Dies irae -Silverio Godeater Resurrection- 作:フェルゼン
完全な生命活動の停止を確認し、フードを
そんな二人に合わせる形で、リンドウと呼ばれた男が
次瞬、雷氷と化していた彼の身体が元の生身の肉体に戻り、青年と女性に
女は無言で
返事をするどころか、ふてぶてしい態度で鼻を鳴らす青年を、リンドウは苦笑気味に肩を
彼の無愛想な態度は今に始まった事ではない。
本来ならば、一上司として注意すべきなのだろう。が、注意した所で効果が薄いのもまた事実。
加え、雨宮リンドウと言う男は、そういう
ゆえ、いつも通りなあなあに受け流す。
口や態度で無関心を示す青年だが、仕事を放棄することは無い。
女が
背中越しで彼らが定位置に着いた事を感じ取ると、リンドウは
白煙を上げる
すると、
武装を構え直し、既に物言わぬ
二、三度ほど
同時、リンドウの握る長刀の
一連の流れを見届けた主が光の点る宝石を己の視線まで持ち上げて、今日の収穫がどんなものか確認した。
「···お、レア物だな」
琥珀色の宝石には、獣神血石と呼ばれる素材が内包されており、思わぬ収穫にリンドウは知らず口元を
だがしかし、それも無理からぬこと。彼自身、あまり目にした事がない素材な上に、知る人によれば獣神血石の素材回収率は5%も満たない。
まさしく
「戦果は上々······って奴ね」
リンドウが素材を回収した事を確認したのか、黒を基調とした
やはりと言うべきか、手に持つ巨大な銃はその
「ああ、また
「後は人手が増えてくれると
地上を
地球全体の人口が一度は三分の一にまで減少した影響もあり、彼ら
結果、組織全体で人手不足が深刻な問題と化している。
特に彼女の所属する部隊のように、アラガミの討伐が主な任務である場合、必然として激務になるため何人いても足りないという状況が続くのだ。
と言うのも、理由があり──
「無いものねだりをしたって仕方ないだろ〜。昔みたいに、ただ感応できればそれで良いって訳じゃないしな」
そう、それが主な理由だった。
アラガミが出現する以前、
だが、
彼らが
そうなればどうなるかなど、愚問にも等しいだろう。
無論、その事実を女が知らないのかと聞かれれば、否である。
「もう、そういう事じゃないわよ。さっき、出撃する前にヒバリちゃんが教えてくれたの。もしかしたら、新しい人が二人も入るかもしれないって。
二人全員とは贅沢な事は
「ほーん、なるほどな〜」
事実は事実と受け入れた上で、彼女は誰かが入隊してくる事を前提に話題を取り上げたのだ。
初めて教えられる事実に、リンドウは
「ま、サクヤの言うことも一理あるか。せめて、エリックの誤射をカバー出来る奴が居てくれたら、もう少し仕事が楽になるもんな」
「そうそ──···って、ちょっとリンドウ! 何てことを言わせるの!」
頷きかけた言葉の真意に気付き、サクヤと呼ばれた女は慌てて言葉を打ち切り、意図して
「え〜、だって〜、本当のことじゃん」
「え〜、じゃないわよ!
「23歳だ。文句あるか?」
キリッとした顔で告げるリンドウに、サクヤは頭を抱えて深い溜息を吐く。
「···もう、何を言ってるの······今年で27歳でしょう? 何、さりげなく年齢詐欺してるのよ」
「あれ、そーだっけ?」
無造作に後頭部を
瞬間、サクヤから再び沼にも沈むような深い
「······くだらん」
漫才の
どこまでも殺伐と
言語の異なる者が聞けば、
されど重く、
比較的馴染み安い
目深く
「······人手じゃなくて、足でまといの間違いだろ」
開口一番、彼はさらりと言い切った。
一概に的外れな発言ではないため、否定し切る言葉をリンドウもサクヤも持ち合わせてはいない。
ゆえに、彼ら二人は手の掛かる子供を相手にした際の大人のような呆れを見せ、
そして、目を半眼にさせたリンドウは青年に視線を向けて問い返した。
「何か言ったかー、ソーマ」
すると、ソーマと呼ばれた青年は再び鼻を鳴らして、逃げるように顔ごと視線を逸らされる。
全くコイツは······と、眉根を寄せて溜息を吐いた──その時。
「さぁ、帰りましょう。お腹すいちゃった」
突然、サクヤが話題を切り替えたのだ。
別に剣呑な空気が溢れ出していた訳では無いが、発端は彼女の人でが増える
それを自覚しての話題変更だと即座に悟り、リンドウもまた、サクヤの案に乗ることと。
「それもそうだな。んじゃ、ぼちぼち帰るとしますか」
仕切り直すように告げると、三人は踵を返し、その場から離れるのだった。
帰投場所へと向かいながら、そう言えば···と何かを思い出したように、サクヤがリンドウに向けて口を開く。
「今日の配給、なんだったかしら?」
「うん? 何か、この前の食糧会議で言ってたな······」
言って、リンドウは
やがて思い出したのか、彼は意地悪い笑みを浮かべる。
「ああ、アレだ。新種のジャイアントトウモロコシ」
新種のトウモロコシの部分だけ強調して言えば、サクヤの顔が不快げに歪んだ。
しかしそれも、無理もないだろう。彼女は
「えー。また、あの
このように、話題に上がるだけで不満の声を上げる。
予想通りの反応に、リンドウは思わず苦笑を
無論、サクヤの言い分も理解できなくはない。
確かに、トウモロコシの味はするし、それなりに
彼女が避けたがるのも無理はない。調理一つ大変な食材など、ありがた迷惑というやつだ。
だが──
「このご時世だ、食えるだけ有り難いと思えよ」
それはそれ。これはこれ。
今は食糧プラントで
ゆえに、リンドウはサクヤの
しかしそれは、受け取り手次第というものだろう。
雨宮リンドウと
たとえ、本人にそのつもりが無くとも、発言の真意を余すことなく理解できる人間など、そうはいないのと同じ理屈だった。
「もう、他人事だと思って······」
むしろ、幼馴染だからこその
雨宮リンドウは無類の酒好きである。
中でも
加え、サクヤにとって料理はファッションの次に大切にしているものである。
これらの事情が先の発言一つにも反映され、素直に受け取れないずにいた。
「ねぇ、ソーマ」
ふと、サクヤは助けを求めるように、後ろを歩く青年に声を
彼女が立ち止まれば、
目深く被るフードの下から、鋭い視線だけを向けてきた。
別に、睨んでいる訳では無い。
切れ長な目がそう思わせるだけで、決して意図したものではないのだが、
されど、サクヤは気兼ねのない調子で話を持ちかけた。
無論、その内容は配給品に関するもので──
「なにかと交換しない?」
「断る」
即答。一瞬の
手に持つ神機を
決して、他者との
だが、この青年は昔からこうなので、早々に諦めることとした。
「おーい、お前ら。置いてくぞー」
ふと、サクヤとソーマの二人が遅れていることに気付いたのだろう。
先行していたリンドウが振り返り、片手を挙げながら声を掛けてきた。
帰投途中だったことを思い出し、二人は改めて踵を返す。
彼らがこなすべき今日の仕事は、無事に終わりを告げるのだった。
そして同刻──事態が動き出す瞬間を、ただ静かに待ち受ける者が一人いた。
並べられた調度品が、清潔感の保たれた部屋を厳格に彩り、部屋にいる男の威厳をより一層と際立たせる。
黒革製のエグゼクティブチェアに腰掛けている事から、彼がこの部屋の主に違いあるまい。
机に
と、その時──
『支部長──』
卓上に置かれたディスプレイから受信音と共に、少女のものと思われる声が響いた。
『照合中のデータベースから、新型神機の適合候補生が見つかりました』
「そうか···」
待ち望んでいた報告では無かったのだろう。本来ならば喜ぶに値する報告でありながら、少女に応じる男の声は、
無論、感情を制御している可能性もある。
しかし、たとえどれほど感情制御に長けていようと、
繊細な人間ならば、喜んでいるのだな、と
されど、男の声には
感情の起伏がない。必然的に喜びもない。
むしろ、
だが、それは僅か一瞬のこと。
「名前は何という?」
続く言葉には、
『すぐに資料を送信致します。少々お待ちください』
そして、当たり前に通信先の少女は男の
彼の要請に応じた少女は、かなり手際良い人材なのだろう。程なくして、卓上のディスプレイに資料が届けられた。
黒手袋をつけた男の指がキーボードを操作すれば、表示されるは神機の適合候補者達のデータベース。
神機の適合候補者と、
“──······これは”
突如として浮上した、渦中の人物。
その顔と名前、そして神機の適合率などを確認し、男は僅かに厳格な表情を崩す。
不動と思われた無の瞳が、やや驚愕に揺れ動いた。
「ふむ···、では早速、適合試験を受けてもらうとしよう」
『分かりました』
言って、通信を切る。
男は深く椅子に腰掛け、天井を
“
横一文字を描いていた口角が釣り上がる。
くつくつと
“···面白い。その
卓上のディスプレイに映し出されているのは、一人の青年の名前と、その顔写真。
神宿コハク──
適合神機名:ロンギヌスランゼ──
神機適合率────
────99.98%
シックザール支部長が黒い?
この人、元から黒いぞ?
※)リザレクのプロモアニメ、地底&天国アリサetc.
個人的に、シックザールは『テイルズオブヴェスペリア』の実質的な黒幕である「アレクセイ・ディノイア」と同タイプの人間だと思う。
目指した理想は高潔で尊ばれるモノだけど、
ただ、ヨハネスが「ガチの元から外道」に対して、アレクセイの「元々黒い」は自称みたいな違いはあると思う。
では、ステータス開示。
【
AVE | A | ||||||
D | AA | ||||||
STATUS | |||||||
集束性 | A | ||||||
拡散性 | B | ||||||
操縦性 | A | ||||||
付属性 | A | ||||||
維持性 | A | ||||||
干渉性 | A |
バルカレイ・ブラッドサージ
雨宮リンドウの
その能力は、肉体強化・気象変換能力。
天候という普遍的な現象を、あくまで
雷も氷も出るし、風を吹き荒らすし、気温も光も流動するが、世界は変化しない。
六性質全てに
つまり、リンクエイド(ウ)さん。
総合して、敵を倒すことはあくまでオマケであり、勝つことよりも生き延びることに特化しているこの星光は、まさしく彼の思想を具現化させたような異能である。
詠唱の元ネタはハンニバル・バルカの逸話。
詠唱
創生せよ、天に描いた
強大な敵と戦い続けて
局所的な優勢は勝ち取れど、全体の優位に立てたことは一度もなく、運命は
ならばこそ、我は
前人未踏の
強敵を囲め、視点を変えろ、死を
諸行無常・盛者必衰──生の
さあ
我が忠告を聞き入れられぬと