Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
三時間後──
別に、不都合がある訳ではない。
だが──
「シャアアァァァァアアアッ」
「くッ、──ッ!」
響く轟音。
次瞬、高台の壁に激突して態勢を崩した獣の影を、コハクは決して見逃さない。赤い腕輪越しで、手にした神機に変形を指示する。
長槍の形態をしていたコハクの神機が、
引き金を引くと同時に、凄まじい銃声と共に銃口から狙撃弾が射出される。
視認不可能な速度で放たれたそれは、獣の身体の側面に吸い込まれ──着弾。
小規模な爆発と共に
並行して、コハクは握り
次瞬、コハクの脳内にある中枢神経から送られる指令が、左手首にはめられた腕輪へと走る。命令を受諾した神機が、鳴動するように変形を開始した。
神機の各パーツが細やかに組み替わり、スナイパーが引き込まれ、白光りする銃身から黄金に煌めく長槍が入れ替わるように姿を現し、変形を完了させる。その速度、コンマ一秒以下。
“──来る”
獣が近付く気配に、コハクは鋭く目を細める。槍を構え、奇襲を警戒した──その時。
「ガァァァァアアアアアッ!!」
獣の咆哮と共に、黒い煙幕から
白い小型恐竜を
「おいおい···そーいうことするか」
「そーらよッ」
長槍で斬り上げ、孤を描く槍閃。
しかし、そこは
結果、斬閃の直撃を受けて吹き飛んではくれるものの、その体には大した
普通、
無論、実戦向き──と言われれば、確かにその通りなのだが。
“やれやれ···下手すりゃ死人が出るぜ、これ······”
心の中で
或いは、
合理的と言えば、合理的だ。無駄が無ければ、余分もなく、諸行無常と言わんばかりに現実を突き付けてくる擬似アラガミの存在は、ただただ
だが──
「あーだこーだ考えても仕方ねえか」
これは言わば生存競争だ。相手は今日という刹那を生き残る為に捕食対象と
それは
「面倒ごとを長引かせるのも
告げると同時、コハクは
それは直喩ではなく比喩。
日常の中にある精神状態を非日常に適応した状態へと
「ふッ──!」
鬼の顔を思わせる尾先から飛んできた針の
ショートブレード型神機ほどでは無いが、チャージスピア型神機ゆえの優れた機動力と、多種多様な攻撃手段を上手く使いこなすことで、確実に
しかもそれは、
「ッ、危ねぇなッ」
次瞬、擬似オウガテイルの体勢が崩れるが、深追いはせずにコハクは体勢を立て直そうと距離を取れば、眼前を
風に
「···飛び入りか······」
唯一の救いは、二体目がまだ出てきたばかりという所か。ならば、やる事は一つ。
「良いぜ、同時に相手してやんよ」
気怠げに
刹那、先程までコハクが立っていた場所に飛び込んでくる一体目。
押し出されるような風に吹かれながら、コハクは石突を床に強く叩きつけた。コンッという軽い音を響かせて、
そして──
「ハアァッ!」
重力に従い、床に向かって墜落しながら、その勢いと体重をのせた重い一撃を一体目に叩きつけた。
「グギャアァッ!」
直撃を受け、吹き飛ばされる一体目の擬似オウガ。だが、追撃を許さぬとばかりに、二体目が飛び付いて来る気配を察知し、コハクは僅かに身を引いて
完全に攻撃範囲を見切っていた訳ではないが、背筋を駆け巡る悪寒が殺意の接近を知らせ、反射的に身を引いた結果、幸運にも攻撃を躱す事が出来ただけに過ぎない。
しかし、昔から良く言うだろう──
前のめりになっている二体目の隙を見逃さず、それの懐に踏み込みながら、二体目の擬似オウガの首筋目掛け、
コハクの強烈な一撃により、相手の首と胴体が分断されて吹き飛んだ。
まずは一体。噴水のように噴き上がる血の間欠泉を浴びる事さえ
次の刹那、
斬首した直後、猫のように尾を立てた一体目が見えた為、ここは引くよりも押す方が
「ガアアァァァアッ!」
大きく口を開け、噛み付いて来る擬似オウガテイル。
コハクは少しの
そして──
「ふッ──!」
短い息継ぎと共に繰り出される一閃が、擬似オウガテイルの
しかし、休む暇もなく、コハクのすぐ隣で現出を果たす三体目の擬似オウガテイルに、彼は小さく溜息を
二体続けて
争い事は好きではないし、
加え、神宿コハクという人間が根っからの面倒臭がりで、
獲物を補足し、三体目が威嚇の咆哮を上げるのを隣で聞きながら、コハクは心底から気怠い様子で後頭部を
「ギャッ──!」
次瞬、三種類もある針飛ばしを同時に放ってきたのである。
三体目に追い
「キシャアアアアッ──!」
不得要領を得ていないのだろう。一瞬だけ困惑の色を見せた擬似オウガテイルだったが、
それをバックフリップで回避しながら敵の背後を捉え、再び刀身から銃身に切り替えて──
「そら、喰らいな」
「─────」
その威力、言葉には筆舌にし難く。
銃身を握る手が反動でビリビリと
コハクが直感した通り、適合試験が
教練担当者のツバキは
しかしそれも、むべなるかな。新型神機の適合者は、まだ実戦配備されたばかりという事情も
ゆえ、新型の性能を一目焼き付けようと、その適合者の訓練を見届けようとする技術者が必然的に多くなるのは、さして珍しくもないのだが······。
「SSS+···だと······? な、なんだ···この訓練成績は······」
「藤木コウタ氏の成績でさえ、AAランクと一般的な成績なんだぞ。あの新型······本当に、彼の同期なのか?」
「···新型神機可変に伴う、
彼らは今、一様に動揺を見せていた。
今回の戦闘訓練の目的は、
極東支部に入隊する新人は、必ずこの戦闘訓練を受け、その評価に基づいた実地演習が組まれる。
実戦前の評価など、往々にして現場では役に立たないが、かと言って基礎を
大切なのは、
ならばこそ、科学者達が
これほどまでの高評価を受け、極東支部に配属された
そして、その
当たり前に、ごく普通の反応として、科学者らは眼下にいる青年を
彼らのやり取りを、ツバキは射殺せんとばかりに睨みつけながら、マイクのスイッチを押した。
「よろしい──そこまで」
訓練相手の消滅を確認し、構えを解く部下へ不意打ちにも近い声を
彼の視線が
「これにて訓練は終了だ。
明日からの実戦に備えて、しっかり復習しておけ。分かったな?」
『りょーかい』
ツバキの指示に、気怠い声で応じるコハク。
此方の様子に気付いているのか、半ば呆れた様子ではあるものの、深く追及することはない。
さながら、科学者らの態度に
その背中が見えなくなったのを見計らい、今まで目立たぬ位置で事の成り行きを見ていたリッカが、険しい顔をするツバキへ恐る恐る話しかけた。
「あ、あのさ、ツバキさん」
「······なんだ」
「明日からコハク君の実地演習が始まるなら、並行してポール型神機の試験運用も始まると捉えていいのかな? それならそれで、彼の上官になる人にポール型神機の注意事項とか伝えておきたいんだけど······」
リッカから投げられた素朴な疑問に、ツバキは思わず頭を抱えたくなる。
これだけの好成績を叩き出し、極東支部初の新型適合者にして、ポール型神機の試験運用も任されている新人の損失を、上の人間は絶対に許さない。
だとすれば、誰が実地演習に同行するかなど、日の目を見るより明らかであり──
「あの、ツバキ···さん······?」
その呼び掛けに、思考に
リッカへ視線を向ければ、彼女は返答のないツバキの事を、心配そうに見上げていた。
「ああ、すまん」
だから彼女は、
顔からは険しさが消え、柔らかな表情でリッカの疑問へ答えていく。
「その事についてだが、私から直接本人に伝えよう」
「えッ!? 別に構わないけど、正式な辞令が出るのは明日のはずじゃ······」
「これだけの好成績を叩き出した上、アナグラ初の新型神機適合者ともなれば、誰が上官になるなど簡単に予想できる。そうだろう?」
「それは、そうだけど···」
「なら、話はこれで終わりだ。後は任せたぞ」
「う、うん。分かったよ」
戸惑いながらも
騒然とする科学者を無視し、データを送信したタブレット端末を
瞬間、ツバキの顔に再び険しさが戻る。
「······気に入らん」
大切な部下を
それを生み出したのは、お前たちだろうに。
心の中で科学者らを罵倒しながら、ツバキは目的地に向かって、真っ直ぐと歩き続けるのだった。
ツバキの言を借りるなら、カリキュラムの回。
初代GEのツッコミどころって、最初の訓練相手からしてオウガテイル型の擬似アラガミという時点で、何か基準がおかしい。
他フェンリル支部だと、「オウガテイル一匹を一人で狩れて一人前」の所、極東は「ヴァジュラ一匹、単騎討伐出来て一人前」と言われてる辺り、相当だと思う。
新型神機の可変については、またまた「地底アリサ」を参考にしています。神機可変に伴うタイムラグは、「コハク」と「アリサ」で対極の存在とする為。
まあ、
マヂキチの法則からは逃れられてないけどね。
上記の理由から「光の眷属」としては歴代最弱。
なんだけど、たかが「光」。されど「光」。
「新西暦サーガ」の「光」に属する以上、戦いや非日常への適応力が極めて高い。
「光の半端者」から「光の何か」にならない限りは、「コハク」の日常愛好者がゆえのマヂキチ振りは続くと思う。
(ただ、GEの世界観的にコハクの性格は、コウタやロミオのように珍しいと思われる程度のもので、おかしいとは思われないのが問題なんだよな)
秋月凌駕さんみたいに突き抜けても駄目。
コハクのように半端者過ぎても駄目か。
問題は山積みだ。
では、今回はここまで。
また次回に会いましょう| ・∇・)ノシ♪