問題児達が異世界からやってくるそうですよ!神様も連れて! 作:天津神
「わっ」
「きゃ!」
四人の視界は間を置かずに開けた。
急転直下、彼らは上空4000mほどの位置で投げ出されたのだ。
落下に伴う圧力に苦しみながらも、三人は同様の感想を抱き、同様の言葉を口にした。
「ど………何処だここ!?」
眼前には見たことのない風景が広がっていた。
視線の先に広がる地平線は、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。
眼下に見えるのは、縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。
彼らの前に広がる世界は––––完全無欠に異世界だった。
湖に落ちた三人は陸地に上がりながら、それぞれが罵詈雑言を吐き捨てていた。
一方、一人だけ、湖に落ちていない者がいた。
「なんで……」
青い髪を靡かせながら湖の上を歩き、陸地に向かう。
「で、青い髪を持つアンタは?」
いかにも『俺問題児!』というオーラを出している、逆廻十六夜が湖から歩いてきた人に聞く。
「私?私は、アレ?なんだったかな?ちょっと待って」
耳を動かしながら、空を見上げる。
「あ、あったあった。えーと。設定、読み込み!ふ〜ん。めんどくさいなぁ」
この間に青い耳がピッコピッコと動きまくる。
「私の名前は、柊大和です。いや〜意外と名前がそのままだった」
「ほぅ。それで、その耳はなんだ?」
十六夜が興味津々とした声で大和に尋ねる。頭の上を指しながら。
「え?耳?」
大和は手を頭の上に持ってくる。
その手は、柔らかい感触の存在を訴えてくる。
「ウサ耳!?なんで!?」
赤色がかかった蒼い目が、大和の驚愕の度合を知らせる。
「アンタも知らないのかよ。というか、そろそろこの状況を説明する人間が現れるもんじゃねぇのか?」
「そうね」
そんな中、湖近くの草むらの中で黒ウサギは考えにふけっていた。
(なんで、“箱庭の貴族”が?いえ、今はそんなことは関係ありません。そろそろ……)
「––––仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
草むらに隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。
四人の視線が黒ウサギに集まる。
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴と、ウサ耳も気づいているんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「歴史通りだから」
「………へえ?面白いなお前」
軽薄そうに笑う逆廻十六夜の目は笑っていない。三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠もった視線を黒ウサギに向ける。大和はただ、無感情で見つめる。黒ウサギはやや怯んだ。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?特にそこにいらっしゃる同士ほど」
黒ウサギは大和を最後に指した。
「断る」
「却下」
「お断りします」
「いや、そこは断らないほうが…」
「あっは、殆ど取りつくシマもないですね♪」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOなどと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくそうなのは難点ですけども)
黒ウサギはおどけつつも、四人にどう接するべきか冷静に考えを張り巡らせている––––と、大和が不満そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?しかも、同族の貴女に!?」
「なら、遠慮無く値踏みするのはやめてほしいな」
「あ、ハイ。すみません」
大和の静かな怒りに黒ウサギは素直に謝った。
「わかったなら良い」
大和はすんなりと黒ウサギの耳から手を離す。
「はぁ。こんなはずでは」
「てい」
「フギャ!」
今度は春日部耀が、黒ウサギのウサ耳を抜きに掛かる。
しばらくの間、黒ウサギは逆廻十六夜達三人に遊ばれ、大和はそれを傍観するだけだった。
「––––あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
逆廻十六夜の言葉から、黒ウサギは淡々と説明をした。
そして、逆廻十六夜が質問をする。
「この世界は………面白いか?」
「–––––YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
黒ウサギは明るくそう答えた。
「ねぇ。ちょっといいかな?」
「ハイ?」
「黒ウサギのコミュニティは今、どんな状況なの?」
黒ウサギの顔に影がさす。
それに目ざとく反応する大和。
「やっぱり。黒ウサギのコミュニティは、『ノーネーム』で、とてつもなく貧乏だと」
大和は呆れたように言う。
「ま、まさか。気づかれるとは……」
「隠すのは良くないと思うよ、黒ウサギ。まぁ、原因が原因だしね。『魔王』が潰したんだしねぇ」
「な、なんでそのことを!?ていうよりも、柊さん。貴女は何者なんですか……」
膝をつく黒ウサギ。
そんな黒ウサギに逆廻十六夜は尋ねる。
「おい、黒ウサギ。俺達にちゃんと話してくれるんだよな。コミュニティの事について。あと、その『魔王』という素敵なネーミングがある奴のことを」
はっきりとした怒気と好奇心を含ませた声だった。
「ハイ………」
黒ウサギは涙目になりながら、淡々と包み隠さず話した。
黒ウサギの説明が終わると、逆廻十六夜は大きな声を上げて笑った。
「………ふぅん。魔王から誇りと仲間をねぇ」
逆廻十六夜は、黒ウサギの話を全て聞き、感想を告げる。
「いいな、それ」
「––––––………は?」
「HA?じゃねぇよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」
黒ウサギの反応に不機嫌になる逆廻十六夜。
「え………あ、ハイ。で、あの御三人はどうでしょうか?」
黒ウサギはおずおずと久遠飛鳥と春日部耀、大和に尋ねる。
「私はそれでいいわ」
「私は、ただ、友達を作りにきただけだから」
「なら、私が友達第一号に立候補していいかしら?」
「………うん。飛鳥は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
「よかった」
「で、柊さんは?」
「私は黒ウサギのコミュニティに入るよ」
「いえ、そっちではなくて…」
「あ、友達のほう?」
「うん」
大和は首をかしげる。
「いや、友達ってなんか気づかないうちになるものだし、私はその方が気楽だし。それで、『今から友達!』みたいな感じは一方的な押し付けの感じがするし。だから、今は考えない」
「そ、そう」
「だから、時間をかけていきたいな、とは思っている。これでいい?」
大和は耀に尋ねる。
「うん。そんな感じでも、いい」
その間、黒ウサギはずっと放置されていた。
黒ウサギは、十六夜達のせいで時間がだいぶ取られていることに気づき、箱庭の入り口にいるジン坊ちゃんの事を思い出す。
「と、兎に角今は早く箱庭に戻らないと」
そんな黒ウサギを気にせずに大和と十六夜は話していた。
「柊は元の世界で何をしてたんだ?」
「元の世界………たくさんあるからわからないけど、あおり運転してる運転手を跳ねた事だってあるし………」
「意外とアクティブなんだな」
「だって、その時は警察だったし、煽られてたし、急に止まれなかったし」
この間、春日部耀(以降は耀)と久遠飛鳥(以降は飛鳥)は黒ウサギのウサ耳を名残惜しそうに見つめている。
「あ、そういえば」
「?十六夜?」
「俺、ちょっくら世界の果てを見てくる」
そう言って逆廻十六夜(以降は十六夜)は何処かへと走っていった。
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