ガンダムビルドダイバーズ アナザーテイルズ   作:守次 奏

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約千六百八十万色の初投稿です。


第三十一話「ハイウェイ・スター狂詩曲(ラプソディ)

 それはあらゆる意味で、この広大なGBNに遍く名を知らしめていた。

 曰く、最速の世界を真に見た王者たる不死鳥。

 曰く、数々の伝説を作り上げて尚チャレンジャーであることを忘れない紳士たち。

 曰く、約千六百八十万色に輝く変態の編隊。

 フォース「パロッツ・パーティー」を巡る噂は、電脳の海を潜れば枚挙にいとまがない。

 それは彼らの人徳もさながら、あまりにも個性的すぎる見た目と、そして個性的すぎるガンプラが無法地帯そのものなレースを繰り広げているという奇行が理由の八割を占めており、「パロッツ・パーティー」といえば変態の編隊である、というのがGBNにおける一種の共通認識であることはいうまでもない。

 カエデが「会えばわかる」と言っていた通り、今リリカの目の前にいる人物は、鳩の頭をデフォルメしたような被り物に全身タイツという、現実で遭遇したなら二秒でエマージェンシーコールに指が伸びかねない出で立ちをしていたものの、その物腰は極めて柔らかいものであった。

 

「ハハハハハ! フォース『アナザーテイルズ』の諸君! 今日は私の誘いに応じてくれたこと、なによりも光栄に思うと同時に深く感謝を申し上げよう!」

 

 そのダイバールックからは想像もできないほど真摯で丁寧な姿勢にリリカは温度差から風邪をひきそうな感覚に陥るものの、求められた握手に応じてその手を取る。

 ごつごつと骨張った感触はやはり、それが疑似的なフィードバックであるとわかっていても、ミワやカエデと違う、男の人特有のものであるのだな、と、半ば現実逃避のようにリリカはそんなことを思っていた。

 

「い、いえ……私たちも、その……お誘いいただいて、ありがとうございます……」

 

 天才と何とかは紙一重だというが、この変態じみた格好をしているダイバー、「ハート」も正にそれを体現しているのだろう。

 相変わらず、自分の何に惹かれたのかよくわからないままに握手を交わして、リリカは引きつった愛想笑いを浮かべて彼の言葉にそう答える。

 

「ハハハハハ! 緊張しているのだな、だが気持ちはわかる! この『バンデット・レース』……愛機を危険の中に晒すことに違いはない! しかし、しかしだ! 君たちはレースを終えた時、その中に一筋の輝きを見出せると見て、私は招待状を送らせて頂いたのだ……是非ともその、秘めた情熱をサーキットで開花させてもらいたい! 私が望むのはそれだけだ! ハハハハハ!」

 

 やたらとテンションの高い笑い声をあげるハートにびくびくと怯えながらも、リリカはその彼をして「危険」だと言わしめる「バンデット・レース」へと想いを馳せる。

 GBNにおいて、各種ディメンションが擬似的に四季を再現して暦とリンクさせている中で、このディメンション・シュバルツバルトは常闇に覆われた、極圏をイメージした設計がなされている。

 そしてその中心に聳える「ハイウィンド・エリア」が人工の星々を湛えるメガロポリスであるのは、開発者の趣味であるという他にない。

 眠らない街に、永遠に輝き続ける百万ドルの夜景。

 当初はその光景を楽しんでもらうために設計された「ハイウィンド・エリア」であったが、今は紆余曲折を経た末に、「走り屋たちのペリシア」と呼ばれる、最速の世界に夢を見る者たちの聖地ともなっているのだ。

 

「さあ、張った張った! 今宵の対戦カードはちょいと特別だぜぃ、にーちゃんねーちゃんたち! なんとあの絶対王者『パロッツ・パーティー』が直々に対戦相手として指名した新進気鋭のガールズフォース、『アナザーテイルズ』との戦いだ! 実力は未知数、故にオッズも未知数だ! さあ堅実に行くか、夢を見るか! ベットは試合の五分前まで受け付けてっかんね! 『アナザーテイルズ』のデビュー戦に花を添えるって意味でも、じゃんじゃん賭けてってねぃ!」

 

 そして、集合場所に指定されたハイウィンド・エリアの一等地に聳え立つバーの一角で、いつぞやは宝探しミッションで盛大に爆死を遂げて、いつぞやはリリカが直々にアドバイスを貰ったことのあるELダイバー、チィが巧みな弁舌でトトカルチョの機運を煽り立てていた。

 以前は非公式の野試合であった「バンデット・レース」を公式化するにあたって、胴元の代理人として「リビルドガールズ」がトトカルチョの賭け金における一割を受け取るという約束をGMへと取り付けた故にこんなことになっているのだが、そこは銭ゲバ、流石に口が上手いものだとミワとカエデは嘆息する。

 今日は珍しく、「リビルドガールズ」の他の面々は姿を見せていなかったものの、リリカにとってはそれが日常茶飯事なので気にはしていなかった。

 その代わりといってはなんだが、テーブルにそのガタイのいい身体を押し込めるように腰掛けている偉丈夫──「BUILD DiVERS」のカザミたちを始めとした面々が、面白そうだとばかりにコンソールを開いて、賭け金をレイズする。

 

「噂にゃ聞いてたけど、こいつがバンデット・レースか! しっかしあのチィって子は口が上手いぜ」

「……確かに。シーサイドベース店で営業してる時もメッキのキットとかをうまく他の人に売り捌いてるし」

「『会いに行けるELダイバー』でしたよね、ヒロトさん、メイさん!」

「ああ、パル……まあ出自を考えれば私の姉か妹のどちらかになるのだろうな」

 

 ノンアルコールカクテルに口をつけながら、「もう一つのビルドダイバーズ」の面々はそれぞれに言葉を交わしながら、せっかくだからとばかりにカザミの後に続いて、小額ではあるものの一口ほど、賭け金を積み上げていく。

 

「くぁ……なんだかなんだか、ミワたち、期待されちゃってるみたいだねぇ」

「レギュレーションこそ違えど絶対王者から指名を直々に受けているのですわ、これぐらい当然でしょう。そして……こうも期待されれば、俄然やる気が出てくるというものですわ」

 

 ミワは欠伸交じりにそう呟いたが、カエデが言う通りここ最近「パロッツ・パーティー」へと挑戦上を叩きつけるダイバーたちは数多かれど、彼らが直々に挑戦状を叩きつけてくるというのは異例の事態なのだ。

 慣れない好奇の視線に肩を竦めながらも、リリカは今日に向けて調整していたAGE-1ブランシュ……の、水中専用として作った装備であるティターニア装備に想いを馳せていた。

 ブランシュアクセルが機体に負担をかけている理由がもしもGバウンサーの、軽量化された手足を使っていることが問題であるのならティターニア装備を標準化すればいいし、それでも問題があるなら──と、いった具合に焦りと不安を表情に滲ませたリリカを、ミワが背後から抱きしめる。

 

「どしたのどしたの、リリカちゃん?」

「あ、お姉ちゃん……えっと、その……大丈夫、今回のレース……負けたくない、って」

「だよねだよねぇ……ミワたちは初心者もいいとこだけど、だからって負けること前提で戦っても面白くないからね〜」

「あら、珍しく意見が合いますわねミワさん。そしてリリカさん……わたくしも心は同じですわ、そろそろ参りましょうか」

 

 観客たちがどんどんチィの口車に乗せられて、一万だの五万だの、どんどん賭け金の総額が釣り上がっていく様を横目に見ながら、リリカたちは決戦の舞台となるメガロポリスの大動脈、「ストレイ・ハイウェイ」に向かって歩き出す。

 バンデット・レース。山賊たちのように無法こそを法とする、しかしそこには純然たる駆け引きが存在する野蛮なレース。

 そのワイルドさに惹かれているのかそうでないのか、賭け金を積み上げている層にはどこかヤンキーじみたリーゼントに特攻服といった出で立ちのダイバーもいれば、そんな世界とは無縁な、キラキラしたコーデで自らを飾り立てているダイバーもいる。

 改めてGBNというゲームの奥深さというよりは底知らなさを噛みしめながら、リリカはどこか祈るように、小さくきゅっ、と拳を胸に抱き寄せるのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 ストレイ・ハイウェイはその名の通りこのメガロポリスを一周する都合で、各所にヘアピンカーブが設けられているだけでなくルートもわかりづらいという特徴を抱えたコースだった。

 恐らくは普通にレースを行うだけでも手に汗握る決戦が拝めそうなこのハイウェイは今、「アナザーテイルズ」の三人と、そして「パロッツ・パーティー」から選抜された三人組以外を拒むかのように、ビームロープに閉ざされている。

 スタートを切ってから即座に駆け抜けていく、ホットスクランブルガンダムの改造機──スタビライザーにあたる部分にプチッガイの頭部を改造した、鳥の頭を模したオブジェを増設し、更にマジョーラカラーをフル活用し、光の反射で約1680万色に輝く機体である【パロットスクランブルガンダム】は、最初からアクセル全開といった風情で、リリカたちを追い抜かんとしていた。

 

『ハハハハハ! 心地よい風だ! そうは思わぬかね、「アナザーテイルズ」の諸姉たちよ!』

 

 かつて「リビルドガールズ」と戦った時のことを思い返しながら、ハートは出遅れたといえども自分たちの背後に位置取って、付かず離れずといった距離感を保っている三人へと問いかける。

 

「どうだろうねぇ……でもこのレース、なんでもあり、なんでしょ〜?」

『ムッハハハハ! その通りだミワくん! 梃子でも核でもなんでもありだ! さあ、君たちの本気を見せてくれたまえ!』

 

 白鳥の被り物に、例によって真っ白な全身タイツという通報待ったなしな出で立ちをしているダイバー、「チョウ」が、リーダーであるハートに代わって、ミワの問いへとそう答える。

 ならば、遠慮などする必要はない。

 ミワは腰部からキャリコM950Aを模したサブマシンガンを左手で抜き放つと、容赦なく先行するパロットスクランブル三機に向けて撃ち放った。

 だが、それを予見していたかの如くハートたちは最低限の動きで弾幕砲火から逃れて、ストレートをぶっちぎっていく。

 

「やっぱり足止め程度にもならないねぇ」

「百戦錬磨のレーサーとは聞いていましたが、これほどとは……」

「……で、でも……なんでもありなんだよね、このレース……」

 

 口惜しげに親指の爪を噛んで怒りを滲ませるカエデを制するかのように、リリカは再度レギュレーションを確認し、そしてこの先にあるコースをコンソールに映し出す。

 今は長いストレートが続いているが、この先に待ち受けているのはヘアピンカーブが連続するコーナーだ。

 必然的に減速を要求されるそこに今の速度を維持したままハートたちが突っ込んだのであれば、普通ならば壁のシミになってもおかしくない。

 そして、このレースは基本的になんでもありだ。

 リリカが言わんとしていることを察して、ミワははっと目を見開くと、足を止めて、ヅダのものではなくオリジンザク系のキットからコンバートしてきた対艦ライフルを構える。

 

「なるほどなるほど……ミワも頭に血が上ってたみたいだねぇ、リリカちゃん、流石だよ〜」

「なら、どうするつもりですの?」

「作戦は一つだけだよぉ、ミワたちの中であの奇妙なガンプラに速度で勝てそうなのはリリカちゃんのブランシュだけ、ならミワたちはそのサポートに徹すればいいんだよぉ」

 

 ミワが素早くコンソールを操作して、表示されたマップの中でヘアピンカーブに差し掛かる第一コーナーに、赤い点を一つ打ってみせる。

 

「このカーブをカエデさんのツインバスターライフルで撃ち抜いて。その後は……ミワがやってみるから」

 

 いつになく淡々と、スコープを覗き込みながらミワは語った。

 そして、カエデもリリカが脳内に描いていたロードマップをなぞるかのように、その作戦の趣旨を理解する。

 要するに、ヘアピンカーブのコーナー、その壁を撃ち抜くことで即席の散弾として三機のパロットスクランブルにダメージを与えたところを、リリカがブランシュアクセルによってぶっちぎる。

 組み立てられた勝利への方程式は、まさに山賊の名を冠するに相応しい野蛮で粗野なものでこそあったが、このレースはそういう外道の戦術さえもちゃんと容認しているのだ。

 よって、リリカもミワもカエデも罪に問われる筋合いはない。

 ぐんぐんと距離を離そうとしているパロッツ・パーティーの面々から少し出遅れつつもリリカとカエデはその背後について、そしてミワは外壁が崩れればピンポイントでの狙撃ができそうなポジションに機体を寝そべらせて、スコープ越しにその未来が訪れるのを、息を潜めて待ち続ける。

 

『さてさて、奇妙なことになってきたぜぃ! 「アナザーテイルズ」の一人が完全に足を止めたぁ! さあさあ今宵はどんな作戦が飛び出るのか、そしてどんどんオッズの倍率は変動していく! 戦いの行方からは一秒だって目が離せないぜぃ、にーちゃんねーちゃんたち!』

『なんというかお前はブレないな、チィ。しかし……ここで彼女たちが何かを仕掛けてくるのは確実と見ていいだろう』

 

 ELダイバーのよしみで、ということで解説を務めることになったメイが、チィの実況に対して淡々と補足するが、その声さえも今のリリカたちの意識からは遠く切り離されていた。

 ヘアピンカーブへと突入するまでは残り少ない。

 ぴたり、とカエデもまた足を止めて、そしてリリカも立ち止まって、「パロッツ・パーティー」が先行していくのを棒立ちになって見送っていく。

 

『おっと!? こいつは捨てゲーか!? そりゃあちょいといただけないねぃ……さあどう見る、解説のメイねーちゃん!』

『彼女たちは何か狙いをつけている。勝負を放棄したとは考えづらい』

 

 レモンスカッシュを淡々とすすりながら、メイはぶっきらぼうにチィが煽り立てた言葉を否定する。

 そうだ。メイが呟いた通り、「アナザーテイルズ」は、リリカたちは、決して勝利を諦めたわけではない。

 五、四、三、二──カウントダウンと同時に先行するパロットスクランブルたちが射程圏に入ったのを、そしてヘアピンカーブでの事故を防ぐために減速をかけたのを確認した上で、カエデはツインバスターライフルのトリガーを引く。

 

「今ですわ、リリカさん!」

『ぬううううおああああっ!?』

 

 完全に不意を突かれた形となったパロッツ・パーティーの三機は大きく飛行姿勢を崩していたものの、ツインバスターライフルからの直撃は免れていた辺り、そこは絶対王者と呼ぶべき所以なのだろう。

 だが、第二波として待ち構えている瓦礫の散弾を避けることは、飛行形態に移行しているパロットスクランブルでは極めて難しい。

 機体の姿勢を乱しながらもなんとかヘアピンカーブであった場所を駆け抜けんとしているハートたちはしかして、ミワのキリングレンジにも収まっていた。

 

「……そこ、そこだよぉ! リリカちゃん!」

 

 けたたましい金属と火薬の咆吼と共に打ち出された徹甲榴弾は、運悪く最後尾を飛行していた、カラスの被り物に黒い全身タイツというダイバー……「カーラ」が操るパロットスクランブルに直撃し、その誘爆は「チョウ」の機体をも巻き込んで炸裂する。

 ──好機があるならば、ここしかない。

 ミワとカエデに託された可能性を形にすべく、リリカは迷いなく必殺技の発動を選択して、スロットルを全開にした。

 

「……ブランシュアクセル、ダブルブースト!」

 

 ヘアピンカーブはツインバスターライフルの一撃でその壁を撃ち抜かれたことで、隙間というにはあまりにも大きすぎる空洞が穿たれている。

 基本的に、バンデット・レースにおいてコース外と見なされているのはビームロープの外側であって、その内側であれば壁を飛び越えようが穴が空いたところから駆け抜けようが、何一つ問題はないのだ。

 

『おっと!? こいつは偶然だがチィたちが狙ってたのとおんなじことをやったぜ、「アナザーテイルズ」! あんときゃ火力が足りなかったから負けちまったが、今はハートの旦那もダメージを負っている! さあ、さあ、この試合の行く末はどうなると思う、解説のメイねーちゃん!』

『やるな、彼らも……なんでもありというルールを逆手にとって、そしてトランザムシステムを搭載しているわけでもない機体が加速装置という切り札を発動させる。まさに隙のない作戦だ。だが』

『だが、ってのは一体どういうこったいメイねーちゃん!?』

『……これで止まるなら、彼らは王者と呼ばれていない』

 

 メイが淡々と解説した通りに、爆炎の中から駆け抜ける機影はAGE-1ブランシュティターニアだけではない。

 

『ハハハハハ! やるではないか、少女たちよ! だがこの私も全力を出させてもらうと言った! これは……彗星だッ!』

 

 全身をトランザムシステムのような紅蓮に染めたパロットスクランブルガンダムが、一足先にヘアピンカーブだった場所を駆け抜けたリリカに追いすがらんと、猛スピードで追随してくる。

 紅の彗星。彼らが必殺技として搭載しているそのシステムは、トランザムシステムと極めて外見こそ近いものの、その本質を異にするものだ。

 あくまでも「紅の彗星」が重んじているものはスピード。そしてそれは、二倍速になった程度では足りないとばかりに、先行するAGE-1ブランシュティターニアへと見る見るうちに食らいついてくる。

 

「……ッ……!」

 

 リフレインしたのは、リリカの中の苦い記憶だ。

 あの時、ミワを助けるためとはいえ四倍速を起動したことで、AGE-1ブランシュは粉々に砕け散ってしまった。

 確かに今、光波推進システムと四倍速を組み合わせたなら勝機は見出せるかもしれない。

 ラストの直線、交じり気なしのストレートに勝負は差し掛かっていて、そしてハートが操るパロットスクランブルは、すぐ後ろに迫っている。

 ──なら、判断している時間はない。

 

「……ごめんなさい、ブランシュ……」

 

 リリカは眦にじわり、と涙を滲ませて、その発動を承認した。

 ──ブランシュアクセル、スクエアブースト。

 薄く形がいいリリカの唇が紡ぎ出した言葉と共に、二倍速で動いていた機体が更に二倍、四倍速まで高速化される。

 

『なんとッ!?』

 

 突如として距離を突き放したAGE-1ブランシュティターニアへと向けて、ハートが操るパロットスクランブルは首をぐるぐると回転させながら、目に当たる部分に設けたメガ粒子砲での妨害を試みたが、それさえ振り切って、放たれた銀の弾丸となって、AGE-1ブランシュティターニアは、リリカはゴールに向けて駆け抜けていく。

 

「……っ、やあああああッ!」

『……ッ、ゴォオオオオル! ゴールだ! ゴールしたのは、「アナザーテイルズ」! そしてダイバー「リリカ」ねーちゃんが操るガンダムAGE-1ブランシュティターニアだあああッ!』

 

 ゴールの白線を通り過ぎて、自壊していく機体に涙を零しながらも、リリカは確実に、フォースとしての栄光をその手につかみ取っていた。

 勢い余って二周目に突入しようとしたAGE-1ブランシュティターニアは、必殺技という魔法が解けたことで内側から爆ぜるように砕けて、テクスチャの塵へと還っていく。

 悲喜交交といった風情の観客たちは、チケットを破り捨てて地面に叩きつけたり、隣人と抱き合ったりとその様子は様々だ。

 そして、機体が破損したことでぽつりとストレイ・ハイウェイに佇むリリカは、まるで世界が終わったかのように、いつまでも浮かび続ける電子の月を見上げて、はらはらと、喜びと悲しみ、そして愛機への申し訳なさが縦糸と横糸を織りなす、ないまぜの涙を零し続けるのだった。




変態の編隊再び
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