超特急論破 前編   作:鳶子

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非日常編1

その放送を耳にした後、突然、頭の中にある声が蘇ってきた。

 

『宗形くん、死体を発見した時は、まず呼吸を確かめてください。倒れているだけでは、生死は判断できません』

…最初の捜査の時の、笑至くんの言葉だ。

 

僕は会議室の中に入り、祈るよう思いで月詠くんの首元に手を当てた。

 

──呼吸は、まだあった。

 

「月詠くんはまだ生きてる…!!」

「何だと!?」

「急いで担架を持ってきて!」

「ああ、わかった!僕らが持ってこよう!」

「くぐはらも手伝うですよ!」

スティーヴンくんと芥原さんは、僕の言葉を聞きすぐに駆け出して食堂の前にある担架を取りに行った。

 

彼らがいなくなった間に、僕は野々熊さんに近寄りそっと呼吸を確かめた。

 

しかし、彼女の顔は青白く血色が失せていて、呼吸も既に絶えていた。

 

「くっ……」

僕が野々熊さんに任せずに片付けを手伝っていたら、こんなことにはならなかったのに…!後悔の気持ちがどっと溢れ出て胸を締め付ける。

 

その後、アナウンスを聞いた他のみんなも続々と集まってきた。

 

「野々熊さん、月詠さん…どうして……ああ……」

「一気に2人もなんて、大胆だねえ」

「澄輝くんはまだ生きてるらしいよ〜」

「それは不幸中の幸い、なのかな…」

そう口々につぶやきながら、現場を見つめている。

 

「僕達のために道を開けるんだ!」

担架を持ってきたスティーヴンくんと芥原さんが、慎重に月詠くんをそこに慎重に乗せる。

そして担架を運ぼうと持ち上げた矢先に、モノケンが現れた。芥原さんがムッとした顔でモノケンを見下ろす。

「道を開けるですよ!」

モノケンは意にも介さず首を傾げる。

「オマエラ、月詠クンを一体どこに連れていくつもりなの〜?」

 

「どこって、保健室に…あ……」

そう言いながら気づく。確かに、今まで解放されているマップの中に、保健室の場所はなかった。

「どうするんだ?君はこのまま澄輝君を見殺しにする気か?」

スティーヴンくんがモノケンをぎろりと睨みつける。

「まあまあ、そんな怖い顔しないでよー!ちゃんとアテはあるって!」

 

「校舎のまだ解放されてない場所に保健室はあるから、そこに月詠クンを連れていきまーす!」

「待って、それをモノケン一人でやるのは信用できないよ…!」

僕は慌てて止めようとする。モノケンはつまらなそうに後ろで腕組みをした。

「ふーん、じゃあどうする?このまま治療もしないでただただ月詠クンが死ぬのを待つ?」

「……」

 

モノケンに任せる以外に、方法はないようだ…。

「モノケンは審判的な立場だし、ゲームに関してはルールをきちんと守るんじゃないかな?だからさすがに、月詠さんに危害を加えたりはしないと思うよ」

佐島くんが未だに渋い顔をする2人の間に入り、モノケンに担架を渡すよう促す。

「そうそう、佐島クンはよくわかってるねー!」

「…ッすまない、澄輝君…」

2人はしぶしぶとモノケンに担架を渡し、軽々とそれを担ぎあげたモノケンは階段を下りてどこかに消えていった。

 

「…佐島くんって、こんな時でも冷静なんだね」

何食わぬ顔でいる彼に僕は思わず声をかけてしまった。

「うん?いつでも冷静な判断ができるのはいいことじゃないのかな」

「それは、そうなんだけど…ううん、何でもないや。ごめん」

やっぱり彼からは、人間味のようなものが感じられない。こういう時に彼と話していると…なんというか、背筋が凍るような気持ちだ。

 

僕は最初の裁判の後から、佐島くんに対して純粋な恐怖のようなものを覚え始めていた。

何を考えているのか、これから何をするつもりなのか、彼に関してはあの笑至くんでさえ掴めなかった部分が多くある。

わからない…だからこそ、怖い。それが今の彼に対する率直な気持ちだった。

 

でも今、彼について深く考えている余裕はない。僕は頬をパチンと叩き、気持ちを切り替えた。

早く捜査を始めて、野々熊さんを殺害し、月詠くんを襲った犯人をなんとしてでも探し出すぞ…!

 

サポートしてくれる探偵助手がいなくたって、僕にはまだ頼れる仲間がたくさんいるはずだ。彼らと共に、この事件の真実を導き出すんだ!

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