超特急論破 前編   作:鳶子

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非日常編5

✧ ✧ ✧

 

 

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▹▸「ひめかは犯人じゃない!!」

 

 

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▹▸「非力なひめかが野々熊さんを殺せる訳ないじゃん…!!」

 

▹▸「背後から近づいても、気づかれておしまいだよ!!」

 

▹▸「もし抵抗されたらどうするの…!!?」

 

▹▸「バレずに背後に回るトリックなんて、ある訳ないじゃん!!!!」

 

 

◎ リボン

△ 髪を結ぶ

□ 野々熊

✕ の

 

【野々熊の髪を結ぶリボン】

 

BREAK!!!

 

 

 

 

「…陰崎さんが、野々熊さんに不審感を抱かせずに背後に回る方法はあるんだ」

「そ、そんなの、ある訳が……」

 

「陰崎さん。君は、野々熊さんの髪を結び直してあげるふりをして背後に回り、そのまま彼女の首を強く絞めたんだ」

「……ッ!!」

陰崎さんは、何も反論できなかった。僕は最後の推理を始める。

 

 

「…陰崎さんは、1人で片付けをしている野々熊さんを見つけ、髪を結び直してあげると言い、彼女の背後に回って首を絞めて殺害しようとしたんだ。

しかし、彼女の首を絞めている途中に、会議室に野々熊さんの様子を心配した月詠くんが入ってきてしまったんだ…!」

 

「突然の乱入に驚いた陰崎さんは、思わず手を離してしまい、支えを失った野々熊さんは壁に頭をぶつけてしまった。そして、突然の状況に驚いた月詠くんは駆け寄ろうとして転んでしまい、頭を強く打って倒れてしまったんだ…。

陰崎さんはかなり焦っただろう。しかし、彼女はそれを利用し、ある計画を思いついた」

 

「月詠くんに野々熊さんを殺害した罪をなすり付ける計画だ。そこで、陰崎さんは月詠くんを壁際に移動させ血を拭き取り、わざと怪我をしたようにも見えるようにしたんだ。

その後、陰崎さんは研究教室のドアノブに野々熊さんの遺体を引っ掛けた。髪を縛るふりをして絞殺したとバレないようにね…!」

 

「そう、この事件の犯人は、君しかいないんだ! "超高校級のギャグ漫画家"、陰崎ひめかさん……!!」

 

 

 

「……やっぱり、見破られちゃったな…」

 

「はいはーい!議論終了だよ!」

陰崎さんがつぶやいた後、モノケンが元気よくそう告げた。

「ここからは投票に移りまーす!ひとりひとり、クロだと思う人に投票してね!前にも言ったけど、投票を放棄した場合はその人も死ぬからね〜」

 

「それでは、投票スタート!」

 

 

▹▸投票先を選んでください

 

▷揚羽鳳玄

▷荒川幸

▶陰崎ひめか

▷笑至贄

▷片原桃

▷切ヶ谷小町

▷芥原芥生

▷佐島俊雄

▷スティーヴン・J・ハリス

▷掃気喪恋

▷月詠澄輝

▷照翠法典

▷根焼夢乃

▷野々熊ひろ

▷宗形こむぎ

▷妄崎しなぐ

 

僕は、陰崎さんに票を入れた。

 

 

「それじゃ、投票結果を発表するよー!」

 

 

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「さてさて、投票多数によってクロに選ばれたのは陰崎サンでしたー!さあ、ワクワクドキドキの結果発表だよー!」

 

「今回、野々熊サンを殺害したクロは…」

上からモニターが現れ、みんなのドット絵がくるくると回り──

 

陰崎さんのところで止まった。

 

「"超高校級のギャグ漫画家"陰崎ひめかサンでしたー!おめでとうございまーす!」

モノケンの威勢のいい声と共に、天井からカラフルな無数の紙吹雪が舞い降りてきた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

✧ ✧ ✧

 

 

「………」

閉廷後の裁判場は、沈黙に支配されていた。

「…陰崎さん、君は、どうして……」

「…うん。ちゃんと話すつもりだから、安心して」

陰崎さんは落ち着いた様子で頷いた。

 

「陰崎さん…。どうして……ひぐっ…うう………」

荒川さんはぼろぼろと大粒の涙を零している。それを横目に見ながら、陰崎さんは申し訳なさそうに告げた。

「…ひめかは、自分の動機ビデオを見ちゃったんだ」

 

「動機ビデオ…!?」

「ああ、あれってどんなものが映ってたの?超気になるんだけど」

根焼くんは陰崎さんの告白より動機ビデオの内容に興味津々だ。

「夢乃君、そういう態度はやめろと僕達全員が言っている」

スティーヴンくんがそんな彼を厳しい顔で注意した。

 

「いいんだよ。ひめかが全部悪いもん」

陰崎さんはゆるゆると首を横に振り、話し始める。

 

「動機ビデオには…ひめかのママが映ってた。ママはどこかに監禁されてて、泣いてて、ひめかの名前を叫んでて…すごく苦しそうだった」

 

「ママは、ひめかがデビューする前から、ずっとひめかの漫画を読んでくれてた…ひめかのギャグ漫画の初めてのファンは、ママなんだ。ひめかの描き始めたばっかりの下手くそな漫画をママはずっと上手だねって、おもしろいねって褒めてくれてた。ママのお陰で、ひめかはここまで頑張れたの」

 

「だから、ママが酷い目に遭ってるのを見て、早くここから出なきゃって思った。

ゲームが終わるまで待ってたら、とろくてバカなひめかは誰かに利用されて、笑至さんみたいに冤罪で処刑されて、ママのところに行けないかもしれない。ママを助けられないかもしれない」

 

「だから、クロになって卒業して、一刻も早くここから出なきゃって。

殺害方法は、ひめかが自分で描いた、ママがトリックがすごいって1番褒めてくれた漫画を参考にした。それで、ひめかは野々熊さんを殺して、月詠さんを利用してクロにしようとしたんだ。

──これで、ひめかが話せることは全部だよ」

 

「そんな………」

裁判場は、再び長い沈黙に包まれた。

「そんな理由でも、おしおきされなきゃいけないんですか…!?何か、他に方法は……っ」

荒川さんが必死にモノケンに向かって叫ぶ。

「…どんな理由であろうとも、あの子が人を殺したことに変わりはないワ」

揚羽くんが静かな声でそう告げた。

 

「そうだよ」

陰崎さんはこくりと頷いた。

「おしおきはひめかだから、ひめかがバカだから野々熊さんを殺しちゃったんだよ。でもひめかのせいで他の子が黒幕さんに騙されて、笑至さんみたいになにもやってないのに殺されちゃうのも、やだから」

そう言って陰崎さんは、涙でぐちゃぐちゃの顔を歪めて無理やりに笑ってみせた。

 

「陰崎さん……」

僕らは、それ以上彼女に向かって何も言うことができなかった。

 

「それじゃ、そろそろおしおきの時間だよー」

モノケンが体を揺らしながら楽しそうに言う。

悲痛そうな顔をしている面々を見て、陰崎さんは再び口を開いた。

 

「…みんなは、ひめかみたいにバカなことしないでね。みんなならきっとこのゲームを終わらせられる。ハッピーエンドにできるよ。

だから、最後に笑って終われるように、戦い続けてね。ひめかもずっと、どこかで応援してるから。この物語の第一のファンは、ひめかだから!」

 

 

「うんうん、よく分からない感動シーンも終わったみたいだし、やっていきましょう!」

モノケンが笑いながらそう言ってハンマーを構える。

 

「それでは張り切っていきましょうっ、おしおきターイム!」

 

モノケンがボタンを叩いた。

 

 

▼いんざきサンがクロに決まりました。おしおきを開始します。

 

 

 

 

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ここは、今年のマンガ大賞の授賞式。最優秀賞候補にノミネートされた二匹のモノケンと陰崎さんは、ステージの上に立っていた。

 

会場はトーンやベタで囲まれた漫画の中のような白黒の世界で、陰崎さんだけがカラーの状態でステージの上に立っている。

 

いよいよ、最優秀賞の発表だ。会場が暗転する中、スポットライトが候補者の辺りをぐるぐると回り──

 

パッと陰崎さんを照らした。

 

最優秀賞に選ばれたのは、陰崎さんだ。彼女を応援していた観客席のモノケンの被り物を被った人達がステージに登ってきて、喜んで踊り回り、陰崎さんを取り囲む。

 

そしてそのまま…胴上げを始めた。

陰崎さんはモノケン達の中央で、何度も高く宙に舞い上がる。

 

永遠に続くかのように思われた胴上げだったが、陰崎さんをひときわ高く上げたあと、突然モノケン達が元いた場所をさっと離れた。

 

彼らがどいたそこには……大きな、底の深い真っ黒な穴があった。

 

 

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陰崎さんは真っ逆さまに穴の中に落ちていき、鈍い音と共に、血の代わりに真っ黒なインクを撒き散らした。

 

その様子をモノケン達は手を繋ぎ、大爆笑しながら見ていたが、やがて見飽きたようにすたすたと去っていった…。

 

☆ご愛読ありがとうございました!陰崎先生の次回作にご期待ください──・・・!

 

「………」

 

あまりにも、皮肉で、悲惨で、笑えない。

彼女の人生は、そんなお粗末なラストシーンを迎えて終わった。

 

✧ ✧ ✧

 

暗い部屋の中に、モノケンと一つの人影が佇んでいる。

 

「お願いだよー、もうキミにしか頼めないんだ!」

モノケンは人影に向かって手を合わせる。

 

人影はため息をついた。

「…どうせ、拒否権なんてないんだろう」

「うぷぷぷ…なーんだ、わかってるんじゃん!断ったらもちろんどうなるかわかってるでしょ?」

 

「………」

「ま、そういう訳で!これからよろしくね〜」

モノケンが握手を求めるように差し出した手には目も暮れず、人影は小さな声で承諾した。

 

「…うん」

 

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【2章 END】

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