
本来、陽の光が差し込まない為に昼夜を問わず電灯の光が保たれた船内の廊下も、今は非常用の赤色灯だけが頼りの薄暗さに覆われ、不気味なまでの静寂に包まれていた。
そんな中一人の男が甲板へと続く狭い階段を、息を切らし脚を引きずりながらも懸命に駆け上がっていた。
むさ苦しい長髪はボサボサに乱れている。目尻は上に向けられやや鋭く見えるが、顔立ちは端正と言えるだろう。
それら白髪混じりの頭髪や少し大人びた顔からして、20代後半の様な風貌だが実際にはそれよりもずっと若い。
背丈は大体170後半程度で、痩せ気味のその男はよれた黒いワイシャツの上に所々穴が空き土汚れのこびり付いたカーキ色のコートを羽織っていた。
ズボンの汚れも酷いものだったが、それ以上に目立つのが右のふくらはぎにべっとりと付いた血の跡だった。
出港する間際のこの船に忍び込み、今まで使われていない船室に潜んでいた彼がこうして外に出ているのには理由がある。
異変の始まりは数時間前に遡る。
その時点においては、この船も様子も今とは打って変わった通常航行をしており、各々の持ち場で仕事する船員を散見出来た。
しかし、全くの突然。まるで虚空から出現したかの如く、数人の招かれざる客がこの船に入り込んでいた。
機動性重視の軽装備は夜の闇に紛れるよう黒ずくめに塗装され、マスクと暗視ゴーグルによりその表情はうかがい知れない。
些細な物音一つ立てず船上に、船内の中心部に入り込んで行くその姿は亡霊のごとき不気味さを纏っていた。
無論、船員達が自らの仕事を怠っていた訳ではない。レーダー等の機械面はもちろん、周囲の海を目視で警戒する巡視も生真面目な船乗り達は適切にこなしていたのである。
しかし、彼等の手並みは軽々とその監視網をすり抜けてみせた。
まず彼等は、周囲の海を警戒する船員達に一切気付かれず船長室まで侵入した。
そして就寝中だった船長をその手に持った自動小銃で脅し、船員を食堂に全員集め誰も外に出ないように厳命させてから、悠々と船内で“目標”である彼をを探し始めたのだった。
すぐに船内の異常に気付いた彼は様子を見る為に船室から顔を出したが、運悪くその直後にその集団の一人に遭遇してしまった。
そいつは出会い頭の銃撃により彼の脚を負傷させ、船内の袋小路に追い詰めるべく、数人がかりで包囲網を敷いていた。
しかし彼もいざという時の為、船員達に見つからないように気をつけながら船内を見て回り、その構造を完璧に頭に入れていた。
その為、彼は退路を絶たれる寸前に、手持ちの目くらまし用のフラッシュバンをありったけ使い、命からがら敵の包囲網を突破する事に成功した。
そして今、満身創痍の状態で階段を駆け上がっていた彼は、甲板に出る一つ手前の階の船室に飛び込む事に成功し、中で身を潜めていた。
退路の少ないこの船室に入った事が、普通であれば得策では無い事は彼にも分かっていた。
しかし、彼はこれまでに幾度となく彼等の襲撃に見舞われて来たのだ。この航海でも船員達に見つからないように、冷たい船室で長時間隠れざるをえなかった彼の体力は著しく消耗している。
断続的に襲い来る激しい頭痛と吐き気、冷や汗は先程から止まる気配がなく、それはこれまで蓄積されてきたダメージが限界に差し掛かった証だった。
その為に彼は、このままの状態で敵が張っているであろう甲板に飛びだす前に、せめて少しでも息を整えることを選んだのだった。
しかし、この誰もいないこの船室に入ったことは、今彼が考えている策に必要な準備の為でもあった。
彼は身体の異常を思考の外に振り払い、生還に向けた考えを巡らせていた。
再び見つからないように、そして何より自分を追ってきた“奴ら”が、船員達にこれ以上の危害を加えない事を最優先にして頭を働かせる。
(さっきのは
その根拠は先程船員達に集まるよう放送を流したのが、ここの船長だったからだ。
熟練した部隊が暗殺等の目的で大型船を襲撃する際、大きく分けて2つのやり口があるといわれる。
1つは証拠隠滅の為に船にいる全員を皆殺しにした後に船を沈める方法。もう1つは船長を脅迫し船員達を任務が終わるまで何も知られぬように隔離させる方法である。
後者の方が外部からの注目を集めない分効率的だが、どちらを取るかは主に部隊の規模や技量次第だった。
(くそっ…装備も全部使い果たした。奴らどうやって俺が潜り込んだ船を見つけたんだ……!)
彼は憎々しげにそんな事を考えながら、鞄から包帯を取り出し手際良く止血に取り掛かった。
傷の方は見た目よりは浅いようで、これならば多少激しく動いても問題は無いと彼は判断する。
武装集団は目標がこの船に搭乗している事を確認した以上、殺すか逃げられるかしなければ陸に着くまで船に居る事は明白だった。
しかしその間に船員達が無事である保証は無く、業を煮やした武装集団が船を爆破し、目標共々海の藻屑にしようとすることは充分あり得る。
となれば、彼が考えたのはこの船からの脱出。
それも、武装集団が自分が脱出した事に気付かずに船を爆破することのないように、武装集団に自らの脱出を認知させる必要がある。
彼は立ち上がり、ただ一つそれだけを残して他の中身を失った鞄の中からロープを取り出し、静かに開けた窓に括りつけた。
(普通にこの窓から逃げれば奴等が気づかない可能性がある。なら一度甲板に出て注意を集めた後に、船縁に走り海に飛び込む。そしてそのまま脱出したと見せかけ、この窓から垂らしたロープに掴まり戻ってくる。やはりこの手か……)
ここから日本まではそれなりに近く、泳げない距離ではないが問題があった。
武装集団が船員達に気づかれずに潜入出来たという事は、離れに小型ボートを配置してそこから泳いでこの船に侵入した筈である。
泳いでいる所をボートに見つかる可能性は高く、だからと言って見つからない為に日本まで息継ぎせずに潜っていることは人間技ではない。
(幸いこの距離なら俺が泳ぐと判断したとしても奴等は怪しまないだろう。奴らは闇雲に撃ってくるだろうが、溺死体はすぐに浮かんでくるものでは無い。俺の死体が確認出来なくても不自然では無い筈だ…。)
方針が決まれば、後は覚悟を決めるだけだった。
彼は深呼吸を一つしてドアを細く開ける。
先ほどのようにドアを開けて数歩で敵と邂逅といかないよう、入念に安全を確認する。
敵が潜んでいないと判断した彼は、甲板へ続く階段へ向かうべく部屋を出た。
先ほど上ってきた階段に向かうため、来た道を戻ることになる。
逃げてる最中は必死だったため、気づかなかったが廊下は肌寒く、出血していた傷に刺すような痛みを感じてくる。
相変わらず廊下の電気は落とされたままで、等間隔に取り付けられた非常灯の真っ赤な明かりによって不気味な形相を醸し出していた、
頭痛は激しさを増し、意識が遠のくような感覚さえ感じるようになったが、彼は必死に踏みとどまる。
彼はいつでも動けるように腰を落とし、慎重に、しかし可能な限り急ぎながら進んでいく。
先程走っていた時には一瞬に感じられた廊下の道のりが、今はやけに長い気がした。
得体のしれない冷や汗も、止まらなくなった震えも顧みず、彼は廊下を突き進んだ。
そしてついに、彼は階段へたどり着く。
警戒しながら階下を覗き込んでみるが、先ほど追われていた時とは打って変わり静かであり、船底から腹に響くような低い船のエンジン音が聞こえるだけだった。
上へ続く階段には脇道は無く、ここで敵に挟まれることは、この逃亡劇の悲惨な結末を意味している。
彼はあまりの静寂に一抹の不安を覚えるも、その場で一呼吸置き階段に足をかけた。
階段は少し湿っており、滑らないように一段ずつゆっくりと上っていく。
しかし既に、彼の意識は最早風前の灯火だった。
武装集団との邂逅から今に至るまで、逃げるか殺されるかの極限状態だった彼の神経はすり減りきっていた。周囲を警戒しつつも、意識はどこかぼんやりとした感覚に陥っている。
非常灯の赤い光が幻惑的に揺れ、それはまるで自分を誘っている鬼火のように見えた。
(周りは……誰もいないな? いや、いたところで何になる? 所詮は……くそっ、思考が。……それよりもだ! これまで何人を巻き添えにしてきたんだ!? これ以上はもう誰も……あぁ!またか! いいから真っすぐ進め!)
飛びかける意識の中で自分を叱咤して、なんとか足だけは前に運ぶ。
彼は無意識にポケットに手を伸ばす。中には彼がこうして命の危険を冒してまで日本へ向かう原因となった一通の手紙が入っていた。
「先生、俺は……」
不意に呟きが漏れたところで、彼はふと我に返った。
後方の少し離れたところに数人の気配を感じる。
彼は自分が詰んだ事を悟った。
階段は一本道、逃げ場などある筈もなかった。
最後の最後に油断し、警戒を怠った詰めの甘さに不思議と悔しさは感じない。こんな物か、と幕引きの呆気なさに身体から力が抜けるようですらあった。
彼は立ち止まり一呼吸置く。覚悟を決め、再び歩を進める。
追い詰められた以上ゆっくりと上る必要もなく、後方の足音を捨て置き、残り数段を一息にに上る。
今更ながら、頭痛も吐き気も何も感じなくなっていた。
思考はまるで深い霧が晴れた後のようにクリアだった。
ついに彼は、あれほど遠く感じられた甲板に出る扉の前に立った。
重厚そうな鉄の扉の隙間からは強い光が漏れ出ており、扉の向こうからこちらを照らしていることがわかる。
そしてもう一点、扉で遮られくぐもって聞こええるが、彼は確かに
そこで彼はすべて理解した。
何故、船員たちを一か所に集めたのか。早々に異変に気付き部屋を出るも敵と鉢合わせたのか。警戒していたにも拘わらず、自分が一本道の階段を上り始めてから後ろに付かれたのか。
《船外からのサーモグラフィ透視》 それさえ出来ればこれらの事に合点がいく。
無許可で乗り込んだ彼が船員達と一緒に食堂に集まれるはずもなく、船内に熱源が孤立していれば居場所の特定はたやすい。
だが、いくら熱源を孤立させて見つけやすくしたとしても、通常の赤外線サーモグラフィカメラでは壁を隔てた向こう側の探知など不可能である。
しかし、それを可能とするマシンがこの世には存在する。彼は扉の向こうに“それ”がいることを確信した。
どこにも逃げ場はなく、引き返す事も出来ない。彼は覚悟を決め、ゆっくりと扉を開ける。
凍てつくような潮風が吹き込み、眩いライトに照らされされ一瞬顔を背けるも、歩を進める。
“それ”をにらみつける。
世界のパワーバランスを崩壊させ、それまでのあらゆる技術を過去のものにした天災科学者の夢の結晶。
彼は、自然とその名を口にした。
「インフィニット・ストラトス……ッ!」
読んで頂きありがとうございます。
この作品の主人公である「彼」誰なんでしょうか?
その名は……もう少し先で分かります。
書き溜めがちょっとだけあるので、近々2話も投稿します。遅筆なのは許してほしいです……。