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身体中に走る鈍い痛みと共に、目を覚ました。
(ここは…?)
真っ暗闇の中で、自分が椅子に座っていることに気づく。朝、いつも通りに家を出て学校に向かっていたはずなのに。
ここはどこだ?何がどうなっているんだ?
─様々な疑問が頭の中を一瞬で駆け巡る。首を動かして辺りを見回そうとするが、体が思うように動いてくれない。それは、この一面の暗闇のせいだけじゃないはずだ。
「……?」
ようやく目が慣れてきて視線を下に向けると、鉄製の拘束具のようなもので、手足ががっちりと固定されていた。
(なんだ、これ…!?)
その非日常的な光景を見た瞬間、頭の隅にあった嫌な予感は一気に膨れ上がった。
…何かの事件に巻き込まれた?誘拐?拉致監禁?これから自分はどうなる?─死ぬ?
脳内に突然現れた死という言葉は、ぞくっと全身に寒気を走らせた。…嫌だ。怖い。死にたくない。僕は一体、どうしたらいいんだ?
頭の中でぐるぐるとはてなマークが回る中、突然誰かの話し声が聞こえてきた。
「………。」
「……、………」
誰かに聞かれないよう小声で会話しているのか、内容までは聞き取ることができない。今話しているのは、自分をここまで連れてきた奴らだろうか。
じっと話し声に耳を澄ませていると、だんだんと薄暗い部屋の奥の方まで、目を凝らせば見えるようになってきた。
そこに見えていたのは─
(天使……?)
…真っ白な天使の石像が、闇の中で仄かな青白い光を放っているように見えた。
それを見たと同時に、突然部屋の中に声が響いた。
「─清く正しく生きよ」
声は繰り返し聞こえてくる。
清く正しく生きよ。
清く正しく生きよ。
清く正しく生きよ。
清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。清く正しく生きよ。
(…うるさい。うるさい。清く正しく生きよ、なんて)
「くだらない、よねえ?」
「!」
耳を塞ぐことも出来ず俯いていた僕の耳元で、甘ったるい声が聞こえた。…まるで、僕の気持ちを代弁したような。
途端、先程話していた人の慌ただしい声に続けて、悲鳴のような、断末魔のようなものが聞こえてくる。
一体、何が起きたんだ?僕は助かるのか…?
そんなことを思った次の瞬間、ふわっと甘い、果実のような香りが鼻腔を撫でる。その匂いに誘い込まれるかのように、だんだんと意識が遠のいていく──
「おやすみ、…良い悪夢を」