Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
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一方、その頃──
遅めの昼食を
「でさでさー、その時のイサム、何て言ったと思う?」
「何て言ったんだ?」
「俺は、俺達を裏切った監督テルミスを倒した。そして、俺達を強くしてくれた恩師テルミスは許す──だってよ! カッコイイよなぁッ!」
「ほぉー」
移動中の会話は、コウタが熱狂的に支持しているアニメの話で大半を占めている。
無論、話を聞き流している訳ではない。彼の話を聞く限り、バガと呼ばれる球を打ち合って競うスポーツを題材にしたアニメだと、コハクは
ただ、年頃の青少年──コハクも同年代だが──が熱くなれる球技になるよう、アニメ向けに調整されているらしく、コウタの口から必殺技と思しき名前が飛び出す事に戸惑いを隠せない。
「なんだよ、ノリ悪いなー。あ! もしかして、バガラリーに興味無かった?」
年齢の割に良識を
そんなコウタの配慮を
「いや、そういう訳じゃあないさね。ただ···俺の知るバガラリーと随分かけ離れてるんで、どう反応したもんかと思ってな」
「えっ、マジ? バガラリー知らないの!?」
「一応、知り合いの
「わ、悪ぃ! おれ、知ってるもんだと思って、つい···」
「なーに、気にすんな。元々、俺はそういう話題には
「なら、いいけどよぉ」
この為、移動時間の大半をエレベーターという密室で過ごすのだ。一人なら兎とも角かく、二人以上が搭乗している状況の中、目的地まで沈黙状態というのは、中々に気まずいものがある。
意味のない仮定の話かもしれないが、もしコハクがコウタほどの話題性を有していたら、自分も彼と同じ事をすると断言出来た。
「まあ、お礼じゃあねえが、今度そのバガラリーって作品──」
見てみるわ、と続く筈だった言葉はしかし······
「──ッと」
目的地に到着し、乗場ドアが開かれると同時、まるで逃げ込むかのように搭乗してくる人影の肩と、彼は期せずして衝突してしまい、
だが、相手方は気付いていないのだろう。何事も無かったようにエレベーターに乗り込み、お陰で謝罪する暇さえ無かった。
「──? どうした、コハク」
それは、隣を歩いていたコウタも同様で、不思議そうに首を傾げている。
コハクは困惑するように頭を
「···仕方ねえかぁ······」
この場合、謝罪するのは諦めた方が良い。エレベーターに搭乗したという事は、間違いなく
ならば、顔を合わせる機会が必ず訪れるはずだ。その時に相手方が覚えていたら、改めて謝罪すれば良いだけの話。
「おーい?」
「いや、何でもない」
次瞬、背後からコウタに声を
食事前である以上、気分を害するような話を持ち込む気はない。
衝突した相手に謝罪出来ずにいるのは悔やまれるが、ここは仕方がないのだと、
そして──
「「いらっしゃいませー」」
エントランス二階を挟んだラウンジへと足を踏み入れると、扉が開く音に続き、よく通る声が左右からステレオのように響いた。
理由としては、出迎えた双子と思われる少女が元気だから。後は時間的な問題だろう。昼食時を過ぎている為か、或いは今も任務に
「あれ? コハクに、コウタじゃん。もしかして、今からメシ? なら、あたしも仲間に入れてよ。丁度、誰もいなくて、暇してたんだ」
「そう、今日もお店は
「もういっそ、男の人に
「「という訳で、本日のおすすめは、双子の満腹御奉仕セットでございまーす」」
「オプションで、生クリームの女体和えもいかがですか? かしこまりましたー、にしし」
「ニョタイアエ? なんだよそれ? おれ、そんな料理聞いたことねえぞ」
「······」
双子の
小悪魔の如き不敵な笑みも、悪徳商法じみた口説き文句も、あわよくば
「ではでは、サクランボへの
「い、いいよ、別に! おれ、そこまで甘党じゃねえもん!!」
「そう、釣れない事を言わずに······オマケでチョコレートバナナならぬ、チョコレート
「だ〜か〜ら〜ッ、人の話を聞けってぇ〜!」
「あはははは! いいねー、そこだいけいけー」
「ちょっ、リッカさん!
などというリッカの気楽で無責任な声援の中、切れ味の鋭いツッコミで助けを求めるコウタ。対して双子の店員は、悪魔のような笑みを浮かべ、ジリジリと
まるで、
「「ねえ、お願いお客様ぁん」」
「ダメダメ! おれには養わなきゃいけない家族がいるんだから! 身請けとか、よく分かんないけど···そう簡単に請け負えるものじゃないから!」
「はぅわ! やだ、この子すっごい健気······!
今どきトップクラスのレアさだよ、ティナ」
「ですねえ、ティセ。いじれるだけいじれそうで、わたしも段々面白くなってきましたよ」
「いやいや、面白がるなよッ! いじられるこっちの身にも──ああ、もう! 見てないで、助けてくれよ、コハクぅッ」
最早、手一杯だと悲鳴を上げるコウタに、はたとコハクは我に返る。
「なあ···ティナ、ティセ······とか、言ったよな。君ら、前に
コウタを背中に
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刹那、双子の瞳がこれ以上ないほど見開かれる。
まるで、
だが、驚愕も一瞬。何かを理解するや否や、双子は口元に新たな
「ほほぉ〜、これがいわゆる
「は?」
「ええ、間違いなく口説かれてますよ、わたし達」
彼女達は一体、何を話しているのだろう。先程の質問の何処に口説き要素があったというのか、全く理解する事が出来ない。
だが、火に油を注ぐ行為ではあったらしく、双子は
「ふふ。前にも何処かでお会いしたか? ···なんて、口説き文句の代名詞を用いて
「でもでもぉ、そんなお兄さんも嫌いじゃなかったりするというかぁ〜」
「残念ながら、わたし達はあなたとお会いした事はありませんが···コハクさんがお望みとあらば」
「あたし達の全てを特別に、見せてあ・げ・ちゃ・う」
「いや、そういう意味じゃねえよ」
即座に否定するが、そんな事さえなんのその。
「まあまあ、そんな事は言わずに」
「一夜の愛を
双子の揶揄いは続行する。人の話を聞く気配がない。
さて、どうしたものか···と、思考を巡らせた。このままでは、ミイラ取りがミイラになりかねない。
聞き捨てならない
取り
「···おれ······もう、ダメ···」
コハクの背後にいるコウタが、盛大に腹の虫を鳴かせるのだった。
そうして──
コウタが腹の虫を鳴かせてくれた光明だろう。引き際を弁える双子と、流石に
「あ、そうだ。改めて、コハク君に聞きたいんだけど···任務はどうだった? なんか、神機に違和感とか······あった?」
不意に、隣に座るリッカが思い出したかのように、コハクへ素朴な疑問を口にした。
それもそうだろう。ゲンから聞いた話では、彼が適合した神機・チャージスピアは、欧州で運用されている近接武器・ポール型神機に分類されるものであり、未だ
つまり、コハクは期せずして、極東支部初の新型神機適合者になるだけでなく、ポール型神機の第一試験運用者でもあるのだ。
コハクは口に運び掛けていたスプーンを持つ手を止め、軍隊糧食製のリゾットが盛られた皿の上へスプーンを置いた。
「今の所は、なんとも···」
「そっか。まあ···そりゃそうかもね。新型神機の適合者自体、非常に稀まれだし······でも、出来る限り早く
「ああ、分かってるぜ」
欧州支部から輸入しているポール型パーツは、極東のアーティフィシャルCNS──つまり、人工的に製造された
それが
単純に、ポール型パーツを製造・整備する為の設備が
「なら、いいんだ。でも···」
意味深げに目を伏せ、リッカは言葉を継ぐ。
「正直な話、私としてはコハクに
「··················」
ポール型ではなく、コハクが適合した
皿の上に置いていたスプーンを手に取り、乾いた
理由を
「···ま、
新しいパーツが欲しくなったら、ターミナルに申請してね。欧州へのパーツ製造・改造依頼は私が最速で処理するから、コハクには一切、不都合は感じさせないよ······そこは、信じて」
優しく説明された時、既に影はどこにも無い。一瞬だけ見せた半信半疑の色が気になるものの、その様子に下手に
「だあああああッ! もー、我慢できねェッ!! 昼飯ぐらいフツーに食わせてくれよ! 聞いてるこっちが息苦しいじゃんかッ!!」
「あ、悪ぃ···」
「いつもの癖でつい······」
「真面目か! いや···コハクはともかく、リッカちゃんは真面目か······じゃあなくて。仕事とプライベートの線引きぐらいしろッ!!」
先刻、榊の座学を受けたばかりだと言うのに、何が好きで食事中にも座学並に小難しい話を聞かねばならないのかと、コウタは訴える。
確かに、彼の言う通り。少なくとも、食事中に先の話を聞かされた日には、ただでさえでも味の微妙な食事が、更に味気ない物になるのは想像に
その点で見れば、落ち度はコハクとリッカの二人にあるのだが、それはそれ。これはこれだ。コウタの口から飛び出した言葉に、コハクは目を半眼にさせる。
「ほー、ナチュラルにディスってくれるじゃねーか」
「んなッ!? ち、違うって! そういう意味じゃ···」
「へー···じゃあ、どーいう意味なんだ?」
「そ、それはだな···そのぉー······えーっと···」
「んー、この反応を見るからに、思わず本音が出ちゃった···って、感じかな〜?」
「···みたいだな。はぁ······どうせ俺は、真面目に見えない
「だ〜か〜ら〜、そうじゃなくて···そうじゃ、······だああ、もぉー、うぅぅぅぅぅぅ──ッ、なんだよなんだよ、二人がかりなんてズルいぞぉ!!」
「え? 別にわたしはコハクに加勢した覚えはないよ」
「俺もリッカに手を貸してくれって、頼んだ覚えはねえなぁ」
「嘘こけぇぇぇぇぇぇええ──っ!!」
冴え渡るコウタ
僅かに感じる懐かしさ。表情をコロコロと変え、相手の冗談に
その度に、コハクは己の心を戒めた。
ただ似ているだけ。
彼と
コウタを通して、
何より、自分の目的を
「ほうほう、なるほど。こうして見ると、これはこれで」
「コハクさんは、
「おまえっ、おまえらなぁっ──分かっててバカにしてるだろぉ!」
「さぁ〜て、なんのことだか」
「笑って誤魔化すなッ。ちくしょおぉォッ」
騒がしく、
リッカと交わしていた小難しい話を中断させ、
馬鹿なやり取り。頭の悪い会話。何の意味もない、
その日常を、その一瞬を、コハクは大切に深く噛み締める。
個室に戻るまでの間、ラウンジには終始楽しそうな声が響いたのだった。
大変、お待たせ致しました。
前回の投稿より、約一ヶ月振りの更新となります。
実は、小説を書く上で日常シーンを描写するのが苦手·······という、致命的な欠点を抱えており、それを克服しようとした結果、執筆時間に一ヶ月近くも要しました。
「グレイ」の「あびゃびゃびゃびゃ」みたいなタイプの奇声は、マジで思いつかない。
因みに、大体の予想はついていると思いますが、ティナ&ティセの言う「頭のおかしいおバカさん達」とは、「初代お馬鹿さん」と「原初のお馬鹿さん」の事です。
むしろ、他に誰がいるんだ。
基本、コハク君は男ボイス15の「やる気皆無」をコンセプトにしているので、光の眷属が持つ気合・根性・
個人的には、男版ヴァネッサ姐さんみたいにするのが理想なんだけど、それだと完成されているので、最初の内は男版ヴァネッサ姐+アストロゴールド成分が無難と思っている次第。
当たり前だが、糞眼鏡と欲望竜とは相容れない。
では、今回はここまで。
またの次回にお会いしましょう| ・∇・)ノシ♪