ガンダムビルドダイバーズ アナザーテイルズ   作:守次 奏

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後ハメ加工をミスってパーツが緩くなったので初投稿です。


第十六話「涙の昨日にサヨナラ」

 リリカが提案したのは、再びシャフランダム・ロワイヤルに挑むことだった。

 勿論、完全ランダム抽選での即席チーム戦という都合上、乱数の女神様の気まぐれによって再びあの「MS斬りの悪魔」だとか、様々な二つ名持ちクラスのダイバーに出会す可能性も考えられる。

 それでも、受けた敗北を、屈辱を注ぐのであれば江戸の仇は江戸で討つの精神で、リリカはミワにその提案を持ちかけたのだ。

 そして、奇しくもミワもまた同じ心境だった。

 最近は返上したいとはいえ二つ名を貰っていたことで浮かれていたところがあったのかもしれない。

 上には上がいる。当たり前のことが抜け落ちていたからこそ、今度は例えアズキとエンカウントしても正射必中の一撃で一矢報わんと、それが可能かどうかはともかくリリカに勝るとも劣らない闘志を燃やして、再びこの電子の海にミワは戻ってきたのだ。

 

「うんうん、いいねぇいいねぇ、ぐっどだよリリカちゃん。ミワもそう思ってたところだよ〜」

「……お姉ちゃん」

「今回はお姉ちゃん、いつもより気合入れちゃわないとねぇ」

 

 シャフランダム・ロワイヤルの都合でアズキと出会えなかったとしても、初めて挑んだ戦いの場で雪辱を晴らせるのであればそれに越したことはない。

 意を決して、二人はミッションを受注するためにカウンターへと並んで、順番を待つのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 今回抽選で選ばれたステージはジャブロー、密林が広がり、水中地帯が存在している都合から多方向からの奇襲を常に想定して動かなければいけない、GBNでも屈指の難易度のステージだ。

 リリカは僅かに設けられた出撃までの時間と、地下の格納庫から出撃したAGE-1ブランシュが大地へと降り立つ瞬間まで、その概要を確認していた。

 シャフランダム・ロワイヤルであろうが正規のフォース戦であろうが、ジャブローというステージは基本的に侵攻側、原作ではジオン公国軍が担っていたポジションと、その反対である地球連邦軍が担っていた防衛側に割り振られることとなる。

 そして、地下のハッチから出撃してきたということは、リリカたちは防衛側──つまり、上空からの攻撃に対処しなければいけない側であるということであった。

 シャフランダム・ロワイヤルにおいて幸いなのは、地下基地までのハッチの防衛という原作を再現した要素がなく、侵攻側も防衛側も基地への攻撃と防御を無視して、あくまで敵機の撃墜のみが単純な目標となるところだ。

 だが、それでは防衛側が不利すぎる──と、いうことで防衛側に所属する利点として、各所に設置されたトーチカやら砲台からの火力支援を受けられるように設定されているのだが、所詮はNPDが操っているものなので命中精度に関してはお察しといったところだろう。

 僚機であるジム・スナイパーIIと量産型ガンキャノン、そしてジム・コマンドと見事に「ポケットの中の戦争」に出てくる量産機たちを一瞥して、微かな疎外感を覚えながらもリリカはミワが陣取った狙撃ポジションを、データリンクによって受け取る。

 

「……相手がわからないなら、慎重に行かなきゃ……」

 

 シャフランダム・ロワイヤルにおいて厄介なのは、誰かが最初にエンゲージするまでの間まで、敵が五機であること以外は何もわからないところが挙げられる。

 構成もわからないアンノウンとの交戦と言い換えれば、そこに燃える要素を見出すダイバーも少なからずいるのだろうが、リリカとしては、ミワのフリーダムルージュがAWACSディンのパーツを採用していることで索敵に優れているとはいえ、見えないことは不安でしかなかった。

 先日のブルーディスティニーコンビが早々に突っ込んで爆散していったのは対照的に、ポケットの中の戦争トリオは量産型ガンキャノンを後衛に置いて、ジム・コマンドとジム・スナイパーIIが突撃前衛を務める形で慎重に戦線を押し上げていく。

 

「この前のに比べたら、できるみたいだねぇ」

「……え、えっと……うん……」

 

 嘆息しつつ、狙撃ポジションに身を潜めていたミワからの通信にリリカは控えめな同意を返す。

 とはいえ、あのコンビがプレイングミスをしていたとはいえそれをわざわざ掘り起こすのも気が引ける、ということで、その返事は曖昧なものとなっていた。

 じりじりと、心臓を、そして胸の奥を焦がしていくような緊張感が、リリカが操縦桿を握る手に、じわりと汗を滲ませる。

 

「……ね、ねえ、お姉ちゃん……」

「ん、どしたのどしたの、リリカちゃん」

「……あ、あの……ジム・スナイパーIIって……」

「ああうん、それはねそれはね……割と複雑だから帰ってから話すよ〜」

 

 どこか緊張を誤魔化すようにリリカはミワへとそう問いかけていた。

 クリアリングを行った旨を通信で送ってきた突撃前衛コンビに従う形で、僚機の量産型ガンキャノンと共にゆっくりと戦線を押し上げている最中に、思考を横道に逸らすのはあまり推奨されたことではないのだが、それにしたってやけに静かすぎて不安になってくるのだ。

 そして、ミワから返ってきた答えもまたあやふやなものであったのだが、これについてはジム・スナイパーIIという機体の特性がそうさせるものであるのだから仕方がない。

 リリカは当然のように小首を傾げるが、一年戦争におけるジム・スナイパー系統の役割と開発経緯と名前に関しては、非常にややこしい事情が絡んでいるのだ。

 ジムスナイパーとジム・スナイパーIIは開発経緯も技術系統も別物だし、なんならそこにジム・スナイパーカスタムが絡んできた日には熟練のガンダムマニアでさえも説明に困るレベルでごちゃごちゃと、フレーバーテキストがタコ足配線のように絡み合う。

 ただ、要するに覚えておけばいいのはジム・スナイパーIIは別にスナイパーとしてだけ活躍する機体ではない、ということだけだ。

 ミワからのそんな補足に、納得こそしきれなかったもののリリカは突撃前衛を務めているということはそういうことなのだろうと割り切って、周囲の警戒と索敵に戻る。

 そして、アラートが鳴り響いたのはその瞬間だった。

 

『こちらスカーレット1、敵機体に接敵!』

『スカーレット2、エンゲージ! スカーレット3に合流と火力支援を求む!』

 

 どうやら先行していた二機のジムは敵と接触したようだ。

 通信ウィンドウに割り込んできた、地球連邦兵のコスチュームに身を包んだ青年が、リリカが随伴機を務めていた量産型ガンキャノンへと火力支援を要請する。

 ここまではごく自然な流れだ。

 遊撃手としてリリカもミワの狙撃ポジションを確保しながらも手伝いに向かった方がいいのだろうかと思案した、その瞬間だった。

 

『スカーレット3了解、合流のために吶喊する!』

「ちょ……っ!?」

 

 オープン回線で通信を聞いていたミワが愕然とする程度に、スカーレット3を名乗るダイバーの行動は常軌を逸していた。

 こともあろうに、機動力の低い量産型ガンキャノンで、肩部分のキャノン砲と手にしたプルパップ・マシンガンを斉射しながら前衛のジムコンビへと合流すべく、脇目も振らずに突っ込んでいったのである。

 リリカも一瞬硬直し、思考回路が火花を吹き上げてショートしかけるが、動き出そうとした時には後の祭りだった。

 

『スカーレット隊全滅! 貴官らの健闘を祈る!』

「……え、えぇ……」

 

 出会い頭に二秒も経たず三機を示す青い点はレーダーから消失する。

 それが彼らの宿命だったのかロールプレイだったのかはわからない。

 ただ、スカーレット隊を名乗っている以上その名前が厄ネタというか原作においても似たような感じで全滅していたものであるとリリカは知らないが、いっそ鮮やかなまでの全滅っぷりに、ミワは頭を抱えていた。

 そして、開いた口が塞がらないといった風情のリリカを置き去りにして、戦線は徐々に押し戻されていく。

 一応、レーダーを確認する限りではスカーレット隊の二人が敵の一機を撃破するというキルスコアは挙げてくれていたようで、明滅する赤い点は四つとなっているのが不幸中の幸いといったところだろう。

 しかし、じりじりと戦線を押し返されているような感覚に包まれていながらも、明確に敵からの弾が飛んでこないというこの状況は、どこか異常でさえある。

 敵には何かがあって、そして何かがいる。

 動いても動かなくてもまずいこの状況でどちらのリスクを取るか──リリカの答えは決まっていた。

 

「……お姉ちゃん、私……その、突っ込むから……!」

「背中は任せられたよぉ、リリカちゃん。そして多分だけど……気をつけてね、敵にもきっと狙撃手がいるみたいだから」

 

 ミワからの激励を背中に受けると、リリカは一度深く息を吸い込んで、AGE-1ブランシュのスラスターを全開にして敵陣へと吶喊をかける。

 ミワの予測は、奇しくもリリカと合致していた。

 敵が二機だけになったにも関わらず、弾幕砲火で密林を切り開いてこないのは、そしていかに鈍重であったとはいえ量産型ガンキャノンという装甲値の高い機体が一瞬で落とされたのには、きっとスナイパーの存在が絡んでいる。

 モニターが捉えた敵は、ゴッグとハイゴッグという水陸両用コンビと、そして全身を光り輝く金メッキ調の塗装で覆ったハイペリオンガンダムというなんとも、いろんな意味でハイペリオンが浮いた構成だった。

 

『飛んで火に入るなんとやらだな、挟撃をかけるぞ!』

『了解!』

 

 いつ、どこから隠れ潜んでいるスナイパーからの弾が飛んでくるかわからない状況で、三対一という不利な条件を捌けというのは中々の、否、かなりの無理難題であるといえた。

 だが──リリカは決して、ビギナーズラックだけで生き残ってきた訳ではない。

 恐らく水中戦を想定して用意したのであろうゴッグとハイゴッグだが、機体の特性としては奇しくも数秒で爆散した量産型ガンキャノンと似ている──というより、カテゴリ上機動力より装甲値の方が高い機体群に分類されている。

 ならば、イニシアチブを握っているのはこちらの方だ。

 ニードルガンを牽制射撃として放ちつつ、ゴッグがその腕で針のような弾丸を受け止めたのを確認すると、リリカは躊躇いなくメガ粒子砲の発射口を狙って、ドッズライフルのトリガーを引く。

 

『フハハハハ、バカめ、これぐらいゴッグならなんとも──うおおおああああっ!?』

『カラサーっ!?』

 

 ゴッグの装甲圧は、確かに原作においてはガンダム・ハンマーを素手で受け止めるほどに分厚く頼り甲斐のあるものだ。

 だが、ドッズライフルにはパッシブスキル──D.O.D.S.効果と呼ばれる、粒子に螺旋状の回転をかけて撃ち出すことで貫通力を強化する機構が付与されている。

 そして、メガ粒子砲の砲口が、ゴッグの中でも脆い部分であったことも相まって、ゴッグを操っていたダイバー、「カラサ」はスカーレット3と同じ道を辿ることとなった。

 

『貴様、よくもカラサをやってくれたな!』

「……来る!」

 

 頭に血が上ったのか、ハイゴッグを駆るダイバー、「カミンスカヤ」は凛とした叫び声をあげながら、腕部に装備されたメガ粒子砲を放つ。

 そして、もはや何もいうまいと呆れているのか、全身を金色に包み込んだハイペリオンはリリカの死角を突こうと、ビームマシンガンを乱射しつつ背後へと回り込んでくる。

 ──ならば、これは使えるだろう。

 瞬間、忌まわしきクソゲーの記憶が、リリカの中にリフレインした。

 あの金色のハイペリオンとやらがどんな攻撃を有しているかはわからないが、少なくともメガ粒子砲の射線は自分を挟む形でハイペリオンにも向いている。

 だったらあの侍同士のバトルロワイヤルでは常套手段と化していたフレンドリー・ファイアが狙えるというものだ。

 

「お願い、ブランシュ……!」

 

 ──跳んで。

 リリカの言葉に応えるかのように、わずか一瞬で腰部のスラスターによる逆制動をかけたAGE-1ブランシュはそのまま地面を蹴ると、バク宙の要領で跳躍する。

 しかしその迂闊な先飛びはいかにも、潜み、隠れているスナイパーからすれば狙ってくださいと言っているようなものだ。

 案の定、コックピットに迫る警告音を聞いたリリカだったが、その瞳に焦りはなく、ただ冷静に迫りくる一発の弾丸を迎え入れようとしていた。

 何かが砕けるような音と共に、一瞬でAGE-1ブランシュのコックピット内はコーションアラートを示す黄色の光に包まれる。

 本来であれば、ブランシュは爆散していてもおかしくなかった。

 だが、リリカは跳躍する寸前、バックラーで自身のコックピットを庇い立てていたのだ。

 確かに狙撃手の弾丸は正射必中を体現するように、リリカのコックピットを捉えていたかもしれない。

 攻撃によるノックバックでバランスを崩し、地面に背中から叩きつけられながらも、リリカは短く詰まった息を吐くと、その口許に控えめながらも獰猛な──ミワとよく似た、捕食者としての笑みを覗かせた。

 確かに、スナイパーライフルという武装は装弾数が少なく、リロードも長めに設定されている。

 だからこそ、絶好の機会が巡ってきたのなら、狙撃手がコックピットを狙うのはごく自然な流れだ。

 逆にいえば、「その機会において、狙撃手が狙うのはコックピットに絞られる」ということでもある。

 リリカは、それを読み切ったのだ。

 勿論それを承知しているからこそ敢えて、次弾で確殺すべくメインカメラやスラスターを狙ったりするスナイパーも数多くGBNには存在しているのだが、仮称スカーレット隊を見事に自身の手管で全滅に追い込んだことで、きっと僅かな慢心がそこには存在していたのだろう。

 

「……お姉ちゃん!」

「おっけ、おっけー……ありがと、リリカちゃん! 狙いは……ついたよぉ!」

 

 そしてリリカが跳躍したのは、同じく狙撃手として陣取っているミワに、敵のスナイパーが展開した射線を伝えるためだ。

 射線を読まれるというのはスナイパーにとって自らの居場所を晒すに等しい。故にリリカを狙撃したその機体──ザクⅠ・スナイパータイプは立ち上がり、ポジションを移そうとした。

 だが──時は既に遅かった。

 ミワが気合を入れて用意してきた狙撃銃は、もはや銃と呼べるほどの大きさに収まっていない、ひたすらにデカく、分厚く、大雑把な、砲台とでも呼ぶべきものだ。

 映像作品「機動戦士ガンダム00」のファーストシーズンにおいて、ガンダムデュナメスが高高度の狙撃に利用していた特注の狙撃銃は、ファーストガンダム、その外伝であるところのMSV群に出てくるバストライナーであるとか、或いは「機動戦士ガンダムΖΖ」に登場するメガライダーのような、サブフライトシステムに片足を突っ込んだ代物だった。

 故にこそ、逃げようとしてもその範囲ごと刈り取られる。

 ビームが駆け抜けた衝撃の余波で僅かにAGE-1ブランシュも装甲を溶かされながらも、逃げようと立ち上がったザクⅠ・スナイパータイプはその狙撃、もとい砲撃に捕らえられて、テクスチャの塵に還っていく。

 そして、地上では何が起こっていたのかといえば──

 

『お前……中々できるやつのようだな』

 

 冷淡な言葉が耳朶に触れると同時に、コーションアラートが鳴り響く。

 ブランシュへと襲いかかるビームマシンガンの弾幕を、ハンドスプリングの要領で回避しながら、ぎり、とリリカは奥歯を噛み合わせた。

 フレンドリー・ファイアを利用して始末したはずのハイペリオンが立っていて、代わりに蒸発したのはハイゴッグという状況にリリカは一瞬小首を傾げるが、その答えは不幸なのが幸いなのかすぐにわかることになる。

 無事な右手で放ったドッズライフルが、黄金のハイペリオンに直撃するが、その弾は装甲に吸い込まれたかと思うと着弾地点で再構成されて、放ったはずのリリカへと獰猛な牙を剥く。

 

「……ビームを、弾いて……!?」

『そうとも! このヤタノカガミを取り入れた……シュペールスーパーハイペリオンは無敵だァ!』

 

 ──意味が被っている。

 リリカは一瞬、気の抜けるその名前にがくりと肩を落としかけたが、それも恐らく相手の心理的なブラフなのだろうと気を引き締めて、毅然と金色の敵機を睨みつけた。

 相手が全てのビームを跳ね返すのなら、ミワがあの狙撃を行っても、それは丸々、砲手である彼女へ跳ね返るだけだ。

 幸いなのは、状況を伝える余裕がなくとも、あの超巨大な狙撃銃のリキャストには時間がかかることだろう。

 リリカは瞬時に戦況を分析して、融解しかけている左腕を強引に引きちぎると、それをシュペールスーパーハイペリオンなる金色のハイペリオンに叩きつけようと大きく振りかぶる。

 

『無駄無駄無駄無駄ァ! 言ったはずだ……このシュペールスーパーハイペリオンは無敵だとなァ!』

 

 金色のハイペリオンを駆るダイバー、「ホッシー」はやけにテンションの高い叫びを上げると、背負っていたバックパックから、多面体のバリアを形成して、機体の全身を包み込んだ。

 そして、そのバリア──アルミューレ・リュミエールに触れたAGE-1ブランシュの左腕は瞬時に融解し、爆散する。

 

「……似てる……」

 

 リリカは、落胆するより早く思わずそう呟いていた。

 確かにこのシュペールスーパーハイペリオンが披露したアルミューレ・リュミエールと、以前に交戦したチャラ男トリオのリーダー、ラチャーオが乗っていたゲルズゲーが持っていた陽電子リフレクターは、厳密にはその原理を異にしているものの、似たような武装であることは違いない。

 ──ならば。

 

「リリカちゃん、ミワの支援は!?」

「……ううん、大丈夫……私、やれる……!」

「……そっか、そっかぁ。なら、任せたよぉ、リリカちゃん!」

 

 試し斬りの相手には、うってつけだということだ。

 狙撃砲を放棄し、参戦への合流を試みるミワを制してリリカは、満を辞してといった風情でドッズライフルを放棄し、腰部にマウントしていたシグルブレイドを引き抜いた。

 零が直々に教えてくれたこともあり、このクリアパーツ化されたシグルブレイドは、特注品といった具合に仕上がっている。

 プラネットコーティング。

 かつてGPDが全盛を迎えていた時代には必須とされていた、ガンプラを動かすための技術であり、そして主流であるビーム兵装に対抗するためのコーティング剤。

 クリアパーツにオーバーコートされたそれは、ある種、シュペールスーパーハイペリオンにとっての劇毒に等しかった。

 

『無駄無駄、何をするつもりか知らないが、このシュペールスーパーハイペリオンは……』

「……お願いブランシュ、私と……翔んで……っ!」

 

 リリカはアルミューレ、リュミエールの裏側から撃ち放たれるビームマシンガンによる弾幕をアクロバティックな軌道で回避しつつ、シュペールスーパーハイペリオンの頭上を目掛けて跳躍する。

 何を企んでいようが無駄なことだと、ホッシーは嘲笑に口許をそっと歪める。

 ヤタノカガミとアルミューレ・リュミエールという二重防御を施すという発想に至った時は、我ながら天才かと、そう思いたくなったものだ。

 ビームは跳ね返し、そして実弾などはアルミューレ・リュミエールが弾き飛ばす。

 ──そして、シュペールスーパーハイペリオンは無敵になる!

 頭上から自身に接敵するAGE-1の改造機ことAGE-1ブランシュを「わからせて」やるべく敢えてホッシーはその場で直立していた。

 だが、一瞬の慢心はこのGBNにおいて致命の隙となる。

 対ビームコーティングが施されたことで、アルミューレ・リュミエールを貫通するに至ったシグルブレイドが、脳天から縦に両断する形でシュペールスーパーハイペリオンを斬り裂いていく。

 

『は……?』

「やった……! 上手く、やれた……」

 

 なんで? なんでなんで? アルミューレ・リュミエールじゃーん!

 無敵のシュペールスーパーハイペリオンじゃん、チートでも使ってるのかこの女!

 そんな具合に、爆散するまでの数秒間、ホッシーの内心は荒れに荒れていたのだが。

 

『まさか……ああああッ、対ビームコーティングかあああァッ!』

「……え、えっと、はい……」

『こ、こんな結末……ぬううううああああァッ!!!』

 

 一つの絶望的な見落とし(ガバ)に気付いて尚、最後まで独特なハイテンションを維持しながら、シュペールスーパーハイペリオンは、その光り輝く機体を爆炎と共にテクスチャの塵へと還して、戦場から消滅していく。

 

【Battle Ended!】

【Winner:Your Teams!】

 

 そして、全ての敵機が撃墜されたことで鳴り響いた無機質なシステムの音声が、祝福もなく落胆もなく、淡々と、ただそこにある事実として、リリカたちの勝利を告げるのだった。




製作レベルを上げて物理で斬ればいい
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