超特急論破 前編   作:鳶子

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非日常編3

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「それじゃあ、改めてルール確認だよ。今回の裁判では、野々熊サンを殺害したクロを見つけてね。議論の後、投票でクロを決めて、合ってたらクロ1人がおしおき、間違えたらクロ以外の全員がおしおきで、クロは晴れて卒業だよ!」

 

「それでは、議論スタート!」

 

「…えっと、まずは状況を整理してみようか」

僕は心臓が早くなるのを感じながら話し始めた。1人で話を切り出すのはやっぱり緊張するな…。

「野々熊さんは2階の研究教室Ⅲ─月詠くんの研究教室のドアの前で見つかって、その後、会議室の中で頭から血を流した月詠くんが見つかったんだ」

 

「くぐはら達が最初に見つけました!担架も持ってきたですよ!」

芥原さんがぴんと手を上げた。スティーヴンくんも頷いて同意している。

「野々熊さんの遺体だけならまだわかるんだけど…月詠さんは、どうしてそこにいたんだろうね?」

佐島くんが不思議そうに首を傾げる。

 

「月詠くんは、後片付けの帰りが遅かった野々熊さんを心配して、会議室に見に行ったんだよ。僕達は芥原さんの鶏…えっと、ピーちゃんを探しに会議室まで行ったところで、2人を見つけたんだ」

「…なるほどね」

僕が説明を終えると彼は頷いた。

 

「2人を襲ったのって、同じ人なんすかね?」

片原さんが首をひねりながら僕の方を見る。

「それは…まだ分からないんだ」

「あ、そうそう、ボクちょっと思ってたんだけどさ」

僕が答え終わると、根焼くんがふいに声を上げる。

「月詠がクロのときって、どうすんの?」

 

「え…!?」

予想外の指摘に動揺してしまった。それは全く考えていなかった可能性だ。

「だって、月詠が野々熊さんを殺った後に偽装工作でわざと怪我したのかもしれないじゃん。ふーん、そこまで考えてなかったんだ?」

「そ、それは……」

僕が答えられずにいると、モノケンがゴホンと咳払いを一つした。

 

「学園長のボクが責任をもってお答えしましょう。月詠クンがクロの時はね、別の日にみんなを集めておしおきするよ!」

「なっ…」

「へー、ありがと」

モノケンがそんな風に言うってことは──信じたくないけれど、月詠くんがクロだという可能性も残っているということなんだろう。

 

「…確かに、ママ…じゃなかった、月詠さんが野々熊さんを殺したっていうのも有り得るかもしれないよね。近付きやすさ、みたいなのからしても月詠さんなら野々熊さんと仲がいいし、警戒されないんじゃないかな…」

陰崎さんがおずおずと発言する。

「でも、あの子がそんなことするかしらねぇ?」

「おにいちゃん…やさしい……そんなこと…しない…」

揚羽くんは納得のいかないように首を傾げ、掃気さんはふるふると首を横に振っている。

 

「普段優しそうな人だって、案外変貌するかもしれないよ?最初の事件の時みたいに」

「佐島くん、笑至くんは…!」

彼が何気ない顔でそう発言したのに反応して、無意識に体が強ばる。それを"真実"として語らないでほしかった。

「本人が最後までやってないって言ってただけだよね。真相なんてもうわからないよ」

「……ッ」

 

「こむぎ君、話が逸れているぞ。今はひろ君と澄輝君の話をしているんだろう?」

スティーヴンくんに指摘され、ハッとなった僕は慌てて話を戻す。

「ごめん。えっと、月詠くんが殺害したっていうのもありえるかもしれないけど、僕は違う可能性があるんじゃないかなって思ってたんだ」

「わかるよ、宗形さん…」

切ヶ谷さんが目をつぶってうんうんと頷く。

 

「野々熊さんも月詠さんも頭から血が出てたんだから、2人がたまたま頭をごっつんこしちゃったっていう可能性だよね!」

「………」

「あれ?違うの?(゜▽゜)」

この場にいる全員が苦笑いというか、呆れ顔をしている。心なしかモノケンさえも、逆の意味であまりの推理力に困惑しているように見える…。

 

「小町…よくその推理を言おうと思ったワね……」

「え!?違うの!?違うならもっと早く言ってよ、宗形さん!」

「ええ…!?ご、ごめん……」

「あんたも謝るところじゃないワよ」

しまった、ついコミカルな感じになってしまった…。時間にも限りがあるし、早く話を進めないと。

 

「そ…それで、他の可能性って何ですか…?」

荒川さんがそっと遠慮がちに尋ねてきてくれる。

「月詠さんが、野々熊さんが殺害されてるところを目撃しちゃったっていう話でしょ?」

僕が答えるより前に、佐島くんが答えてしまった。

「うん…そ、そういうことだよ……」

 

「で、でも、死体発見アナウンスが鳴った時間から、第1発見者は芥原さんたちじゃないの…?」

「今回は死体をクロ以外の人が発見してから3人になったところで鳴るらしいよ!よくわかんないけど」

陰崎さんの疑問に切ヶ谷さんが自慢げに答えた。本当によくわかってないんだろうけど…。

 

「じゃあ、澄輝くんと他の誰か、両方の可能性がありえるってことだね〜」

妄崎さんはもう納得したみたいだ。流石は小説家だ、頭の回転が速い。

「え?どういうこと?桃はまだよくわかんないっす!」

片原さんの頭の中では、まだはてなマークが飛び交っているみたいだ。

 

「…えっと、つまりこういうことだよ」

 

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「僕とスティーヴンくん、芥原さんは3人同時に死体を見つけたから、死体発見アナウンスがどこで区切れていたのかがわからないんだ」

「なるほど!」

「…もこも…ちょっと、わかった……!」

「そういうことかー、ボクもわかったよ!」

よかった、死体発見アナウンスの問題については理解してもらえたみたいだ。

 

「その、他の誰かっていうのに目星はついているのか?」

スティーヴンくんが僕に尋ねる。

「野々熊さんの死亡推定時刻が午後1時頃だったから、その時間にアリバイのない人…だと思うよ」

「Hhm…僕達は芥生くんとピーちゃんを探していたし、その後宗形くんとも合流していたからアリバイはあるだろうな」

 

「そうだね。僕がお皿を洗ってた姿は食堂に残ってご飯を食べてた掃気さんが見てるはずだよ」

「もこ…みてた、おさら…。おにいちゃんも、もこのこと…みてた…?」

「うん。掃気さんは食べるのがゆっくりだから、1時頃はまだ食堂でおにぎりを食べてたよ」

「これで僕達、芥生くん、こむぎくん、喪恋くんのアリバイは成立しているな」

 

その後順番にアリバイを聞いて行ったけど、僕達の他に確実なアリバイのある人達はいなかった…。

事件の真相が全く掴めないまま、時間だけが刻々と過ぎていく。

 

 

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