超特急論破 前編   作:鳶子

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非日常編3

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【挿絵表示】

 

 

「それじゃあ、議論再開だよ!残り時間も少ないし精一杯頭を使ってこの事件のクロを考えてくださーい!」

 

お願いだから悪い理由ではありませんように、と祈るような気持ちで、僕はもう一度笑至くんに尋ねる。

「…笑至くん、君が照翠くんを呼び出した本当の理由は何なの…?」

 

笑至くんは僕の問いかけに視線を落とし、重たい口を開いた。

「まずボクは、このコロシアイには必ず黒幕がいるはずだと思いました。内部に主導している人間がいない限り、こんな大掛かりなことをするのは不可能ですから」

 

「…そして、黒幕を探していたボクは、今までの言動から彼─照翠くんを、黒幕だと睨みました。そこで彼を問い詰めるために呼び出して2人きりになるようにしたんです。今思えば迂闊な判断でした。まだ黒幕が彼だとは限られていなかったのに……」

彼は自分の思慮の浅さを悔いるように、この裁判で何度目かのため息を吐いた。

 

「ボクは、真の黒幕に嵌められたんですね。どうやら彼はダミーの、内通者か何かだったようです。ボクはまんまと騙され手のひらの上で踊らされて、こうして犯人に仕立てあげられている…」

 

笑至くんは、顔を上げて僕を見つめ返した。その視線から先程の厳しさは消え、どこか自嘲の念を感じさせる寂しげな目をしていた。

「これが真実ですよ、宗形くん。ボクは殺人なんて犯していない。罠にかけられた愚かな容疑者なんです」

 

 

─笑至くんは黒幕を打倒するために僕に相談せず、1人で暗躍していた。優しい彼は、きっと他の人を自分の行動に巻き込みたくなかったんだろう。そして、そこを突かれて黒幕に嵌められてしまったんだ…。

僕達が彼の言い分に納得しかけていたその時。佐島くんがまた口を開いた。

 

 

「それってさあ、君が処刑されたくないから黒幕を探してたって、嘘をついてみんなを言いくるめてるだけとも取れるよね。裁判でずっと主導権を握ってたし、本当は最初からみんなを間違った方向に誘導して、自分だけ卒業するつもりだったんじゃないの?」

全く悪気のなさそうな…むしろ純粋な疑問で満ちているかのような目で、佐島くんは問いかけた。

 

笑至くんは彼を睨み、忌々しげに口を開く。

「…貴方はどうしても、ボクを犯人にしたいんですね」

「違うよ、僕はただ事件を解決したいだけだ。さっきと同じで可能性を提示したに過ぎないのにそこに食いついてくるってことは、そういうこと─図星になるのかな」

佐島くんは予想通りの反応だと言わんばかりに、また小さく嘲笑を零した。僕は思わず聞き返してしまう。

 

「笑至くんが、1人で卒業する気だった…?」

嘘だ。そんなはずは…。だって彼は最初からこのコロシアイを否定していたはずだ。僕達を殺して、1人で卒業するなんてこと、笑至くんが考えるはずがない……!

 

「…ボクが黒幕を探していた、という証拠はありませんから…もう信じてもらうしかありません。ボクは殺人なんかしない、このコロシアイを止めるために動いていたんです。みなさん、ボクを信じてください」

「信じるって…人を疑うのが職業の君が言うんだね」

必死に訴えかけるような彼の言葉に、佐島くんがやや呆れたように応酬する。

 

笑至くんもまた、呆れたと言いたげに首を横に振った。

「そもそも、貴方の主張は理性的ではありません。ボクに当てつけるような感情で話していてもそれは感情論になっているだけです。それでは一時的に場を乱すだけで、裁判の場では通用しないということをいい加減おわかりになったらどうですか?」

 

「その感情論とやらで現に追い込まれてるのは君だけどね。わかった、そこまで言われるなら黙るよ」

それっきり、佐島くんは先程までの勢いが嘘のように何もしゃべらなくなった…。

裁判場が久々の静寂に包まれる中、笑至くんが僕に向き直る。

 

「…宗形くん。ボクの主張を覆したいなら、ボクの殺人に確信を持てる証拠を提示して、追い詰めるしかありませんよ」

「………」

 

『照翠くんが黒幕側の内通者であり、自分は黒幕に嵌められた』という笑至くんの主張は一貫して変わらず、彼は殺害を一向に認めようとしていない。だけど、現時点では彼以外に動機がある人がいないのもまた確かな事実だ。

 

笑至くんの主張を覆す証拠を探して、新たな真実を見つけ出すんだ。例えそれが僕らを引き裂く、残酷なものだったとしても…!

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